2018/11/10(土) - 11:42
繁茂する木々をまるで鏡のように映し出す透明度の高い清流。降り注ぐ太陽光によって、眩いばかりに輝きを放つ大海原。目にする光景のすべてが宝石箱のような大自然。そんな地球の息吹をヒシヒシと感じられるコースを舞台に開催されたロングライドイベント「ライドオンすさみ2018」。10月20日(土)、21日(日)に開催された本大会を、サイクルジャーナリストのハシケンが実走レポート。
ダイナミックな景色のなかを走っていく ライドオンすさみ2018 photo:Kenji.Hashimoto
県内800kmにわたってブルーラインが敷かれた和歌山県。サイクリング王国を自負するこの県の南西部に位置するすさみ町を舞台に開催される「ライドオンすさみ2018」は今年で2年目だ。ちなみに、「周参見」と書いて「すさみ」と読む。
コースは昨年は70kmのみだったが、今年はなんと140kmのチャレンジコースと74kmのアドンベンチャーコースの2コースを用意。昨年を上回る合計534人がエントリーした。昨年に続いてモデルでサイクリストの日向涼子さんがゲストライダーとして参加。
獲得標高2000mの新コースは起伏に富んだ絶景の連続
すさみ海水浴場に500名を超えるサイクリストが集まった photo:Kenji.Hashimoto
すさみ海水浴場の会場からスタート photo:Kenji.Hashimoto
私が参加したのはアドベンチャーコース140kmの部。早朝6時30分、140kmコースの参加者250名が、すさみ海水浴場の会場からスタート。海と山と川がギュッと詰まったすさみ町だけでなく、今年からお隣の古座川町もコースに加わりスケールアップ。巨大岩の「一枚岩」や奇岩の「滝ノ拝」といった、よりスケールの大きな自然を満喫できるコースへと生まれ変わった。
序盤のシーサイドラインへ出ると朝陽を浴びながらの心地よいモーニングライドが始まった。全長140kmのコース上には数カ所しか信号機がなく、クルマ通りも少ないので、サイクリストにとってこの上なく走りやすい。しばらくすると海から山へ。
序盤のシーサイドラインへ photo:Kenji.Hashimoto
日置川の清流に沿って徐々に標高を上げていく photo:Kenji.Hashimoto
勾配は1〜2%と緩やか photo:Kenji.Hashimoto
山間を抜けると、日置川の清流に沿って徐々に標高を上げていく。勾配は1〜2%と緩やかで、エメラルドグリーンの清流と並走するようにマイペースで山の奥へ奥へと突き進んでいく。手付かずの自然が残ったエリアが多く残るすさみ町は、どこを走ってもマイナスイオンたっぷりだ。
スタートして40km地点でコース最高地点の大附峠(標高340m)へ。その後もアップダウンを繰り返しながら、すさみ町から古座川町へと町をまたぐ。ここからしばらくは、新設された古座川エリアとなり、クリスタルブルーの古座川に沿って紀伊山系の岩脈地帯を駆け抜ける。この日はカラッとした気候で絶好のサイクリング日和に恵まれた。
古座川を代表する自然景観の一枚岩と滝ノ拝
繁茂する木々をまるで鏡のように映し出す透明度の高い清流 photo:Kenji.Hashimoto
巨大岩の「一枚岩」 photo:Kenji.Hashimoto
70km地点に登場する高い100mの「一枚岩」、85km地点の「滝ノ拝」の2大名所を巡って折り返せば、残りは30km少々。すさみ町へ戻って、74kmコースの最高地点コカシ峠を逆から走って海へと出れば、あとはゴールまでシーサイドコースが続く。
終盤もなかなか起伏に富んだコースが続き、気楽に完走できるコースではないだろう。なんと言っても、全長140kmで獲得標高は2000mに迫るのだから、走りごたえは十分。ゴール地点に戻ってきたのは、夕方15時半ごろだったので約9時間のロングライドを満喫していた。ちなみに、74kmコースも獲得標高は1350mを超え、起伏の激しさでは引けを取っていない。
コカシ峠を逆から走っていく photo:Kenji.Hashimoto
ゴールまでシーサイドコースが続く photo:Kenji.Hashimoto
ゴール地点に戻ってきたのは、夕方15時半ごろ photo:Kenji.Hashimoto
