2019/02/04(月) - 16:47
うららかな晴天に恵まれ、走り出した今年の美ら島オキナワセンチュリーラン。KOMとなる本部半島の登りを終えた後は、絶景オーシャンビューと島グルメが目白押しに。実走レポート後編をお届けします。
屋部からの登りを頑張ったサイクリストへ、美ら島オキナワセンチュリーランはしっかりご褒美を用意してくれている。大会随一の絶景ポイントである屋我知島と古宇利島を繋ぐ2つの美しい橋、「ワルミ大橋」と「古宇利大橋」だ。
馬の背のようなアップダウンをいくつか超えると、目の前が一気に開ける下り坂が始まる。右手に緑豊かな草原が、左手には絵具のような青い海が広がるワルミ大橋への大パノラマに、思わず「すごーい!」と声を漏らす初参加と思しき女性ライダー。
新鮮な体験としてこの絶景を味わえることに少し羨ましさを感じるけれど、何度見たからといって魅力が減じるわけではない。次々に停車し記念撮影を行う皆さんの撮影をお手伝いしつつ感動を分かち合い、先に見える古宇利島へと再びペダルを回す。
そして迎えた古宇利大橋。橋へ向かうまっすぐなダウンヒルは爽快そのもの。海上に描かれた優美なアーチを渡ったら、第2エイドへ到着だ。古宇利大橋のたもとに設けられたエイドでは、沖縄らしくサトウキビが山盛りに。
しゃくしゃくとした噛み応えとじゅわりと染み出す甘味が、ちょっと疲れてきた身体をしゃっきりとさせてくれる。ほっと一息ついていると、エイドスタッフの方がアナウンスを始めた。
「次の羽地ダムでは10時30分が関門締め切りになります」んん?この時点で時計を見ると、9時45分、羽地ダムまでは16㎞ほど、しかも登り区間もある。これはかなりまずいのでは?ということで、名残を惜しみつつすぐさまコースイン。
往路では爽快そのものだった古宇利大橋へのダウンヒルを今度はひぃひぃ言いながら登り、屋我知島から沖縄本島へとひた走る。次なるエイドはセンチュリーコース初登場となる羽地ダム。ツール・ド・おきなわでは最後の勝負所としても知られる場所だ。
コースとしてはツール・ド・おきなわとは反対方向からのアプローチとなり、登りと下りは逆となる。実は初めて走る区間であること、そして関門時間のこともあり、かなり苦しむことを覚悟して臨んだのだった。
羽地ダムの堤体が見えれば間もなく登り区間が始まる。最初のコーナーを曲がった瞬間、かなりの斜度の坂が目の前に現れた。中には蛇行する人や押す人も現れるほどの斜度だが、本当にきつい区間は案外短い。そして、エイドステーションも登りの中腹に設けられており、思っていたよりも早く到着。何とか関門時刻に引っかかることなく通過できた。
さて、トンネルを抜け羽地ダムにかかる橋を渡り、もう少し行った先が頂上となる。とはいえ、半分ずつに分けて登っているようなものなので、そこまで疲労感も無く登り切れるはずだ。
登った分だけダウンヒルを楽しみ、4つ目のエイドステーション、わんさか大浦パークへと駆け込む。こちらは、マングローブ林を間近に観察できる水上遊歩道が設置されている沖縄の自然と触れ合える体験型の公園でもある。
羽地エイドが給水がメインだったのにたいし、こちらはなかなか盛り沢山。カボチャ味のサーターアンダギーにジューシーなタンカン、そして「なんとう」と呼ばれるもち米ベースのお菓子が振舞われる。もともと旧正月に仏壇に供えるためのお餅だったというなんとうは、添加物など一切入っていない手作り感あふれる素朴な甘さ。こういったガイド本などには載っていなさそうな、なかなか知ることのできない地元のローカルスイーツを楽しめるのもこういったサイクリングイベントの魅力の一つだ。
ここからは沖縄本島の東側の海岸線を南下していく。移転問題に揺れるキャンプシュワブの横を通り過ぎ、ここからは国道329号線を使ってどんどん距離を稼いでいく。だが、気づけばいつのまにやら空が灰色に染まり、まさに雲行きが悪くなってきたな、と思うとぱらぱらと雨が落ちてきた。
少し様子を見つつ走っていると、だんだんと雨脚は強くなり激しいときにはシャワーのような降りっぷりに。本州でこの時期に降られてしまったら風邪か低体温待ったなしだが、幸い気温も20度に迫る温暖さのおかげで走ることに支障はない。
沖縄の真ん中に位置する宜野座村のリラクゼーションスポット、かりゆしカンナタラソラグーナが次なるエイドステーション。びしょ濡れになりながらたどり着いたこちらのエイド、足湯に入ることができるため、タオルが用意されていた。
