2010/06/25(金) - 00:12
辻啓、竹之内脩兵、田中苑子の若手写真家3人による写真展「Pedal Stories—自転車に魅了された人達—」が京都市国際交流会館で開催中だ。会場から彼ら3人の展覧会と写真にかける想いをお届けします。
自転車のフォトグラファーとしては若手の3人、辻啓、竹之内脩兵、田中苑子が京都市の国際交流会館で写真展「Pedal Stories—自転車に魅了された人達—」を開いている。およそ40点の写真には、いずれも自転車レースの深奥へ迫らんとする眼差しが捉えた瞬間が刻まれている。
3名がそれぞれテーマ別に写真を展示。田中苑子氏は「シクロクロス」、辻啓氏は「ジロ・デ・イタリア」、竹之内脩兵氏は「ラファ・コンドル・シャープチーム」をテーマに、写真を選りすぐった。会場のコーディネートを務めた竹之内氏に、本展について伺った。
- まだ2日目ですが、写真展を開いてみての手応えはいかがですか?
竹之内「作品展としてはまとまったと思います。会場もレイアウトの自由度が大きくてどう展示するか悩みました。それぞれの写真の意図だけは話し合いましたが、3人それぞれがどんな写真を持ち込むのかというコンセンサスをとっていなかったので、搬入してみてレイアウトを決めました。」
- この写真展の全体を通じて表現したかったことは?
竹之内「自分たちがいいと思ったものを素直に出せる場をつくりたいな、と。だから一回、3人展という形でやってみました。」
- 20代中盤というカメラマンとしては若い世代のこの3人で写真展を開いたのは?
竹之内「今までやってきた先輩方を否定する意味じゃなくて、若いからこそできること、新しいことができるんじゃないかと思ったんです。ワクワクすることがやりたいよねって話し合ったりしていたので。」
それぞれがそれぞれの世界観を提示している本写真展。言葉で語れないことを写真で表現している彼らに対して野暮は承知で、それぞれの展示について語ってもらった。
田中苑子
「シクロクロスをテーマに選んだのは、日本ではロードレースよりも知られていない競技で、もっと知ってもらいたいと思ったからです。それと個人的な感情ですが、およそ1ヶ月選手を取材したこともあって、頑張る彼らを応援したいという気持ちもありました。関西はシクロクロスが盛んなので、本場の雰囲気を伝えられたらいいなと。
シクロクロスのレースを見る度ごとに、選手とスタッフの距離の近さを感じます。そして世界トップの選手に挑戦する日本人の姿、まだその背中は遠いけれど、決して届かないわけではない。世界とつながっているところも魅力ですね。
もともとヨーロッパのレースに惹かれて、そこにある歴史や文化を伝えたくて自転車レースの写真を撮り始めたんです。だから今後、それを突き詰めたい。ロードレースと一口に言っても、アジアのレースとヨーロッパのレースには違う文化がある。レースによって活躍する選手も違うし。ひとりの選手に密着してレースの内側を見せる、ということもこれからやっていきたいです。」
竹之内脩兵
「今回、ラファ・コンドル・シャープのツアー・オブ・ジャパンでの写真で組んだのは、ひとえに感謝の気持ちからです。こういうレベルのチームに帯同するのは初めてで、すごく不安でした。はじめは『なんだコイツは?本当に撮れるのか?』ってチームに思われてもいたし。でもツアー・オブ・ジャパンを通して最後には撮る人として自分を受け入れてくれて、一皮むけるチャンスになりました。そんなチームへの感謝の思いを込めて、最高の展示をしようと。
かなりカラーのあるチームなので、それだけにプレッシャーも大きかったです。でも、こう撮ればラファ・コンドル・シャープらしさが出るな、というのはわかってたんですが、それだけにそこに引っ張られたりしました。その中でも自分がいいと思えるものを撮ろうと決めたのは、選手たちが僕の写真を喜んでくれて、『お母さんに送ったよ』とか言ってもらえたことで自信を持てました。自分で自分の写真を信じられるようになったというか。
ほとんどすべての写真をモノクロにしたのは、色を抜くことで統一感を出す方法もあると思ったからです。3人展だから、それぞれの特色が出てもいい。僕の場合、状況を伝えるというより、乗っている人の想いを一番全面に出したい。色を抜くことで視線の鋭さとか、より鮮明になるものがあるんです。」
辻啓
「タイミングにも恵まれて、つい2週間前までやっていたジロ・デ・イタリアの写真でまとめました。悩んでジロにしたというよりは、自然にジロになったという感じですね。ぼんやりとレース全体を見た昨年と違って、今年のジロはユキヤ(新城幸也)の存在を軸にレースを追いました。それでレース全体の見方が変わりました。
インターネットで主に仕事をしているということや、他にフォトグラファーがいない関係上、日本にすぐにユキヤの状況を伝えられるのは僕だけだという使命感もありました。そういう意味では、自分で言うのも変ですが、必要とされていたのかなって思ったりもします。
ジロを見て自転車ロードレースを好きになったから、ジロを追いかけることは自然なことでした。というより、ロードレースが好き、の前にジロが好き。僕の自転車の全ての根底にジロがあるんです。
ずっと撮りたいと思い続けているのは、一歩外に出た視線、いわば観客目線での写真。さらにはもっと、レースの関係者ですらないような『外』の視線でロードレースを撮ってみたいというのはある。今はロードレースを一番前から撮っているから、それ以外の場所から撮ってみたいんです。」
「Pedal Stories—自転車に魅了された人達—」は6月27日(日)まで京都市国際交流会館で開催される。会場はこちら。開場時間は9:00〜20:00(27日は〜16:00まで)。
同展は今後、関東などでも開催したい意向で検討しているという。
text&photo:Yufta Omata
自転車のフォトグラファーとしては若手の3人、辻啓、竹之内脩兵、田中苑子が京都市の国際交流会館で写真展「Pedal Stories—自転車に魅了された人達—」を開いている。およそ40点の写真には、いずれも自転車レースの深奥へ迫らんとする眼差しが捉えた瞬間が刻まれている。
3名がそれぞれテーマ別に写真を展示。田中苑子氏は「シクロクロス」、辻啓氏は「ジロ・デ・イタリア」、竹之内脩兵氏は「ラファ・コンドル・シャープチーム」をテーマに、写真を選りすぐった。会場のコーディネートを務めた竹之内氏に、本展について伺った。
- まだ2日目ですが、写真展を開いてみての手応えはいかがですか?
