2018/11/21(水) - 12:58
色づき始めた山梨県の山々の麓で開催された南アルプスロングライド。11月17、18日の2日間に渡って開催されたライドイベントから、最も短い距離のコースにグルメ、景色、アクティビティの満足感を詰め込んだ「プチ・南アルプスステージ」をレポートしよう。
木々が冬を越すために衣替えを始めた11月。ロードサイクリングが気持ち良いシーズンエンドに行われるのが、山梨の道の駅富士川で開催される「南アルプスロングライド」だ。盆地という地形を生かしたルート設計や富士川の両手に広がる山々の紅葉が見どころであり、県内外から多くのサイクリストが集まる。
2年前より土曜日と日曜日の2日間開催となり、道の駅富士川を中心に北側(白州・韮崎)と南側(身延)を満喫することができる充実したイベントとなっている。今回のレポートでは、大会初日に行なわれた最も走行距離が短いプチ・南アルプスステージをレポートしよう。
南アルプスロングライド開催日より1週間前、ヤフーの週間天気予報が示す土曜日の空模様は雨/曇り。冬に変わりつつこの季節に雨模様は非常に厳しい。どんよりとした心模様で平日の仕事をこなしていたら、いつの間にか天気予報は晴れに。こんなにも嬉しいことはあるのだろうか。土曜日の朝、意気揚々と道の駅富士川に乗り込んだ。
朝7時の道の駅富士川は空気が冷えており、起き抜けで寝ている体を叩き起こしてくれる。「これはウィンドブレーカーは必要かな」と思っていたものの、太陽が昇るにつれてみるみるうちに気温は上昇していき、ウィンドブレーカーはバックパックに仕舞われることに。
冬のように澄んだ空気、秋のように暖かい日差しには誰もが喜んだことだろう。なんでも土曜日のイベントが開催されて3回目にして初めて晴れ模様となったのだとか。確かに前回、前々回のCWレポートを読むと曇天もしくは雨の写真が並んでいる。ついに、黄金色と赤色に色づく紅葉の山々が輝いている姿を見ることができるのだ。
晴れた幸福感に包まれる会場には大会を主催する山梨サイクルプロジェクトの理事長・青木さんとMCの浅利そのみさんの声がこだましている。この大会は主催するスタッフとゲストライダーが元気一杯に参加者を迎え入れてくれるため、今回初めて参加する私・フジワラも何故かホームのように感じてしまう。
ゲストライダーとして一緒に走ってくれる今中大介さん、デュアスロン全日本チャンプ経験者であるエース栗原さん、自転車雑誌でお馴染みになったファッションモデルの石垣美帆さんら3名も気さくに記念撮影に応じてくれるため、参加者の皆さんからは自然と笑顔が溢れてくる。
青木理事長のエネルギッシュな開会式を終えると約80kmの白州・韮崎ステージがスタートする。約35kmのプチ・南アルプスステージはいくつかのグループに分かれて発走していく。今年のこのコースは満員御礼の札が掲げられたそうで、非常に賑やかなスタートとなった。
南アルプスロングライドの特徴は、出走班が分けられておりグループリーダーが心地よい速度でペースメイキングしてくれるところにある。プチは約20km/hほどで走行してくれるポタリングペース。ロードバイク初心者の方やお子さんでも頑張りきれる距離と速度感である。実際に今回は親子ペアで参加している家族が多くグループ内も朗らかな雰囲気に包まれていた。
さて、道の駅富士川を出発したプチ御一行は南アルプスの麓、甲府盆地の西側に沿うように足を進める。空は開け、色づき始めた山々が美しさが広がる郊外の道はサイクリングにうってつけ。ロケーションは最高、11月中旬とは思えないポカポカ陽気も気持ちよい。これ以上のシチュエーションはあるだろうか。
柿の木が橙色の実をたわわに実らせており、秋の季節感も抜群。晩夏に訪れれば梨やブドウなども沢山見ることができるだろう。フルーツ王国山梨の一幕を感じながら進むのも非常に楽しい。
約12km地点で第1エイドステーションに辿り着き、地元の人気洋菓子店「清月」さんが振舞ってくれたのは自慢のイタリアンロール。クレープのようにモチモチした皮とフワフワの生地の食感と程よい甘さのクリームは食べやすく、ペロリと平らげてしまう。マドレーヌも数種類用意された甘い物好きには堪らないエイドに後ろ髪を引かれながら各グループは再スタート切っていく。
