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信頼と実績のイタリアンブランド、デダ・エレメンティが放つホイールラインアップを試す後編。今回はフルカーボンリムを採用したチューブレスレディ「SL38」のインプレッションをお届けする。普段使いからレースまでこなせるマルチパーパスなアイテムの価値と魅力や如何に。

ラインアップ中唯一のフルカーボンチューブレスレディ、SL38

ラインナップ中唯一のカーボンチューブレスホイールであるSL38ラインナップ中唯一のカーボンチューブレスホイールであるSL38 photo:Makoto.AYANO
全部で6種類が用意されるデダ・エレメンティのホイールラインアップのうち、唯一となるカーボンチューレスレディモデルがこのSL38だ。名称の通り38mmハイトのリムを使うことで、前章で紹介した軽量のSL30とエアロダイナミクスを意識したSL44のちょうど中間、オールラウンドホイールとしての位置づけがなされている。

チューブレス時代に先駆け2017年に登場したSL38は、ハブやスポーキングなどはバルディアーニCSFが使うSL30、SL45と共通。ただしリムの断面形状はチューブレスシステムに最適化させるべく、チューブラーモデルよりも1mm広げた26mm幅が採用されている。

SL38のリムは外幅26mm、ハイト38mmとオールラウンドに使える設計SL38のリムは外幅26mm、ハイト38mmとオールラウンドに使える設計
ハブやスポーキングなどはチューブラーモデルと同じ。つまりプロ選手が使うものと同一スペックだハブやスポーキングなどはチューブラーモデルと同じ。つまりプロ選手が使うものと同一スペックだ photo:Kei.Tsuji
当然チューブレスレディであるためクリンチャー、チューブレス両方で運用でき、1本で練習からレースまで使い回すにはデダ・エレメンティのホイールラインアップ中最適な選択肢と言えよう。タイヤ幅は最大32mmまで対応と、シクロクロスやグラベルロードでの使用も視野に入れられたマルチパーパスなモデルとも言えるだろう。

相性を考えた専用ブレーキシューやクイックレリース、延長バルブなどが付属する(チューブラーモデルも共通)相性を考えた専用ブレーキシューやクイックレリース、延長バルブなどが付属する(チューブラーモデルも共通) エンデューロ製セラミックベアリングの採用や、ストレートプルスポークを使った2:1組み、緩みを防ぎ安全性と耐久性を上げるABSセルフロックニップルなど、デダ・エレメンティが誇るテクノロジーが全て投入されている。重量は前後ペア1500gで、税抜き価格は210,970円。チューブレスキットは使用するタイヤメーカー製のものを使用する必要がある。

今回のインプレッションではホイール本来の性能を計り知るため、乗り心地が上がるチューブレスではなく、クリンチャータイヤ(IRCのASPITE PRO、26mm)でテストを行なった。大石一夫さん(シクロオオイシ ラヴニール)、藤野智一さん(なるしまフレンド)という両名が、チューブレス時代に向けた意欲作を斬る。

大石一夫×藤野智一 SL38インプレッション

「リム重量があるのに走る意外性」藤野智一(なるしまフレンド)

藤野:実はチューブラーモデルよりも性能的には良かったかもしれない。レスポンスも良いし、巡航もしやすい。カチっとした走りはチューブラーモデルと同じですが、全体的に僅かに上回っていたように感じました。

「リム重量があるのに走る意外性」藤野智一(なるしまフレンド)「リム重量があるのに走る意外性」藤野智一(なるしまフレンド) photo:Makoto.AYANO
大石:タイヤの違いはあるにしても良い走りをしていたので好印象でしたね。パワーで押し切れるような上りだったら全然こなせてしまう。個人的にはチューブラーモデルのほうがほんの少し硬く感じました。

藤野:すごい昔の話で恐縮なんですが、(マヴィックの)アルミ時代のコスミックに近いような...(笑)。チューブラーモデルよりもリム重量があるのに全く悪い印象がありません。なんででしょうか。

大石:やっぱりセラミックベアリングを使っているためか転がりは共通してスムーズですよね。タイヤとの組み合わせも良かったんだと思う。乗る前は価格も若干高いし重量もあるし、ん〜どうなんだ?と思っていたけれど、走ってみたら、あれ、意外。と。このSL38だけ20万円を超えてくるんですが、それなりの走りはしっかりしてくれるんですよね。

「SL38の方がチューブラーモデルよりもキレのある走り」藤野智一(なるしまフレンド)「SL38の方がチューブラーモデルよりもキレのある走り」藤野智一(なるしまフレンド) photo:Makoto.AYANO
藤野:人によっては気のせいくらいの細かいレベルですが、ブレーキはSL38が一番効きが良かった。チューブラーはブレーキを掛けた瞬間に一瞬空走してから制動力が立ち上がるイメージでしたが、SL38はずっと一定でブレーキが掛かっていくイメージ。ブレーキの扱いやすさはこちらの方が良いですね。

