2011/08/29(月) - 08:13
今年も「全日本10時間耐久サイクリング inつくば」の季節がやってきた。梅雨明け間も無い茨城県の筑波サーキットを舞台に開催される通称"つくば10耐"は関東地方のライダーを中心に真夏の耐久エンデューロとして知名度も高いイベントである。
昨年に続き編集部チームにて実走取材にお邪魔する事となった"つくば10耐"。今年もメタボ会長と云う迷惑極まりないお荷物と共に、やたら気の重い参戦である。
晴天のメインストレートでスタートを待つ皆さん 「筑波サーキットの事なら俺に任せろ!」と昨年度の大会では散々の大口を叩気ながらも、まさかのわずか10周回しか走破せずに逃げ出すと云う大胆な行動に出たメタボ会長に、編集部チーム一同が呆れ果てた悪夢が昨日の事の様に蘇ってくる。
当のオヤジはそんな事実など存在すらしなかったかの様に、満面の笑みを浮かべながらスタートラインに並んでいるのだから、全く始末が悪い。
そんな私達の心中など意に介さず、締りの無い表情のままでメタボ会長が文句を垂れてくる。
「おいおい、今年も最後尾からのスタートだぞ。エントリーの順番でスターティンググリッドが決まる事は昨年から判っている事なのに、全く君達には成長ってもんが見られんな。」 勿論、こんな暴言に対して我々編集部一同は全力でシカトを決め込む。
こうして迎えたスタート時刻の9:00am。全参加チームが10時間後のゴールを目指して、晴天の第1コーナーへと流れ込んで行く。気温も既に30℃に迫ろうかと云う勢いの夏日である。
はるか後方、最後尾にメタボ会長が見える
「ちょっくら行ってくるぞ!」元気いっぱいでスタート
「ちょっくら行ってくるぞ!10周したら交代してくれよ!」元気一杯で上機嫌なメタボ会長も最後尾から発進していく。「そんな事言いながら、どうせ3周くらいで戻ってくるんだろ?」こんな言葉をぐっと噛みしめて私達はオヤジを見送る。
昨年に続き最後尾からスタートしてゆくメタボ会長
すぐに都合の良い集団を見つけ省エネモードに突入
取り敢えず、我々はコース内の各所に陣取り、参加者さんの様子をカメラに納めるべく撮影に専念する。
そんな私達の前を楽しげなオヤジが駆け抜けて行く。ただ、その様子は明らかに昨年のそれとは違って見える。
もともと体重と馬力を持ち合わせているだけに、こういう平坦路にはめっぽう強いのだが、それにしても良いペースで走っている。外野から見ているとおそらくギアはアウタートップの50-11T固定で、ケイデンスは70回転/分あたりだろうか。
廻りを走る参加者の皆さんの多くがが90回転/分近辺のケイデンスを維持しているもんだから、ひと際ノンビリ走っている様に見えるのだが、その実、巡航速度は周囲を上回る勢いなのだ。
滅多に見られないオヤジの本気走り
第1ヘアピンでアウトからまくって行く。ギアはアウタートップ
涼しい顔で走る。もちろんアウタートップで。
「次はあの集団に追い付くぞ!」とても楽しそうです。
涼しい表情でノンビリ脚を廻しながら、35~40km/hの速度を維持し続けるメタボ会長。ある意味、独特なライディングスタイルではあるが、確実に昨年度より進化している事は明白である。
我々の期待?をあっさり裏切り、約束の10周回をこなしてピットに戻ってくるオヤジの表情はとても楽しそうである。
次走者であるルコック・スポルティフの井上さんにバトンタッチし、待機場所に返って来たメタボ会長の表情はかなり満足気だ。
単独で追い上げて行く。ヘナチョコライダーから卒業でしょうか?
「次の周でピットに戻るぞ!」まだまだ余裕ありそうです。
ノルマをこなし意気揚々とピットロードに滑り込んでくる。
ルコック井上さんにバトンタッチ。いよいよ真打の登場です。
「会長、随分と調子良さそうですね!」社交辞令たっぷりにサラリと聞いてみると
「おぉ、予想以上にバッチリだぜ!自転車のサイズが合ってると力が逃げないからブンブン進むぞ!たった3cmの違いなのにビックリだよ。やっぱ、マドン6.2は最高だぜ!」
どうやら、新調したトレック・マドン6.2が本当にシックリきている様子である。上機嫌で答えてくるその表情は真夏の太陽に負けない位に光り輝いている。 やっぱり、自転車ってイイもんである。
その後も順調にローテーションをこなして行く編集部チーム。余計な緊急ピットインが無いお陰で、本業の取材活動も順調に進んで行く。問題児オヤジもローテーション通りにノルマを消化してくれる為、今年の筑波は取材も走行も順風満帆といった所だ。
途中、交代時間を間違えて誰もいないピットに戻り、慌ててそのままコースインし直したり、ピットで停車速度の目測を誤った編集長がチームメイトと自爆してみたりと、昨年同様にドタバタを繰り返す我がチームではあるが、それぞれが真夏の筑波を満喫している事だけは間違いない。やはり自転車イベントは楽しいものなのだ。
編集長がチームメイトにまさかの突撃。厳しい暑さでボケボケ?