すさみ町と古座川町の大自然を満喫できるコースの魅力を感じてもらえただろうか。とにかく、宝石箱のようなキラめく自然の絶景が魅力的なコースなのだが、このイベントの最大の魅力は、エイドステーションと地元の人々の温かいおもてなしであることを忘れてはいけない。
ちょっと多すぎる!? ボリューム満点のエイドステーション
昨年、初開催ながら「こんなにエイドで振る舞って運営は大丈夫なの!?」とまで心配してしまうほど充実したエイドステーションが好評だったが、今年はさらにボリュームアップ! 140kmコースには9箇所、74kmコースには7箇所のエイドが用意され、それぞれ地元ならではの食が振る舞われた。
エイドには地元のゆるキャラも登場 photo:Kenji.Hashimoto
地元のお母さん方は、早朝4時から準備を進めてくれたのだとか photo:Kenji.Hashimoto
各エイドは大盛況だった photo:Kenji.Hashimoto
実際に140kmを走ったところ、なんと水とスポーツドリンクを除いて24個もの地元の味覚が登場。これは完全に「消費カロリー<摂取カロリー」は間違いなし(笑)。すさみ町特産のイノブタを使ったイノブタフランク、イノブタうどんをはじめ、ジビエカレーやジビエコロッケ。さらに、天然ものの鮎の塩焼き、おかいさん(お粥)、めはり寿司、さんま寿司など、腹持ちのよいグルメが続々。
この他にも、川添フィナンシェ、柚子パウンドケーキ、羽二重餅、いも餅、かりんとう饅頭など洋菓子・和菓子など、胃袋を満たし続けてくれた。これだけのバリエーションがあって、どのエイドの食事も美味しいロングライドイベントは過去に出会ったことがない。今回エイドステーションで登場した数々の食事の写真を見てもらえれば納得だろう。
おかいさん、梅干し、川添フィナンシェ photo:Kenji.Hashimoto
めはり寿司 photo:Kenji.Hashimoto
いのぶたうどん photo:Kenji.Hashimoto
きなこ棒 photo:Kenji.Hashimoto
柚子パウンドケーキ photo:Kenji.Hashimoto
一枚岩のジビエコロッケ photo:Kenji.Hashimoto
ホットドック photo:Kenji.Hashimoto
おしるこ photo:Kenji.Hashimoto
天然の鮎の塩焼き photo:Kenji.Hashimoto
イノブタ汁 photo:Kenji.Hashimoto
かりんとう饅頭 photo:Kenji.Hashimoto
さんま寿司 photo:Kenji.Hashimoto
最後にちょっとしたエピソードを紹介したい。ボランティアとしてエイドでもてなしてくれた地元のお母さん方は、早朝4時から準備を始めて、参加者の通過に間に合わせてくれたのだとう。「たくさんのおにぎりやうどんの準備は大変だけど、サイクリストの皆さんが喜んでくれる笑顔を見ていると疲れも吹っ飛ぶのよ。1年に1回、これだけ多くの人と交流できる日はないから楽しみなの」と話してくれた。この大会に限ったことではないけれど、僕らサイクリストは大会を支える地元のボランティアの方々に改めて感謝しなければいけない。
「自然も素晴らしいですが、すさみ町の一番の魅力は人です」。ふと、岩田勉町長(大会実行委員長)の前夜祭での言葉を思い出した。エイドステーションで食事を振舞ってくれる皆さんだけでなく、多くの地元の方々が沿道から大会オリジナルの旗を振って応援してくれた。
年季の入ったスーパーカブの町長車に乗って参加者を応援する岩田町長 photo:Kenji.Hashimoto
「ありがとう サイクリング大会 笑顔で応援」の横断幕 photo:Kenji.Hashimoto
「ありがとう サイクリング大会 笑顔で応援」の横断幕を目にした瞬間は、その温かさに涙が出そうになってしまった。こんなに人が温かいロングライドイベントはそう多くはない。自らステージに立ち、当日は年季の入ったスーパーカブの町長車に乗って参加者を応援する岩田町長を筆頭に、温かい地元民のおもてなしの心は、大自然やボリューム満点のエイドの食事とともに僕らの胸に刻まれたのだった。
前日には、笑いが出るほど苦しいショートヒルクライムに熱中!