ルートが山の麓である以上アップダウンは避けられない。序盤は気がつかない程度に登り基調であり、頑張りすぎるといつの間にか足が削られているということになってしまうのには注意!私自身、見事にその落とし穴にハマっていたことはつゆ知らず。
徐々に勾配が増している事は何となく気がついていたが、山道に入りパンチ力のある約8%程の登り坂と下り坂が繰り返した時にようやく気がつく。「これ中々タフなライドだ」と。
ピークを越えたところで現れるのが桃花橋ループだ。地元の方からはループ橋と呼ばれており、ここから南アルプス市街を一望できるビュースポット。見事に晴れたため遠くの富士山も顔を出しており、絶景と呼ぶにふさわしい光景が広がる。
グルリと回るループ橋を駆け下りると、柿の実を干しているお父さんがいたので思わず途中停車し、色々と聴きこんでしまう。通りがかった時に行っていた作業は、硫黄の煙で燻している所。これがカビ防止になるという。その後、乾燥機にかければ3日間、天日干しの場合は20日間を掛けて水分を抜いていくと教えてくれた。
ループ橋の麓からジワジワと標高を上げてきた仕上げは、富士山を一望できる素晴らしい景色が広がる急峻な登坂。とはいえ何百メートルもない短い登り坂なので、頑張ればこなせてしまう絶妙なプロフィール。目と脚で楽しめるコース選びには驚くばかりだ。
第2エイドが開設されたのは南アルプス特産品企業組合・ほたるみ館。ここでは毎週土曜日に朝市を開いており、そこでも売られている手作りのジャムや饅頭、ふと巻き寿司、いなり寿司などが振舞われる。選り取り見取りのオヤツにアレもコレもと手をつけてしまい、完全にライドでの消費カロリーに対して摂取カロリーが上回っているはず。しかし、美味しいものを目の前にして食べない手はない。いただきます。
ほたるみ館には山梨県内に7体いるというチャリタヌ君の1体がいるので、記念撮影は欠かせない。道の駅富士川のチャリタヌ君も合わせて、この日だけで2体と出会うことができるため、7体コンプリートも遠くはないはずだ。是非とも他の5体を見つけてもらいたい。
ほたるみ館でお母さんたちの優しさに触れ懐かしい気分になった後は、いよいよライド最終盤だ。ここからは下り基調となるため気持ちよくペダルを回すだけ。トンネルを抜けると現れる富士山が現れる。この日、何度も富士山を見ることができるのだが、唯一無二の霊峰はいつどんな時に、何回見ても美しく、飽きることを知らない。
外輪山の後ろに姿を消すほど標高を下げたら道の駅富士川へフィニッシュだ。ライドを終えたらラストのエイドご飯「みみ」を頂こう。ライド後の休憩で地元の食を振る舞ってくれるのは嬉しいおもてなしだ。
プチ・南アルプスステージは午後イチの時間帯にフィニッシュできるため、その後の旅行プランも立てやすい。山梨の温泉を楽しみ、夕食を食べてから帰宅するも良し、2日目のライドに向けて休養をとるのも良し。せっかく豪華なゲストライダーが集まるイベントなので、トークショーも外せない。
ファッションモデルである石垣さんはコレクションのランウェイを歩く仕事もされていたそうで、急遽プロのウォーキングを披露することに。バッチリ決まったウォーキングに観覧していたサイクリストからは感嘆の声も。モデルさんの仕事を見る機会はTV越しでしか無いが、生で見るウォーキングは非常にカッコいい。流石です…。
そして今回のトークショーでは東京五輪ロードレースの山梨県PRムービーが初公開された。道志みちや山中湖、三国峠などの見どころと、コースの難易度が非常に高いことを紹介する動画は、会場にいた全員が食い入るように見ていたのが非常に印象的だ。やはり自国開催の五輪の注目度は高い。
日本のレジェンド今中さんとエース栗原さんによるペダリング講座では目から鱗の知識が沢山披露され、バリバリ自転車を楽しんでいる石垣さんも多くを学んでいたようだ。今中さん、エース栗原さん、石垣さんの掛け合いが面白くいつまでも見ていられそうなトークショーと豪華景品が貰えるじゃんけん大会もお開きに。
初心者でも登りきれる短い登坂と登り返しは非常に絶妙な塩梅。スイーツは頬が落ちるのではないかと思うほど美味しいし、ロケーションも最高。グルメ、眺め、達成感の三方良しなプチ・南アルプスステージは、どんな人でも楽しめる満足のイベントだった。
