2021/11/21(日) - 16:12
群馬を代表する名峰・赤城山の山麓を一周する「赤城山1周ライド」。赤城を囲む6つの市村を巡るロングライドイベントに挑戦した、「坂バカ」として知られるモデルでサイクリストの日向涼子さんからレポートが届きました。
赤城山周辺地域の振興を図ろうと、NPO法人赤城自然塾(前橋市)を主体としつつ、前橋市・桐生市・沼田市・渋川氏・みどり市・昭和村の6市村が連携してサイクルツーリズム事業に乗り出した群馬県。現在は赤城山周辺エリアを自転車でめぐると地域の名物が当たるデジタルスタンプラリー「AKAGIサイクルスタンプラリー」や、事前にデジタルチケットを購入して地元グルメを楽しむ「ぐるポタAKAGI」が開催中だ(※詳細はこちらの記事より)。
その中の一つとして10月30日に開催されたのが、赤城山の外周コースを1日で走破する「赤城山1周ライド」。この大会には自転車ジャーナリストのハシケンさんとイベントのゲストライダーなどで活躍するモデルでサイクリストの日向涼子さんがゲスト参加。
ここからは実際にイベントのコースを走った日向涼子さんが「赤城山1周ライド」をレポートする。赤城山周辺の魅力やコースを知るとともに、「AKAGIサイクルスタンプラリー」「ぐるポタAKAGI」の参考にしてもいいだろう。
「みなさーん、おはようございまーす!」
これまでは当たり前の光景だったイベント前の挨拶ですが、新型コロナウィルスの感染拡大で自転車イベントはのきなみ中止や延期となっていたので、私にとっては久しぶりに参加するライドイベント。前日はワクワクした気持ちがおさまらず、ほとんど眠れないまま朝を迎えました。
今回参加した「赤城山1周ライド」のコースは赤城山の外周を走る距離112.7km、累積獲得標高2,361mという走りごたえがあるもの。赤城山というと、前橋市街地から赤城山頂まで駆け上がる「まえばし赤城山ヒルクライム大会」のイメージですが、裾野を走ってもタフですね。
スタートは前橋市・桐生市・渋川市・みどり市の4市村に設定。それぞれの出発地点から走りだして赤城山1周の完走を目指します。私は渋川市にある「渋川市赤城総合運動自然公園」からスタート。前半は下り基調、後半はほとんど上りというペース配分がものをいうコースです。
スタート会場ではゼッケンの代わりに大会限定のネックウォーマーが配られました。エイドステーションでネックウォーマー見せることで補給食がもらえる仕組み。これは絶対失くせない!それに、この日の朝は寒かったので参加賞としてもありがたいものでした。
コースガイドには群馬グリフィン・レーシングチームの古田選手と永富選手が先頭を走ってくださるとのことで、なかなか贅沢。会場にいる小学生とおぼしきちびっ子たちはプロ選手にアタックしかけてくるかもなー、なんて思いながらスタートしました。
コースプロフィールどおり、スタートからほぼ下り基調。カラダが温まる時間もないまま前橋市のエイド「ぐりーんふらわー牧場・大胡」の駐車場に到着しました。ここでは群馬県のマスコットキャラクター「ぐんまちゃん」と、前橋市の公認マスコット「ころとん」がお出迎え。
こちらの補給食はリング状のシュー生地の中にクリームをはさんだ「パリブレスト」。サイクリストにとっては馴染みのあるスイーツですが、意外と食べる機会はないので嬉しい。食べきれるサイズなのも好ポイントでした。
次のエイドまでは主に国道沿いを通るので多少交通量がありますが、クルマは間隔をあけて走行してくれるので怖いと感じることはありませんでした。前橋は多くの競輪選手を輩出し、群馬グリフィンの本拠地であることも理由のひとつかもしれませんね。それでも交通量が気になる場合は、一本赤城山側に入った「からっ風街道」はかなり交通量が少ないそうなので、「AKAGIサイクルスタンプラリー」「ぐるポタAKAGI」の参加を予定している方はそちらのコースも検討してみてください。
みどり市のエイドステーション「小平の里」では、とっても元気なお兄さんが出迎えてくださいました。よしもと群馬住みます芸人の「アンカンミンカン」のおふたりで、みどり市の観光大使。地元で知らない人はいない人気者だとか。しかも、おふたりとも自転車が好きとのことで親近感がわきます。
こちらのエイドステーションでは、けんちん汁、羊羹と手作りまんじゅうをいただきました。下り続きで寒かったから温かい汁物が嬉しい。居心地のいいガーデンチェアでまったりしたいところですが、休みすぎると逆に疲れるので適度なところで出発します。アンカンミンカン川島さんの、「あんたたちのことは忘れないよ!」という大きな声援に見送られて再び走り始めます。
スタートしてから50kmほど走ると、かなり交通量が減りました。近づいてくる目の前の山は紅葉が見頃の様子。ちょうどカラダが温まり、足が回るようになってきたタイミングで待っていたヒルクライムとなるようです。
3つめのエイドステーションは桐生市にある「水沼駅温泉センター」。わたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線の駅のひとつで、その名の通り駅構内に温泉施設があります。群馬は100近い温泉地と、源泉数453という温泉天国ですが、こんなところにも温泉があるのですね。上手に使えば自転車旅と温泉旅を組み合わせられそう。ここでは山を眺めながら温かいお蕎麦をいただきました。
「まずはあの坂を上るのね」と思っていると、コースを知るスタッフから、「このあとはほぼ上りですよ」と声をかけられました。続いてサポートライダーの女性サイクリストが、「激坂もあれば、16kmのヒルクライムもあります」と教えてくれました。激坂はまだしも、16kmのヒルクライムって。本当に裾野なの?(笑)大人はいいとして、心配なのはこれまで静かについてきている“ちびっ子"たち。ここまでついてきただけで十分すごいのに、このあと16kmの登坂をするの? できるの??
