2017/07/27(木) - 12:03
ピレネーと中央山塊で展開された怒涛のマイヨジョーヌ争いを経て、プロトンは最終決戦の地アルプス山脈へ向かった。近年稀にみる接戦を繰り広げたツール・ド・フランス第3週。4賞ジャージはすべてシマノサポートチームが獲得し、全ステージでシマノのコンポーネンツを使用する選手が勝利するという完全勝利を成し遂げている。
チームメイトのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)から第5ステージでマイヨジョーヌを受け継ぎ、そのまま2週目の第11ステージまでジャージをキープしたフルーム。しかし第12ステージではゴール前の急坂で総合2位のファビオ・アル(イタリア、アスタナ)に20秒のタイムを奪われ、総合2位へと転落することになる。
これまで山岳ステージでは無類の強さを誇ったフルームが、不得意な急勾配スプリントとはいえタイムを失った事実に、総合優勝への道が曇ったのではないかという声も多く聞かれた。しかし2日後の第14ステージでチームスカイのチームプレーが炸裂。登りスプリントに向けてアルの位置取りが悪いことをヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)が無線で伝え、それを聞いたミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)がフルームを華麗にエスコート。アルのはるか前方で登坂に突入し、タイムを稼いでマイヨジョーヌを奪還したストーリーは、今大会の白眉の一つだ。
これ以降も、近年稀にみる僅差のマイヨジョーヌ争いは続いた。フルームは中央山塊を舞台にした第15ステージでチーム単位の猛攻を仕掛けたロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)を封じ込めたものの、休息日明けの第17ステージでは同集団でゴールしたリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)にボーナスタイム獲得を許す。翌第18ステージでもバルデを振り切れず、反対に4秒詰められ、23秒差で第20ステージの個人タイムトライアルを迎えた。
しかし個人TTに強みを見せるフルームは崩れなかった。急勾配登坂を含む22.5kmのコースを平均スピード47.6km/hで走り、ステージ3位に割って入る快走を披露。この走りによって総合リードを広げ、4度目3大会連続のマイヨジョーヌを確定させたのであった。
これまで最後の山岳ステージが終わる頃には大きなリードを得ていたフルームだったが、今年はライバルたちに対して守る走りを強いられた。本人も「4つの総合優勝は同じものが1つとしてなく、それぞれがスペシャル。今年は今までで最も僅差で、最も苦しんだツールになった」と語ってはいるものの、まだまだ最強のグランツールレーサーであることは変わりない事実。フルームは「アンクティルやメルクス、イノー、そしてインデュラインに並ぶ5勝に挑む土俵に立ったことを誇りに思う」と勝利数記録更新への意欲を見せており、来年も最強チームを率いてツールに戻ってくることは確実だ。
山岳賞とポイント賞はチームサンウェブのワレン・バルギル(フランス)とマイケル・マシューズ(オーストラリア)がそれぞれ獲得。宿泊先のホテルでもルームメイトだったという2人は、目標こそ違えど協力しながらお互いのジャージを守る動きを見せた今大会の名コンビであり、その友情はファンの感動を呼んだ。
バルギルはステージ2位に入った大会9日目にマイヨアポワを獲得。その後も逃げに乗り続け、第13ステージでは区間優勝を果たす活躍を見せた。第17ステージでは序盤の落車に巻き込まれ逃げ集団に乗り遅れるものの、チームメイトの力を借りつつ赤い水玉ジャージを堅守し、更にはステージ5位に入る健闘ぶりを見せている。
最後の山岳決戦となった第18ステージでは、超級山岳イゾアール峠でアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)と共にアタック。残り5km地点でコンタドールを振り切り、残り1.5kmで先頭を走っていたダルウィン・アタプマ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)をキャッチ。そのまま独走に持ち込んでフィニッシュに到達すると、天を高く指差しながら今大会2回目のステージ優勝を達成。山岳王にふさわしい走りでマイヨアポワを手中に収めたのだった。
