2016/05/06(金) - 10:09
2012年に発表された初代ドマーネのIsoSpeedテクノロジーは、パワーの伝達を確実に行いつつ、従来のロードバイクより2倍の快適性を手に入れ、ロードバイク界に改革をもたらしたと評価されてきた。しかしトレックの開発チームは決してそれに満足することなく、さらなる改善を進めた。
初代ドマーネは好評を博しつつも、フロントとのアンバランスを懸念する評価もあった。また、レース現場でのプロライダーからのフィードバックも充分に蓄積された。2014年1月に新たにプロジェクトを立ち上げてから、じつに18ヶ月もの期間を第2世代ドマーネの研究開発期間に充てた。
新たな出発点では、「IsoSpeedテクノロジーの狙いをフルに引き出すためには、さまざまなライダーの体格や体重、乗り方の違いにも考慮すべきであった」という考えに立ち還った。そこで開発陣のなかでは次のような問題提起が行われた。
「さまざまな体格や乗り方を考慮し、快適性を自由に調整できるシステムやコンポーネントとしての解決策を考案すべきだ。フロントの快適性を増し、同時にリアの快適性を自由に調整できるというシステムが実現できれば、リアが快適でもフロントは不快というネガ意見を覆すことができる」。
解決策となるべきものは、ラボでの研究やテスト走行からのデータを用いて開発されるべきである。そしてそれはドマーネ第1世代の高性能の前に妥協するものであってはならない。初代を越えるドマーネ第2世代を生み出すために、あらゆる環境や路面でテストが繰り返された。部分的に、かつバイク全体としても機能を発揮できるように。
トレック社屋内にはパリ〜ルーベの難所「アランベールの石畳」を模した100mの石畳が造られた。そこを実験場に、7ヶ月間で33のアイデアが生み出され、生産プロジェクトに入る前にはそのコンセプトを実証するために3本のフレームと2本のフォーク、2本のハンドルバーのプロトタイプが製作され、プロライダーの手に渡った。選手の評価、テスト、ラボでのデータ採取やシミュレーションを重ね、その結果新たな3つのテクノロジーの完成をみたのだ。
ボトルケージの位置にあるボルトジョイントを介して接続されたシートマストチューブはフレームから独立しており、しなりを生み出す。ライダーはスライダーを上下することで好みのしなり量を調整することができるのだ。シートチューブ部はフレームと一体となったため、構造体としてのフレーム強度を高く保つことができ、かつしなり量は自在に調整できる構造となった。
スライダーの調節位置を一番下にするとしなり量は最大となり、その振動吸収率は第1世代と比べ14%高まっている。しかもスライダーでしなり量を少なくし、剛性を高めることもできるのだ。台上試験でのデータ、そして実走による主観テストでも好評で、その有効性が実証された。
しかしここにも改善の余地があるとして、第2世代Domaneの潜在能力をさらに引き出すべく改革が行われた。
フロント部への開発に対する課題はリアとは大きく異り、「安定感と効率性の向上と、ハンドリング性能を損なわずに振動を軽減すること」だ。この両立が極めて難しい課題を、開発陣はフロントにもIsoSpeedを導入することで乗り越えた。
フォークのステアリングコラムがヘッドチューブから独立して、前後に回転自由度を持つよう分離させる構造からなるフロントIsoSpeedは、バイク前面の縦方向の振動吸収性を第1世代から10%向上させることに成功した。縦方向には柔軟性をもつが、横方向の剛性は損なっておらず、ハンドルがブレたり共振を起こすことは無い。この新機構の開発に成功したことにより、第2世代ドマーネの前後のヴァーティカル・コンプライアンスのバランスはより高次元のものとなった。
OCLVカーボンに特殊なラバーコンパウンドの一種を重ねて構成するという新構造により成型されたのが「IsoCoreハンドルバー」だ。エラストマーとなるラバーコンパウンドはハンドルの特定部位のカーボンレイアップ内に含まれており、レイヤーダンピングシステムを形成する。その結果、高周波数帯の細振動の吸収性能を大きく改善し、従来のカーボン製のハンドルバーと比べ20%の振動の軽減に成功した。
試しに他のカーボンハンドルとIsoCoreハンドルバーを硬いものに打ちつけてみれば、衝撃と反響音の違いに驚く。その振動減衰力の高さは明らかだ。このボントレガーIsoCoreハンドルバーは単体でもリリースされる予定だ。