出発前に、「ここからはグループは気にせず自分のペースで走りましょう!」と古田選手。サポートカーがあるとはいえ、ちびっ子たちは不安じゃないのでしょうか。1歳半の息子がいるからか、ついつい親目線で見てしまう私。そして、気づけば一人の少年を見守るように走っていました。
少しサイズが大きくみえる自転車にまたがって、淡々とペダルを回し続ける。時に大人を引き離そうとモガいたり、疲れてペースが落ちたらサドルから腰を上げてダンシング。サポートカーが通って、「乗る?」という大人の声にも首を振って、強いまなざしで前を見る。すごいな、この子。
大会終了後、“ちびっ子"と思っていた彼らは群馬県内の小学校4~6年生を対象とした「ぐんまスーパーキッズプロジェクト」の選考会を通過した子供たちだと知りました。このプロジェクトは自転車だけでなく、他のスポーツでも募集がされているそうです。
早期に人材発掘や育成をすることは様々な意見があるかもしれませんが、「目の前の困難を自分の力で乗り越えた」という自信を持たせるのは大賛成。もしダメでも、また取り組めばいい。地域の大人たちのサポートもあって、こうした機会が得られるのは素晴らしい取り組みだと感じました。
最難関の登坂を終えると、そこには「チャージステーション」の文字。変電所(東京電力パワーグリッド)の敷地を開放してくれたそうで、今回のイベントのためにスマホの充電ができるようになっていました。電波が悪い山の中はスマホのバッテリーが消費しがちなのでありがたいですね。また、ここまでのコースは一般的にはe-Bikeで走るのが現実的でしょうから、バッテリーの充電や交換ができるポートとして機能するようになれば裾野が広がるでしょう。
ここでは簡単なお菓子とドリンクの補給。パパっと済ませてウィンドブレーカーを着て、勾配がきつめの坂を下ると……そこは視界いっぱいに広がる野山の錦。クルマの往来も信号もほとんどないサイクリング天国がありました。
赤城山というと、前橋市街から県道4号前橋赤城線や県道16号大胡赤城線を走って赤城山大沼までのヒルクライムコースのイメージでした。「赤城山って街中からのアクセスがいいよね」は、もちろんいいことだと思います。でも、赤城山のポテンシャルはそれだけじゃない。むしろ、赤城山最大の魅力は外周にあるのではないでしょうか。
下山後に立ち寄った「南郷の曲屋」では手入れがされた古民家の軒下で塩味のきいたおにぎりとすいとんをいただき、昭和村に入れば日本一の生産量を誇るこんにゃく芋を使った汁物。山々の雄大な眺望の中で畑作業をする人々がいて、牧歌的風景が広がります。最後まで登坂はあるけどね(笑)。
それでも、景色に助けられながら無事にゴール& スタート地点の渋川市に到着。ちびっ子、もとい、小さな精鋭たちも力強いまなざしで記念撮影に応じてくれました。
100km超に赤城山周辺地域の魅力がギュッと詰め込まれた今回のイベントは1日限りのものですが、自分でコースや立ち寄りスポットを決められる「AKAGIサイクルスタンプラリー」や「ぐるポタAKAGI」は今月末まで開催されているので、是非ご自身の目で赤城山の魅力を確かめに、足を運んでいただけたらと思います。
ちなみに、イベントでは反時計回りでしたが、群馬グリフィン古田選手いわく、時計回りも景色が違って楽しいそうですよ。
text:Ryoko HINATA
photo:Makoto AYANAO,Kenji Hashimoto
赤城山周辺地域の振興を図ろうと、NPO法人赤城自然塾(前橋市)を主体としつつ、前橋市・桐生市・沼田市・渋川氏・みどり市・昭和村の6市村が連携してサイクルツーリズム事業に乗り出した群馬県。現在は赤城山周辺エリアを自転車でめぐると地域の名物が当たるデジタルスタンプラリー「AKAGIサイクルスタンプラリー」や、事前にデジタルチケットを購入して地元グルメを楽しむ「ぐるポタAKAGI」が開催中だ(※詳細はこちらの記事より)。
その中の一つとして10月30日に開催されたのが、赤城山の外周コースを1日で走破する「赤城山1周ライド」。この大会には自転車ジャーナリストのハシケンさんとイベントのゲストライダーなどで活躍するモデルでサイクリストの日向涼子さんがゲスト参加。
ここからは実際にイベントのコースを走った日向涼子さんが「赤城山1周ライド」をレポートする。赤城山周辺の魅力やコースを知るとともに、「AKAGIサイクルスタンプラリー」「ぐるポタAKAGI」の参考にしてもいいだろう。
「みなさーん、おはようございまーす!」