マイヨヴェールを獲得したマシューズは、誰しもが疲労を抱え込む2週目からその粘り強さを発揮してきた。大会序盤のゴール勝負ではピュアスプリンターに歯が立たなかったものの、登坂力を活かして丘陵ステージでは積極的に逃げに乗り、中間スプリントを連取していった。
10%弱の勾配が600m続く登りフィニッシュが設定された第14ステージでは、登りで耐え続け、並み居るクラシックハンターを抑え先頭でゴール。2回目の休息日後に行われた第16ステージでも横風で縮小した集団スプリントを制し、今大会2勝目をマークした。ポイント賞で先を行くマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)に対し、29ポイント差と間近まで迫っていた。
この時点では残りのステージを考えると、純粋な平坦スプリントで無敵の強さを誇るキッテルに分があると思われたが、キッテルは翌17ステージで落車によってリタイヤに追い込まれる。ライバル離脱によるマイヨヴェール獲得であったが、それは全て積極策が功を奏した結果。ポイントランキング2位のアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)に対し160ポイントという大差をつけマイヨヴェールを確定させたのだった。
今大会でチームサンウェブは山岳賞とポイント賞を獲得し、4つのステージで勝利するという大活躍を成し遂げた。ピュアスプリンターによる勝利ではなく、過酷極まる丘陵ステージと山岳ステージで4勝を挙げたということは称賛に値するだろう。そしてその走りを支えたのは紛れもなくDURA-ACEであったということを忘れてはいけない。ワレン・バルギルは来年以降のツールで総合優勝を狙うと明言しており、再びその走りを支えることになる。
今大会最初の山岳コースとなった第5ステージ以降、新人賞ジャージを頑なに守り続けたのは24歳のサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)だ。その後に訪れた2週目の山岳ステージでも安定した成績を出し続け、マイヨブランをキープした。3週目となる第17ステージではメイン集団から脱落するものの、遅れを最小限に抑えるなど堅実な走りが目に付いた。そのままアルプスのイゾアール峠を登る第18ステージでも7位ゴールを果たし、マイヨブランを決定づけた。
選手の走りを大きく支えたDURA-ACE。R9100シリーズではプロトンでも使用され始めたディスクブレーキもラインアップしており、機械式、Di2の両方に対応したSTIレバーも用意されるなどコンポーネンツのバリエーションを拡充している。
ハンドルやステム、シートポスト、タイムトライアルで使用するバトンホイールやディスクホイールなど豊富な製品ラインアップを有するPRO。ステムに至っては選手専用供給品として1mm単位で長さを揃えるなど、選手のニーズに応える豊富なバリエーションが魅力となっている。供給品としては従来から存在していたジャイアントのOVERDRIVE2コラムに対応したステムが市販されたこともあり、そのバリエーションはより広がりを見せている。
今シーズンからはPROの製品ラインナップが一部刷新されている。VIBEステムはクランプボルトを後ろから入れ、コラム部分もエアロ効果のあるデザインに変更された。更に地面とステムをほぼ水平にすることができる-17°アングルが登場したほか、一部メーカーが採用する1-1/4コラム径にも対応する豊富なサイズを展開している。
そのVIBE ステムにマッチするように作られたVIBE エアロカーボンコンパクトもリリースされている。ハンドル上部は翼断面のエアロデザインとし、ハンドル下部は細く成形することで握りやすさを追求している。VIBEステムとセットで使用することでケーブル類を内装できるのもポイントが高い。そんな新製品群もプロトンに続々投入されている。
チームスカイはVIBEハンドルとVIBEステムシリーズを使用する。例えば、ミケル・ランダ(スペイン)は新しくエアロフォルムとなったVIBE ステムにVIBEコンパクトハンドルバーをセットするアッセンブル。クリスティアン・クネース(ドイツ)はVIBE エアロカーボンコンパクトをチョイスするなど選手の好みで各製品を使い分けた。
