2015/01/14(水) - 17:11
プロ選手を始めとしたトップアスリートだけではなく、アマチュアサイクリストの間でも広まりを見せるパワーメーター。様々なモデルが各社から発表される中で、またひとつ新たなパワーメーターが日本に上陸した。チームスカイも使用する気鋭のパワーメーター、STAGES POWERの実力に迫る。
パワーメーターが一部のストイックなアスリートのものであったのも、今は昔の話。出力は、速度やケイデンス、心拍数に続く第4の指標として受け入れられたと言っていいだろう。トレーニングの指標として、またペーシングの指標としても外的要因を受けづらく、実際の身体的負担に近い数値を出してくれるパワーメーターは最も適した存在だ。
以前は数社の寡占状態であったパワーメーター市場も、ここ数年で多くのメーカーが新規参入を果たしてきた。アメリカ・コロラド州ボルダーに本拠を置くステージズサイクリングもそのうちの一つ。革新的なパワーメーターの開発を目指して、2010年に主要な開発メンバーが集まり、数々の試作品を経て2013年からSTAGES POWERの市販を開始した。
STAGES POWERの優秀性を示すのが、2014年から最強チームと称されるイギリスのチームスカイが採用しているという事実だ。2014年世界選手タイムトライアル王者のブラドレー・ウィギンスらがレースからトレーニングまで使用していることで、高性能はもちろんのこと、過酷なステージレースに耐えうる耐久性も持ち合わせていることを実証している。
ぱっと聞いただけでは、両方のクランクへの入力の実測値を表示するほうが正確な値になりそうなもの。しかし、右クランクには素材や剛性の異なるチェーンリングが使用されているために、実測値を補正する必要があるため、実は正確であるとは限らないのだ。
一方、駆動系の影響を排除した左クランクでの計測方式はシンプルで余計な計算式を挟む必要が無いため、左クランクに関してはより高い精度で出力を求めることができるのだ。仮想で算出される右側クランクの数値も単純に左側を2倍しただけではなく、独自のアルゴリズムに基づいて正確に合計出力が算出されるようになっている。
左クランク計測という方式は測定精度以外のメリットも多く生み出した。もっともわかりやすいのは軽さだろう。ステージズパワーを装着することで増加する重量はコンパクトなセンサー一つ分、20gのみ。100gから200g程度の重量増となる競合製品が多いことを考えると、これだけで大きなアドバンテージとなる。
装着に際しても、左クランクを交換するだけなので既存のクランクから容易に交換することができるのも、魅力的なポイントだ。フレーム側にマグネットやセンサーを設置する必要もないため、締め付けトルクにさえ気をつければ、エンドユーザーでも取り付けできる。電池も一般的に入手が容易なCR2032 を使用するため、電池交換のためにメーカーに返送する必要などが無く、使い勝手が良い。
そして、センサーが設置される左クランクアームの内側という位置は、落車を始めとしたアクシデントの際にもダメージを受ける可能性が低く抑えられ、長く使い続けることができる。IPX7規格のボディは、水中に沈めても動作に影響のない防水性能を備えており、雨天時でも全く問題なく使用することができる。シクロクロスやMTBといった、より過酷な環境でも信頼できる堅牢性を持っている。
通信規格はパワーメーターの標準規格となった感のあるANT+に加えて、スマートフォンでも使用できるBluetooth SMART規格にも対応。パワー表示が可能なANT+対応サイクルコンピュータでの使用はもちろんのこと、iPhoneやアンドロイドで専用のアプリをダウンロードして使用することもできる。また、ファームウェアのアップデートや、データの正確性を保つためのゼロリセットはこれらのスマートフォンを接続して行うようになっている。
これまで述べてきたように、「精度」「軽量性」「信頼性」といった多くのメリットを持つステージズパワーだが、シンプルなシステムとして仕上がっているため、コストも低く抑えられることに成功している。競合するクランク周辺で計測を行うタイプの製品が軒並み15万円以上の値札をつけるのに対し、STAGES POWERは最もグレードの高いモデルで99,000円と、非常にリーズナブルな価格となっている。
価格破壊ともいえる値段設定だが、「全ての人にパワーメーターを」をスローガンに掲げるステージズサイクリングにとって、このプライスタグには複数のバイクに装着できるようにという思いが込められているという。つまり、ロードとMTB、ロードとCXという様に2台持ちしている人も、常にデータを取り続けられる事に主眼を置いているのだ。
用意されるクランクは、シマノであれば9000世代と7900世代のデュラエースから105のほか、MTB用としてXTRやXT、トラック用にデュラエーストラックなど、およそ考えられる範囲のモデルをカバー。他にもスラムやキャノンデール、FSAといったブランドのクランクもラインナップしている。カーボンクランクは現在のところ対応していない。
既存のパワーメーターの常識を覆すSTAGES POWER。日本への上陸を今か今かと待ちわびてきたユーザーも多いだろう。次回、実際にインストールし、いくつかのライドで使用したインプレッションをお届けする。
チームスカイが正式採用 3年を経て完成したパワーメーター
パワーメーターが一部のストイックなアスリートのものであったのも、今は昔の話。出力は、速度やケイデンス、心拍数に続く第4の指標として受け入れられたと言っていいだろう。トレーニングの指標として、またペーシングの指標としても外的要因を受けづらく、実際の身体的負担に近い数値を出してくれるパワーメーターは最も適した存在だ。
