2018/07/31(火) - 07:00
幾多の名勝負を生み出してきた北イタリアの山岳地帯で開催されたジャイアントの新車発表会。そこで登場したのは山岳軽量モデルではなく、長くタフなライドをこれまで以上に快適に走破するために、画期的なドロップハンドルを搭載したDEFYの次世代機だった。これから4編に渡り、マシンの詳細解説やインタビュー、インプレッション、そして同時発表された新開発パワーメーターについて掘り下げていきたい。
全モデルがディスクブレーキ装備という、当時としては一歩抜きん出た先進性で注目を集めた先代の登場から4年。ホビーライダーから高い人気を誇ってきたジャイアントのエンデュランスロード、DEFY(ディファイ)が待望のフルモデルチェンジを遂げる。
筆者が参加する機会を得た発表会は、イタリアアルプスの麓にある有名スキーリゾート街「サンタカテリーナ・ヴァルフルヴァ」で開催されたものだ。すぐ背後から標高2652mのガヴィア峠に至るつづら折れが伸び、標高2757mのステルヴィオ峠、そして1級山岳モルティローロ峠が周囲に聳え立つロケーションは、こんな世界が存在するのかと感動してしまうほど。夏場はMTBの聖地として賑わうこの地を舞台に、各国1名ずつ招待されたメディア陣を前にして新型バイクがベールを脱いだ。
軽量オールラウンダーのTCRとエアロダイナミクスを極限まで高めたPROPELに続く、ジャイアントロードラインアップ3本柱の一つ、DEFYのキャラクター設定は、言うまでもなく快適性にフォーカスしたエンデュランスロード。しかしプレゼンテーションで開発の中枢を担ったニクソン・ファン氏が繰り返したのは、「DEFYは単にヤワなだけじゃない」という言葉だ。
つまり、長い峠道の上りと下り、荒れた舗装、平坦、アップダウンなど、あらゆる状況を含んだタフライドでこそ真価を発揮する、グランフォンド用ハイパフォーマンスバイクであることこそが真骨頂。振動吸収性能と運動性能を兼ね備えてデビューした初代以降、DEFYはプロレースではパリ〜ルーベに代表される石畳クラシックでの信頼を勝ち取り、広く一般には現在まで続くロングライドブームを作り上げる原動力となってきた。
「ディスクブレーキ専用設計で2015年モデルとして登場させた先代DEFYシリーズは、最高にスムースな走り心地、路面状況を厭わない走破性など非常に自信あるものだった。そのため今回は、先代を上回るために大きな労力を費やした」と語られた新型DEFYの開発期間は、通常よりも長期間に渡ったという。それでは次章から、バイクの詳細や各所テクノロジーを見ていこう。
新型DEFYを開発にするに当たってのターゲットは「エンジニアード・コンプライアンス(D-Fuseによる各所の快適性)」、「トータルコントロール(最新規格ディスクブレーキによるコントロール性能)」、そして「バーサタリティ(広いタイヤクリアランスやフェンダーマウントなど多様性)」という3点。これらを掛け合わせることで、エンデュランスレーサーとして最高のパフォーマンスが追求された。
1997年発表のTCRに端を発する”コンパクトロードコンセプト”を引き継ぐスローピングトップチューブや、シートチューブとの交点を下げたリアバック、極薄のシートステーなど、新型DEFYの基本的なルックスは先代と大きく変わらない。しかしカーボン素材の積層、レイアップの方向など緻密な研究によって各種性能を高めており、ここに「D-Fuse」を使った各種パーツが加わることで快適性を更に押し上げている。
2011年デビューのシクロクロスバイク「TCX」で初登場したD-Fuseは、その名の通りD型断面によって前後方向のしなりを強化したシートポストだ。最大12mmもの動きを実現したフレックスシステムは先代DEFYでも採用されていたが、今回、開発陣はそのノウハウを応用したユニークなハンドルバーを開発してDEFYに投入。これが「Contact SLR D-Fuseハンドルバー」である。