「プロエンデュランスジオメトリー」は、長めのホイールベース、低めのボト ムブラケット高、短めのヘッドチューブ長を一つにまとめ、スピードや反応性を損なわず、安定性とハンドリング性能を最大限に高めた。アグレッシブな前傾姿勢を好み、荒れた路面でも高いハンドリング性を求めるライダーのニーズに応えるよう完璧な調整がなされている。
ディスクブレーキ仕様のIsoSpeedフロントフォークは12mmのスルーアクスルを採用し、高剛性を確保。正確なステアリングで確かな操作性を実現。クイックレリーズ機構の採用でホイールの脱着も簡単だ。
次項ではフランドル地方、ロンド・ファン・フラーンデレンのパヴェを実走してのインプレッションと開発者のインタビューをお伝えする予定だ。
初代ドマーネは好評を博しつつも、フロントとのアンバランスを懸念する評価もあった。また、レース現場でのプロライダーからのフィードバックも充分に蓄積された。2014年1月に新たにプロジェクトを立ち上げてから、じつに18ヶ月もの期間を第2世代ドマーネの研究開発期間に充てた。
新たな出発点では、「IsoSpeedテクノロジーの狙いをフルに引き出すためには、さまざまなライダーの体格や体重、乗り方の違いにも考慮すべきであった」という考えに立ち還った。そこで開発陣のなかでは次のような問題提起が行われた。
「さまざまな体格や乗り方を考慮し、快適性を自由に調整できるシステムやコンポーネントとしての解決策を考案すべきだ。フロントの快適性を増し、同時にリアの快適性を自由に調整できるというシステムが実現できれば、リアが快適でもフロントは不快というネガ意見を覆すことができる」。
解決策となるべきものは、ラボでの研究やテスト走行からのデータを用いて開発されるべきである。そしてそれはドマーネ第1世代の高性能の前に妥協するものであってはならない。初代を越えるドマーネ第2世代を生み出すために、あらゆる環境や路面でテストが繰り返された。部分的に、かつバイク全体としても機能を発揮できるように。
トレック社屋内にはパリ〜ルーベの難所「アランベールの石畳」を模した100mの石畳が造られた。そこを実験場に、7ヶ月間で33のアイデアが生み出され、生産プロジェクトに入る前にはそのコンセプトを実証するために3本のフレームと2本のフォーク、2本のハンドルバーのプロトタイプが製作され、プロライダーの手に渡った。選手の評価、テスト、ラボでのデータ採取やシミュレーションを重ね、その結果新たな3つのテクノロジーの完成をみたのだ。
2分割構造のシートチューブとスライダーにより調節が可能なリアIsoSpeed
研究開発の結果、導き出された答えのひとつがシートチューブのしなりを調節できるスライダー調整機構付きの、2分割のシートチューブ構造から構成されるリアIsoSpeedテクノロジーだ。それは、対をなすシートチューブ/シートマストチューブから構成され、一方が他方に組み込まれた形で機能する構造だ。ボトルケージの位置にあるボルトジョイントを介して接続されたシートマストチューブはフレームから独立しており、しなりを生み出す。ライダーはスライダーを上下することで好みのしなり量を調整することができるのだ。シートチューブ部はフレームと一体となったため、構造体としてのフレーム強度を高く保つことができ、かつしなり量は自在に調整できる構造となった。
スライダーの調節位置を一番下にするとしなり量は最大となり、その振動吸収率は第1世代と比べ14%高まっている。しかもスライダーでしなり量を少なくし、剛性を高めることもできるのだ。台上試験でのデータ、そして実走による主観テストでも好評で、その有効性が実証された。
フロントIsoSpeedテクノロジー
第1世代ドマーネにおけるフロント周りの振動吸収性は、後方にオフセットしたIsoSpeedフロントフォークと、振動吸収ジェル内蔵のフルカーボンハンドル「IsoZone Bar」が担っていた。当時の同レベルフォーク比で約20%、ハンドルで20%の振動吸収率向上を図ったこれらのコンビネーションにより、ヴァーティカル・コンプライアンス(=Vertical Compliance:縦の柔軟性)を向上させ、剛性を損なわずに高い振動吸収と路面追従性を両立していた。しかしここにも改善の余地があるとして、第2世代Domaneの潜在能力をさらに引き出すべく改革が行われた。