総合優勝を成し遂げたクリストファー・フルームは去年から使用していたSTEALTH EVO コンパクトリミテッドをTTを除く全ステージで投入。UDカーボンを使用し、軽量かつ高剛性に仕上がっているため、ハンドリング性能の向上などが期待できるアイテムとして、フルームの総合優勝に一役買っているのだ。ステム一体型ハンドルながら豊富なサイズを用意しているため、フィッティングが容易であることも特徴の一つ。
エフデジはタイムトライアルバイクにミサイルEVO TTバーを採用している。昨今のTTバイクはハンドルなども含めたトータル設計で開発される場合が多いが、PRO製品を使用することでポジション調整幅がより大きく広がる。
ノーマルバイクはPROのハンドル、ステム、シートポストで固められており、今ツールではスプリンターのアルノー・デマール(フランス)を抱えていたため、VIBE ステムとVIBE エアロカーボンコンパクトをチョイスしたエアロアッセンブルをしたバイクが多く見受けられた。
フルームが使用するステム一体型ハンドル。UDカーボンを使用し、軽量かつ優れた剛性を発揮する。ハンドル幅が400と420mm、ステム長が90~120mmと豊富なサイズがラインアップされている。
素材にT800カーボンとINNEGRA社の提供する特殊繊維をミックスすることで、軽量化を図ると共に耐衝撃性も向上させたPROの新しいVIBEカーボンハンドルシリーズ。シンプルなアナトミックとコンパクト形状の他にエアロデザインのコンパクトハンドルも新たに用意された。ケーブル類は全て内装出来るインテグラル仕様となっている。
S-PHYREの製品開発において最重要視されたのが、チームからの声を製品に活かすこと。その中でも選手からの声として一番大きかったのがエアロに対する要望であった。そのためにウェアでは新素材の採用すると共にカッティングやパネリングを徹底的に研究。その上で風洞実験を繰り返す事によってエアロ性能を高めていった。天候や選手の好みによって半袖ジャージだけでも4つの種類を用意しているという最速のレーシングジャージは、ロットNLユンボの手により今年ツールデビューを果たしたのだ。
ロットNLユンボは第17ステージで、エアロタイプのS-PHYREジャージを着たプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)が区間優勝を成し遂げた。超級山岳ガリビエ峠の麓からアタックしたログリッチェはそのまま単独で山頂を通過し、ゴールまでたどり着きステージ優勝している。高速で下るダウンヒルでは空気抵抗を制するS-PHYREジャージの効果もあったことだろう。
また栄光の最終ステージ、シャンゼリゼゴールもロットNLユンボのディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)が誰よりも速くフィニッシュラインへと飛び込んだ。スプリンター達にとっての憧れとも言えるシャンゼリゼを制したS-PHYREは名実共に先進のレーシングアパレルと言えるだろう。
そして山岳ステージを中心に、メッシュタイプのジャージも多く使用されたようだ。3週間という長丁場のステージレースでは、レース中にどれだけ疲労とストレスを軽減できるかがパリまでたどり着くための鍵となる。
ジャージに先駆け昨年のツールでも使用されたシューズ「RC9」は、今年もロットNLユンボに限らず多くの選手が使用している。シマノ初のBOAダイヤル式ワイヤーフィッテングシステムと、前作のR321から採用されたサラウンドラップアッパーによりシューズと足の一体感を高めたRC9はプロ選手からも好評を得ているようだ。
例えば、先述したバルギルとマシューズの2人は白いRC9を履いている。また、残念ながら途中リタイアに終わってしまったものの、第12ステージで総合勢に対し果敢にアタックを決めたジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)は特別デザインのRC9を履きツールを走っている。
4賞ジャージを独占し、なおかつ全ステージでDURA-ACE使用選手が勝利するという快挙を成し遂げた。チームの活躍により、製品のアドバンテージを証明する結果となったのは間違いないだろう。残りのシーズンと、来年のツールでの活躍にも期待がかかる。