一般的なドロップハンドルでは、スプリント時には剛性が必要である一方、快適に走りたい時にそれでは固すぎるように、剛性と快適性の両立は不可能であった。今回ジャイアントは、上ハンドル部分にD型形状を採用したD-Fuseハンドルバーを開発することで、この問題を解決している。
カーボンのContact SLR D-FuseとContact SLRハンドルバーの比較で、路面からの突き上げ(ハンドルに対して下向きの入力)が加わった際には+10%の快適性、反対にスプリント時にハンドルを引き上げる動作(ハンドルに対して斜め上向きの入力)が加わった際には+30%という剛性強化を叶え、1つのハンドルに相反する要素を落とし込んだという。ロードバイクとしての基本形はそのままに、他社のようなギミックを使わずして快適性を高めたことは、世界No.1ブランドらしい正攻法とも言えるだろう。
さらにD-Fuseハンドルバーは、ステムクランプ位置を±5度の範囲で変更することで、剛性と快適性の微調整をも可能にする。つまり、ステムクランプを緩めてハンドル角度をデフォルトから5度上向きにすると、上ハンドル部分が上下に扁平形状となって柔軟性が高まり、逆にデフォルトから5度下向きにするとD型断面が立ち上がるため剛性が増すというものだ。
その他、よりアールを持たせたフロントフォークや、32mmタイヤ(先代は28mmまで)を飲み込めるよう広げられたクリアランスとハイボリュームで乗り心地を高める新設計のGAVIA「AC」タイヤ、そしてジャイアント自慢のチューブレスシステム、そして今回発表会でテストしたバイクに取り付けられた新型サドル、Contact SL Neutralも快適性に大きく寄与する部分だ。
本場ヨーロッパの過酷なグランフォンド的走り方に対応すべく、もちろんジャイアントご自慢のスペックがフル投入されている。上側1-1/4インチ径、下側1-1/2インチ径というジャイアント独自のヘッド規格「OverDrive 2」はTCRやPROPELにも採用された実績あるもので、ヘッドチューブ付近における剛性を高め、コーナーやブレーキ、ダンシング時にその恩恵を得ることができる。
プレゼンテーションでは特に語られなかったが、ジオメトリーに若干の修正が加わっていることにも注目したい。先代はかなりアップライトなポジションを採用していたが、新型はヘッドチューブ長が各サイズ5mm短く、トップチューブ長はXSサイズのみ5mm長くなった。XSとSサイズはその分ヘッドアングルを僅かに寝かせることで安定感を狙う作りが見て取れる。そしてBBドロップは各サイズ5mm低くなって安定感を増すよう変更されている。
新型DEFYはキャラクター付けを踏まえて最高峰のADVANCED SLグレードは設定されず、上級モデルのADVANCED PRO、そして弟分のADVANCEDという2モデル展開となる。どちらもフレームのカーボン素材は共通で、PROグレードはOverDrive 2、ノーマルグレードは通常の上側1-1-/8、下側1-1/4のOverDrive規格であることが最大の変更点だ。
ADVANCED PROにはジャイアントが新開発したパワーメーター「POWER PRO」が搭載された完成車も用意される。また、先代DEFYのノーマルグレードはアルミコラム仕様だったが、新型ではカーボンコラムにアップグレードされていることも見逃せないポイントの一つだ(日本国内での販売モデルや価格は8月末発表予定)。
次頁では「POWER FOR ALL」をキーワードにデビューしたパワーメーター「POWER PRO」や、一足先に発表されていた新型シューズ「SURGE PRO」などギア関連を、プレゼンテーションの模様を交えつつ取り上げる。バイクのインプレッションはVol.3、ニクソン氏へのインタビューはVol.4でお伝えする予定だ。
北イタリアでの新車発表会 過酷な山場を走り抜くために