土曜のショートヒルクライムは、全員が翌日のことを忘れて全力アタック! photo:Kenji.Hashimoto
ショートヒルクライムの参加者たち photo:Kenji.Hashimoto
ハイタッチでフィニッシュ photo:Kenji.Hashimoto
日曜日のロングライドの前日にあたる土曜日には、ショートヒルクライムと前夜祭も開催された。ショートヒルクライムは、メイン会場からほど近い距離600mのクローズドされた登坂の特設コースを舞台に、タイムトライアル形式で行われた。ハシケン(私)に勝ち、トップタイムを叩き出せば特製のチャンピオンジャージをゲットできるとあり、一部の参加者の目の色は本気だ(笑)。
ツールドおきなわのレースで上位を目指すようなガチ系市民レーサーなど、ロングライドイベントとはやや毛色の違う参加者もちらほら。お手製のミニイベントということもあり参加者は30名ほど。わずか2〜3分ほどのヒルクライムアタックは、笑いが出るほど苦しくて、ゴール後はみんな酸欠状態!
ゲストトークショーが行われた開会式と地元の食材が振る舞われた前夜祭 photo:Kenji.Hashimoto
大会の前夜祭に続いて、当日の抽選会でも「シルベストサイクル」が豪華商品を用意 photo:Kenji.Hashimoto
なんとロードバイクまで登場 photo:Kenji.Hashimoto
大会を前夜祭に続いて、当日の抽選会でも「シルベストサイクル」が豪華商品を用意 photo:Kenji.Hashimoto
すっかり翌日のロングライドのことは忘れて全力アタックに熱中していた。私も春に試走したときのタイムは更新できたものの、地元出身のライダーがトップタイムの走りで見事にチャンピオンジャージをゲット。参加費は前夜祭参加費を含め2000円とお得。和気藹々とした雰囲気で前日イベントは開催されたのだった。
text&photo:Kenji.Hashimoto
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県内800kmにわたってブルーラインが敷かれた和歌山県。サイクリング王国を自負するこの県の南西部に位置するすさみ町を舞台に開催される「ライドオンすさみ2018」は今年で2年目だ。ちなみに、「周参見」と書いて「すさみ」と読む。
コースは昨年は70kmのみだったが、今年はなんと140kmのチャレンジコースと74kmのアドンベンチャーコースの2コースを用意。昨年を上回る合計534人がエントリーした。昨年に続いてモデルでサイクリストの日向涼子さんがゲストライダーとして参加。
獲得標高2000mの新コースは起伏に富んだ絶景の連続
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私が参加したのはアドベンチャーコース140kmの部。早朝6時30分、140kmコースの参加者250名が、すさみ海水浴場の会場からスタート。海と山と川がギュッと詰まったすさみ町だけでなく、今年からお隣の古座川町もコースに加わりスケールアップ。巨大岩の「一枚岩」や奇岩の「滝ノ拝」といった、よりスケールの大きな自然を満喫できるコースへと生まれ変わった。
序盤のシーサイドラインへ出ると朝陽を浴びながらの心地よいモーニングライドが始まった。全長140kmのコース上には数カ所しか信号機がなく、クルマ通りも少ないので、サイクリストにとってこの上なく走りやすい。しばらくすると海から山へ。
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山間を抜けると、日置川の清流に沿って徐々に標高を上げていく。勾配は1〜2%と緩やかで、エメラルドグリーンの清流と並走するようにマイペースで山の奥へ奥へと突き進んでいく。手付かずの自然が残ったエリアが多く残るすさみ町は、どこを走ってもマイナスイオンたっぷりだ。
スタートして40km地点でコース最高地点の大附峠(標高340m)へ。その後もアップダウンを繰り返しながら、すさみ町から古座川町へと町をまたぐ。ここからしばらくは、新設された古座川エリアとなり、クリスタルブルーの古座川に沿って紀伊山系の岩脈地帯を駆け抜ける。この日はカラッとした気候で絶好のサイクリング日和に恵まれた。
古座川を代表する自然景観の一枚岩と滝ノ拝
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終盤もなかなか起伏に富んだコースが続き、気楽に完走できるコースではないだろう。なんと言っても、全長140kmで獲得標高は2000mに迫るのだから、走りごたえは十分。ゴール地点に戻ってきたのは、夕方15時半ごろだったので約9時間のロングライドを満喫していた。ちなみに、74kmコースも獲得標高は1350mを超え、起伏の激しさでは引けを取っていない。
