2018/09/29(土) - 13:25
宮澤崇史さんのエタップ参戦記に続いてお送りするのは、宮澤さんのマネージャーの松浦まみさんの挑戦レポート。「自転車歴6年、その他の運動歴ゼロ」の女性が果たしてエタップを走り切れるのか?
シクロワイアード読者の皆様、初めまして。宮澤崇史マネージャーの松浦まみと申します。私と自転車の出会いは6年前。ママチャリも満足に乗れなかった私が、ある日一台のロードバイクに出会いました。以来この素敵なパートナーは瞬く間に私の人生を変え、仕事もプライベートも自転車一色に。
自転車に導かれるがままに進む道の通過地点に、この夏「エタップ・デュ・ツール」がありました。皆様には今さら説明するまでもない、ツール・ド・フランスのワンステージを走るアマチュアレースです。
今年のエタップは第10ステージ「アヌシー〜ル・グランボルナン」がコース。クイックステップ・フロアーズのジュリアン・アラフィリップが独走を決め、初優勝を飾ったステージです。距離169km、獲得標高4,017m。4級山岳1つ、1級山岳3つ、超級山岳1つ。
このコースプロフィールを「きつい」と感じる人から「大したことないな」と思う人まで、印象は人それぞれでしょう。ちなみに私にとっては圏外の世界。これまで幾つかエタップ・レポートは読ませていただきましたが、私のレベルで参加した無謀な人は未だ存在しないと思われます。「いつかはエタップへ」と憧れつつも叶わぬ夢のように思っておられる方々が、その一歩を踏み出すためのお役に少しでも立てれば幸いです。
参考までに私のプロフィールを簡単にご紹介。自転車歴6年。その他の運動歴ゼロ。生まれつき心臓が小さく虚弱体質という非アクティブ系の身体スペックに加え、ママチャリでも転ぶ並外れた運動音痴。もののはずみでエタップ挑戦を宣言し、半年前からローラー練を始めるも三日坊主に終わること数知れず。見かねた周囲が数回トレーニングライドに連れ出すも、一ヶ月前に体調を崩して寝込む。なんとか自転車に乗れる程度には回復し、渡仏にこぎつけたところからこのレポートは始まります。
宮澤と共に現地に到着したのは、大会の三日前。アルプスの麓町アヌシーは、青く透き通る美しい湖に面した瀟洒なリゾート地です。まずは自転車を組み立てて山へ走りに出ますが、ものの30分で切り上げて自転車を放り出すとジャージのまま湖に飛び込んでひとしきり水遊び。
続いて街へ出て美しい旧市街を散策、ショッピング、美味しいものを飲んだり食べたりと、自転車そっちのけでバカンス三昧の初日を過ごします。宮澤曰く「エタップは、当日レースに出るだけがエタップじゃない。ツール・ド・フランスが誕生した背景にツーリズムがあったように、旅の全てを楽しんでこそエタップだと俺は思うんだよね」。
翌日は少しくらい走っておこうとRapha主催のライドに参加。参加者が選手登録をする「ヴィラージュ」と呼ばれる会場はレースの二日前からオープンしていて、出店ブースやグルメコーナーには人だかりの大賑わい。会場で最も目を惹いたのは、至るところで目にするRaphaのロゴです。実はRaphaはエタップの公式パートナー。スタッフをはじめボランティアのおじちゃんおばちゃんまでがRaphaのTシャツを着ていて、会場の雰囲気がとってもお洒落。何となく敷居が高そうな日本でのRaphaのイメージを小気味良く打ち破ってくれます。
Raphaはエタップに参加するRapha Cycilng Clubの会員のために様々なベネフィットを準備。ライド、マッサージ、最高のエスプレッソが飲めて世界中から集まった会員と交流ができる語らいの場、ゴール後のビュッフェなど、素晴らしいホスピタリティを享受することができました(すべて無料!) 。
1万2千人もの参加者でごった返す中、三日間手首につけたままのRCCのリストバンドが威力を発揮して自転車は専用駐輪場へ、選手登録の長い列に並ぶ必要なし、メカニックによるバイクチェックなど至れり尽くせりで、三年間も幽霊会員だった私は、この三日で完全に元が取れました(笑)。
しかしウォームアップ・ライドと聞いて油断していたら、やはりヨーロッパのサイクリストはレベルが高かった。登坂に入って10分も経たないうちに集団から一人遅れる私。ヤバイぞヤバイぞ置いていかれたら方向音痴だし携帯は圏外だしこのままアルプスで遭難か?とあれこれ妄想していると、私の隣にRCCジャージの男性がひらりとやってきた。