走りの切れ味としてはSL38の方が、ほんの少し上回っているように思います。今回はクリンチャーでのテストでしたが、チューブレス化したらもっともっと良くなるでしょうね。まずは重量が軽くなるし、シーラントの30gくらいは問題にならないくらい性能が伸びるはず。

大石:もっと走りの軽快感が増すでしょうね。ただクリンチャーでのテストでも重量の重さは全く気にならなかったし、かったるい感じもない。実際手に持ってもリム重量は感じるのに、意外性がとてもあるんですよね。

「ぜひチューブレスで運用してほしい」大石一夫(シクロオオイシ ラヴニール)

「ぜひチューブレスで運用してほしい」大石一夫(シクロオオイシ ラヴニール)「ぜひチューブレスで運用してほしい」大石一夫(シクロオオイシ ラヴニール) photo:Makoto.AYANO
藤野:20万円そこそこのカーボンチューブレスレディホイールって、まだあまりライバルが多くないジャンルですよね。20万円台に乗ってしまったのがPR的には痛いところですが、モノとしては良いですから。これがチューブラーモデルと同じくらいの値段だったら、実際の性能以上の価値が出てきたでしょうね。

大石:ただ価格から性能面を見れば、ダメ出しをする部分がないですからね。チューブレスにした時の性能の伸び幅に期待できるので、20万円でフルカーボンのチューブレスホイールを探している方には良い選択肢になるはず。これなら自分で使ってもいいな、と思えました。

藤野:チューブレス運用すれば小さいパンクならシーラントが塞いでくれるし、乗り心地がずっと良くなったりとメリットの方が大きくなる。是非チューブレス運用すべきですね。

「私はハンドル周りとシートポストは全部デダ。やっぱり使いやすいですから」藤野智一(なるしまフレンド)「私はハンドル周りとシートポストは全部デダ。やっぱり使いやすいですから」藤野智一(なるしまフレンド) photo:Makoto.AYANO
大石:SL38はオールラウンドに使えるのが良いところ。30と45よりも使える幅は広いですし、レース機材としても十分。100km以上走る時のテンポの速いツーリングとかに使いやすいと思いますよ。デダを愛用する方は少なからずいますし、そういうニーズも増えそうですね。

藤野:私もハンドル周りとシートポストは全部デダですよ。やっぱり使いやすいし、選びやすいのが魅力ですよね。

大石:そうそう。だからホイールとしては新規参入なのに、信頼性は最初からしっかりしている。実際乗っても不安を全く感じませんでしたし、そういう部分に気を遣っているんだな、と思いますね。

藤野:デダってオリジナルのフレームもすごくいいんですよね。T700のカーボンを使って10万円くらいなのに、すごく良く走るんです。ホイールとハンドル周り、フレームまで揃えたら流石にやり過ぎ感強めですが(笑)、全ての製品に共通して安心のクオリティが息づいていると再確認できたインプレッションでした。

インプレッションライダープロフィール

大石一夫(左、シクロオオイシ ラヴニール)、藤野智一(右、なるしまフレンド)大石一夫(左、シクロオオイシ ラヴニール)、藤野智一(右、なるしまフレンド) photo:Makoto.AYANO
藤野智一(なるしまフレンド)

92年のバルセロナオリンピックロードレースでの21位を皮切りに、94・97年にツール・ド・おきなわ優勝、98、99年は2年連続で全日本ロードチャンピオンとなるなど輝かしい戦歴を持つ。02年に引退してからはチームブリヂストン・アンカーで若手育成に取り組み、11年までは同チームの監督を務めた。2012年より出身チームのなるしまフレンドに勤務し、現在は神宮店の店長として親しまれている。ブリヂストン時代にはフレームやタイヤの開発ライダーも務め、機材に対して非常に繊細な感覚を持つ。

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大石一夫(シクロオオイシ ラヴニール)

国際サイクルロードレース(現ツアー・オブ・ジャパン)初代王者となったことでキャリアがスタート。歴史上初めて結成された日本ナショナルチームの第1回遠征メンバーとして1986年のツール・ド・ラヴニールに参加。1989年にはツール・ド・北海道とツール・ド・おきなわをダブル優勝、1990年と1993年に全日本選手権優勝、国体3回優勝など屈指のオールラウンダーとして君臨した。長野県安曇野市に移り住み、98年に自身のショップをオープン。今でも全国屈指の"走れる店長"としての脚力を維持している。

→シクロオオイシ ラヴニールHP
提供:カワシマサイクルサプライ 制作:シクロワイアード編集部