2015/08/19(水) - 11:12
今年もトレックワールドがやってきた。トレックの全てを詰め込んだ大型展示会は今年で5回目。トレックファクトリーレーシングに所属する全日本XCOチャンピオン山本幸平、本社からマドンの開発に深く携わった鈴木未央氏も駆けつけ、3日間ともに様々な製品を実際に目にし、そして体感できる貴重な機会となった。
トレック・ワールドについてざっくりと説明するならば、その名の通りトレックの世界を凝縮したディーラー&メディア向けの展示会だ。世界各国で毎年夏場に行なわれ、日本ではかの京都議定書で有名な国立京都国際会館にて毎年開催されており、今年で5回目を迎えた。
ワンブランドの展示会としては国内最大級の規模を誇るトレック・ワールド。3日間のスケジュールの中には新製品のセミナーやテストライドなどがみっちりと詰め込まれ、トレックやボントレガーの製品についてはもちろん、その歴史やブランドの理念についても学ぶことができる。
開催時期は昨年同様に、ワールドワイドな新製品発表会として定着したユーロバイクの前。つまりトレックの2016年モデルをいち早くチェックできるため、ディーラーやジャーナリストの視線は、モデルチェンジを果たした新製品に強く注がれていた。
昨年は別府史之と、USA本社社長であるジョン・バーク氏という豪華ゲストが参加したが、今年は全日本MTB選手権XCOで優勝しアジア選手権を控える山本幸平や、トレック本社に勤務しマドン開発を大きく支えた空力エンジニアの鈴木未央氏、そしてドマーネを駆りエタップ・デュ・ツールを完走した日向涼子さんなどが参加し、レース面、開発面からトレックに関する理解を深めることができた。
またプレゼンテーション内では、トレックのオーダーシステム「プロジェクトワン」に、+αのアップチャージをしたユーザーにはウィスコンシン・ウォータールーの本社ファクトリーツアー「factory experiences」に参加できるプログラムが語られた。正式発表ではないものの、工場見学やプロメカニックが組み上げたバイクでのライドなどが組込まれる贅沢なコースとなる予定で、日本でもツアーパッケージとして試験的に導入していくという。これは開発から生産までを全て一括で行う、トレックならではのドリームツアーと言えるだろう。また、既に発表されているトレックファクトリーレーシングのジャパンカップ参戦についても、強力なメンバーで臨む用意があるという。こちらも楽しみだ。
プレゼンテーションでトレック・ジャパンの田村芳隆社長から「社を挙げたフラッグシップモデル」と紹介されたマドン。エンデュランスロードのドマーネ、軽量モデルのエモンダにと並び、トレックが提唱する「choose your weapon」の確立がより際立ったと言えるだろう。
マドンのテクノロジー詳細は、公開時、そしてメディア発表会のレポートを参照して頂きたいが、「トレック40年の歴史の中で、最も多くのテクノロジーをつぎ込んだバイク」と紹介された通り、その存在感は圧倒的だ。
空気抵抗を極限まで削り取るエアロフォルム、専用のコクピットやブレーキシステム。さらにそれだけではなく、ドマーネで世界に衝撃を走らせたIsoSpeedテクノロジーを導入し、エアロバイクとしては画期的な衝撃吸収性能を持たせるなど、実車を見るほどに独創性と作り込みに驚かされる。
プレゼンテーション中では空力エンジニアの鈴木未央氏による開発ストーリーも披露され、めったに聞くことのできない情報に会場の誰もが熱心に耳を傾けていた(鈴木さんへのインタビューと、マドンのインプレッションは追って紹介します)。
ハイスピードコース向けに開発されたプロキャリバーだが、もしかするとハードテールバイクとは言えないかもしれない。パワー伝達効率と衝撃吸収力を共に推し上げるため、トレックのお家芸とも言えるIsoSpeedを導入し、最大11mmという大きな変形量を実現しているからだ。
「ハードテールならではの微妙なしなりを活かしてより攻めた走りができる」とは、プレゼンテーションにゲストとして招かれた山本幸平の言葉。実際に全日本選手権や、続くCoupe du Japon白馬でもプロキャリバーを使っており、その性能は本人からもお墨付き。
かつてワールドカップにて長きに渡り活躍し、その名前を復活させたトップフューエルもまた、ブレーキング時にもリアユニットのスムーズな動きを実現する「Active Braking Pivot(ABP)」やショック下部をリンク軸に取り付けた「Full Floater」といった、世界レベルで激しさを増すXCコースに対応するトレックならではの機構を多数投入。ヘッドチューブの角度調整ができる「Mono Link」など、よりフィッティングの柔軟性や、対応できるコースの幅が広がっている。
更にはカタログ外の特別限定モデルとして、流行を見せる29er+規格を採用したフルリジット「Stache(スタッシュ)」もこのトレックワールドにて展示・発表された。鮮やかなペールグリーンと3インチのワイドタイヤは存在感抜群で、一台でたくさん遊べること間違い無し!残念ながら試乗車の用意が無かったが、コアなMTBライダーから注目を集めるバイクだった。
