2018/02/01(木) - 11:27
フランスの雄、タイムからブランド史上最軽量を謳うヒルクライムモデルが解き放たれた。その名は、アルプデュエズ。神聖な名を与えられた軽量マシンは如何にして生まれ、どのようなメッセージを携え、如何に羽ばたくのか。これから3編に渡り、台湾で開催されたプレゼンテーションの模様やバイクの詳細、開発マネージャーへのインタビューを通して検証していきたい。
これまで3年間に渡り、IZON(アイゾン)が支えてきたタイムのアルティテュード(軽量)カテゴリーにニューモデルが登場する。それがブランド史上最軽量となるヒルクライムマシン「ALPE D’HUEZ(アルプデュエズ)」だ。台湾最大の都市、台北郊外に用意された会場にはタイムの開発部長を務めるグザヴィエ・ルサブシャール氏が登場し、彼の手によって見慣れないフォルムの軽量マシンが披露された。
台湾で発表会があったからといって、遂にタイムもアジア生産に切り替えたのかと早合点してはいけない。今回発表されたアルプデュエズも含め全モデルがフランス生産であることは貫かれており、それは恐らくこれからも変わらないタイムのアイデンティティ。今回のプレゼンテーションは温暖な地域でバイクを試してほしいという思いから台湾のタイム販売代理店がオーガナイズしたもので、ヨーロッパは地中海で、北米ではカリフォルニアがその舞台となり、近隣各国のメディアや代理店スタッフが招聘された。
発表会はプロモーションムービーの上映からスタートした。スクリーンにはデルガド、ベッティーニ、ヴォクレール、シャヴァネル、そしてボーネンら、タイムと共に一時代を築き上げた名選手たちが登場し、これまでラルプ・デュエズで繰り広げられてきた数々の名勝負と重ねるようにバイクの紹介が行われていく。
それはまさに、タイムが世界のトップシーンで再び羽ばたくことを予感させる演出だった。アルプデュエズのデビューは、ロシニョールグループのバックアップを受けて変革を遂げる、タイム復権の狼煙だ。
「軽くするだけならいくらだって軽くできる。でも、大切なのはタイム”らしい”乗り味を与えること。そうでなければいくら重量計の数値が小さくても意味はない」と、グザヴィエ氏は言い切る。具体的にはRTM(レジン・トランスファー・モールド)と呼ばれる独自工法を改良し、軽量化を第一に据えつつ剛性と快適性をバランスさせることが目標に据えられた。
黎明期から一貫して採用されているRTMを改めて説明すると、カーボンやベクトランといった繊維を筒状に編み込んでからコア材に被せ、加圧しながら樹脂を注入する工法のこと。
樹脂を含んだプリプレグを貼り付け、ブラダー(風船状の心材)を用いて成型する一般的な工法よりも高レベルのクオリティコントロールが可能となるメリットを持ち、アルプデュエズの開発に当たっては、コア材の使い⽅を⼯夫し、エポキシ樹脂をより⾼圧で押し固める新⼯法を確⽴。さらにブレイド(編んだカーボン)の使用数を減らし、高弾性ファイバーの使用率を増す(IZONは45%、アルプデュエズは55%)など、独自の解釈で総合的なパフォーマンスアップを叶えている。フレーム表面の化粧カーボン層を廃したことも軽量化に貢献するポイントだ。
フレーム構造としてはエアロロードのSCYLON(サイロン)やIZONと同じく、モノコックのメインフレームにシートステーとチェーンステーを接続する形を継続する。
あくまでもレーシングバイクとして生まれたアルプデュエズにとって、剛性強化は見過ごせない部分だった。先述したフレーム成型の技術進歩に加え、SCYLONと同じくボトムブラケットはBB386規格となり、2004年のVXRSを祖とする左右非対称設計も当然継承する。フレームの平均的な剛性値はSCYLONに次ぐ135N.m/°、ウェイトレシオで見ればIZONから30%増、SCYLONを超えてブランド最高値をマークするに至った。
タイムが一貫して追求してきた快適性については、フロントフォーク先端部にチューンドマスダンパーを内蔵し、もっとも不快でダメージとなる25~50ヘルツという低周波数帯の振動を軽減するタイム独自のAKTIV(アクティブ)フォークがその責を担う。ただしグザヴィエ氏は「AKTIVは単に乗り心地を高めるだけでなく、しなりに与える悪影響をカットすることでペダリング効率を上げるための機構」と説明する。よりリジッドなクラシックフォークと二択できる点もタイムらしいポイントだ。
タイムが長年採用してきた独自のヘッドセット「クイックセット」もアップデートされている。上部のキャップ部分が薄型化され、フレームに内蔵されたことでより深いポジションに対応しつつ、44gの軽量化も同時にかなえた。
アルプデュエズに用意されるモデルは2種類。これまで解説していたトップモデルの「01」と、コストダウンを図った弟分「21」がラインアップに並び、それぞれフレームセットが用意される。アルプデュエズ21はカーボングレードを落としただけではなく、衝撃吸収素材としてロシニョールグループがスキー分野で使うバサルト繊維を投じることでホビーライダーに適した乗り味と耐久性を実現したモデル。シートポストのクランプが別パーツとなっている他、ヘッドセットは従来のクイックセットを継続採用している。フレーム重量は970g(Sサイズ)だ。