全モデルがディスクブレーキ装備という、当時としては一歩抜きん出た先進性で注目を集めた先代の登場から4年。ホビーライダーから高い人気を誇ってきたジャイアントのエンデュランスロード、DEFY(ディファイ)が待望のフルモデルチェンジを遂げる。
筆者が参加する機会を得た発表会は、イタリアアルプスの麓にある有名スキーリゾート街「サンタカテリーナ・ヴァルフルヴァ」で開催されたものだ。すぐ背後から標高2652mのガヴィア峠に至るつづら折れが伸び、標高2757mのステルヴィオ峠、そして1級山岳モルティローロ峠が周囲に聳え立つロケーションは、こんな世界が存在するのかと感動してしまうほど。夏場はMTBの聖地として賑わうこの地を舞台に、各国1名ずつ招待されたメディア陣を前にして新型バイクがベールを脱いだ。
軽量オールラウンダーのTCRとエアロダイナミクスを極限まで高めたPROPELに続く、ジャイアントロードラインアップ3本柱の一つ、DEFYのキャラクター設定は、言うまでもなく快適性にフォーカスしたエンデュランスロード。しかしプレゼンテーションで開発の中枢を担ったニクソン・ファン氏が繰り返したのは、「DEFYは単にヤワなだけじゃない」という言葉だ。
つまり、長い峠道の上りと下り、荒れた舗装、平坦、アップダウンなど、あらゆる状況を含んだタフライドでこそ真価を発揮する、グランフォンド用ハイパフォーマンスバイクであることこそが真骨頂。振動吸収性能と運動性能を兼ね備えてデビューした初代以降、DEFYはプロレースではパリ〜ルーベに代表される石畳クラシックでの信頼を勝ち取り、広く一般には現在まで続くロングライドブームを作り上げる原動力となってきた。
「ディスクブレーキ専用設計で2015年モデルとして登場させた先代DEFYシリーズは、最高にスムースな走り心地、路面状況を厭わない走破性など非常に自信あるものだった。そのため今回は、先代を上回るために大きな労力を費やした」と語られた新型DEFYの開発期間は、通常よりも長期間に渡ったという。それでは次章から、バイクの詳細や各所テクノロジーを見ていこう。
グランフォンドのための、ハイパフォーマンスバイク
新型DEFYを開発にするに当たってのターゲットは「エンジニアード・コンプライアンス(D-Fuseによる各所の快適性)」、「トータルコントロール(最新規格ディスクブレーキによるコントロール性能)」、そして「バーサタリティ(広いタイヤクリアランスやフェンダーマウントなど多様性)」という3点。これらを掛け合わせることで、エンデュランスレーサーとして最高のパフォーマンスが追求された。
1997年発表のTCRに端を発する”コンパクトロードコンセプト”を引き継ぐスローピングトップチューブや、シートチューブとの交点を下げたリアバック、極薄のシートステーなど、新型DEFYの基本的なルックスは先代と大きく変わらない。しかしカーボン素材の積層、レイアップの方向など緻密な研究によって各種性能を高めており、ここに「D-Fuse」を使った各種パーツが加わることで快適性を更に押し上げている。
2011年デビューのシクロクロスバイク「TCX」で初登場したD-Fuseは、その名の通りD型断面によって前後方向のしなりを強化したシートポストだ。最大12mmもの動きを実現したフレックスシステムは先代DEFYでも採用されていたが、今回、開発陣はそのノウハウを応用したユニークなハンドルバーを開発してDEFYに投入。これが「Contact SLR D-Fuseハンドルバー」である。
角度調整で柔軟性が変わるハンドルバーを新採用
一見普通に見えるContact SLR D-Fuseハンドルバーだが、一度上ハンドル部分を握ってみればその薄さに驚くことだろう。ステムクランプ部分は一般的な31.8mm径だが、その横からは細く扁平なD-Fuseシェイプに絞り込まれている。これがこのハンドルのミソだ。一般的なドロップハンドルでは、スプリント時には剛性が必要である一方、快適に走りたい時にそれでは固すぎるように、剛性と快適性の両立は不可能であった。今回ジャイアントは、上ハンドル部分にD型形状を採用したD-Fuseハンドルバーを開発することで、この問題を解決している。