これまでは当たり前の光景だったイベント前の挨拶ですが、新型コロナウィルスの感染拡大で自転車イベントはのきなみ中止や延期となっていたので、私にとっては久しぶりに参加するライドイベント。前日はワクワクした気持ちがおさまらず、ほとんど眠れないまま朝を迎えました。
今回参加した「赤城山1周ライド」のコースは赤城山の外周を走る距離112.7km、累積獲得標高2,361mという走りごたえがあるもの。赤城山というと、前橋市街地から赤城山頂まで駆け上がる「まえばし赤城山ヒルクライム大会」のイメージですが、裾野を走ってもタフですね。
スタートは前橋市・桐生市・渋川市・みどり市の4市村に設定。それぞれの出発地点から走りだして赤城山1周の完走を目指します。私は渋川市にある「渋川市赤城総合運動自然公園」からスタート。前半は下り基調、後半はほとんど上りというペース配分がものをいうコースです。
スタート会場ではゼッケンの代わりに大会限定のネックウォーマーが配られました。エイドステーションでネックウォーマー見せることで補給食がもらえる仕組み。これは絶対失くせない!それに、この日の朝は寒かったので参加賞としてもありがたいものでした。
コースガイドには群馬グリフィン・レーシングチームの古田選手と永富選手が先頭を走ってくださるとのことで、なかなか贅沢。会場にいる小学生とおぼしきちびっ子たちはプロ選手にアタックしかけてくるかもなー、なんて思いながらスタートしました。
コースプロフィールどおり、スタートからほぼ下り基調。カラダが温まる時間もないまま前橋市のエイド「ぐりーんふらわー牧場・大胡」の駐車場に到着しました。ここでは群馬県のマスコットキャラクター「ぐんまちゃん」と、前橋市の公認マスコット「ころとん」がお出迎え。
こちらの補給食はリング状のシュー生地の中にクリームをはさんだ「パリブレスト」。サイクリストにとっては馴染みのあるスイーツですが、意外と食べる機会はないので嬉しい。食べきれるサイズなのも好ポイントでした。
次のエイドまでは主に国道沿いを通るので多少交通量がありますが、クルマは間隔をあけて走行してくれるので怖いと感じることはありませんでした。前橋は多くの競輪選手を輩出し、群馬グリフィンの本拠地であることも理由のひとつかもしれませんね。それでも交通量が気になる場合は、一本赤城山側に入った「からっ風街道」はかなり交通量が少ないそうなので、「AKAGIサイクルスタンプラリー」「ぐるポタAKAGI」の参加を予定している方はそちらのコースも検討してみてください。
みどり市のエイドステーション「小平の里」では、とっても元気なお兄さんが出迎えてくださいました。よしもと群馬住みます芸人の「アンカンミンカン」のおふたりで、みどり市の観光大使。地元で知らない人はいない人気者だとか。しかも、おふたりとも自転車が好きとのことで親近感がわきます。
こちらのエイドステーションでは、けんちん汁、羊羹と手作りまんじゅうをいただきました。下り続きで寒かったから温かい汁物が嬉しい。居心地のいいガーデンチェアでまったりしたいところですが、休みすぎると逆に疲れるので適度なところで出発します。アンカンミンカン川島さんの、「あんたたちのことは忘れないよ!」という大きな声援に見送られて再び走り始めます。
スタートしてから50kmほど走ると、かなり交通量が減りました。近づいてくる目の前の山は紅葉が見頃の様子。ちょうどカラダが温まり、足が回るようになってきたタイミングで待っていたヒルクライムとなるようです。
3つめのエイドステーションは桐生市にある「水沼駅温泉センター」。わたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線の駅のひとつで、その名の通り駅構内に温泉施設があります。群馬は100近い温泉地と、源泉数453という温泉天国ですが、こんなところにも温泉があるのですね。上手に使えば自転車旅と温泉旅を組み合わせられそう。ここでは山を眺めながら温かいお蕎麦をいただきました。
「まずはあの坂を上るのね」と思っていると、コースを知るスタッフから、「このあとはほぼ上りですよ」と声をかけられました。続いてサポートライダーの女性サイクリストが、「激坂もあれば、16kmのヒルクライムもあります」と教えてくれました。激坂はまだしも、16kmのヒルクライムって。本当に裾野なの?(笑)大人はいいとして、心配なのはこれまで静かについてきている“ちびっ子"たち。ここまでついてきただけで十分すごいのに、このあと16kmの登坂をするの? できるの??
