2016/04/27(水) - 10:19
辻浦圭一氏が「純レース用CXアルミバイク」と形容する OnebyESU JFF#803。カンティブレーキ仕様のごくオーソドックスなフレームだが、そこには並々ならぬコダワリが凝縮されていた。そして、誰もが手軽にシクロクロスレースを楽しんで欲しいという願いにも似た思いが詰まっている。「最初から2台揃えて欲しい」という低コストも魅力だ。
辻浦:軽さです。#801もレースで使えるんですが、クロモリのためやや重量があるのは否めない。軽さならカーボンなのですが、2台持つことを考えると、その高価さは現実的ではない。そこでアルミとなったのですが、アルミならばと軽さを求めました。こちらから出した工場への要求はフレーム重量1400gを切ること。それより重くなるなら製品化自体やめようといういうつもりで開発を進めました。そして、上がってきたものは軽い上に乗り心地も良かった。実測重量でフレームが約1240g、フォークは475gほどです。
上司:#803は台湾から進出した中国の工場で造っています。フレーム生産は突き詰めていくとアジアでも数社のトップレベルの工場に行き着きます。名だたるブランドのバイクを生産している有名工場です。当社との過去からのつながりで、たとえ大量生産でなくてもフレームの新規設計から請け負ってくれています。そこが良い仕事をしてくれました。
チューブの軽量化のためのバテッド(肉抜き)加工や溶接技術など、最先端の技術を投入してくれた結果でしょう。目標重量を軽々とクリアしただけでなく、快適性まで非常に優れたフレームに仕上げてくれた。カーボンフォークも専用設計のものを組み合わせています。
辻浦:アルミだとどうしても硬くなるだろうと思っていたのですが、非常に快適性の高いものになっているのは正直我々も驚きました。予想外にしなやかで、とくにバック周りが良くしなってくれます。池本真也選手が欧州のレースで乗って「とても良かった」と言ってくれました。腰砕けの柔らかさではなく、快適なしなりがあると。
上司:そして目指したのはコストパフォーマンスの高さです。フレーム&フォークと、ホイール・ペダル無し完成車という2つの販売形態で、買うユーザーにとっての低コストを再優先しました。手持ちのホイールやパーツを流用することで、どんな人でも無理なく2台持てるように、と。
「無理なく手の届く、2台持てる価格」がコンセプトなんです。ある意味ホイール無し完成車とは梱包面の都合から言えば低価格のホイールをセットしたほうが都合もよく販売しやすいのですが、無駄なコストは徹底的に省きました。
価格はかなり抑えましたが、性能は乗っていただければ必ず納得のはずです。確信を持っていますよ。
CW:2台持てるように、というのが面白いですね。それはなぜですか?
辻浦:シクロクロスは2台用意することがほとんど最低条件のようなレースだからです。ピットに用意する代車、コンディション別に違ったタイヤやホイールをセットして乗り替える。あるいはレースで壊れても次はもう一台で走れる、など。本来そういうものだからです。
上司:そういう意味でもホイールを何ペアも用意しなければいけないディスクは現実的でないでしょう。ロードのお古など、うまく流用しながらシクロクロスレースを楽しんで欲しいですね。
辻浦:で、#803でレースを楽しんだ人が、「乗ってみると#801のほうが楽しいね」という人は多いんです。「味がある」と。
この2台を比べたら、軽さでとっつきやすさはあるんですが、#801は乗ってみると操る楽しみがある。レースじゃないなら#801という人は、とても多いんです。面白いですね。
インプレッション by 辻 善光(TeamZENKO)
#803はレースバイクとして使っています。今までアルミ=振動吸収性が悪いというのが定説でしたし、僕は腰を悪くしているのでアルミの硬さは苦手。しかし最初に#803に乗って感じたのはバックのしなやかさでした。手で握ると大きくたわむことが分かるほどです(と言いながら手でステーを握ってしならせる)。
このリアのしなやかさのおかげで通常より空気圧を0.2気圧高めて乗ることが出来ます。フレームのしなやかさが空気圧セッティングや快適性に直結するシクロクロスにとって、いちばん大事な性能だと思います。それが両立しているので、すぐに2台揃えました。
リアのトラクションの良さは特筆モノだと思います。誰も行けないキャンバーを乗っていける。滑った先でグリップしてくれる性能が、技術不足をカバーしてくれます。結果、ペダルを漕ぐことに集中できるというのがこのフレームの特徴です。テクニックがない人ほどこの良さを実感してくれるでしょうね。
フォークもリアのしなやかさにあったモデルをセットしています。カラーオーダーもできるので、目立つように、そしてグリーンのチームウェアの反対色のオレンジにしたので、レースでもかなり目立っているようです。