なおディスクブレーキモデルについては、現在の市場動向を鑑みて「01」、「21」共に2019年からラインアップされる予定だという。細かい仕様について言及はなされなかったが、チェーンラインの確保のためにチェーンステーが若干伸び、安定性が高まっているという。山岳グランフォンドでの安定感を重視するユーザーにとっては良き選択肢となりそうだ。
アルプデュエズの開発に当たっては、CFD解析などを行いながら20本以上ものプロトタイプを作り、入念な実走テストを繰り返して乗り味の微調整を繰り返した。テストライダーとしてタイムに長く乗り続けたフランスの名クライマー、ダヴィ・モンクティエや、屈強なアマチュアライダーを起用したという。シミュレーションのみならず、あくまで実走ありきで性能を煮詰めたというストーリーもフレンチブランドらしい。
アルプデュエズの国内販売は2018年2月から、以下に紹介したラインアップでスタートする。ユーザーの手に届くのも、もう間も無くだ。
タイム復権を象徴する、神聖な名を得たニューモデル
これまで3年間に渡り、IZON(アイゾン)が支えてきたタイムのアルティテュード(軽量)カテゴリーにニューモデルが登場する。それがブランド史上最軽量となるヒルクライムマシン「ALPE D’HUEZ(アルプデュエズ)」だ。台湾最大の都市、台北郊外に用意された会場にはタイムの開発部長を務めるグザヴィエ・ルサブシャール氏が登場し、彼の手によって見慣れないフォルムの軽量マシンが披露された。
台湾で発表会があったからといって、遂にタイムもアジア生産に切り替えたのかと早合点してはいけない。今回発表されたアルプデュエズも含め全モデルがフランス生産であることは貫かれており、それは恐らくこれからも変わらないタイムのアイデンティティ。今回のプレゼンテーションは温暖な地域でバイクを試してほしいという思いから台湾のタイム販売代理店がオーガナイズしたもので、ヨーロッパは地中海で、北米ではカリフォルニアがその舞台となり、近隣各国のメディアや代理店スタッフが招聘された。
発表会はプロモーションムービーの上映からスタートした。スクリーンにはデルガド、ベッティーニ、ヴォクレール、シャヴァネル、そしてボーネンら、タイムと共に一時代を築き上げた名選手たちが登場し、これまでラルプ・デュエズで繰り広げられてきた数々の名勝負と重ねるようにバイクの紹介が行われていく。
それはまさに、タイムが世界のトップシーンで再び羽ばたくことを予感させる演出だった。アルプデュエズのデビューは、ロシニョールグループのバックアップを受けて変革を遂げる、タイム復権の狼煙だ。
ターゲットは軽さとタイム"らしさ"の両立
進化した成型技術が生み出した性能向上
鋭角な断面形状を持つ直線的で細身なフレームデザインや、シートチューブとの交点を下げたシートステーなど、従来のイメージから大きくフォルムを変えたアルプデュエズ。重量はIZON比較で-8.6%の840g(Sサイズ)と、600g台のマスプロモデルが存在する中で決して目立つものではないが、この部分にこそタイムがロードバイクに対して持つ独自の解釈がある。「軽くするだけならいくらだって軽くできる。でも、大切なのはタイム”らしい”乗り味を与えること。そうでなければいくら重量計の数値が小さくても意味はない」と、グザヴィエ氏は言い切る。具体的にはRTM(レジン・トランスファー・モールド)と呼ばれる独自工法を改良し、軽量化を第一に据えつつ剛性と快適性をバランスさせることが目標に据えられた。
黎明期から一貫して採用されているRTMを改めて説明すると、カーボンやベクトランといった繊維を筒状に編み込んでからコア材に被せ、加圧しながら樹脂を注入する工法のこと。
樹脂を含んだプリプレグを貼り付け、ブラダー(風船状の心材)を用いて成型する一般的な工法よりも高レベルのクオリティコントロールが可能となるメリットを持ち、アルプデュエズの開発に当たっては、コア材の使い⽅を⼯夫し、エポキシ樹脂をより⾼圧で押し固める新⼯法を確⽴。さらにブレイド(編んだカーボン)の使用数を減らし、高弾性ファイバーの使用率を増す(IZONは45%、アルプデュエズは55%)など、独自の解釈で総合的なパフォーマンスアップを叶えている。フレーム表面の化粧カーボン層を廃したことも軽量化に貢献するポイントだ。
フレーム構造としてはエアロロードのSCYLON(サイロン)やIZONと同じく、モノコックのメインフレームにシートステーとチェーンステーを接続する形を継続する。
あくまでもレーシングバイクとして生まれたアルプデュエズにとって、剛性強化は見過ごせない部分だった。先述したフレーム成型の技術進歩に加え、SCYLONと同じくボトムブラケットはBB386規格となり、2004年のVXRSを祖とする左右非対称設計も当然継承する。フレームの平均的な剛性値はSCYLONに次ぐ135N.m/°、ウェイトレシオで見ればIZONから30%増、SCYLONを超えてブランド最高値をマークするに至った。
