2010/09/09(木) - 21:55
カナダ・ケベック州のベコモで行われた2010UCIパラサイクリングロード世界選手権。そのレース3日目、選手以外に会場をおおいにわかせた日本人がいる。自転車で世界一周中の冒険家・風間深志さんと、「1本脚のサイクリスト」テツこと田中哲也さんだ。
現地で取材にあたっていたフォトグラファーの佐藤有子さんが取材。ふたりのインタビューを収録した。
(以下、佐藤有子さんによるレポート)
レース3日目の8月21日の夕刻、選手たちがみな通りすぎていったフィニッシュゲート。そろそろ表彰台に移動しようかな~、と思っていたら「ほら、日本人が来るぞ!」「撮らなきゃ、だろ!」とカナダ人フォトグラファーたちがニコニコしながらひじでツンツン。ゴールライン付近の大会スタッフも「そうだ、ジャポネたちはこの近くにいて、もうすぐここを通過するのだ」と大きくうなずく。
何かセレモニーでもあるのかな? でもなぜ日本チームだけ? と、よく事情がのみこめないままレンズをのぞいていると、「とてもとても遠いところからやってきた日本人たちです!」という盛大なアナウンスとともに、沿道の観客から惜しみない拍手。と同時に、ポリスバイクたちに先導された2台の自転車が、怒濤のゴールスプリントでゴールラインに飛び込んできた。両手をあげてフィニッシュする片足の選手。あれれ? こんな選手、日本チームにいたっけ?
まだ状況が理解できていない私は、ひげ面の2人を見て「あれ?南米の選手がまだゴールしてなかったのかな?! でもなぜバイクが先導?!」と一瞬頭の中が?マークでいっぱいに。しかし笑顔でゴール付近に戻って来た2人を見てびっくり。「あれー?! テツさんだあ?!」
「1本脚のサイクリスト」テツこと田中哲也さん。そして冒険家の風間深志さん。
テツさんはアルペンスキーで98年長野、2002年ソルトレイクのパラリンピックに出場していた選手でもある。障害者向けのスキーレッスンに講師として招かれたテツさんに、当時日本の雪の上でお会いしたことがあるのだ。
ゲレンデのまわりで1本足でMTBに乗るテツさんの姿を見て、「テツさんすげえ!」と生徒たちみんなが大喜びしていたのを思い出す。
テツさんたちはWHOの提唱する「運動器の10年」世界運動キャンペーンの活動として世界一周を続けていて、北米縦断のその途中、障害者の自転車の大会があると聞き、日程をあわせてベコモに立ち寄った、というわけだったのだ。
では、この「運動器の10年」とは何か、「運動器の10年ウェブサイト」を見てみよう。
運動器とは、骨、筋肉、神経といった、身体の動きを担う組織や器官のことをいう。この「運動器の10年」という運動は、WHOの「BONE AND JOINT DECADE2000-2010」に呼応した、運動機能障害からの解放などを基本理念とし、運動器障害・運動器疾患の研究の推進やバリアフリーを目指す生活環境の確立などに、2000年から2010年の10年間、世界的に集中して取り組む、というものだ。
1本脚サイクリスト・テツさんの旅の相棒は、著名な冒険家である風間深志さん。パリ・ダカールラリーに日本人ライダーとして初めて出場し、オートバイで北極点、南極点に到達など数々の大きな実績を持つライダーとして、ある世代のオートバイ乗りにとってはまさに神様のような存在の人。
2004年のパリ・ダカール参戦中に事故で重傷を負い、左足には今も障害が残る。