クリストファー・フルームが4勝目、3年連続のマイヨジョーヌ獲得
ディフェンディングチャンピオンとしてツール・ド・フランス2017に挑んだクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が3年連続、4勝目となる栄光の総合優勝を掴んだ。だが、ディフェンディングチャンピオンとして臨んだフルームにとって、2017年大会は今まで以上に険しい道程を経た。チームメイトのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)から第5ステージでマイヨジョーヌを受け継ぎ、そのまま2週目の第11ステージまでジャージをキープしたフルーム。しかし第12ステージではゴール前の急坂で総合2位のファビオ・アル(イタリア、アスタナ)に20秒のタイムを奪われ、総合2位へと転落することになる。
これまで山岳ステージでは無類の強さを誇ったフルームが、不得意な急勾配スプリントとはいえタイムを失った事実に、総合優勝への道が曇ったのではないかという声も多く聞かれた。しかし2日後の第14ステージでチームスカイのチームプレーが炸裂。登りスプリントに向けてアルの位置取りが悪いことをヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)が無線で伝え、それを聞いたミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)がフルームを華麗にエスコート。アルのはるか前方で登坂に突入し、タイムを稼いでマイヨジョーヌを奪還したストーリーは、今大会の白眉の一つだ。
これ以降も、近年稀にみる僅差のマイヨジョーヌ争いは続いた。フルームは中央山塊を舞台にした第15ステージでチーム単位の猛攻を仕掛けたロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)を封じ込めたものの、休息日明けの第17ステージでは同集団でゴールしたリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)にボーナスタイム獲得を許す。翌第18ステージでもバルデを振り切れず、反対に4秒詰められ、23秒差で第20ステージの個人タイムトライアルを迎えた。
しかし個人TTに強みを見せるフルームは崩れなかった。急勾配登坂を含む22.5kmのコースを平均スピード47.6km/hで走り、ステージ3位に割って入る快走を披露。この走りによって総合リードを広げ、4度目3大会連続のマイヨジョーヌを確定させたのであった。
これまで最後の山岳ステージが終わる頃には大きなリードを得ていたフルームだったが、今年はライバルたちに対して守る走りを強いられた。本人も「4つの総合優勝は同じものが1つとしてなく、それぞれがスペシャル。今年は今までで最も僅差で、最も苦しんだツールになった」と語ってはいるものの、まだまだ最強のグランツールレーサーであることは変わりない事実。フルームは「アンクティルやメルクス、イノー、そしてインデュラインに並ぶ5勝に挑む土俵に立ったことを誇りに思う」と勝利数記録更新への意欲を見せており、来年も最強チームを率いてツールに戻ってくることは確実だ。
4賞ジャージを独占したSHIMANO
怒涛の3週目を終えパリに凱旋を果たしたツール・ド・フランス2017。今年はシマノコンポーネンツを使用する選手が4賞ジャージを独占するという快挙を達成し、なおかつ全ステージでシマノ DURA-ACEを使用する選手が勝利している。山岳賞とポイント賞はチームサンウェブのワレン・バルギル(フランス)とマイケル・マシューズ(オーストラリア)がそれぞれ獲得。宿泊先のホテルでもルームメイトだったという2人は、目標こそ違えど協力しながらお互いのジャージを守る動きを見せた今大会の名コンビであり、その友情はファンの感動を呼んだ。
バルギルはステージ2位に入った大会9日目にマイヨアポワを獲得。その後も逃げに乗り続け、第13ステージでは区間優勝を果たす活躍を見せた。第17ステージでは序盤の落車に巻き込まれ逃げ集団に乗り遅れるものの、チームメイトの力を借りつつ赤い水玉ジャージを堅守し、更にはステージ5位に入る健闘ぶりを見せている。