より深いポジションに対応した新ジオメトリーを採用
長年に渡りタイムを牽引し、昨年エンジニアを退いたジャンマルク・グーニョ氏のジオメトリーに変更が加えられたことも、新生タイムを象徴する部分と言えるだろう。高出力でのヒルクライムを想定しているため、より深いポジションを目指すべく、新規格のクイックセットによりハンドル位置がIZONやSCYLONより9mm短縮。シートチューブアングルは1.5度立ち上がり、快適性にも寄与する細身のシートポストはオフセットゼロが基準だ。タイムが一貫して追求してきた快適性については、フロントフォーク先端部にチューンドマスダンパーを内蔵し、もっとも不快でダメージとなる25~50ヘルツという低周波数帯の振動を軽減するタイム独自のAKTIV(アクティブ)フォークがその責を担う。ただしグザヴィエ氏は「AKTIVは単に乗り心地を高めるだけでなく、しなりに与える悪影響をカットすることでペダリング効率を上げるための機構」と説明する。よりリジッドなクラシックフォークと二択できる点もタイムらしいポイントだ。
タイムが長年採用してきた独自のヘッドセット「クイックセット」もアップデートされている。上部のキャップ部分が薄型化され、フレームに内蔵されたことでより深いポジションに対応しつつ、44gの軽量化も同時にかなえた。
アルプデュエズに用意されるモデルは2種類。これまで解説していたトップモデルの「01」と、コストダウンを図った弟分「21」がラインアップに並び、それぞれフレームセットが用意される。アルプデュエズ21はカーボングレードを落としただけではなく、衝撃吸収素材としてロシニョールグループがスキー分野で使うバサルト繊維を投じることでホビーライダーに適した乗り味と耐久性を実現したモデル。シートポストのクランプが別パーツとなっている他、ヘッドセットは従来のクイックセットを継続採用している。フレーム重量は970g(Sサイズ)だ。
なおディスクブレーキモデルについては、現在の市場動向を鑑みて「01」、「21」共に2019年からラインアップされる予定だという。細かい仕様について言及はなされなかったが、チェーンラインの確保のためにチェーンステーが若干伸び、安定性が高まっているという。山岳グランフォンドでの安定感を重視するユーザーにとっては良き選択肢となりそうだ。
アルプデュエズの開発に当たっては、CFD解析などを行いながら20本以上ものプロトタイプを作り、入念な実走テストを繰り返して乗り味の微調整を繰り返した。テストライダーとしてタイムに長く乗り続けたフランスの名クライマー、ダヴィ・モンクティエや、屈強なアマチュアライダーを起用したという。シミュレーションのみならず、あくまで実走ありきで性能を煮詰めたというストーリーもフレンチブランドらしい。
アルプデュエズの国内販売は2018年2月から、以下に紹介したラインアップでスタートする。ユーザーの手に届くのも、もう間も無くだ。
タイム ALPE D’HUEZ 国内ラインアップ
ALPES D'HUEZ 1 LTD フレームセット
サイズ | XXS、XS、S、M、L、XL |
ALPES D'HUEZ 1 LTD AKTIV fork(限定50本) | 750,000円 |
ALPES D'HUEZ 1 フレームセット
サイズ | XXS、XS、S、M、L、XL |
ALPES D'HUEZ 1 AKTIV fork CUSTOM COLOR | 700,000円 |
ALPES D'HUEZ 1 AKTIV fork CUSTOM COLOR (ハンドル+ステム) | 810,000円 |
ALPES D'HUEZ 1 AKTIV fork | 650,000円 (カラー : White、Red、Racing、French Edition、Custom Hero) |
ALPES D'HUEZ 1 CLASSIC fork
サイズ | XXS、XS、S、M、L、XL |
ALPES D'HUEZ 1 CLASSIC fork CUSTOM COLOR | 640,000円 |
ALPES D'HUEZ 1 CLASSIC fork CUSTOM COLOR (ハンドル+ステム) | 750,000円 |
ALPES D'HUEZ 1 CLASSIC fork | 590,000円 (カラー : White、Red、Racing、French Edition、Custom Hero) |
ALPES D'HUEZ 21 フレームセット
サイズ | XXS、XS、S、M、L、XL |
ALPES D'HUEZ 21 CUSTOM COLOR | 350,000円 |
ALPES D'HUEZ 21 | 298,000円 (White、Red、Custom Hero) |
提供:ポディウム text&photo:So.Isobe