サドルは100MOVEという、自分がアイデア出しをして製品化してもらったものを使用しています。僕は筋肉が発達していて腿が太めなんですが、腰を引くときにサドルに引っかかるんです。そのため腰を後ろに引けなかった。それを解消してくれるサドルです。おかげで後輪荷重が可能になり、砂場でも乗っていけるようになった。ハンドルもシクロクロスに特化した、握り位置に指のスペースを広くとったものものを僕のアイデアで造ってもらったものです。振動をいなしてくれるしなりもあります。身体にフィットしたフレームとパーツで組み上げた#803は、レースで差が出ますね。
インプレッション by 池本真也(FRIETEN)
まず軽い! 持った時、担いだ時が楽なんです。バイクを振ったときにバイクが軽いと非常に取り回しがいいですね。乗り心地もアルミと思えないほど良くて快適です。しなやかさのなかに芯があるので、たわみとは違いますね。ヘッド周りの剛性が十分あるので、もがいた時も安定しているし、急坂下りのブレも無い。
リアのしなやかさから、タイヤの空気圧に頼らなくてもいいような印象です。カーボンバイクに比べても少し空気圧をあげられる感じ。タイヤとのクリアランスも大きく、チェーンステイのブリッジもないので、泥にも強い。
カンティブレーキを採用したことも構造的な軽さを生んでいます。何より軽さは助かりますね。このクラスの軽さをカーボンフレームで、となると高価過ぎるトップモデルになってしまうんです。#803の価格なら2台揃えてもカーボン車1台分でまかなえる。
自分のレースバイクで完成車で7.8kg。アルテグラで組み、ペダル、アルミホイール付きで特別な軽量パーツを使わずにその軽さですから、価格を考えても十分なものです。
シートステーの外側を削ってあるのは、僕からのリクエストです。シクロクロスはペダリングが特殊で、砂の深いところなどでふんばるとガニ股踏みになるんです。するとチェーンステイにかかとが当たることがあるんです。それを防ぐためのものです。
「無理なく2台揃えられる値段と規格」は僕のリクエストでもあるんです。2台揃えてポジションも同じセッティングにします。泥のレースなどで毎周乗り換えるということはよくあるので、その度にポジションが違ったりするとレースにならないんです。
無理なく2台揃えられることは、寿司が2カン出てくるのと同じなんです(笑)。1カンで高い寿司もいいけど、そこそこの値段で2カンあったほうがいいんです。コース試走でバイクを汚しても綺麗なもう一台でレースを走れるし、2日間のレースでリアメカを壊してもレースを走れる。仕事が忙しくて次のレースまでにバイクを洗車する時間がないという人も、なんとかなります(笑)。
シクロクロスをやっているうちに2台あればいいということはすぐ分かります。最低2台。本当は3台欲しいんです。#803を最初から2台買い揃えるのもクールですよね。
最初から「2台持ち」を想定して低コスト化を図ったホビーレーサーのためのレースバイク
CW編集部:アルミの純レースバイクという#803に求めたのは、どういったことでしょう?辻浦:軽さです。#801もレースで使えるんですが、クロモリのためやや重量があるのは否めない。軽さならカーボンなのですが、2台持つことを考えると、その高価さは現実的ではない。そこでアルミとなったのですが、アルミならばと軽さを求めました。こちらから出した工場への要求はフレーム重量1400gを切ること。それより重くなるなら製品化自体やめようといういうつもりで開発を進めました。そして、上がってきたものは軽い上に乗り心地も良かった。実測重量でフレームが約1240g、フォークは475gほどです。
上司:#803は台湾から進出した中国の工場で造っています。フレーム生産は突き詰めていくとアジアでも数社のトップレベルの工場に行き着きます。名だたるブランドのバイクを生産している有名工場です。当社との過去からのつながりで、たとえ大量生産でなくてもフレームの新規設計から請け負ってくれています。そこが良い仕事をしてくれました。
チューブの軽量化のためのバテッド(肉抜き)加工や溶接技術など、最先端の技術を投入してくれた結果でしょう。目標重量を軽々とクリアしただけでなく、快適性まで非常に優れたフレームに仕上げてくれた。カーボンフォークも専用設計のものを組み合わせています。
辻浦:アルミだとどうしても硬くなるだろうと思っていたのですが、非常に快適性の高いものになっているのは正直我々も驚きました。予想外にしなやかで、とくにバック周りが良くしなってくれます。池本真也選手が欧州のレースで乗って「とても良かった」と言ってくれました。腰砕けの柔らかさではなく、快適なしなりがあると。
上司:そして目指したのはコストパフォーマンスの高さです。フレーム&フォークと、ホイール・ペダル無し完成車という2つの販売形態で、買うユーザーにとっての低コストを再優先しました。手持ちのホイールやパーツを流用することで、どんな人でも無理なく2台持てるように、と。
「無理なく手の届く、2台持てる価格」がコンセプトなんです。ある意味ホイール無し完成車とは梱包面の都合から言えば低価格のホイールをセットしたほうが都合もよく販売しやすいのですが、無駄なコストは徹底的に省きました。
価格はかなり抑えましたが、性能は乗っていただければ必ず納得のはずです。確信を持っていますよ。
CW:2台持てるように、というのが面白いですね。それはなぜですか?