出発前に、「ここからはグループは気にせず自分のペースで走りましょう!」と古田選手。サポートカーがあるとはいえ、ちびっ子たちは不安じゃないのでしょうか。1歳半の息子がいるからか、ついつい親目線で見てしまう私。そして、気づけば一人の少年を見守るように走っていました。
少しサイズが大きくみえる自転車にまたがって、淡々とペダルを回し続ける。時に大人を引き離そうとモガいたり、疲れてペースが落ちたらサドルから腰を上げてダンシング。サポートカーが通って、「乗る?」という大人の声にも首を振って、強いまなざしで前を見る。すごいな、この子。
大会終了後、“ちびっ子"と思っていた彼らは群馬県内の小学校4~6年生を対象とした「ぐんまスーパーキッズプロジェクト」の選考会を通過した子供たちだと知りました。このプロジェクトは自転車だけでなく、他のスポーツでも募集がされているそうです。
早期に人材発掘や育成をすることは様々な意見があるかもしれませんが、「目の前の困難を自分の力で乗り越えた」という自信を持たせるのは大賛成。もしダメでも、また取り組めばいい。地域の大人たちのサポートもあって、こうした機会が得られるのは素晴らしい取り組みだと感じました。
最難関の登坂を終えると、そこには「チャージステーション」の文字。変電所(東京電力パワーグリッド)の敷地を開放してくれたそうで、今回のイベントのためにスマホの充電ができるようになっていました。電波が悪い山の中はスマホのバッテリーが消費しがちなのでありがたいですね。また、ここまでのコースは一般的にはe-Bikeで走るのが現実的でしょうから、バッテリーの充電や交換ができるポートとして機能するようになれば裾野が広がるでしょう。
ここでは簡単なお菓子とドリンクの補給。パパっと済ませてウィンドブレーカーを着て、勾配がきつめの坂を下ると……そこは視界いっぱいに広がる野山の錦。クルマの往来も信号もほとんどないサイクリング天国がありました。
赤城山というと、前橋市街から県道4号前橋赤城線や県道16号大胡赤城線を走って赤城山大沼までのヒルクライムコースのイメージでした。「赤城山って街中からのアクセスがいいよね」は、もちろんいいことだと思います。でも、赤城山のポテンシャルはそれだけじゃない。むしろ、赤城山最大の魅力は外周にあるのではないでしょうか。
下山後に立ち寄った「南郷の曲屋」では手入れがされた古民家の軒下で塩味のきいたおにぎりとすいとんをいただき、昭和村に入れば日本一の生産量を誇るこんにゃく芋を使った汁物。山々の雄大な眺望の中で畑作業をする人々がいて、牧歌的風景が広がります。最後まで登坂はあるけどね(笑)。
それでも、景色に助けられながら無事にゴール& スタート地点の渋川市に到着。ちびっ子、もとい、小さな精鋭たちも力強いまなざしで記念撮影に応じてくれました。
100km超に赤城山周辺地域の魅力がギュッと詰め込まれた今回のイベントは1日限りのものですが、自分でコースや立ち寄りスポットを決められる「AKAGIサイクルスタンプラリー」や「ぐるポタAKAGI」は今月末まで開催されているので、是非ご自身の目で赤城山の魅力を確かめに、足を運んでいただけたらと思います。
ちなみに、イベントでは反時計回りでしたが、群馬グリフィン古田選手いわく、時計回りも景色が違って楽しいそうですよ。
text:Ryoko HINATA
photo:Makoto AYANAO,Kenji Hashimoto
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