スペシャライズドが先鞭をつけた3つのバイクカテゴリー
登りも下りもこなせる「オールラウンドレーサー」、空気抵抗を極限まで低減した「エアロロード」、パヴェのような荒れた道をもものともしない「エンデュランスバイク」。現在、多くの有力なバイクブランドがこの3カテゴリーに合わせてロードバイクをラインアップしている。そのトレンドを生み出したと言えるのがスペシャライズドだ。2003年に初代Tarmac(ターマック)をハイエンドレースバイクとして発表。その翌年に、当時としてはほぼ影も形もなかった新しいカテゴリーであるエンデュランスロードという看板の下に初代Roubaix(ルーベ)を送りだした。
スペシャライズドの3本柱 Tarmac、Venge、Roubaixをインプレッション オールラウンドレーサーと、エンデュランスバイクというそれぞれのカテゴリを象徴するようなモデルでありつづけたTarmacとRoubaix。そして、2011年に彼らに新たな仲間が加わることとなる。マクラーレンとの共同開発により産声を上げたエアロマシン「Venge(ヴェンジ)」だ。トライアスロンに出自を持ついくつかのブランドだけが翼断面型のチューブを採用し、空力性能を主眼に置いたロードレーサーをラインアップに持っていた時代、他のメーカーに先んじてエアロロードをラインアップに加えたのは、またしてもスペシャライズドだった。
レースで磨かれ、進化を続けるスペシャライズドの3本柱
今年の世界選手権、Tarmacを駆り、勝利を掴んだペーター・サガン(スロバキア) photo:Kei Tsuji
アルカンシェルに袖を通したペーター・サガン(スロバキア) photo:Kei Tsuji
ジロ・デ・イタリア優勝トロフィーにキスするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleこうして、オールラウンダー、エンデュランスバイク、エアロロードという三本柱をそのラインナップに持つこととなったスペシャライズド。デビューから長い時間を重ねるなかで、どのモデルもブラッシュアップされ、あるいは根本的な変化を経験し、その時々の最新・最高のレーシングマシンとしてそれぞれのカテゴリに君臨してきた。
それは、これまでの戦歴やプロチームの使用実績を振り返ってみればわかるだろう。ゲロルシュタイナーやチームCSCから、アスタナ、クイックステップ、ティンコフ・サクソまで、名だたる強豪チームと選手がスペシャライズドのレースバイクに跨り、勝利を量産してきた。
石畳が登場したツール・ド・フランス2015第4ステージで、逃げ切り勝利を飾ったトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele
ツール・ド・フランス2015でヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)のために用意されたS-WORKS ROUBAIX photo:Makoto.AYANO
2014年のパリ〜ルーベをS-Works Roubaixに乗って制したニキ・テルプストラ(オランダ) photo:CorVosアルベルト・コンタドールのようなクライマーはTarmacに、マーク・カヴェンディッシュのようなスプリンターはVengeに、トム・ボーネンのようなクラシックハンターはRoubaixに乗って、それぞれが偉大な成績を残してきた。
今年のブエルタでのファビオ・アルによるマイヨロホ獲得や、昨年のヴィンチェンツォ・ニーバリによるツール・ド・フランスのマイヨジョーヌを筆頭に、ペーター・サガンやミカル・クヴィアトコウスキーが手にしたアルカンシェル、パリ~ルーベのパヴェのトロフィーなど、スペシャライズドが手にしてきた栄光は数えきれない。
ツール・ド・フランス2015第7ステージでスプリントを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)はVenge ViASを駆っていた photo:Kei Tsuji
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)がツール・ド・フランスで駆ったS-WORKS VENGE ViAS photo:Makoto.AYANO
ツール・ド・スイスにてペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)がVenge ViASのデビューウィンを達成 photo:CorVos2014年はTarmacがフルモデルチェンジによってオールラウンドモデルとしての評価をより高いものにした。そして2015年はエアロダイナミクスを追求したVenge ViASが登場し、世界中から熱い注目を集めた。その一方で、来年のディスクブレーキ解禁を見越してRoubaixにはディスクブレーキ仕様が追加された。
今回は、そのTarmac、Venge、Roubaixの3モデルを集め、改めてそれぞれの特徴と存在価値とを検証するスペシャル企画をお送りする。常にレースシーンをリードする「スペシャライズドの三巨頭」の今を、ライディングそしてメカニック経験の両面から語れるプロショップであるストラーダバイシクルズの井上寿代表と、ZING² FUKUOKA-IWAI 小川了士店長によるインプレッションでお届けしよう。