何故ここでガッツポーズ?みんな暑さで壊れているかも。
ゴールまで残り3時間を迎える頃、空模様がかなり怪しくなってきた。34℃あった気温も一気に下がり始めてきたお陰で、コース上のライダー達にはかえって走り易い状況になってきている。そんな中で、4回目のノルマ消化に勤めていたオヤジがわずか5周で緊急ピットインしてきた。
この期に及んでもアウタートップ。これじゃ故障するわな。 いつものワガママ炸裂かよ!と、げんなりしながらピットに駆け寄る私達であったが、いつもと様子が違っている。ピットレーンにたたずむオヤジの表情に余裕が無い。
「ゴメン、ゴメン。最終コーナーで左ヒザの裏からブチッて音がしたんだよ。それからはヒザ裏が痛くて痛くて我慢できずに戻ってきちゃったよ。悪いけど、俺ギブアップね。」
そう言いながら元気の無い様子で脚を引きずりながら待機所へ向かうメタボ会長。その様子を見ていた編集長がポツリと呟く。
ヒザが壊れて苦痛の表情を浮かべるメタボ会長。イイ気味? 「あの感じだと肉離れだけじゃなくて、場合によっては靭帯まで逝っちゃってるかもね。もともと会長は引き脚メインで廻してるから故障のリスクは高いんだよ。まぁこれで3カ月程は大人しくなるだろうから我々には好都合だけどね。」
お得意のイタズラ小僧の様な表情を浮かべる編集長の言葉に、疑問を抱いた私は質問を投げてみる。
「ど素人の会長が、そもそも引き脚の使い方なんて知ってるんですか?」
「会長が自転車始めて間もない頃に、僕が多摩湖で引き脚の使い方を教えたんだよ。最近は踏み込み2割に対して引き上げ8割くらいが丁度良いって本人が言ってから、気にはなってたんだけどね。あの筋力で強烈に引き上げるもんだから、お尻がサドルにめり込んで痛いんだよ。だからあのデカサドルが必要なんだろうね。結局の所、まだまだ初心者の域を出ないって事だよ。」
そう言いながらメタボ会長の背中を見送る編集長の表情に、何故か自責の念が浮かんでいる様に見えたのは気のせいだろうか。
この頃を境に、暗い空から少しずつ雨粒が落ち始め、各々が慌てて撮影機材の雨養生を始める。ゴールまで後1時間半を残す辺りで、段々と雨足が強まり始め、コース上は完全なウェット状態となる。
コース上は完全なウェット状態に。編集部はバタバタです。
私達のドタバタなどお構いなしに爆睡中のオヤジ
編集部にとって一番の強敵こそがこの雨なのだ。撮影機材が最も苦手とする水から守りながら、尚且つ取材は続行せねばならない。最後までイベントを満喫したい私達ではあったが、本来の業務は走行ではなく取材なのだ。
この状況で、編集長が下した苦渋の決断は”走行を諦め取材を優先する”だった。この判断は編集部の立場を考えれば誰もが納得できる判断であった。
ゴールまで1時間半を残した時点で編集部チームの"つくば10耐"は幕を降ろした。
その後も参加チームの皆さんは降りしきる雨の中、ゴールを目指して走り続けている。皆さん各々の表情が充実感に満たされているのが少し羨ましくも思える。
すっかり陽も落ちた19:00。"つくば10耐”がいよいよ感動のゴールを迎える。小雨降る暗闇の中、"ハンガーノック"の中曽裕一さんが両手を突き上げながらチェッカーを受ける。"ハンガーノック"驚きの2連覇達成の瞬間だ。大学時代の中曽さんがアルバイトで編集部の業務を手伝ってくれていた事も有り、我々も自分の事の様に嬉しくなる。
ついにチェッカーフラッグを迎える。
ハンガーノックが総合2連覇の瞬間
充実感とともに次々とゴールに飛び込んでくる。
この連帯感とやり切った感こそが財産ですね。
彼らは10時間で190周回、走破距離394km、18回のピットイン義務によるロスを考えると、平均速度40km/hオーバーを10時間維持した計算になる。惜しくも2位となった"TAKIZAWA最強"が同じく190周回をこなしていたことからも今大会のレベルの高さが伺える。
こうして、つくばの暑くて長い一日が終わった。 何かから解放されたような不思議な気分を胸に帰り支度を進める私達のもとに、爆睡から目覚めたメタボ会長が近づいてくる。
「あらら、今年も中曽君のチームが勝っちゃったの?来年は彼に頼んでハンガーノックに入れて貰おうかな?取り敢えず俺は一服してくるから後片付けヨロシクな。」
相変わらずの全く自分勝手な意見に対して、今の私には、もはや怒りを覚える気力すら残っていない。嬉しそうに毒を吐き終え、痛めた左足を曳きづりつつ喫煙所に向かうメタボ会長の背中を見送りながら、より一層激しくなる脱力感と共に後片付けを進める私達であった。
今回、編集部チームが実走取材にお伺いした「全日本10時間耐久サイクリング inつくば」の開催及び運営にご尽力下さった大会関係者並びにサポートスタッフの皆様に御礼申し上げます。