フロント部への開発に対する課題はリアとは大きく異り、「安定感と効率性の向上と、ハンドリング性能を損なわずに振動を軽減すること」だ。この両立が極めて難しい課題を、開発陣はフロントにもIsoSpeedを導入することで乗り越えた。
フォークのステアリングコラムがヘッドチューブから独立して、前後に回転自由度を持つよう分離させる構造からなるフロントIsoSpeedは、バイク前面の縦方向の振動吸収性を第1世代から10%向上させることに成功した。縦方向には柔軟性をもつが、横方向の剛性は損なっておらず、ハンドルがブレたり共振を起こすことは無い。この新機構の開発に成功したことにより、第2世代ドマーネの前後のヴァーティカル・コンプライアンスのバランスはより高次元のものとなった。
IsoCoreハンドルバー
ボントレガーの開発チームは、振動吸収性に優れる新しいハンドルバーがあればDomaneの目指すコンセプトをより高めることができると考えていた。そこで全く新しい構造を持つIsoCoreハンドルバーが開発された。OCLVカーボンに特殊なラバーコンパウンドの一種を重ねて構成するという新構造により成型されたのが「IsoCoreハンドルバー」だ。エラストマーとなるラバーコンパウンドはハンドルの特定部位のカーボンレイアップ内に含まれており、レイヤーダンピングシステムを形成する。その結果、高周波数帯の細振動の吸収性能を大きく改善し、従来のカーボン製のハンドルバーと比べ20%の振動の軽減に成功した。
試しに他のカーボンハンドルとIsoCoreハンドルバーを硬いものに打ちつけてみれば、衝撃と反響音の違いに驚く。その振動減衰力の高さは明らかだ。このボントレガーIsoCoreハンドルバーは単体でもリリースされる予定だ。
Domane SLRに搭載されたその他のスペック
コントロールセンター
シートチューブが一体化されたドマーネSLRにはシート上部に開口部がないため、ダウンチューブのボトルケージ取付台座には電動ドライブトレイン用バッテリーポートを収納することができる内蔵コントロールセンターが新設された。ダウンチューブ内に収められたバッテリーにアクセスしやすく、空力性能にも優れる。ボトルケージを取り付ければ外観上も目立たないスマートなシステムだ。パワートランスファーコンストラクション
E2ヘッドチューブとBB90ボトムブラケットを、幅広で超高剛性のダウンチューブがつなぐ「パワートランスファーコンストラクション」は引き継がれているが、新ドマーネSLRではシートチューブがフレームに一体になったことで、その剛性バランスは新設計となっている。かつ、コンセプトが目指す「ペダリングパワーを最大限に引き出す力効率の良さ」は、より向上しているのだ。エンデュランスジオメトリー
長距離ライドを目指す多くのライダーに最適な「エンデュランスジオメトリー」は、長めのヘッドチューブによる優れた操作性、ハンドリング性 、反応性 、高い安定性をもち、レースにも対応している。「プロエンデュランスジオメトリー」は、長めのホイールベース、低めのボト ムブラケット高、短めのヘッドチューブ長を一つにまとめ、スピードや反応性を損なわず、安定性とハンドリング性能を最大限に高めた。アグレッシブな前傾姿勢を好み、荒れた路面でも高いハンドリング性を求めるライダーのニーズに応えるよう完璧な調整がなされている。
IsoSpeedフルカーボンフォーク
軽量なフルカーボンフォークは、走りに合わせて調整したスウィープと独特のドロップアウト位置を持ち、従来のロードフォークより7%高い振動吸収性を誇る。また、ユニークなIsoSpeedフロントフォークの後方にオフセットしたスウィープは、フレームサイズによりに2種のオフセット量のものが組み合わされる。ディスクブレーキ仕様のIsoSpeedフロントフォークは12mmのスルーアクスルを採用し、高剛性を確保。正確なステアリングで確かな操作性を実現。クイックレリーズ機構の採用でホイールの脱着も簡単だ。
次項ではフランドル地方、ロンド・ファン・フラーンデレンのパヴェを実走してのインプレッションと開発者のインタビューをお伝えする予定だ。
提供:トレック・ジャパン photo&report:綾野 真(Makoto.AYANO)