text&photo : Gakuto Fujiwara
木々が冬を越すために衣替えを始めた11月。ロードサイクリングが気持ち良いシーズンエンドに行われるのが、山梨の道の駅富士川で開催される「南アルプスロングライド」だ。盆地という地形を生かしたルート設計や富士川の両手に広がる山々の紅葉が見どころであり、県内外から多くのサイクリストが集まる。
2年前より土曜日と日曜日の2日間開催となり、道の駅富士川を中心に北側(白州・韮崎)と南側(身延)を満喫することができる充実したイベントとなっている。今回のレポートでは、大会初日に行なわれた最も走行距離が短いプチ・南アルプスステージをレポートしよう。
南アルプスロングライド開催日より1週間前、ヤフーの週間天気予報が示す土曜日の空模様は雨/曇り。冬に変わりつつこの季節に雨模様は非常に厳しい。どんよりとした心模様で平日の仕事をこなしていたら、いつの間にか天気予報は晴れに。こんなにも嬉しいことはあるのだろうか。土曜日の朝、意気揚々と道の駅富士川に乗り込んだ。
朝7時の道の駅富士川は空気が冷えており、起き抜けで寝ている体を叩き起こしてくれる。「これはウィンドブレーカーは必要かな」と思っていたものの、太陽が昇るにつれてみるみるうちに気温は上昇していき、ウィンドブレーカーはバックパックに仕舞われることに。
冬のように澄んだ空気、秋のように暖かい日差しには誰もが喜んだことだろう。なんでも土曜日のイベントが開催されて3回目にして初めて晴れ模様となったのだとか。確かに前回、前々回のCWレポートを読むと曇天もしくは雨の写真が並んでいる。ついに、黄金色と赤色に色づく紅葉の山々が輝いている姿を見ることができるのだ。
晴れた幸福感に包まれる会場には大会を主催する山梨サイクルプロジェクトの理事長・青木さんとMCの浅利そのみさんの声がこだましている。この大会は主催するスタッフとゲストライダーが元気一杯に参加者を迎え入れてくれるため、今回初めて参加する私・フジワラも何故かホームのように感じてしまう。
ゲストライダーとして一緒に走ってくれる今中大介さん、デュアスロン全日本チャンプ経験者であるエース栗原さん、自転車雑誌でお馴染みになったファッションモデルの石垣美帆さんら3名も気さくに記念撮影に応じてくれるため、参加者の皆さんからは自然と笑顔が溢れてくる。
青木理事長のエネルギッシュな開会式を終えると約80kmの白州・韮崎ステージがスタートする。約35kmのプチ・南アルプスステージはいくつかのグループに分かれて発走していく。今年のこのコースは満員御礼の札が掲げられたそうで、非常に賑やかなスタートとなった。
南アルプスロングライドの特徴は、出走班が分けられておりグループリーダーが心地よい速度でペースメイキングしてくれるところにある。プチは約20km/hほどで走行してくれるポタリングペース。ロードバイク初心者の方やお子さんでも頑張りきれる距離と速度感である。実際に今回は親子ペアで参加している家族が多くグループ内も朗らかな雰囲気に包まれていた。
さて、道の駅富士川を出発したプチ御一行は南アルプスの麓、甲府盆地の西側に沿うように足を進める。空は開け、色づき始めた山々が美しさが広がる郊外の道はサイクリングにうってつけ。ロケーションは最高、11月中旬とは思えないポカポカ陽気も気持ちよい。これ以上のシチュエーションはあるだろうか。
柿の木が橙色の実をたわわに実らせており、秋の季節感も抜群。晩夏に訪れれば梨やブドウなども沢山見ることができるだろう。フルーツ王国山梨の一幕を感じながら進むのも非常に楽しい。
約12km地点で第1エイドステーションに辿り着き、地元の人気洋菓子店「清月」さんが振舞ってくれたのは自慢のイタリアンロール。クレープのようにモチモチした皮とフワフワの生地の食感と程よい甘さのクリームは食べやすく、ペロリと平らげてしまう。マドレーヌも数種類用意された甘い物好きには堪らないエイドに後ろ髪を引かれながら各グループは再スタート切っていく。
ルートが山の麓である以上アップダウンは避けられない。序盤は気がつかない程度に登り基調であり、頑張りすぎるといつの間にか足が削られているということになってしまうのには注意!私自身、見事にその落とし穴にハマっていたことはつゆ知らず。
