2019/10/17(木) - 18:45
10周年記念大会となったグランフォンドピナレロ八ヶ岳を実走レポート。昨年は台風で中止に。そして2年越しの今年は秋晴れに恵まれた。1,250人が登りいっぱいの厳しいコースにチャレンジした。
日曜の朝7時がスタート時間。夕方から降水確率が50%になっていたものの、この日の天気予報は概ね良好で、晴天で気温は30°近くまで上がるという予報。清里の森は白い霧に包まれ、参加者たちはウィンドブレーカーなど防寒装備を身に着けてスタート地点に並んだ。
20人ごとにウェーブスタートで出走していく。その直後から勾配8%の上りがさっそく1km続く。前半の見どころである赤い橋「東沢大橋」は走っていると観ることができないが、展望台からは八ヶ岳の山容とともに赤い橋の見事な景観が楽しめる。このあたりが最高標高地点だ。
橋を渡り、交差点を曲がると小淵沢までは17kmのダウンヒル。さっそく延々と下ることになるのだ。毎年変化するコースだが、基本的な標高差やプロフィールの傾向はほぼ変わらない。約113kmのグランフォンドは獲得標高約2200mの本格的な山岳コースで、前半は下り基調で順調に距離を稼げるものの、後半は上り区間が続き、ラスト30kmで1000m近くを上る。いわば「行きはヨイヨイ・帰りはコワイ」的レイアウトになっている。となれば、前半は脚を温存しつつも、休みすぎず時間に余裕を持って走りたいもの。
第1エイドまではピナレロ本社のルチアーノさんと一緒になったが、なんだか調子悪そうにしていた。しかし氏は一昨年は誰よりも速く走り1番にフィニッシュするなど、元プロロード選手だった豪脚の持ち主。今回も徐々に調子を盛り返していく。参加者たちのなかにはピナレロのバイクに乗った人が多いが、ツール優勝記念とジロ優勝記念のイエローとピンクのドグマに乗った参加者がルチアーノ氏を囲むと、さらに氏のご機嫌は良くなっていくのだった。
下りの続く序盤はサイコンのトリップメーターの進みが早い。スタートしてから34km地点、通称「ループ橋の下り」を越え、名水の里、白州へ。ウォーターステーションでは有名な水出しコーヒーの振る舞いが嬉しい。その美味しさに目が覚める。実はこの日、ここで蜂に刺された参加者が居て、このエイドはその後間もなく閉鎖されることに。それで立ち寄れない人も多かったようで、ちょっぴり残念だった。
さらに下り、第2エイドではウィスキー醸造で有名な名水の地である白州の水と「むかわ米」の白おにぎり、そしてシャトレーゼ提供のアイスバーが振る舞われる。水が美味しいとお米もアイスクリームも美味しいということを実感できる。
途中、長い橋で渡る釜無川あたりは雄大な風景が楽しめる。釜無川からはじまる長坂への上りは七里岩(しちりいわ)ライン坂と呼ばれる厳しい坂道。日差しも徐々に強くなってきた。
日野春駅近くでJR中央線の線路を渡り、田園風景の広がる長坂へ。このあたりから曇り空から快晴へ。沿道のコスモスと束ねた稲が並ぶ田園風景が続く。秋と言うには少し暑い日となったが、八ヶ岳の山頂付近は雲がかかったままなのが惜しい。
しばしの平坦区間をこなし、再び大きく下りはじめる。第4エイドの高根体育館ではそばと高原レタスのおもてなし。ガールスカウトの女の子たちが山盛りレタスにトマトを乗っけてくれるのが嬉しい。シャキシャキでみずみずしいレタスとそばで水分と塩分の補給。カロリー控えめだからいくらでも食べてOKだ。
中央高速の須玉ICすぐ近くを通るが、このあたりがコース中で最も低いポイントで、標高は460m。そしてここから明野の第5エイド手前のT字路までの約4km・平均勾配7%の登り返しの直登が始まる。8月にはひまわりが咲き誇る景勝地である明野へ、この日は夏雲の空へ向かってのヒルクライムだ。
この上り坂の頂上付近ではゲストのエース栗原さんが参加者に声をかけ、背中をプッシュするサポートを繰り広げていた。エース栗原さんはバイクシューズを脱ぎ、ソックスになって走りながら声援を送る。約2時間、何人もの参加者の背中を押したそうだ。
長い直登を上りきった先の第5エイドは見晴らしのきく高台にある。ここでは金時芋パイやりんごを頬張りながら、南アルプスと八ヶ岳の眺望を楽しむことができる。ここからのルートは尾根沿いのパノラマがしばらく広がる素晴らしい道だ。
増冨ラジウムラインを下り、登り返して目指すは「おいしい学校」という名の第6エイドの「大正館」。廃校になった学校の校舎と校庭がエイド会場になっていて、ここでは4つの味の焼き立てパンとりんごが振る舞われる。ここで98km地点。ここから先はラスト15kmの後半戦の上り坂が続くため、しっかり補給をとっておきたいところ。