「Take it easy! 自分のペースで走っていいからね!」と、情深いお言葉。「どこから来たの?」「トーキョーから」「Wow!時差ボケは大丈夫?僕はマヨルカ島からだよ。サイクリングのコーチをしているんだ」マヨルカ島といえば、世界中のプロチームが合宿を行うロードレースの聖地ですね。
マヨルカコーチと会話をしながらのんびり上っていると、ふいに後ろから賑やかな声が。振り返ると後半グループが追いついてきていて、もの凄いスピードで私達を一気に抜き去っていく。
”He’s amazing!” と興奮気味に叫ぶ声。ハンドルから手を離しておどけながら激坂を駆け上っていくのは…ミヤザワタカシさんじゃありませんか。すぐに見えなくなって、どっと笑う声だけが山に響き渡る。何してるんだかわかりませんが、相変わらずサービス精神を発揮している模様。
後でクラブハウスに行くと「一体、彼は何者?ダウンヒルは信じられない位クレイジーだったよ!Crazy, but beautiful!」と質問攻めに遭う。そういえば、「宮澤崇史のダウンヒルはヤバすぎて新城幸也さえついていくのを躊躇ったほどだったらしい」と、この前誰かが言ってたっけ。一体何をしたんだ?と振り向くと、本人はすました顔でコーヒーを飲んでいます。
そして大会の前日はといえば仕事と用事で一日が暮れ、自転車は全く乗れず。さすがにここまで何の準備もしてないので、「明日は走れる気がしないんですが」と弱気発言の一つも吐いてみたところ、「全然楽勝でしょ」と一言で片付けられました。元プロが言うのだから楽勝なんでしょう。はいはい、楽勝楽勝。
今回のエタップ挑戦は「どんなレベルのサイクリストでもエタップは楽しめる」という宮澤の唱える大前提のもと、万年初心者から抜け出せない私が完走することを目標としました。よってタイムは無視。
それにしたって、相当走れる人達が一様に気を引き締めて臨むエタップに、体力無し・スキル無し・トレーニング無し、前日に至っても全く気が引き締まらない人間が、果たして本当に完走なるのか?
A SUIVRE.(後半に続く)
text:Mami Matsuura
photo:TEAM BRAVO
筆者プロフィール:松浦 まみ
昨年11月より宮澤崇史マネージャー&TEAM BRAVO協働仕事人。栃木県の名門ホテル「二期倶楽部」(2017年末に閉館)の広報時代に立ち上げた日本初のラグジュアリーライド「NIKI RIDE」が米ウォールストリート・ジャーナルに取り上げられ、海外で評判を呼ぶ。並行して同ホテルの系列施設「アートビオトープ那須」で食の教室を昨年まで主宰。現在はTEAM BRAVOを中心に自転車と食とホスピタリティの三本柱を仕事としている。
Instagram: www.instagram.com/mamimatsuura
website: www.philosofood.jp
シクロワイアード読者の皆様、初めまして。宮澤崇史マネージャーの松浦まみと申します。私と自転車の出会いは6年前。ママチャリも満足に乗れなかった私が、ある日一台のロードバイクに出会いました。以来この素敵なパートナーは瞬く間に私の人生を変え、仕事もプライベートも自転車一色に。
自転車に導かれるがままに進む道の通過地点に、この夏「エタップ・デュ・ツール」がありました。皆様には今さら説明するまでもない、ツール・ド・フランスのワンステージを走るアマチュアレースです。
今年のエタップは第10ステージ「アヌシー〜ル・グランボルナン」がコース。クイックステップ・フロアーズのジュリアン・アラフィリップが独走を決め、初優勝を飾ったステージです。距離169km、獲得標高4,017m。4級山岳1つ、1級山岳3つ、超級山岳1つ。
このコースプロフィールを「きつい」と感じる人から「大したことないな」と思う人まで、印象は人それぞれでしょう。ちなみに私にとっては圏外の世界。これまで幾つかエタップ・レポートは読ませていただきましたが、私のレベルで参加した無謀な人は未だ存在しないと思われます。「いつかはエタップへ」と憧れつつも叶わぬ夢のように思っておられる方々が、その一歩を踏み出すためのお役に少しでも立てれば幸いです。
