2018/05/28(月) - 12:19
2013年のツール・ド・フランスで初披露されて以降ロード用ヘルメットの常識を変え、5年にも渡り第一線で愛用されてきたエアロヘルメット「S-Works Evade」が遂にフルモデルチェンジ。徹底的にエアロダイナミクスと通気性を追求したスピードマン御用達アイテムを、インプレッションと共に解説していきたい。
ここ近年におけるロード用ヘルメットは、2013年頃を境に激変したと言える。それまでバイクフレームやホイールだけのものだった「エアロ」というキーワードがヘルメットにも波及し、現在に続くロード用ヘルメットの基盤が生まれたのだ。しかし当初は空力だけを捉えて通気性を重視していなかったもの、そして通常ヘルメットの穴を塞いだだけのものも存在したが、そんな発展期において、エアロダイナミクスと通気性を備えた決定版としてデビューしたのがS-Works Evadeだった。
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)のマリアローザ獲得や、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)のスプリント勝利量産という栄光と共に正式デビューしたS-Works Evadeはその後、5シーズンに渡って第一線で活躍。そして2018シーズンの開幕戦、ツアー・ダウンアンダーで遂に第2世代となる「S-Works Evade Ⅱ」が初披露されたのだ。
するとそのデビュー戦でペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がいきなり勝利を挙げ、その後の春のクラシックシーズンやステージレースなど、コースプロフィールを問わず選手たちに愛用され、そして幾多の勝利を支えてきた。平均速度が40km/hを下回ることのないプロレースでは圧倒的な使用率を誇っているのだ。
S-Works Evade Ⅱに求められたのは、エアロヘルメットの第一条件である空力抵抗の低減と、更なる通気性を得ること。全ての形状を一から設計し直し、自社に風洞実験施設Win Tunnelを持つ強みを活かして徹底的な研究開発が行われたという。
シェルの形状決定のために、帽体を各セクションに分割しそれらをパズル方式で組み合わせて性能を検証していくジグソーテストを実施。3Dプリンターで作成した形状の異なるモックをいくつも用意し、エアロのためにベンチレーションホールのデザイン一つ一つに至るまで、膨大なサンプルから最高のテスト結果が得られたものが採用されている。
モデルチェンジによって前作よりテールの短いコンパクトなシェル形状となり、扱いやすさと軽量性が向上した。空気の整流効果を高めるため頭頂部のベンチレーションホールは小型化されるとともに、やや横に張り出した滑らかな卵型のアウトラインへ変更されている。よりエアロダイナミクスを高めた今作は、走行距離40kmで比較した際、一般的なロードヘルメットに比べて50秒、高い空力性能を誇った前作よりも平均6秒速いパフォーマンスを獲得している。
通気性においてはベンチレーションホールを工夫し、帽体内側に設けられたエアチャネル(溝)を最適化することで高い通気性を確保。前方の開口部を絞り、後方のホールを大きく開けることでベンチュリ効果を生み出し、勢い良く空気を内部に取り込むよう工夫されている。熱がこもりがちなエアロヘルメットながら飛躍的に冷感効果を強化しており、温感センサーを用いた独自の検証ではヘルメットを被っていない素の頭部と同じだけの涼しさを誇るのだという。詳しくはスペシャライズドの”Dr.スピード”ことクリス・ユー氏が出演しているムービーを確認してほしい。
もちろん安全性にも十分配慮されており、帽体はアラミドロールケージによる骨組みを挿入し、衝撃が加わった際も飛散せずエネルギーを分散してくれる作りに。加えてシェルの中央部と両サイドで密度の異なる2種類のEPSを用いることで、安全性を高めつつ軽量化も図っている。
サイズ展開も見直され、従来よりも細かな選択が可能なアジアンフィットのS、M、Lという3種類が揃う。ストラップにはマグネットバックルを採用し、フィッティングのリテンションパーツは女性のポニーテールも後部から出しやすいユニセックス仕様となる。
カラーバリエーションは、ダウンアンダーで世界王者ペテル・サガンが使用したビビッドな限定モデルのほか、ホワイト、ブラック、そして艶やかなキャンディレッドが揃う。前章で紹介したS-Works 7ロードシューズと同色展開だ。