おいしい学校を出てすぐ、GFP八ヶ岳最大の難所と言える「海岸寺の登り」が始まる。お寺への参道になっているため、道の両脇に2本の石柱が立っているのが目印。ここを通り過ぎてからは急に斜度を増していく距離にして1.5km、平均勾配は約10%だ。
後半とあってすでに自転車を押して歩き始めている人も。曲がりくねった先では最大勾配地点をクリアした参加者が、後続に声援を送ってくれていた。脚の無くなってきた後半に待つ難所は、誰にとっても厳しいもの。クリアすれば思わず喜びが弾ける。峠のピークにはウォーターステーションがあり、給水してから下りだす。しかししかし、その先もまだ坂は続く!。
つづら折れを越えた第7エイドでは地元のおばちゃんたちが茹でてくれた花豆と、とうもろこしをいただく。どちらも自然な甘さが嬉しい。そして国道までの2kmを登り返して、清里ラインを渡れば最終の第8エイド、丘の公園だ。ここでは味噌をつけていただくスティックきゅうりと、ジャージー牛乳の一口ソフトクリーム。清泉寮の名物ソフトと同じ味を楽しめるのだ。このあたりで午後4時が近づく。気温も下がりはじめ、急に肌寒くなる。筆者はソフトと一緒に自販機のホットコーヒーを楽しんだ。
ここからは残りわずか4km。しかしその全部が上り坂だ。八ヶ岳に向かって一直線に登ると、かかっていた雲も減ってその立派な山容が真正面に眺められた。
登り詰めて清里の森に到着すればフィニッシュだ。完走記念に受け取れるのは、今年新たに企画されたコインタイプの完走メダル。そして空腹と冷える身体を温める豚汁とおにぎりのサービスが嬉しい。
当初は午後から雨の予報もあったが、結局は一日を通して天気は崩れなかった。昼間は夏のように日差しも強くなったが、気温は控えめで走りやすい一日だった。完走の余韻にひたりつつ、芝生の会場に用意されたテーブルで仲間たちの帰りを待ちつつ一日を振り返ってのおしゃべりに花が咲く。「今年は本当に晴れてよかった」と昨年走れなかった人は口を揃える。そして2年ぶりに苦しんだ、坂また坂の難コース。登りいっぱいの厳しいグランフォンドだが、完走率も高く、達成感や満足度はとても高いイベントだ。
photo&text:Makoto.AYANO
日曜の朝7時がスタート時間。夕方から降水確率が50%になっていたものの、この日の天気予報は概ね良好で、晴天で気温は30°近くまで上がるという予報。清里の森は白い霧に包まれ、参加者たちはウィンドブレーカーなど防寒装備を身に着けてスタート地点に並んだ。
20人ごとにウェーブスタートで出走していく。その直後から勾配8%の上りがさっそく1km続く。前半の見どころである赤い橋「東沢大橋」は走っていると観ることができないが、展望台からは八ヶ岳の山容とともに赤い橋の見事な景観が楽しめる。このあたりが最高標高地点だ。
橋を渡り、交差点を曲がると小淵沢までは17kmのダウンヒル。さっそく延々と下ることになるのだ。毎年変化するコースだが、基本的な標高差やプロフィールの傾向はほぼ変わらない。約113kmのグランフォンドは獲得標高約2200mの本格的な山岳コースで、前半は下り基調で順調に距離を稼げるものの、後半は上り区間が続き、ラスト30kmで1000m近くを上る。いわば「行きはヨイヨイ・帰りはコワイ」的レイアウトになっている。となれば、前半は脚を温存しつつも、休みすぎず時間に余裕を持って走りたいもの。
第1エイドまではピナレロ本社のルチアーノさんと一緒になったが、なんだか調子悪そうにしていた。しかし氏は一昨年は誰よりも速く走り1番にフィニッシュするなど、元プロロード選手だった豪脚の持ち主。今回も徐々に調子を盛り返していく。参加者たちのなかにはピナレロのバイクに乗った人が多いが、ツール優勝記念とジロ優勝記念のイエローとピンクのドグマに乗った参加者がルチアーノ氏を囲むと、さらに氏のご機嫌は良くなっていくのだった。
下りの続く序盤はサイコンのトリップメーターの進みが早い。スタートしてから34km地点、通称「ループ橋の下り」を越え、名水の里、白州へ。ウォーターステーションでは有名な水出しコーヒーの振る舞いが嬉しい。その美味しさに目が覚める。実はこの日、ここで蜂に刺された参加者が居て、このエイドはその後間もなく閉鎖されることに。それで立ち寄れない人も多かったようで、ちょっぴり残念だった。