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すさみ町と古座川町の大自然を満喫できるコースの魅力を感じてもらえただろうか。とにかく、宝石箱のようなキラめく自然の絶景が魅力的なコースなのだが、このイベントの最大の魅力は、エイドステーションと地元の人々の温かいおもてなしであることを忘れてはいけない。
ちょっと多すぎる!? ボリューム満点のエイドステーション
昨年、初開催ながら「こんなにエイドで振る舞って運営は大丈夫なの!?」とまで心配してしまうほど充実したエイドステーションが好評だったが、今年はさらにボリュームアップ! 140kmコースには9箇所、74kmコースには7箇所のエイドが用意され、それぞれ地元ならではの食が振る舞われた。
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実際に140kmを走ったところ、なんと水とスポーツドリンクを除いて24個もの地元の味覚が登場。これは完全に「消費カロリー<摂取カロリー」は間違いなし(笑)。すさみ町特産のイノブタを使ったイノブタフランク、イノブタうどんをはじめ、ジビエカレーやジビエコロッケ。さらに、天然ものの鮎の塩焼き、おかいさん(お粥)、めはり寿司、さんま寿司など、腹持ちのよいグルメが続々。
この他にも、川添フィナンシェ、柚子パウンドケーキ、羽二重餅、いも餅、かりんとう饅頭など洋菓子・和菓子など、胃袋を満たし続けてくれた。これだけのバリエーションがあって、どのエイドの食事も美味しいロングライドイベントは過去に出会ったことがない。今回エイドステーションで登場した数々の食事の写真を見てもらえれば納得だろう。
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最後にちょっとしたエピソードを紹介したい。ボランティアとしてエイドでもてなしてくれた地元のお母さん方は、早朝4時から準備を始めて、参加者の通過に間に合わせてくれたのだとう。「たくさんのおにぎりやうどんの準備は大変だけど、サイクリストの皆さんが喜んでくれる笑顔を見ていると疲れも吹っ飛ぶのよ。1年に1回、これだけ多くの人と交流できる日はないから楽しみなの」と話してくれた。この大会に限ったことではないけれど、僕らサイクリストは大会を支える地元のボランティアの方々に改めて感謝しなければいけない。
「自然も素晴らしいですが、すさみ町の一番の魅力は人です」。ふと、岩田勉町長(大会実行委員長)の前夜祭での言葉を思い出した。エイドステーションで食事を振舞ってくれる皆さんだけでなく、多くの地元の方々が沿道から大会オリジナルの旗を振って応援してくれた。
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「ありがとう サイクリング大会 笑顔で応援」の横断幕を目にした瞬間は、その温かさに涙が出そうになってしまった。こんなに人が温かいロングライドイベントはそう多くはない。自らステージに立ち、当日は年季の入ったスーパーカブの町長車に乗って参加者を応援する岩田町長を筆頭に、温かい地元民のおもてなしの心は、大自然やボリューム満点のエイドの食事とともに僕らの胸に刻まれたのだった。
前日には、笑いが出るほど苦しいショートヒルクライムに熱中!
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日曜日のロングライドの前日にあたる土曜日には、ショートヒルクライムと前夜祭も開催された。ショートヒルクライムは、メイン会場からほど近い距離600mのクローズドされた登坂の特設コースを舞台に、タイムトライアル形式で行われた。ハシケン(私)に勝ち、トップタイムを叩き出せば特製のチャンピオンジャージをゲットできるとあり、一部の参加者の目の色は本気だ(笑)。
ツールドおきなわのレースで上位を目指すようなガチ系市民レーサーなど、ロングライドイベントとはやや毛色の違う参加者もちらほら。お手製のミニイベントということもあり参加者は30名ほど。わずか2〜3分ほどのヒルクライムアタックは、笑いが出るほど苦しくて、ゴール後はみんな酸欠状態!
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すっかり翌日のロングライドのことは忘れて全力アタックに熱中していた。私も春に試走したときのタイムは更新できたものの、地元出身のライダーがトップタイムの走りで見事にチャンピオンジャージをゲット。参加費は前夜祭参加費を含め2000円とお得。和気藹々とした雰囲気で前日イベントは開催されたのだった。
text&photo:Kenji.Hashimoto