まず従来のEvadeと比較した時に顕著に感じるのが”軽さ”ですね。明らかにテールが短くなり全体的にコンパクトになりました。前作は300g近い重量で長時間のライドになると首がやや疲れるという印象でしたが、今作になってライド中に重さが気になることはなくなりましたね。エアロヘルメットなので、よりホールの多い軽量モデルと比べると確かに重量はありますが、その差は大きく詰まったと思います。前よりもキノコ頭になりにくいシルエットもポイントでしょう。
風の通りもメーカーの狙い通り向上していて、通気性や冷却性能は確実に向上していますね。空気が入ってくる以上に後ろから抜けていく感覚が強く、ヘルメット内側できちんと排熱されている印象を受けます。エアロヘルメットなので全方位から風が入ってくる訳ではありませんが、チャネルの構造も手伝って中央の縦のラインで空気が流れるような通気性を感じます。
フィット感も改善されており、より被り心地が良くなりました。前作では2サイズ展開だったものが、Evade Ⅱになって3サイズに増えたことで、より自分に合うサイズが見つかると思います。個人的には以前使用していたS/Mサイズではやや隙間ができたのですが、新作ではSサイズをチョイス。よりピッタリと頭にフィットするようになりました。
エアロ性能に関しては先代モデルですら十分良かったこともあって、体感的にはどうしても分かりづらい部分です。もちろん性能向上はリアルでしょうから、スピードを求めるレーサーには非常におすすめできる製品に仕上がっていると言えますね。
細かい部分を見ていけば、新しく採用されたマグネットバックルは片手で着脱可能なので慣れるととても使いやすい。帽体もコンパクトになったので、シクロクロスの担ぎのシーンでもぶつかることがなくなりましたし、前頭部のシェルが薄くなったので前傾したポジションでも視界の邪魔にならなくなりました。
空力性能はもちろんながら、その他の使い勝手が大きく向上しており、あらゆる人がオールラウンドに使えるよう進化していると感じました。
最速ロードヘルメットが遂にモデルチェンジ
ここ近年におけるロード用ヘルメットは、2013年頃を境に激変したと言える。それまでバイクフレームやホイールだけのものだった「エアロ」というキーワードがヘルメットにも波及し、現在に続くロード用ヘルメットの基盤が生まれたのだ。しかし当初は空力だけを捉えて通気性を重視していなかったもの、そして通常ヘルメットの穴を塞いだだけのものも存在したが、そんな発展期において、エアロダイナミクスと通気性を備えた決定版としてデビューしたのがS-Works Evadeだった。
ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)のマリアローザ獲得や、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)のスプリント勝利量産という栄光と共に正式デビューしたS-Works Evadeはその後、5シーズンに渡って第一線で活躍。そして2018シーズンの開幕戦、ツアー・ダウンアンダーで遂に第2世代となる「S-Works Evade Ⅱ」が初披露されたのだ。
するとそのデビュー戦でペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がいきなり勝利を挙げ、その後の春のクラシックシーズンやステージレースなど、コースプロフィールを問わず選手たちに愛用され、そして幾多の勝利を支えてきた。平均速度が40km/hを下回ることのないプロレースでは圧倒的な使用率を誇っているのだ。
40km走行で先代から-6秒、一般的な製品から-50秒のタイム短縮
S-Works Evade Ⅱに求められたのは、エアロヘルメットの第一条件である空力抵抗の低減と、更なる通気性を得ること。全ての形状を一から設計し直し、自社に風洞実験施設Win Tunnelを持つ強みを活かして徹底的な研究開発が行われたという。
シェルの形状決定のために、帽体を各セクションに分割しそれらをパズル方式で組み合わせて性能を検証していくジグソーテストを実施。3Dプリンターで作成した形状の異なるモックをいくつも用意し、エアロのためにベンチレーションホールのデザイン一つ一つに至るまで、膨大なサンプルから最高のテスト結果が得られたものが採用されている。