さらに下り、第2エイドではウィスキー醸造で有名な名水の地である白州の水と「むかわ米」の白おにぎり、そしてシャトレーゼ提供のアイスバーが振る舞われる。水が美味しいとお米もアイスクリームも美味しいということを実感できる。
途中、長い橋で渡る釜無川あたりは雄大な風景が楽しめる。釜無川からはじまる長坂への上りは七里岩(しちりいわ)ライン坂と呼ばれる厳しい坂道。日差しも徐々に強くなってきた。
日野春駅近くでJR中央線の線路を渡り、田園風景の広がる長坂へ。このあたりから曇り空から快晴へ。沿道のコスモスと束ねた稲が並ぶ田園風景が続く。秋と言うには少し暑い日となったが、八ヶ岳の山頂付近は雲がかかったままなのが惜しい。
しばしの平坦区間をこなし、再び大きく下りはじめる。第4エイドの高根体育館ではそばと高原レタスのおもてなし。ガールスカウトの女の子たちが山盛りレタスにトマトを乗っけてくれるのが嬉しい。シャキシャキでみずみずしいレタスとそばで水分と塩分の補給。カロリー控えめだからいくらでも食べてOKだ。
中央高速の須玉ICすぐ近くを通るが、このあたりがコース中で最も低いポイントで、標高は460m。そしてここから明野の第5エイド手前のT字路までの約4km・平均勾配7%の登り返しの直登が始まる。8月にはひまわりが咲き誇る景勝地である明野へ、この日は夏雲の空へ向かってのヒルクライムだ。
この上り坂の頂上付近ではゲストのエース栗原さんが参加者に声をかけ、背中をプッシュするサポートを繰り広げていた。エース栗原さんはバイクシューズを脱ぎ、ソックスになって走りながら声援を送る。約2時間、何人もの参加者の背中を押したそうだ。
長い直登を上りきった先の第5エイドは見晴らしのきく高台にある。ここでは金時芋パイやりんごを頬張りながら、南アルプスと八ヶ岳の眺望を楽しむことができる。ここからのルートは尾根沿いのパノラマがしばらく広がる素晴らしい道だ。
増冨ラジウムラインを下り、登り返して目指すは「おいしい学校」という名の第6エイドの「大正館」。廃校になった学校の校舎と校庭がエイド会場になっていて、ここでは4つの味の焼き立てパンとりんごが振る舞われる。ここで98km地点。ここから先はラスト15kmの後半戦の上り坂が続くため、しっかり補給をとっておきたいところ。
おいしい学校を出てすぐ、GFP八ヶ岳最大の難所と言える「海岸寺の登り」が始まる。お寺への参道になっているため、道の両脇に2本の石柱が立っているのが目印。ここを通り過ぎてからは急に斜度を増していく距離にして1.5km、平均勾配は約10%だ。
後半とあってすでに自転車を押して歩き始めている人も。曲がりくねった先では最大勾配地点をクリアした参加者が、後続に声援を送ってくれていた。脚の無くなってきた後半に待つ難所は、誰にとっても厳しいもの。クリアすれば思わず喜びが弾ける。峠のピークにはウォーターステーションがあり、給水してから下りだす。しかししかし、その先もまだ坂は続く!。
つづら折れを越えた第7エイドでは地元のおばちゃんたちが茹でてくれた花豆と、とうもろこしをいただく。どちらも自然な甘さが嬉しい。そして国道までの2kmを登り返して、清里ラインを渡れば最終の第8エイド、丘の公園だ。ここでは味噌をつけていただくスティックきゅうりと、ジャージー牛乳の一口ソフトクリーム。清泉寮の名物ソフトと同じ味を楽しめるのだ。このあたりで午後4時が近づく。気温も下がりはじめ、急に肌寒くなる。筆者はソフトと一緒に自販機のホットコーヒーを楽しんだ。
ここからは残りわずか4km。しかしその全部が上り坂だ。八ヶ岳に向かって一直線に登ると、かかっていた雲も減ってその立派な山容が真正面に眺められた。
登り詰めて清里の森に到着すればフィニッシュだ。完走記念に受け取れるのは、今年新たに企画されたコインタイプの完走メダル。そして空腹と冷える身体を温める豚汁とおにぎりのサービスが嬉しい。
当初は午後から雨の予報もあったが、結局は一日を通して天気は崩れなかった。昼間は夏のように日差しも強くなったが、気温は控えめで走りやすい一日だった。完走の余韻にひたりつつ、芝生の会場に用意されたテーブルで仲間たちの帰りを待ちつつ一日を振り返ってのおしゃべりに花が咲く。「今年は本当に晴れてよかった」と昨年走れなかった人は口を揃える。そして2年ぶりに苦しんだ、坂また坂の難コース。登りいっぱいの厳しいグランフォンドだが、完走率も高く、達成感や満足度はとても高いイベントだ。
photo&text:Makoto.AYANO
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