最後の山岳決戦となった第18ステージでは、超級山岳イゾアール峠でアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)と共にアタック。残り5km地点でコンタドールを振り切り、残り1.5kmで先頭を走っていたダルウィン・アタプマ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)をキャッチ。そのまま独走に持ち込んでフィニッシュに到達すると、天を高く指差しながら今大会2回目のステージ優勝を達成。山岳王にふさわしい走りでマイヨアポワを手中に収めたのだった。
マイヨヴェールを獲得したマシューズは、誰しもが疲労を抱え込む2週目からその粘り強さを発揮してきた。大会序盤のゴール勝負ではピュアスプリンターに歯が立たなかったものの、登坂力を活かして丘陵ステージでは積極的に逃げに乗り、中間スプリントを連取していった。
10%弱の勾配が600m続く登りフィニッシュが設定された第14ステージでは、登りで耐え続け、並み居るクラシックハンターを抑え先頭でゴール。2回目の休息日後に行われた第16ステージでも横風で縮小した集団スプリントを制し、今大会2勝目をマークした。ポイント賞で先を行くマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)に対し、29ポイント差と間近まで迫っていた。
この時点では残りのステージを考えると、純粋な平坦スプリントで無敵の強さを誇るキッテルに分があると思われたが、キッテルは翌17ステージで落車によってリタイヤに追い込まれる。ライバル離脱によるマイヨヴェール獲得であったが、それは全て積極策が功を奏した結果。ポイントランキング2位のアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)に対し160ポイントという大差をつけマイヨヴェールを確定させたのだった。
今大会でチームサンウェブは山岳賞とポイント賞を獲得し、4つのステージで勝利するという大活躍を成し遂げた。ピュアスプリンターによる勝利ではなく、過酷極まる丘陵ステージと山岳ステージで4勝を挙げたということは称賛に値するだろう。そしてその走りを支えたのは紛れもなくDURA-ACEであったということを忘れてはいけない。ワレン・バルギルは来年以降のツールで総合優勝を狙うと明言しており、再びその走りを支えることになる。
今大会最初の山岳コースとなった第5ステージ以降、新人賞ジャージを頑なに守り続けたのは24歳のサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)だ。その後に訪れた2週目の山岳ステージでも安定した成績を出し続け、マイヨブランをキープした。3週目となる第17ステージではメイン集団から脱落するものの、遅れを最小限に抑えるなど堅実な走りが目に付いた。そのままアルプスのイゾアール峠を登る第18ステージでも7位ゴールを果たし、マイヨブランを決定づけた。
選手の走りを大きく支えたDURA-ACE。R9100シリーズではプロトンでも使用され始めたディスクブレーキもラインアップしており、機械式、Di2の両方に対応したSTIレバーも用意されるなどコンポーネンツのバリエーションを拡充している。
4回目の総合優勝を支えたPRO製品
今回のツールでは8チームあるシマノサポートチームの内、チームスカイ、ボーラ・ハンスグローエ、エフデジという3チームがPRO製品を使用した。ハンドルやステム、シートポスト、タイムトライアルで使用するバトンホイールやディスクホイールなど豊富な製品ラインアップを有するPRO。ステムに至っては選手専用供給品として1mm単位で長さを揃えるなど、選手のニーズに応える豊富なバリエーションが魅力となっている。供給品としては従来から存在していたジャイアントのOVERDRIVE2コラムに対応したステムが市販されたこともあり、そのバリエーションはより広がりを見せている。
今シーズンからはPROの製品ラインナップが一部刷新されている。VIBEステムはクランプボルトを後ろから入れ、コラム部分もエアロ効果のあるデザインに変更された。更に地面とステムをほぼ水平にすることができる-17°アングルが登場したほか、一部メーカーが採用する1-1/4コラム径にも対応する豊富なサイズを展開している。