徐々に勾配が増している事は何となく気がついていたが、山道に入りパンチ力のある約8%程の登り坂と下り坂が繰り返した時にようやく気がつく。「これ中々タフなライドだ」と。
ピークを越えたところで現れるのが桃花橋ループだ。地元の方からはループ橋と呼ばれており、ここから南アルプス市街を一望できるビュースポット。見事に晴れたため遠くの富士山も顔を出しており、絶景と呼ぶにふさわしい光景が広がる。
グルリと回るループ橋を駆け下りると、柿の実を干しているお父さんがいたので思わず途中停車し、色々と聴きこんでしまう。通りがかった時に行っていた作業は、硫黄の煙で燻している所。これがカビ防止になるという。その後、乾燥機にかければ3日間、天日干しの場合は20日間を掛けて水分を抜いていくと教えてくれた。
ループ橋の麓からジワジワと標高を上げてきた仕上げは、富士山を一望できる素晴らしい景色が広がる急峻な登坂。とはいえ何百メートルもない短い登り坂なので、頑張ればこなせてしまう絶妙なプロフィール。目と脚で楽しめるコース選びには驚くばかりだ。
第2エイドが開設されたのは南アルプス特産品企業組合・ほたるみ館。ここでは毎週土曜日に朝市を開いており、そこでも売られている手作りのジャムや饅頭、ふと巻き寿司、いなり寿司などが振舞われる。選り取り見取りのオヤツにアレもコレもと手をつけてしまい、完全にライドでの消費カロリーに対して摂取カロリーが上回っているはず。しかし、美味しいものを目の前にして食べない手はない。いただきます。
ほたるみ館には山梨県内に7体いるというチャリタヌ君の1体がいるので、記念撮影は欠かせない。道の駅富士川のチャリタヌ君も合わせて、この日だけで2体と出会うことができるため、7体コンプリートも遠くはないはずだ。是非とも他の5体を見つけてもらいたい。
ほたるみ館でお母さんたちの優しさに触れ懐かしい気分になった後は、いよいよライド最終盤だ。ここからは下り基調となるため気持ちよくペダルを回すだけ。トンネルを抜けると現れる富士山が現れる。この日、何度も富士山を見ることができるのだが、唯一無二の霊峰はいつどんな時に、何回見ても美しく、飽きることを知らない。
外輪山の後ろに姿を消すほど標高を下げたら道の駅富士川へフィニッシュだ。ライドを終えたらラストのエイドご飯「みみ」を頂こう。ライド後の休憩で地元の食を振る舞ってくれるのは嬉しいおもてなしだ。
プチ・南アルプスステージは午後イチの時間帯にフィニッシュできるため、その後の旅行プランも立てやすい。山梨の温泉を楽しみ、夕食を食べてから帰宅するも良し、2日目のライドに向けて休養をとるのも良し。せっかく豪華なゲストライダーが集まるイベントなので、トークショーも外せない。
ファッションモデルである石垣さんはコレクションのランウェイを歩く仕事もされていたそうで、急遽プロのウォーキングを披露することに。バッチリ決まったウォーキングに観覧していたサイクリストからは感嘆の声も。モデルさんの仕事を見る機会はTV越しでしか無いが、生で見るウォーキングは非常にカッコいい。流石です…。
そして今回のトークショーでは東京五輪ロードレースの山梨県PRムービーが初公開された。道志みちや山中湖、三国峠などの見どころと、コースの難易度が非常に高いことを紹介する動画は、会場にいた全員が食い入るように見ていたのが非常に印象的だ。やはり自国開催の五輪の注目度は高い。
日本のレジェンド今中さんとエース栗原さんによるペダリング講座では目から鱗の知識が沢山披露され、バリバリ自転車を楽しんでいる石垣さんも多くを学んでいたようだ。今中さん、エース栗原さん、石垣さんの掛け合いが面白くいつまでも見ていられそうなトークショーと豪華景品が貰えるじゃんけん大会もお開きに。
初心者でも登りきれる短い登坂と登り返しは非常に絶妙な塩梅。スイーツは頬が落ちるのではないかと思うほど美味しいし、ロケーションも最高。グルメ、眺め、達成感の三方良しなプチ・南アルプスステージは、どんな人でも楽しめる満足のイベントだった。
text&photo : Gakuto Fujiwara
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