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
「ポイ捨てはダメだぞ!」 メタボ会長
身長 : 172cm 体重 : 87kg→79kg→85kg
自転車歴 : 2年
当サイト運営法人の代表取締役。平成元年に現法人を設立し平成17年に社長を引退。平成20年よりメディア事業部にて当サイトの運営責任者兼務となったことをキッカケに自転車に乗り始める。ゴルフと暴飲暴食をこよなく愛し、タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。
昨年に続き編集部チームにて実走取材にお邪魔する事となった"つくば10耐"。今年もメタボ会長と云う迷惑極まりないお荷物と共に、やたら気の重い参戦である。
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当のオヤジはそんな事実など存在すらしなかったかの様に、満面の笑みを浮かべながらスタートラインに並んでいるのだから、全く始末が悪い。
そんな私達の心中など意に介さず、締りの無い表情のままでメタボ会長が文句を垂れてくる。
「おいおい、今年も最後尾からのスタートだぞ。エントリーの順番でスターティンググリッドが決まる事は昨年から判っている事なのに、全く君達には成長ってもんが見られんな。」 勿論、こんな暴言に対して我々編集部一同は全力でシカトを決め込む。
こうして迎えたスタート時刻の9:00am。全参加チームが10時間後のゴールを目指して、晴天の第1コーナーへと流れ込んで行く。気温も既に30℃に迫ろうかと云う勢いの夏日である。
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「ちょっくら行ってくるぞ!10周したら交代してくれよ!」元気一杯で上機嫌なメタボ会長も最後尾から発進していく。「そんな事言いながら、どうせ3周くらいで戻ってくるんだろ?」こんな言葉をぐっと噛みしめて私達はオヤジを見送る。
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取り敢えず、我々はコース内の各所に陣取り、参加者さんの様子をカメラに納めるべく撮影に専念する。
そんな私達の前を楽しげなオヤジが駆け抜けて行く。ただ、その様子は明らかに昨年のそれとは違って見える。
もともと体重と馬力を持ち合わせているだけに、こういう平坦路にはめっぽう強いのだが、それにしても良いペースで走っている。外野から見ているとおそらくギアはアウタートップの50-11T固定で、ケイデンスは70回転/分あたりだろうか。
廻りを走る参加者の皆さんの多くがが90回転/分近辺のケイデンスを維持しているもんだから、ひと際ノンビリ走っている様に見えるのだが、その実、巡航速度は周囲を上回る勢いなのだ。
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涼しい表情でノンビリ脚を廻しながら、35~40km/hの速度を維持し続けるメタボ会長。ある意味、独特なライディングスタイルではあるが、確実に昨年度より進化している事は明白である。
我々の期待?をあっさり裏切り、約束の10周回をこなしてピットに戻ってくるオヤジの表情はとても楽しそうである。
次走者であるルコック・スポルティフの井上さんにバトンタッチし、待機場所に返って来たメタボ会長の表情はかなり満足気だ。
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「会長、随分と調子良さそうですね!」社交辞令たっぷりにサラリと聞いてみると
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どうやら、新調したトレック・マドン6.2が本当にシックリきている様子である。上機嫌で答えてくるその表情は真夏の太陽に負けない位に光り輝いている。 やっぱり、自転車ってイイもんである。
その後も順調にローテーションをこなして行く編集部チーム。余計な緊急ピットインが無いお陰で、本業の取材活動も順調に進んで行く。問題児オヤジもローテーション通りにノルマを消化してくれる為、今年の筑波は取材も走行も順風満帆といった所だ。
途中、交代時間を間違えて誰もいないピットに戻り、慌ててそのままコースインし直したり、ピットで停車速度の目測を誤った編集長がチームメイトと自爆してみたりと、昨年同様にドタバタを繰り返す我がチームではあるが、それぞれが真夏の筑波を満喫している事だけは間違いない。やはり自転車イベントは楽しいものなのだ。