何たる僥倖。ということでとりあえず体を拭き、人心地つくことが出来た。加えてあったかーいモズクスープも振舞われ、冷えた身体に染み渡る。そうやって休んでいると雨足も弱まってきた。なんだか、このエイドステーションのありがたさを高めるためにわざと降ってきたんじゃないか?と疑ってしまいそうなタイミングの良さである。
体制を整え、走り出すとすぐに次の金武町のエイドに到着する。この間の距離は5kmほどしかなく、所要時間は15分ほど。お腹も減ってきた頃合いに、ランチエイドが登場だ。発祥の地として有名な金武町だけあって、もちろん振舞われるのはタコライス。レタス抜き、チーズ抜き、全部入り、そしてタコソースとケチャップも選べるという親切仕様なランチ会場となっている。
しっかりとボリュームのあるタコライスだが、ここまで走ってきたこともありスルリと胃袋に収まってしまう。暖かなコンソメスープも用意され、ホッと一息。エイドには琉球リハビリテーション学院の生徒さんたちによるストレッチサービスも用意され、後半に向けてコンディションを整えることも出来る。
エイドをスタートしたら、再び国道329号線へ再合流。沖縄本島が”く”の字に見えるとしたら、そのへこんだ部分に相当する金武湾を左に見つつ、距離を稼ぐ。タコライスのルーツであるキャンプハンセンゲート前の新開地地区などを通り過ぎ、うるま市へ。
市役所に設置されたエイドでは、うるま市内の有名店のスイーツが用意され、タコライスで満たされたあとのデザートとして美味しくいただくことが出来た。老舗「アラモード」さんの名物の闘牛をモチーフにしたブラウニーや、「プティフール」さんのうるまの埋蔵金と名付けられた黄金芋を使った饅頭など、うるまならではのスイーツだ。
さて、ここを過ぎればセンチュリーコース最大のハイライトポイントである海中道路はもうすぐだ。今年はこの時間帯は北風となっており、うるま市役所からは追い風のボーナスステージ。海中道路へ至る海沿いの平坦路を快走し、沖縄本島と平安座島を繋ぐ巨大な橋へ向かう。
遮るものの無い海上の風を容赦なく浴びることになる海中道路、例年は向かい風と相場が決まっているが今年は強烈な横風に。車体を風上に倒しつつ進んでいく。海上にはウインドサーフィンを楽しむ人たちもいるが、なかなか尋常ではない速度で航走っている。ブレーキもないだろうに怖くないのだろうか、なんて他人様の心配をして気を紛らわしつつ8つ目のエイドステーション、海の駅あやはし館に到着。
こちらのエイドの目玉はもずくコロッケ。全国でもずくの生産量ナンバーワンを誇るうるま市のなかでも、特にもずく漁が盛んな浜比嘉島で地元の方から高い人気を誇る丸吉食品さんの看板メニューの一つなのだ。もずくといえば酢の物、というイメージだった私にとって、昨年初めて食べたこのコロッケは衝撃的な美味しさだった。ホクホクのジャガイモととろみのあるもずくが合わさることによって生まれる新しい食感はこのもずくコロッケならでは。今年もこのコロッケを頂くために横風の中で海中道路を走ってきたようなものである。
1年越しの的を果たしたら、海中道路を一旦平安座島まで渡り切った先の交差点でUターンし、再び本島へと戻っていく。世界遺産にも指定された勝連城跡を左に見つつ、うるま市街を通り抜ける。市街地の先には、嘉手納基地を左手に見る平坦路が登場。だだっ広い航空基地横を走り抜け、道の駅かでなで最後の休憩をとる。
なーび屋さんのサーターアンダギーやバリエーションたっぷりのちんすこう、沖縄県民になじみ深いジミーのクッキーで、最後のエネルギーをチャージ。ここからは再び国道58号線を使い、フィニッシュ地点まで戻っていく。
大きな登りこそないけれど、細やかなアップダウンがゴールを目前にした脚にはかなりキツくなってくる。出発直後ならなんてことはなかっただろう、ちょっとした登りがかなり大きく見えてしまう。あと数キロ、されどその数キロが中々遠い。
「もうちょっとですよ!」とペースの合う参加者の方と励まし合いながら、最後の一踏み。恩納村小中学校の交差点を左折すれば、あと少し!かなり出し切って、何とか制限時間前にゴールへたどり着くと、大きな声援が迎えてくれた。
フィニッシュ後には、各エイドで集めたシールを貼ったゼッケンと完走証を一緒にラミネートしてくれるサービスも。仲間と記念撮影するもよし、ケータリングで沖縄グルメを頂くもよし。そして、夕方からは後夜祭が開かれ、豪華景品が当たるじゃんけん大会も。景品の中にはANAのチケットもあり、会場は大盛り上がり。そして、ラストは恩名村のエイサーが披露され、南国のリズムと共に大会はお開きとなったのだった。