風間さんは、自らのけがの治療体験から「運動器治療の重要性をアピールしたい」と「『運動器の10年』日本委員会」の協力体制を得て2007年、スクーターで各国の外傷治療施設などを巡る、ロシアからポルトガルまでのユーラシア横断を行った。
08年の第2弾では、四輪駆動車でエジプトから南アフリカまでをアフリカ縦断。09年の第3弾では、一般公募した障害者3人とサポートドクターとともに、自転車でのオーストラリア横断を行った。その一般参加者の一人がテツさんだ。テツさんが参加するきっかけは、知人の理学療法士さんから「オーストラリアを自転車で走る企画があるから行ってみない?」と声をかけられたことだという。
そして今回2010年の第4弾は、船などもあわせて利用しながら南北アメリカを縦断し、「運動器の10年」運動の提唱者のいるスウェーデンの町に9月に到着して、この世界一周をフィニッシュする、というものだ。
長旅の2人がベコモへ来ることを聞いた大会側の厚意で、盛大な歓迎を受けてベコモの町に到着したテツさんと風間さん。ゲートをくぐったあとは、現地メディアのインタビューだ。
そのあとUCIパラサイクリングロード世界選手権でこの日表彰式プレゼンターを務める、カナダの誇る車いす陸上選手シャンタル・プチクレールとも記念撮影。そして、この日の午後にはちょうど、男子C2クラスのロードレースが。チャンピオンなったのは、テツさんと同じ大腿切断の選手、ヴィクトル・ウゴ・ガリド・マルケス(ベネズエラ)だ。アルカンシエルの胸にメダルを輝かせ、子どもたちからのサインの求めに応じるヴィクトルに、テツさんも風間さんもちょっとうらやましそう。「おれたちも出たいなあ…」
このあと2人は北へと旅を続け、カナダ北東のニューファウンドランドに渡り、ノルウエーから参加するメンバーと合流。フィンランドに入り、スウェーデンのルンドに現地時間9月9日フィニッシュの予定だ。
ふたりに旅のお話を聞いてみた。その様子はぜひインタビュー動画でお楽しみください。
自転車世界一周中の風間深志&田中哲也さんインタビュー
旅の模様は下記サイトでも見ることができる。
運動器の10年
http://www.bjdjapan.org/news/index.html
運動器の10年 世界運動キャンペーン
http://bjdcampaign.info/01aboutbjd.html
田中哲也 1本足の流儀
http://tetsuyatanaka.blogspot.com/
(photo/text, Yuko SATO)
現地で取材にあたっていたフォトグラファーの佐藤有子さんが取材。ふたりのインタビューを収録した。
(以下、佐藤有子さんによるレポート)
レース3日目の8月21日の夕刻、選手たちがみな通りすぎていったフィニッシュゲート。そろそろ表彰台に移動しようかな~、と思っていたら「ほら、日本人が来るぞ!」「撮らなきゃ、だろ!」とカナダ人フォトグラファーたちがニコニコしながらひじでツンツン。ゴールライン付近の大会スタッフも「そうだ、ジャポネたちはこの近くにいて、もうすぐここを通過するのだ」と大きくうなずく。
何かセレモニーでもあるのかな? でもなぜ日本チームだけ? と、よく事情がのみこめないままレンズをのぞいていると、「とてもとても遠いところからやってきた日本人たちです!」という盛大なアナウンスとともに、沿道の観客から惜しみない拍手。と同時に、ポリスバイクたちに先導された2台の自転車が、怒濤のゴールスプリントでゴールラインに飛び込んできた。両手をあげてフィニッシュする片足の選手。あれれ? こんな選手、日本チームにいたっけ?