S-Works Tarmac
S-Works Tarmac Dura-Ace 昨年モデルチェンジした、スペシャライズドのオールラウンドレーサーがこのS-Works Tarmac。サイズの違いによる乗り味の変化を徹底的に取り除いた「ライダーファーストエンジニアリング」という概念を初めて採用したピュアレーシングマシン。トップレーサーたちがこぞって愛用するTarmacを、今一度検証する。
S-Works Tarmac Dura-Ace スペック
| フレーム | S-Works FACT 11r carbon, FACT construction, tapered/shaped 1-1/8" to size-specific lower head tube, compact race design, internal cable routing |
| フォーク | S-Works FACT carbon, full monocoque, size-specific taper |
| サイズ | 49,52,54,56,58 |
| コンポーネント | Shimano Dura-Ace Di2 |
| ホイール | Roval Rapide CLX 40 |
| 価格 | 1,090,000円 |
S-Works Roubaix SL4 Disc Di2
S-Works Roubaix SL4 Disc Di2 スペシャライズドが誇る振動吸収素材「Zertz」をフロントフォークとシートステー、シートピラーに採用したエンデュランスレーサーの金字塔。昨年からディスクブレーキ仕様を得て、更なる安定性を手に入れた。パリ〜ルーベで勝利を量産した名車の熟成度合いを探る。
S-Works Roubaix SL4 Disc Di2 スペック
| フレーム | S-Works SL4 FACT 11r carbon, FACT construction, shaped/tapered 1-1/8" to size-specific lower head tube, compact race design, Zertz, internal cable routing, carbon OSBB |
| フォーク | Specialized FACT carbon, size-specific taper, disc mount |
| サイズ | 49,52,54,56,58 |
| コンポーネント | シマノ Dura-Ace Di2 油圧ディスク |
| ホイール | ロヴァール Rapide CLX 40 Disc SCS |
| 価格 | 1,080,000円 |
S-Works Venge ViAS Di2
S-Works Venge ViAS Di2 スペシャライズドの風洞実験施設「Win Tunnel」によって産み落とされたエアロダイナミクス技術の結晶。過去の常識に囚われず、ただ空力性能を追求して誕生したエアロロードの極北がこのVenge ViASだ。TTバイクのShivに匹敵するという圧倒的な空力性能とは?
S-Works Venge ViAS Di2 スペック
| フレーム | FACT 11r carbon, Rider-First Engineered™, Win Tunnel Engineered, internal cable routing, carbon OSBB |
| フォーク | FACT carbon, full monocoque |
| サイズ | 46,49,52,54,56,58 |
| コンポーネント | シマノ Dura-Ace Di2 |
| ホイール | ロヴァール CLX 64, tubeless ready |
| 価格 | 1,340,000円 |
インプレライダー プロフィール
井上寿(株式会社ストラーダ代表取締役)
滋賀と京都に展開するストラーダバイシクルズの代表。スポーツバイシクルの本質と価値を伝えられるようにアミューズメント性の高い店舗づくりを行っている。マウンテンバイク、トラック、ロードと多岐にわたってスポーツバイシクルに乗ってきたが、3年前から26年振りにトライアスロンに再チャレンジ。自転車歴30年。ストラーダバイシクルズ滋賀本店(CWレコメンドショップ)
ストラーダバイシクルズ京都店(CWレコメンドショップ)
ストラーダバイシクルズHP
小川了士(ZING² FUKUOKA-IWAI 店長)
九州随一の繁華街である天神地区からほど近くに店舗を構える「ZING² FUKUOKA-IWAI」で店長を務める。高校時代からツーリングの面白さに気づき、20代後半からレースバイクにも乗る幅を広げた。ロングライドやヒルクライムを楽しみながら、店舗ではボディージオメトリーフィットの公認フィッターとしても活動。マイバイクはS-Works TarmacとS-Works Roubaix、そしてMTBの3台。ZING² FUKUOKA-IWAI (CWレコメンドショップ)
ZING² FUKUOKA-IWAI HP
提供:スペシャライズド・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部