そんな中、トレックとして最も力の入れようを感じるのが自信の存在をクルマに知らせるデイライト。プレゼンテーションでもマドンやMTBを差し置いていの一番に紹介され、日中・夜間を問わず安全にサイクリングを楽しもう、というメッセージが強力に発信された。
「事故の要因の40%を占める後方からの追突に対する警鐘です。私にとっては既に、クルマのシートベルト、自転車のヘルメットと同じような感覚。マドンとFXの価格は違うが、そこに乗る命の重さは全て等しい。家族の元に無事に戻ってきてこそはじめて"楽しいサイクリング"と言えるのです」とは田村芳隆社長の言葉。既にトレック・ジャパンのスタッフの使用率は100%で、世界中のサイクリストに対して装着を促していきたいという。
昨年発表された65ルーメンのテールライト「Flare R」はツール・ド・フランスの個人タイムトライアルでも使用され、強烈なインパクトを与えたことも記憶に新しい。2016モデルとしては既存のFlare RとIon 700をベースに、ハンドルに取り付けるリモートコントローラーで操作を行う「TRANSMITR(トランスミッター)」システムがデビューを飾った。コントローラーは最大で7つの対応デバイスを操作でき、全てのサイクリストが不便に感じていたであろう、走行中のライト操作(特にリア)が非常に簡単に行えるようになった。
また、ボントレガーでもう一つの目玉がエアロロードヘルメットのBallista(バリスタ)だろう。これは、ファビアン・カンチェラーラ選手や、別府史之選手も好んで使用しているモデルであり、マドン同様に鈴木氏が深く関わった製品で、古代ギリシャの飛び道具にちなんだネーミング同様、圧倒的な空力性能とエアフローを実現しているという。国内に展開されるのはアジアフィッティングで、日本人にも最適だ。またJCF公認ステッカーも申請中とのことなので、コアなレーサーにも受け入れられるだろう。ちなみに価格は23,000円(税込)で、10月頃入荷予定だ。
次ページでは鈴木未央氏へのインタビューを掲載。マドンやバリスタの開発ストーリーや、空力に関する様々な疑問を聞いてみた。
国内随一のワンブランド展示会、トレックワールド
トレック・ワールドについてざっくりと説明するならば、その名の通りトレックの世界を凝縮したディーラー&メディア向けの展示会だ。世界各国で毎年夏場に行なわれ、日本ではかの京都議定書で有名な国立京都国際会館にて毎年開催されており、今年で5回目を迎えた。
ワンブランドの展示会としては国内最大級の規模を誇るトレック・ワールド。3日間のスケジュールの中には新製品のセミナーやテストライドなどがみっちりと詰め込まれ、トレックやボントレガーの製品についてはもちろん、その歴史やブランドの理念についても学ぶことができる。
開催時期は昨年同様に、ワールドワイドな新製品発表会として定着したユーロバイクの前。つまりトレックの2016年モデルをいち早くチェックできるため、ディーラーやジャーナリストの視線は、モデルチェンジを果たした新製品に強く注がれていた。
昨年は別府史之と、USA本社社長であるジョン・バーク氏という豪華ゲストが参加したが、今年は全日本MTB選手権XCOで優勝しアジア選手権を控える山本幸平や、トレック本社に勤務しマドン開発を大きく支えた空力エンジニアの鈴木未央氏、そしてドマーネを駆りエタップ・デュ・ツールを完走した日向涼子さんなどが参加し、レース面、開発面からトレックに関する理解を深めることができた。
またプレゼンテーション内では、トレックのオーダーシステム「プロジェクトワン」に、+αのアップチャージをしたユーザーにはウィスコンシン・ウォータールーの本社ファクトリーツアー「factory experiences」に参加できるプログラムが語られた。正式発表ではないものの、工場見学やプロメカニックが組み上げたバイクでのライドなどが組込まれる贅沢なコースとなる予定で、日本でもツアーパッケージとして試験的に導入していくという。これは開発から生産までを全て一括で行う、トレックならではのドリームツアーと言えるだろう。また、既に発表されているトレックファクトリーレーシングのジャパンカップ参戦についても、強力なメンバーで臨む用意があるという。こちらも楽しみだ。
会場大注目! 独創的なシステムを盛り込んだエアロロードバイク、マドン
数多くの2016ラインナップ中、会場の中心に据えられていたのはリリースされたばかりの新型マドン。既存のエアロロードから大きく前進したアグレッシブなフォルムは、やはり多くの来場者からの注目を集める存在だ。テスト用バイクは10台が用意されたが、どの時間帯も予約で埋まる人気っぷり。プレゼンテーションでトレック・ジャパンの田村芳隆社長から「社を挙げたフラッグシップモデル」と紹介されたマドン。エンデュランスロードのドマーネ、軽量モデルのエモンダにと並び、トレックが提唱する「choose your weapon」の確立がより際立ったと言えるだろう。
マドンのテクノロジー詳細は、公開時、そしてメディア発表会のレポートを参照して頂きたいが、「トレック40年の歴史の中で、最も多くのテクノロジーをつぎ込んだバイク」と紹介された通り、その存在感は圧倒的だ。