まだ状況が理解できていない私は、ひげ面の2人を見て「あれ?南米の選手がまだゴールしてなかったのかな?! でもなぜバイクが先導?!」と一瞬頭の中が?マークでいっぱいに。しかし笑顔でゴール付近に戻って来た2人を見てびっくり。「あれー?! テツさんだあ?!」
「1本脚のサイクリスト」テツこと田中哲也さん。そして冒険家の風間深志さん。
テツさんはアルペンスキーで98年長野、2002年ソルトレイクのパラリンピックに出場していた選手でもある。障害者向けのスキーレッスンに講師として招かれたテツさんに、当時日本の雪の上でお会いしたことがあるのだ。
ゲレンデのまわりで1本足でMTBに乗るテツさんの姿を見て、「テツさんすげえ!」と生徒たちみんなが大喜びしていたのを思い出す。
テツさんたちはWHOの提唱する「運動器の10年」世界運動キャンペーンの活動として世界一周を続けていて、北米縦断のその途中、障害者の自転車の大会があると聞き、日程をあわせてベコモに立ち寄った、というわけだったのだ。
では、この「運動器の10年」とは何か、「運動器の10年ウェブサイト」を見てみよう。
運動器とは、骨、筋肉、神経といった、身体の動きを担う組織や器官のことをいう。この「運動器の10年」という運動は、WHOの「BONE AND JOINT DECADE2000-2010」に呼応した、運動機能障害からの解放などを基本理念とし、運動器障害・運動器疾患の研究の推進やバリアフリーを目指す生活環境の確立などに、2000年から2010年の10年間、世界的に集中して取り組む、というものだ。
1本脚サイクリスト・テツさんの旅の相棒は、著名な冒険家である風間深志さん。パリ・ダカールラリーに日本人ライダーとして初めて出場し、オートバイで北極点、南極点に到達など数々の大きな実績を持つライダーとして、ある世代のオートバイ乗りにとってはまさに神様のような存在の人。
2004年のパリ・ダカール参戦中に事故で重傷を負い、左足には今も障害が残る。
風間さんは、自らのけがの治療体験から「運動器治療の重要性をアピールしたい」と「『運動器の10年』日本委員会」の協力体制を得て2007年、スクーターで各国の外傷治療施設などを巡る、ロシアからポルトガルまでのユーラシア横断を行った。
08年の第2弾では、四輪駆動車でエジプトから南アフリカまでをアフリカ縦断。09年の第3弾では、一般公募した障害者3人とサポートドクターとともに、自転車でのオーストラリア横断を行った。その一般参加者の一人がテツさんだ。テツさんが参加するきっかけは、知人の理学療法士さんから「オーストラリアを自転車で走る企画があるから行ってみない?」と声をかけられたことだという。
そして今回2010年の第4弾は、船などもあわせて利用しながら南北アメリカを縦断し、「運動器の10年」運動の提唱者のいるスウェーデンの町に9月に到着して、この世界一周をフィニッシュする、というものだ。
長旅の2人がベコモへ来ることを聞いた大会側の厚意で、盛大な歓迎を受けてベコモの町に到着したテツさんと風間さん。ゲートをくぐったあとは、現地メディアのインタビューだ。
そのあとUCIパラサイクリングロード世界選手権でこの日表彰式プレゼンターを務める、カナダの誇る車いす陸上選手シャンタル・プチクレールとも記念撮影。そして、この日の午後にはちょうど、男子C2クラスのロードレースが。チャンピオンなったのは、テツさんと同じ大腿切断の選手、ヴィクトル・ウゴ・ガリド・マルケス(ベネズエラ)だ。アルカンシエルの胸にメダルを輝かせ、子どもたちからのサインの求めに応じるヴィクトルに、テツさんも風間さんもちょっとうらやましそう。「おれたちも出たいなあ…」
このあと2人は北へと旅を続け、カナダ北東のニューファウンドランドに渡り、ノルウエーから参加するメンバーと合流。フィンランドに入り、スウェーデンのルンドに現地時間9月9日フィニッシュの予定だ。
ふたりに旅のお話を聞いてみた。その様子はぜひインタビュー動画でお楽しみください。
自転車世界一周中の風間深志&田中哲也さんインタビュー
旅の模様は下記サイトでも見ることができる。
運動器の10年
http://www.bjdjapan.org/news/index.html
運動器の10年 世界運動キャンペーン
http://bjdcampaign.info/01aboutbjd.html
田中哲也 1本足の流儀
http://tetsuyatanaka.blogspot.com/
(photo/text, Yuko SATO)
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