text&photo:Naoki.Yasuoka
屋部からの登りを頑張ったサイクリストへ、美ら島オキナワセンチュリーランはしっかりご褒美を用意してくれている。大会随一の絶景ポイントである屋我知島と古宇利島を繋ぐ2つの美しい橋、「ワルミ大橋」と「古宇利大橋」だ。
馬の背のようなアップダウンをいくつか超えると、目の前が一気に開ける下り坂が始まる。右手に緑豊かな草原が、左手には絵具のような青い海が広がるワルミ大橋への大パノラマに、思わず「すごーい!」と声を漏らす初参加と思しき女性ライダー。
新鮮な体験としてこの絶景を味わえることに少し羨ましさを感じるけれど、何度見たからといって魅力が減じるわけではない。次々に停車し記念撮影を行う皆さんの撮影をお手伝いしつつ感動を分かち合い、先に見える古宇利島へと再びペダルを回す。
そして迎えた古宇利大橋。橋へ向かうまっすぐなダウンヒルは爽快そのもの。海上に描かれた優美なアーチを渡ったら、第2エイドへ到着だ。古宇利大橋のたもとに設けられたエイドでは、沖縄らしくサトウキビが山盛りに。
しゃくしゃくとした噛み応えとじゅわりと染み出す甘味が、ちょっと疲れてきた身体をしゃっきりとさせてくれる。ほっと一息ついていると、エイドスタッフの方がアナウンスを始めた。
「次の羽地ダムでは10時30分が関門締め切りになります」んん?この時点で時計を見ると、9時45分、羽地ダムまでは16㎞ほど、しかも登り区間もある。これはかなりまずいのでは?ということで、名残を惜しみつつすぐさまコースイン。
往路では爽快そのものだった古宇利大橋へのダウンヒルを今度はひぃひぃ言いながら登り、屋我知島から沖縄本島へとひた走る。次なるエイドはセンチュリーコース初登場となる羽地ダム。ツール・ド・おきなわでは最後の勝負所としても知られる場所だ。
コースとしてはツール・ド・おきなわとは反対方向からのアプローチとなり、登りと下りは逆となる。実は初めて走る区間であること、そして関門時間のこともあり、かなり苦しむことを覚悟して臨んだのだった。
羽地ダムの堤体が見えれば間もなく登り区間が始まる。最初のコーナーを曲がった瞬間、かなりの斜度の坂が目の前に現れた。中には蛇行する人や押す人も現れるほどの斜度だが、本当にきつい区間は案外短い。そして、エイドステーションも登りの中腹に設けられており、思っていたよりも早く到着。何とか関門時刻に引っかかることなく通過できた。
さて、トンネルを抜け羽地ダムにかかる橋を渡り、もう少し行った先が頂上となる。とはいえ、半分ずつに分けて登っているようなものなので、そこまで疲労感も無く登り切れるはずだ。
登った分だけダウンヒルを楽しみ、4つ目のエイドステーション、わんさか大浦パークへと駆け込む。こちらは、マングローブ林を間近に観察できる水上遊歩道が設置されている沖縄の自然と触れ合える体験型の公園でもある。
羽地エイドが給水がメインだったのにたいし、こちらはなかなか盛り沢山。カボチャ味のサーターアンダギーにジューシーなタンカン、そして「なんとう」と呼ばれるもち米ベースのお菓子が振舞われる。もともと旧正月に仏壇に供えるためのお餅だったというなんとうは、添加物など一切入っていない手作り感あふれる素朴な甘さ。こういったガイド本などには載っていなさそうな、なかなか知ることのできない地元のローカルスイーツを楽しめるのもこういったサイクリングイベントの魅力の一つだ。
ここからは沖縄本島の東側の海岸線を南下していく。移転問題に揺れるキャンプシュワブの横を通り過ぎ、ここからは国道329号線を使ってどんどん距離を稼いでいく。だが、気づけばいつのまにやら空が灰色に染まり、まさに雲行きが悪くなってきたな、と思うとぱらぱらと雨が落ちてきた。
少し様子を見つつ走っていると、だんだんと雨脚は強くなり激しいときにはシャワーのような降りっぷりに。本州でこの時期に降られてしまったら風邪か低体温待ったなしだが、幸い気温も20度に迫る温暖さのおかげで走ることに支障はない。
沖縄の真ん中に位置する宜野座村のリラクゼーションスポット、かりゆしカンナタラソラグーナが次なるエイドステーション。びしょ濡れになりながらたどり着いたこちらのエイド、足湯に入ることができるため、タオルが用意されていた。