空気抵抗を極限まで削り取るエアロフォルム、専用のコクピットやブレーキシステム。さらにそれだけではなく、ドマーネで世界に衝撃を走らせたIsoSpeedテクノロジーを導入し、エアロバイクとしては画期的な衝撃吸収性能を持たせるなど、実車を見るほどに独創性と作り込みに驚かされる。
プレゼンテーション中では空力エンジニアの鈴木未央氏による開発ストーリーも披露され、めったに聞くことのできない情報に会場の誰もが熱心に耳を傾けていた(鈴木さんへのインタビューと、マドンのインプレッションは追って紹介します)。
レーシングXCモデルが両刷新 プロキャリバーとトップフューエルが切り開くMTB新時代
マドンに注目が傾きがちだが、欧米でムーブメントが巻き起こっているMTBも忘れてはならない存在だ。昨年フレームサイズによってホイールサイズが決まる「スマートホイールサイズ」という考えを打ち出したトレックだが、2016モデルとしてハードテールの「Procaliber SL」、フルサスペンションの「Top Fuel」をデビューさせ、クロスカントリーレーサーの刷新を図った。ハイスピードコース向けに開発されたプロキャリバーだが、もしかするとハードテールバイクとは言えないかもしれない。パワー伝達効率と衝撃吸収力を共に推し上げるため、トレックのお家芸とも言えるIsoSpeedを導入し、最大11mmという大きな変形量を実現しているからだ。
「ハードテールならではの微妙なしなりを活かしてより攻めた走りができる」とは、プレゼンテーションにゲストとして招かれた山本幸平の言葉。実際に全日本選手権や、続くCoupe du Japon白馬でもプロキャリバーを使っており、その性能は本人からもお墨付き。
かつてワールドカップにて長きに渡り活躍し、その名前を復活させたトップフューエルもまた、ブレーキング時にもリアユニットのスムーズな動きを実現する「Active Braking Pivot(ABP)」やショック下部をリンク軸に取り付けた「Full Floater」といった、世界レベルで激しさを増すXCコースに対応するトレックならではの機構を多数投入。ヘッドチューブの角度調整ができる「Mono Link」など、よりフィッティングの柔軟性や、対応できるコースの幅が広がっている。
更にはカタログ外の特別限定モデルとして、流行を見せる29er+規格を採用したフルリジット「Stache(スタッシュ)」もこのトレックワールドにて展示・発表された。鮮やかなペールグリーンと3インチのワイドタイヤは存在感抜群で、一台でたくさん遊べること間違い無し!残念ながら試乗車の用意が無かったが、コアなMTBライダーから注目を集めるバイクだった。
エアロヘルメットとデイライト 拡充を遂げたボントレガーラインナップ
既に「トレックの」という概念を外れ、一つの独立したブランドとして認識されているようにも感じるボントレガー。年を追う毎にラインナップが充実していく印象を受けるが、2016年もその進化は留まるところを知らない。そんな中、トレックとして最も力の入れようを感じるのが自信の存在をクルマに知らせるデイライト。プレゼンテーションでもマドンやMTBを差し置いていの一番に紹介され、日中・夜間を問わず安全にサイクリングを楽しもう、というメッセージが強力に発信された。
「事故の要因の40%を占める後方からの追突に対する警鐘です。私にとっては既に、クルマのシートベルト、自転車のヘルメットと同じような感覚。マドンとFXの価格は違うが、そこに乗る命の重さは全て等しい。家族の元に無事に戻ってきてこそはじめて"楽しいサイクリング"と言えるのです」とは田村芳隆社長の言葉。既にトレック・ジャパンのスタッフの使用率は100%で、世界中のサイクリストに対して装着を促していきたいという。
昨年発表された65ルーメンのテールライト「Flare R」はツール・ド・フランスの個人タイムトライアルでも使用され、強烈なインパクトを与えたことも記憶に新しい。2016モデルとしては既存のFlare RとIon 700をベースに、ハンドルに取り付けるリモートコントローラーで操作を行う「TRANSMITR(トランスミッター)」システムがデビューを飾った。コントローラーは最大で7つの対応デバイスを操作でき、全てのサイクリストが不便に感じていたであろう、走行中のライト操作(特にリア)が非常に簡単に行えるようになった。
また、ボントレガーでもう一つの目玉がエアロロードヘルメットのBallista(バリスタ)だろう。これは、ファビアン・カンチェラーラ選手や、別府史之選手も好んで使用しているモデルであり、マドン同様に鈴木氏が深く関わった製品で、古代ギリシャの飛び道具にちなんだネーミング同様、圧倒的な空力性能とエアフローを実現しているという。国内に展開されるのはアジアフィッティングで、日本人にも最適だ。またJCF公認ステッカーも申請中とのことなので、コアなレーサーにも受け入れられるだろう。ちなみに価格は23,000円(税込)で、10月頃入荷予定だ。
次ページでは鈴木未央氏へのインタビューを掲載。マドンやバリスタの開発ストーリーや、空力に関する様々な疑問を聞いてみた。
提供:トレック・ジャパン photo:Kei Tsuji 制作:シクロワイアード