辻浦:シクロクロスは2台用意することがほとんど最低条件のようなレースだからです。ピットに用意する代車、コンディション別に違ったタイヤやホイールをセットして乗り替える。あるいはレースで壊れても次はもう一台で走れる、など。本来そういうものだからです。
上司:そういう意味でもホイールを何ペアも用意しなければいけないディスクは現実的でないでしょう。ロードのお古など、うまく流用しながらシクロクロスレースを楽しんで欲しいですね。
辻浦:で、#803でレースを楽しんだ人が、「乗ってみると#801のほうが楽しいね」という人は多いんです。「味がある」と。
この2台を比べたら、軽さでとっつきやすさはあるんですが、#801は乗ってみると操る楽しみがある。レースじゃないなら#801という人は、とても多いんです。面白いですね。
インプレッション by 辻 善光(TeamZENKO)
「バックのしなやかさがトラクションを生み出し、テク不足をカバーしてくれる」
#803はレースバイクとして使っています。今までアルミ=振動吸収性が悪いというのが定説でしたし、僕は腰を悪くしているのでアルミの硬さは苦手。しかし最初に#803に乗って感じたのはバックのしなやかさでした。手で握ると大きくたわむことが分かるほどです(と言いながら手でステーを握ってしならせる)。
このリアのしなやかさのおかげで通常より空気圧を0.2気圧高めて乗ることが出来ます。フレームのしなやかさが空気圧セッティングや快適性に直結するシクロクロスにとって、いちばん大事な性能だと思います。それが両立しているので、すぐに2台揃えました。
リアのトラクションの良さは特筆モノだと思います。誰も行けないキャンバーを乗っていける。滑った先でグリップしてくれる性能が、技術不足をカバーしてくれます。結果、ペダルを漕ぐことに集中できるというのがこのフレームの特徴です。テクニックがない人ほどこの良さを実感してくれるでしょうね。
フォークもリアのしなやかさにあったモデルをセットしています。カラーオーダーもできるので、目立つように、そしてグリーンのチームウェアの反対色のオレンジにしたので、レースでもかなり目立っているようです。
サドルは100MOVEという、自分がアイデア出しをして製品化してもらったものを使用しています。僕は筋肉が発達していて腿が太めなんですが、腰を引くときにサドルに引っかかるんです。そのため腰を後ろに引けなかった。それを解消してくれるサドルです。おかげで後輪荷重が可能になり、砂場でも乗っていけるようになった。ハンドルもシクロクロスに特化した、握り位置に指のスペースを広くとったものものを僕のアイデアで造ってもらったものです。振動をいなしてくれるしなりもあります。身体にフィットしたフレームとパーツで組み上げた#803は、レースで差が出ますね。
インプレッション by 池本真也(FRIETEN)
「欧州レース遠征で性能を実証。アルミらしからぬ快適性の高さがある」
まず軽い! 持った時、担いだ時が楽なんです。バイクを振ったときにバイクが軽いと非常に取り回しがいいですね。乗り心地もアルミと思えないほど良くて快適です。しなやかさのなかに芯があるので、たわみとは違いますね。ヘッド周りの剛性が十分あるので、もがいた時も安定しているし、急坂下りのブレも無い。
リアのしなやかさから、タイヤの空気圧に頼らなくてもいいような印象です。カーボンバイクに比べても少し空気圧をあげられる感じ。タイヤとのクリアランスも大きく、チェーンステイのブリッジもないので、泥にも強い。
カンティブレーキを採用したことも構造的な軽さを生んでいます。何より軽さは助かりますね。このクラスの軽さをカーボンフレームで、となると高価過ぎるトップモデルになってしまうんです。#803の価格なら2台揃えてもカーボン車1台分でまかなえる。
自分のレースバイクで完成車で7.8kg。アルテグラで組み、ペダル、アルミホイール付きで特別な軽量パーツを使わずにその軽さですから、価格を考えても十分なものです。
シートステーの外側を削ってあるのは、僕からのリクエストです。シクロクロスはペダリングが特殊で、砂の深いところなどでふんばるとガニ股踏みになるんです。するとチェーンステイにかかとが当たることがあるんです。それを防ぐためのものです。
「無理なく2台揃えられる値段と規格」は僕のリクエストでもあるんです。2台揃えてポジションも同じセッティングにします。泥のレースなどで毎周乗り換えるということはよくあるので、その度にポジションが違ったりするとレースにならないんです。
無理なく2台揃えられることは、寿司が2カン出てくるのと同じなんです(笑)。1カンで高い寿司もいいけど、そこそこの値段で2カンあったほうがいいんです。コース試走でバイクを汚しても綺麗なもう一台でレースを走れるし、2日間のレースでリアメカを壊してもレースを走れる。仕事が忙しくて次のレースまでにバイクを洗車する時間がないという人も、なんとかなります(笑)。
シクロクロスをやっているうちに2台あればいいということはすぐ分かります。最低2台。本当は3台欲しいんです。#803を最初から2台買い揃えるのもクールですよね。
提供/東京サンエス 取材・まとめ:綾野 真(シクロワイアード編集部)