カーボンのContact SLR D-FuseとContact SLRハンドルバーの比較で、路面からの突き上げ(ハンドルに対して下向きの入力)が加わった際には+10%の快適性、反対にスプリント時にハンドルを引き上げる動作(ハンドルに対して斜め上向きの入力)が加わった際には+30%という剛性強化を叶え、1つのハンドルに相反する要素を落とし込んだという。ロードバイクとしての基本形はそのままに、他社のようなギミックを使わずして快適性を高めたことは、世界No.1ブランドらしい正攻法とも言えるだろう。
さらにD-Fuseハンドルバーは、ステムクランプ位置を±5度の範囲で変更することで、剛性と快適性の微調整をも可能にする。つまり、ステムクランプを緩めてハンドル角度をデフォルトから5度上向きにすると、上ハンドル部分が上下に扁平形状となって柔軟性が高まり、逆にデフォルトから5度下向きにするとD型断面が立ち上がるため剛性が増すというものだ。
その他、よりアールを持たせたフロントフォークや、32mmタイヤ(先代は28mmまで)を飲み込めるよう広げられたクリアランスとハイボリュームで乗り心地を高める新設計のGAVIA「AC」タイヤ、そしてジャイアント自慢のチューブレスシステム、そして今回発表会でテストしたバイクに取り付けられた新型サドル、Contact SL Neutralも快適性に大きく寄与する部分だ。
本場ヨーロッパの過酷なグランフォンド的走り方に対応すべく、もちろんジャイアントご自慢のスペックがフル投入されている。上側1-1/4インチ径、下側1-1/2インチ径というジャイアント独自のヘッド規格「OverDrive 2」はTCRやPROPELにも採用された実績あるもので、ヘッドチューブ付近における剛性を高め、コーナーやブレーキ、ダンシング時にその恩恵を得ることができる。
プレゼンテーションでは特に語られなかったが、ジオメトリーに若干の修正が加わっていることにも注目したい。先代はかなりアップライトなポジションを採用していたが、新型はヘッドチューブ長が各サイズ5mm短く、トップチューブ長はXSサイズのみ5mm長くなった。XSとSサイズはその分ヘッドアングルを僅かに寝かせることで安定感を狙う作りが見て取れる。そしてBBドロップは各サイズ5mm低くなって安定感を増すよう変更されている。
フレームは2種類、オリジナルパワーメーター搭載モデルも
新型DEFYはキャラクター付けを踏まえて最高峰のADVANCED SLグレードは設定されず、上級モデルのADVANCED PRO、そして弟分のADVANCEDという2モデル展開となる。どちらもフレームのカーボン素材は共通で、PROグレードはOverDrive 2、ノーマルグレードは通常の上側1-1-/8、下側1-1/4のOverDrive規格であることが最大の変更点だ。
ADVANCED PROにはジャイアントが新開発したパワーメーター「POWER PRO」が搭載された完成車も用意される。また、先代DEFYのノーマルグレードはアルミコラム仕様だったが、新型ではカーボンコラムにアップグレードされていることも見逃せないポイントの一つだ(日本国内での販売モデルや価格は8月末発表予定)。
次頁では「POWER FOR ALL」をキーワードにデビューしたパワーメーター「POWER PRO」や、一足先に発表されていた新型シューズ「SURGE PRO」などギア関連を、プレゼンテーションの模様を交えつつ取り上げる。バイクのインプレッションはVol.3、ニクソン氏へのインタビューはVol.4でお伝えする予定だ。
提供:ジャイアント・ジャパン、text:So.Isobe
photo:Sterling Lorence/GIANT,So.Isobe
photo:Sterling Lorence/GIANT,So.Isobe