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「ゴメン、ゴメン。最終コーナーで左ヒザの裏からブチッて音がしたんだよ。それからはヒザ裏が痛くて痛くて我慢できずに戻ってきちゃったよ。悪いけど、俺ギブアップね。」
そう言いながら元気の無い様子で脚を引きずりながら待機所へ向かうメタボ会長。その様子を見ていた編集長がポツリと呟く。
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お得意のイタズラ小僧の様な表情を浮かべる編集長の言葉に、疑問を抱いた私は質問を投げてみる。
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「会長が自転車始めて間もない頃に、僕が多摩湖で引き脚の使い方を教えたんだよ。最近は踏み込み2割に対して引き上げ8割くらいが丁度良いって本人が言ってから、気にはなってたんだけどね。あの筋力で強烈に引き上げるもんだから、お尻がサドルにめり込んで痛いんだよ。だからあのデカサドルが必要なんだろうね。結局の所、まだまだ初心者の域を出ないって事だよ。」
そう言いながらメタボ会長の背中を見送る編集長の表情に、何故か自責の念が浮かんでいる様に見えたのは気のせいだろうか。
この頃を境に、暗い空から少しずつ雨粒が落ち始め、各々が慌てて撮影機材の雨養生を始める。ゴールまで後1時間半を残す辺りで、段々と雨足が強まり始め、コース上は完全なウェット状態となる。
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この状況で、編集長が下した苦渋の決断は”走行を諦め取材を優先する”だった。この判断は編集部の立場を考えれば誰もが納得できる判断であった。
ゴールまで1時間半を残した時点で編集部チームの"つくば10耐"は幕を降ろした。
その後も参加チームの皆さんは降りしきる雨の中、ゴールを目指して走り続けている。皆さん各々の表情が充実感に満たされているのが少し羨ましくも思える。
すっかり陽も落ちた19:00。"つくば10耐”がいよいよ感動のゴールを迎える。小雨降る暗闇の中、"ハンガーノック"の中曽裕一さんが両手を突き上げながらチェッカーを受ける。"ハンガーノック"驚きの2連覇達成の瞬間だ。大学時代の中曽さんがアルバイトで編集部の業務を手伝ってくれていた事も有り、我々も自分の事の様に嬉しくなる。
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彼らは10時間で190周回、走破距離394km、18回のピットイン義務によるロスを考えると、平均速度40km/hオーバーを10時間維持した計算になる。惜しくも2位となった"TAKIZAWA最強"が同じく190周回をこなしていたことからも今大会のレベルの高さが伺える。
こうして、つくばの暑くて長い一日が終わった。 何かから解放されたような不思議な気分を胸に帰り支度を進める私達のもとに、爆睡から目覚めたメタボ会長が近づいてくる。
「あらら、今年も中曽君のチームが勝っちゃったの?来年は彼に頼んでハンガーノックに入れて貰おうかな?取り敢えず俺は一服してくるから後片付けヨロシクな。」
相変わらずの全く自分勝手な意見に対して、今の私には、もはや怒りを覚える気力すら残っていない。嬉しそうに毒を吐き終え、痛めた左足を曳きづりつつ喫煙所に向かうメタボ会長の背中を見送りながら、より一層激しくなる脱力感と共に後片付けを進める私達であった。
今回、編集部チームが実走取材にお伺いした「全日本10時間耐久サイクリング inつくば」の開催及び運営にご尽力下さった大会関係者並びにサポートスタッフの皆様に御礼申し上げます。
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
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身長 : 172cm 体重 : 87kg→79kg→85kg
自転車歴 : 2年
当サイト運営法人の代表取締役。平成元年に現法人を設立し平成17年に社長を引退。平成20年よりメディア事業部にて当サイトの運営責任者兼務となったことをキッカケに自転車に乗り始める。ゴルフと暴飲暴食をこよなく愛し、タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。
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