そのVIBE ステムにマッチするように作られたVIBE エアロカーボンコンパクトもリリースされている。ハンドル上部は翼断面のエアロデザインとし、ハンドル下部は細く成形することで握りやすさを追求している。VIBEステムとセットで使用することでケーブル類を内装できるのもポイントが高い。そんな新製品群もプロトンに続々投入されている。
チームスカイはVIBEハンドルとVIBEステムシリーズを使用する。例えば、ミケル・ランダ(スペイン)は新しくエアロフォルムとなったVIBE ステムにVIBEコンパクトハンドルバーをセットするアッセンブル。クリスティアン・クネース(ドイツ)はVIBE エアロカーボンコンパクトをチョイスするなど選手の好みで各製品を使い分けた。
総合優勝を成し遂げたクリストファー・フルームは去年から使用していたSTEALTH EVO コンパクトリミテッドをTTを除く全ステージで投入。UDカーボンを使用し、軽量かつ高剛性に仕上がっているため、ハンドリング性能の向上などが期待できるアイテムとして、フルームの総合優勝に一役買っているのだ。ステム一体型ハンドルながら豊富なサイズを用意しているため、フィッティングが容易であることも特徴の一つ。
エフデジはタイムトライアルバイクにミサイルEVO TTバーを採用している。昨今のTTバイクはハンドルなども含めたトータル設計で開発される場合が多いが、PRO製品を使用することでポジション調整幅がより大きく広がる。
ノーマルバイクはPROのハンドル、ステム、シートポストで固められており、今ツールではスプリンターのアルノー・デマール(フランス)を抱えていたため、VIBE ステムとVIBE エアロカーボンコンパクトをチョイスしたエアロアッセンブルをしたバイクが多く見受けられた。
ツールを走るPRO ハンドル&ステム ラインナップ
STEALTH EVO コンパクトリミテッド
フルームが使用するステム一体型ハンドル。UDカーボンを使用し、軽量かつ優れた剛性を発揮する。ハンドル幅が400と420mm、ステム長が90~120mmと豊富なサイズがラインアップされている。
仕様 | UDカーボン、コラムサイズ1-1/8、コンパクト |
アングル | -8° |
ステム長さ | 90~120mm |
ハンドル幅 | 400mm、420mm |
重量 | 410g~ |
価格 | 65,000円(税抜) |
PRO VIBEカーボンハンドルシリーズ
素材にT800カーボンとINNEGRA社の提供する特殊繊維をミックスすることで、軽量化を図ると共に耐衝撃性も向上させたPROの新しいVIBEカーボンハンドルシリーズ。シンプルなアナトミックとコンパクト形状の他にエアロデザインのコンパクトハンドルも新たに用意された。ケーブル類は全て内装出来るインテグラル仕様となっている。
素材 | カーボンT800 | |
クランプ径 | 31.8mm | |
ラインアップ | エアロコンパクト | 400mm、420mm |
アナトミック | 400mm、420mm | |
コンパクト | 400mm、420mm | |
重量 | 245g~(エアロコンパクト)230g~(アナトミック、コンパクト) | |
税抜価格 | 42,000円(エアロコンパクト)、40,000円(アナトミック、コンパクト) |
PRO VIBE ステム
新しくなったVIBEステムは風洞実験を行い空気抵抗の低減を図ったエアロデザインを採用。ハンドルクランプボルトは後ろから入れ、トップキャップはエアロデザインに合わせた専用品が付属する。素材 | Al-7075 |
アングル | -10°、-17° |
コラムサイズ | 1-1/8、1-1/4 |
長さ | 80~130mm |
クランプ径 | 31.8mm |
重量 | 135g(100mm) |
価格 | 13,000円(税抜) |
PRO VIBE スプリントステム
スプリンターの力を受け止めるためにボリュームアップが図られた高剛性ステム。数々のビックレースで勝利を量産し、プロからの信頼も厚い。素材 | UDカーボン |
アングル | -10° |
長さ | 105mm |
クランプ径 | 31.8mm |
重量 | 215g |
価格 | 32,000円(税抜) |
ロットNLユンボと共に開発したS-PHYRE ツール初投入