竹之内「作品展としてはまとまったと思います。会場もレイアウトの自由度が大きくてどう展示するか悩みました。それぞれの写真の意図だけは話し合いましたが、3人それぞれがどんな写真を持ち込むのかというコンセンサスをとっていなかったので、搬入してみてレイアウトを決めました。」
- この写真展の全体を通じて表現したかったことは?
竹之内「自分たちがいいと思ったものを素直に出せる場をつくりたいな、と。だから一回、3人展という形でやってみました。」
- 20代中盤というカメラマンとしては若い世代のこの3人で写真展を開いたのは?
竹之内「今までやってきた先輩方を否定する意味じゃなくて、若いからこそできること、新しいことができるんじゃないかと思ったんです。ワクワクすることがやりたいよねって話し合ったりしていたので。」
それぞれがそれぞれの世界観を提示している本写真展。言葉で語れないことを写真で表現している彼らに対して野暮は承知で、それぞれの展示について語ってもらった。
田中苑子
「シクロクロスをテーマに選んだのは、日本ではロードレースよりも知られていない競技で、もっと知ってもらいたいと思ったからです。それと個人的な感情ですが、およそ1ヶ月選手を取材したこともあって、頑張る彼らを応援したいという気持ちもありました。関西はシクロクロスが盛んなので、本場の雰囲気を伝えられたらいいなと。
シクロクロスのレースを見る度ごとに、選手とスタッフの距離の近さを感じます。そして世界トップの選手に挑戦する日本人の姿、まだその背中は遠いけれど、決して届かないわけではない。世界とつながっているところも魅力ですね。
もともとヨーロッパのレースに惹かれて、そこにある歴史や文化を伝えたくて自転車レースの写真を撮り始めたんです。だから今後、それを突き詰めたい。ロードレースと一口に言っても、アジアのレースとヨーロッパのレースには違う文化がある。レースによって活躍する選手も違うし。ひとりの選手に密着してレースの内側を見せる、ということもこれからやっていきたいです。」
竹之内脩兵
「今回、ラファ・コンドル・シャープのツアー・オブ・ジャパンでの写真で組んだのは、ひとえに感謝の気持ちからです。こういうレベルのチームに帯同するのは初めてで、すごく不安でした。はじめは『なんだコイツは?本当に撮れるのか?』ってチームに思われてもいたし。でもツアー・オブ・ジャパンを通して最後には撮る人として自分を受け入れてくれて、一皮むけるチャンスになりました。そんなチームへの感謝の思いを込めて、最高の展示をしようと。
かなりカラーのあるチームなので、それだけにプレッシャーも大きかったです。でも、こう撮ればラファ・コンドル・シャープらしさが出るな、というのはわかってたんですが、それだけにそこに引っ張られたりしました。その中でも自分がいいと思えるものを撮ろうと決めたのは、選手たちが僕の写真を喜んでくれて、『お母さんに送ったよ』とか言ってもらえたことで自信を持てました。自分で自分の写真を信じられるようになったというか。
ほとんどすべての写真をモノクロにしたのは、色を抜くことで統一感を出す方法もあると思ったからです。3人展だから、それぞれの特色が出てもいい。僕の場合、状況を伝えるというより、乗っている人の想いを一番全面に出したい。色を抜くことで視線の鋭さとか、より鮮明になるものがあるんです。」
辻啓
「タイミングにも恵まれて、つい2週間前までやっていたジロ・デ・イタリアの写真でまとめました。悩んでジロにしたというよりは、自然にジロになったという感じですね。ぼんやりとレース全体を見た昨年と違って、今年のジロはユキヤ(新城幸也)の存在を軸にレースを追いました。それでレース全体の見方が変わりました。
インターネットで主に仕事をしているということや、他にフォトグラファーがいない関係上、日本にすぐにユキヤの状況を伝えられるのは僕だけだという使命感もありました。そういう意味では、自分で言うのも変ですが、必要とされていたのかなって思ったりもします。
ジロを見て自転車ロードレースを好きになったから、ジロを追いかけることは自然なことでした。というより、ロードレースが好き、の前にジロが好き。僕の自転車の全ての根底にジロがあるんです。
ずっと撮りたいと思い続けているのは、一歩外に出た視線、いわば観客目線での写真。さらにはもっと、レースの関係者ですらないような『外』の視線でロードレースを撮ってみたいというのはある。今はロードレースを一番前から撮っているから、それ以外の場所から撮ってみたいんです。」
「Pedal Stories—自転車に魅了された人達—」は6月27日(日)まで京都市国際交流会館で開催される。会場はこちら。開場時間は9:00〜20:00(27日は〜16:00まで)。
同展は今後、関東などでも開催したい意向で検討しているという。
text&photo:Yufta Omata
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