何たる僥倖。ということでとりあえず体を拭き、人心地つくことが出来た。加えてあったかーいモズクスープも振舞われ、冷えた身体に染み渡る。そうやって休んでいると雨足も弱まってきた。なんだか、このエイドステーションのありがたさを高めるためにわざと降ってきたんじゃないか?と疑ってしまいそうなタイミングの良さである。
体制を整え、走り出すとすぐに次の金武町のエイドに到着する。この間の距離は5kmほどしかなく、所要時間は15分ほど。お腹も減ってきた頃合いに、ランチエイドが登場だ。発祥の地として有名な金武町だけあって、もちろん振舞われるのはタコライス。レタス抜き、チーズ抜き、全部入り、そしてタコソースとケチャップも選べるという親切仕様なランチ会場となっている。
しっかりとボリュームのあるタコライスだが、ここまで走ってきたこともありスルリと胃袋に収まってしまう。暖かなコンソメスープも用意され、ホッと一息。エイドには琉球リハビリテーション学院の生徒さんたちによるストレッチサービスも用意され、後半に向けてコンディションを整えることも出来る。
エイドをスタートしたら、再び国道329号線へ再合流。沖縄本島が”く”の字に見えるとしたら、そのへこんだ部分に相当する金武湾を左に見つつ、距離を稼ぐ。タコライスのルーツであるキャンプハンセンゲート前の新開地地区などを通り過ぎ、うるま市へ。
市役所に設置されたエイドでは、うるま市内の有名店のスイーツが用意され、タコライスで満たされたあとのデザートとして美味しくいただくことが出来た。老舗「アラモード」さんの名物の闘牛をモチーフにしたブラウニーや、「プティフール」さんのうるまの埋蔵金と名付けられた黄金芋を使った饅頭など、うるまならではのスイーツだ。
さて、ここを過ぎればセンチュリーコース最大のハイライトポイントである海中道路はもうすぐだ。今年はこの時間帯は北風となっており、うるま市役所からは追い風のボーナスステージ。海中道路へ至る海沿いの平坦路を快走し、沖縄本島と平安座島を繋ぐ巨大な橋へ向かう。
遮るものの無い海上の風を容赦なく浴びることになる海中道路、例年は向かい風と相場が決まっているが今年は強烈な横風に。車体を風上に倒しつつ進んでいく。海上にはウインドサーフィンを楽しむ人たちもいるが、なかなか尋常ではない速度で航走っている。ブレーキもないだろうに怖くないのだろうか、なんて他人様の心配をして気を紛らわしつつ8つ目のエイドステーション、海の駅あやはし館に到着。
こちらのエイドの目玉はもずくコロッケ。全国でもずくの生産量ナンバーワンを誇るうるま市のなかでも、特にもずく漁が盛んな浜比嘉島で地元の方から高い人気を誇る丸吉食品さんの看板メニューの一つなのだ。もずくといえば酢の物、というイメージだった私にとって、昨年初めて食べたこのコロッケは衝撃的な美味しさだった。ホクホクのジャガイモととろみのあるもずくが合わさることによって生まれる新しい食感はこのもずくコロッケならでは。今年もこのコロッケを頂くために横風の中で海中道路を走ってきたようなものである。
1年越しの的を果たしたら、海中道路を一旦平安座島まで渡り切った先の交差点でUターンし、再び本島へと戻っていく。世界遺産にも指定された勝連城跡を左に見つつ、うるま市街を通り抜ける。市街地の先には、嘉手納基地を左手に見る平坦路が登場。だだっ広い航空基地横を走り抜け、道の駅かでなで最後の休憩をとる。
なーび屋さんのサーターアンダギーやバリエーションたっぷりのちんすこう、沖縄県民になじみ深いジミーのクッキーで、最後のエネルギーをチャージ。ここからは再び国道58号線を使い、フィニッシュ地点まで戻っていく。
大きな登りこそないけれど、細やかなアップダウンがゴールを目前にした脚にはかなりキツくなってくる。出発直後ならなんてことはなかっただろう、ちょっとした登りがかなり大きく見えてしまう。あと数キロ、されどその数キロが中々遠い。
「もうちょっとですよ!」とペースの合う参加者の方と励まし合いながら、最後の一踏み。恩納村小中学校の交差点を左折すれば、あと少し!かなり出し切って、何とか制限時間前にゴールへたどり着くと、大きな声援が迎えてくれた。
フィニッシュ後には、各エイドで集めたシールを貼ったゼッケンと完走証を一緒にラミネートしてくれるサービスも。仲間と記念撮影するもよし、ケータリングで沖縄グルメを頂くもよし。そして、夕方からは後夜祭が開かれ、豪華景品が当たるじゃんけん大会も。景品の中にはANAのチケットもあり、会場は大盛り上がり。そして、ラストは恩名村のエイサーが披露され、南国のリズムと共に大会はお開きとなったのだった。
text&photo:Naoki.Yasuoka