今年のツール・ド・フランスにはシマノがロットNLユンボと共同で開発したレーシングアパレルS-PHYREも初投入され、ジャージやスキンスーツをロットNLユンボが使用した。また昨年のツールからシマノサポートチームの各選手に使用されていたS-PHYREシューズ RC9も本格投入。多くのステージ優勝と山岳賞、ポイント賞の獲得に貢献している。S-PHYREの製品開発において最重要視されたのが、チームからの声を製品に活かすこと。その中でも選手からの声として一番大きかったのがエアロに対する要望であった。そのためにウェアでは新素材の採用すると共にカッティングやパネリングを徹底的に研究。その上で風洞実験を繰り返す事によってエアロ性能を高めていった。天候や選手の好みによって半袖ジャージだけでも4つの種類を用意しているという最速のレーシングジャージは、ロットNLユンボの手により今年ツールデビューを果たしたのだ。
ロットNLユンボは第17ステージで、エアロタイプのS-PHYREジャージを着たプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)が区間優勝を成し遂げた。超級山岳ガリビエ峠の麓からアタックしたログリッチェはそのまま単独で山頂を通過し、ゴールまでたどり着きステージ優勝している。高速で下るダウンヒルでは空気抵抗を制するS-PHYREジャージの効果もあったことだろう。
また栄光の最終ステージ、シャンゼリゼゴールもロットNLユンボのディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)が誰よりも速くフィニッシュラインへと飛び込んだ。スプリンター達にとっての憧れとも言えるシャンゼリゼを制したS-PHYREは名実共に先進のレーシングアパレルと言えるだろう。
そして山岳ステージを中心に、メッシュタイプのジャージも多く使用されたようだ。3週間という長丁場のステージレースでは、レース中にどれだけ疲労とストレスを軽減できるかがパリまでたどり着くための鍵となる。
ジャージに先駆け昨年のツールでも使用されたシューズ「RC9」は、今年もロットNLユンボに限らず多くの選手が使用している。シマノ初のBOAダイヤル式ワイヤーフィッテングシステムと、前作のR321から採用されたサラウンドラップアッパーによりシューズと足の一体感を高めたRC9はプロ選手からも好評を得ているようだ。
例えば、先述したバルギルとマシューズの2人は白いRC9を履いている。また、残念ながら途中リタイアに終わってしまったものの、第12ステージで総合勢に対し果敢にアタックを決めたジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)は特別デザインのRC9を履きツールを走っている。
シマノのプロスペックのアパレルシリーズ S-PHYRE ラインアップ
サイズ | 36~48(ワイドサイズあり)、39~43はハーフサイズあり、ブラックカラーは40~43のみ |
カラー | ブラック(限定)、イエロー、ブルー、ホワイト |
価格 | 45,000円(税抜) |
S-PHYRE レーシングスキンスーツ
素材 | ポリエステル/ポリウレタン(本体)、 ポリアミド/ポリウレタン/ポリエステル(メッシュ部) |
サイズ | XS、S、M、L、XL |
カラー | ブラック、イエロー |
価格 | 44,000円(税抜) |
S-PHYRE ショートスリーブジャージ
素材 | ポリエステル/ポリウレタン |
サイズ | XS、S、M、L、XL |
カラー | ブラック、イエロー |
価格 | 22,000円(税抜) |
S-PHYRE ビブショーツ
素材 | ポリアミド/ポリウレタン/ポリエステル(本体) ポリエステル/ポリウレタン(メッシュ部) |
サイズ | XS、S、M、L、XL |
カラー | ブラック、イエロー |
価格 | 26,000円(税抜) |
世界最高峰の舞台 ツール・ド・フランスを走る選手を支えたシマノとPRO
4賞ジャージを独占し、なおかつ全ステージでDURA-ACE使用選手が勝利するという快挙を成し遂げた。チームの活躍により、製品のアドバンテージを証明する結果となったのは間違いないだろう。残りのシーズンと、来年のツールでの活躍にも期待がかかる。
提供:シマノ 企画/制作:シクロワイアード