以前は数社の寡占状態であったパワーメーター市場も、ここ数年で多くのメーカーが新規参入を果たしてきた。アメリカ・コロラド州ボルダーに本拠を置くステージズサイクリングもそのうちの一つ。革新的なパワーメーターの開発を目指して、2010年に主要な開発メンバーが集まり、数々の試作品を経て2013年からSTAGES POWERの市販を開始した。
STAGES POWERの優秀性を示すのが、2014年から最強チームと称されるイギリスのチームスカイが採用しているという事実だ。2014年世界選手タイムトライアル王者のブラドレー・ウィギンスらがレースからトレーニングまで使用していることで、高性能はもちろんのこと、過酷なステージレースに耐えうる耐久性も持ち合わせていることを実証している。
左クランクアーム計測方式がもたらす数多くのメリット
市場に存在するパワーメーターの内、もっとも多くの製品が採用している方式はクランクのスパイダーアームにセンサーを設置することで、左右のクランクに対する入力を測定し、数値として出力するもの。一方STAGES POWERは、左クランクアームのひずみを計測し、右クランクの数値は仮想的に算出されるようになっている。ぱっと聞いただけでは、両方のクランクへの入力の実測値を表示するほうが正確な値になりそうなもの。しかし、右クランクには素材や剛性の異なるチェーンリングが使用されているために、実測値を補正する必要があるため、実は正確であるとは限らないのだ。
一方、駆動系の影響を排除した左クランクでの計測方式はシンプルで余計な計算式を挟む必要が無いため、左クランクに関してはより高い精度で出力を求めることができるのだ。仮想で算出される右側クランクの数値も単純に左側を2倍しただけではなく、独自のアルゴリズムに基づいて正確に合計出力が算出されるようになっている。
左クランク計測という方式は測定精度以外のメリットも多く生み出した。もっともわかりやすいのは軽さだろう。ステージズパワーを装着することで増加する重量はコンパクトなセンサー一つ分、20gのみ。100gから200g程度の重量増となる競合製品が多いことを考えると、これだけで大きなアドバンテージとなる。
装着に際しても、左クランクを交換するだけなので既存のクランクから容易に交換することができるのも、魅力的なポイントだ。フレーム側にマグネットやセンサーを設置する必要もないため、締め付けトルクにさえ気をつければ、エンドユーザーでも取り付けできる。電池も一般的に入手が容易なCR2032 を使用するため、電池交換のためにメーカーに返送する必要などが無く、使い勝手が良い。
そして、センサーが設置される左クランクアームの内側という位置は、落車を始めとしたアクシデントの際にもダメージを受ける可能性が低く抑えられ、長く使い続けることができる。IPX7規格のボディは、水中に沈めても動作に影響のない防水性能を備えており、雨天時でも全く問題なく使用することができる。シクロクロスやMTBといった、より過酷な環境でも信頼できる堅牢性を持っている。
通信規格はパワーメーターの標準規格となった感のあるANT+に加えて、スマートフォンでも使用できるBluetooth SMART規格にも対応。パワー表示が可能なANT+対応サイクルコンピュータでの使用はもちろんのこと、iPhoneやアンドロイドで専用のアプリをダウンロードして使用することもできる。また、ファームウェアのアップデートや、データの正確性を保つためのゼロリセットはこれらのスマートフォンを接続して行うようになっている。
これまで述べてきたように、「精度」「軽量性」「信頼性」といった多くのメリットを持つステージズパワーだが、シンプルなシステムとして仕上がっているため、コストも低く抑えられることに成功している。競合するクランク周辺で計測を行うタイプの製品が軒並み15万円以上の値札をつけるのに対し、STAGES POWERは最もグレードの高いモデルで99,000円と、非常にリーズナブルな価格となっている。
価格破壊ともいえる値段設定だが、「全ての人にパワーメーターを」をスローガンに掲げるステージズサイクリングにとって、このプライスタグには複数のバイクに装着できるようにという思いが込められているという。つまり、ロードとMTB、ロードとCXという様に2台持ちしている人も、常にデータを取り続けられる事に主眼を置いているのだ。
用意されるクランクは、シマノであれば9000世代と7900世代のデュラエースから105のほか、MTB用としてXTRやXT、トラック用にデュラエーストラックなど、およそ考えられる範囲のモデルをカバー。他にもスラムやキャノンデール、FSAといったブランドのクランクもラインナップしている。カーボンクランクは現在のところ対応していない。
既存のパワーメーターの常識を覆すSTAGES POWER。日本への上陸を今か今かと待ちわびてきたユーザーも多いだろう。次回、実際にインストールし、いくつかのライドで使用したインプレッションをお届けする。
STAGES POWER 基本スペック
パワーレンジ | 0~1999W |
ケイデンスレンジ | 20~220rpm |
測定誤差 | +-2%(100w/90rpm) |
対応端末 | iPhone、ANDROID、ガーミンほか |
通信規格 | ANT+、Bluetooth 4.0 |
センサー重量 | 20g |
防水性能 | IPX7 |
使用バッテリー | CR2032 |
価格 | 79,000円~99,000円 |
提供:インターマックス 製作:シクロワイアード