モデルチェンジによって前作よりテールの短いコンパクトなシェル形状となり、扱いやすさと軽量性が向上した。空気の整流効果を高めるため頭頂部のベンチレーションホールは小型化されるとともに、やや横に張り出した滑らかな卵型のアウトラインへ変更されている。よりエアロダイナミクスを高めた今作は、走行距離40kmで比較した際、一般的なロードヘルメットに比べて50秒、高い空力性能を誇った前作よりも平均6秒速いパフォーマンスを獲得している。
通気性においてはベンチレーションホールを工夫し、帽体内側に設けられたエアチャネル(溝)を最適化することで高い通気性を確保。前方の開口部を絞り、後方のホールを大きく開けることでベンチュリ効果を生み出し、勢い良く空気を内部に取り込むよう工夫されている。熱がこもりがちなエアロヘルメットながら飛躍的に冷感効果を強化しており、温感センサーを用いた独自の検証ではヘルメットを被っていない素の頭部と同じだけの涼しさを誇るのだという。詳しくはスペシャライズドの”Dr.スピード”ことクリス・ユー氏が出演しているムービーを確認してほしい。
もちろん安全性にも十分配慮されており、帽体はアラミドロールケージによる骨組みを挿入し、衝撃が加わった際も飛散せずエネルギーを分散してくれる作りに。加えてシェルの中央部と両サイドで密度の異なる2種類のEPSを用いることで、安全性を高めつつ軽量化も図っている。
サイズ展開も見直され、従来よりも細かな選択が可能なアジアンフィットのS、M、Lという3種類が揃う。ストラップにはマグネットバックルを採用し、フィッティングのリテンションパーツは女性のポニーテールも後部から出しやすいユニセックス仕様となる。
カラーバリエーションは、ダウンアンダーで世界王者ペテル・サガンが使用したビビッドな限定モデルのほか、ホワイト、ブラック、そして艶やかなキャンディレッドが揃う。前章で紹介したS-Works 7ロードシューズと同色展開だ。
スペシャライズド S-Works Evade Ⅱ カラー/スペック
カラー | ハイパー/アシッドラヴァ(数量限定)、ホワイト、ブラック、ロケットレッド/キャンディレッド |
サイズ | S(52~56cm)、M(55~59cm)、L(59~64cm) |
重 量 | 260g(S)、280g(M)、310g(L) |
価 格 | 26,000円(税抜) |
S-Works Evade Ⅱ インプレッション
「通気性、軽量性、フィット感が大きく改善された」安藤光平(Bicicletta SHIDO)
まず従来のEvadeと比較した時に顕著に感じるのが”軽さ”ですね。明らかにテールが短くなり全体的にコンパクトになりました。前作は300g近い重量で長時間のライドになると首がやや疲れるという印象でしたが、今作になってライド中に重さが気になることはなくなりましたね。エアロヘルメットなので、よりホールの多い軽量モデルと比べると確かに重量はありますが、その差は大きく詰まったと思います。前よりもキノコ頭になりにくいシルエットもポイントでしょう。
風の通りもメーカーの狙い通り向上していて、通気性や冷却性能は確実に向上していますね。空気が入ってくる以上に後ろから抜けていく感覚が強く、ヘルメット内側できちんと排熱されている印象を受けます。エアロヘルメットなので全方位から風が入ってくる訳ではありませんが、チャネルの構造も手伝って中央の縦のラインで空気が流れるような通気性を感じます。
フィット感も改善されており、より被り心地が良くなりました。前作では2サイズ展開だったものが、Evade Ⅱになって3サイズに増えたことで、より自分に合うサイズが見つかると思います。個人的には以前使用していたS/Mサイズではやや隙間ができたのですが、新作ではSサイズをチョイス。よりピッタリと頭にフィットするようになりました。
エアロ性能に関しては先代モデルですら十分良かったこともあって、体感的にはどうしても分かりづらい部分です。もちろん性能向上はリアルでしょうから、スピードを求めるレーサーには非常におすすめできる製品に仕上がっていると言えますね。
細かい部分を見ていけば、新しく採用されたマグネットバックルは片手で着脱可能なので慣れるととても使いやすい。帽体もコンパクトになったので、シクロクロスの担ぎのシーンでもぶつかることがなくなりましたし、前頭部のシェルが薄くなったので前傾したポジションでも視界の邪魔にならなくなりました。
空力性能はもちろんながら、その他の使い勝手が大きく向上しており、あらゆる人がオールラウンドに使えるよう進化していると感じました。
提供:スペシャライズド・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部