参考までに私のプロフィールを簡単にご紹介。自転車歴6年。その他の運動歴ゼロ。生まれつき心臓が小さく虚弱体質という非アクティブ系の身体スペックに加え、ママチャリでも転ぶ並外れた運動音痴。もののはずみでエタップ挑戦を宣言し、半年前からローラー練を始めるも三日坊主に終わること数知れず。見かねた周囲が数回トレーニングライドに連れ出すも、一ヶ月前に体調を崩して寝込む。なんとか自転車に乗れる程度には回復し、渡仏にこぎつけたところからこのレポートは始まります。
宮澤と共に現地に到着したのは、大会の三日前。アルプスの麓町アヌシーは、青く透き通る美しい湖に面した瀟洒なリゾート地です。まずは自転車を組み立てて山へ走りに出ますが、ものの30分で切り上げて自転車を放り出すとジャージのまま湖に飛び込んでひとしきり水遊び。
続いて街へ出て美しい旧市街を散策、ショッピング、美味しいものを飲んだり食べたりと、自転車そっちのけでバカンス三昧の初日を過ごします。宮澤曰く「エタップは、当日レースに出るだけがエタップじゃない。ツール・ド・フランスが誕生した背景にツーリズムがあったように、旅の全てを楽しんでこそエタップだと俺は思うんだよね」。
翌日は少しくらい走っておこうとRapha主催のライドに参加。参加者が選手登録をする「ヴィラージュ」と呼ばれる会場はレースの二日前からオープンしていて、出店ブースやグルメコーナーには人だかりの大賑わい。会場で最も目を惹いたのは、至るところで目にするRaphaのロゴです。実はRaphaはエタップの公式パートナー。スタッフをはじめボランティアのおじちゃんおばちゃんまでがRaphaのTシャツを着ていて、会場の雰囲気がとってもお洒落。何となく敷居が高そうな日本でのRaphaのイメージを小気味良く打ち破ってくれます。
Raphaはエタップに参加するRapha Cycilng Clubの会員のために様々なベネフィットを準備。ライド、マッサージ、最高のエスプレッソが飲めて世界中から集まった会員と交流ができる語らいの場、ゴール後のビュッフェなど、素晴らしいホスピタリティを享受することができました(すべて無料!) 。
1万2千人もの参加者でごった返す中、三日間手首につけたままのRCCのリストバンドが威力を発揮して自転車は専用駐輪場へ、選手登録の長い列に並ぶ必要なし、メカニックによるバイクチェックなど至れり尽くせりで、三年間も幽霊会員だった私は、この三日で完全に元が取れました(笑)。
しかしウォームアップ・ライドと聞いて油断していたら、やはりヨーロッパのサイクリストはレベルが高かった。登坂に入って10分も経たないうちに集団から一人遅れる私。ヤバイぞヤバイぞ置いていかれたら方向音痴だし携帯は圏外だしこのままアルプスで遭難か?とあれこれ妄想していると、私の隣にRCCジャージの男性がひらりとやってきた。
「Take it easy! 自分のペースで走っていいからね!」と、情深いお言葉。「どこから来たの?」「トーキョーから」「Wow!時差ボケは大丈夫?僕はマヨルカ島からだよ。サイクリングのコーチをしているんだ」マヨルカ島といえば、世界中のプロチームが合宿を行うロードレースの聖地ですね。
マヨルカコーチと会話をしながらのんびり上っていると、ふいに後ろから賑やかな声が。振り返ると後半グループが追いついてきていて、もの凄いスピードで私達を一気に抜き去っていく。
”He’s amazing!” と興奮気味に叫ぶ声。ハンドルから手を離しておどけながら激坂を駆け上っていくのは…ミヤザワタカシさんじゃありませんか。すぐに見えなくなって、どっと笑う声だけが山に響き渡る。何してるんだかわかりませんが、相変わらずサービス精神を発揮している模様。
後でクラブハウスに行くと「一体、彼は何者?ダウンヒルは信じられない位クレイジーだったよ!Crazy, but beautiful!」と質問攻めに遭う。そういえば、「宮澤崇史のダウンヒルはヤバすぎて新城幸也さえついていくのを躊躇ったほどだったらしい」と、この前誰かが言ってたっけ。一体何をしたんだ?と振り向くと、本人はすました顔でコーヒーを飲んでいます。
そして大会の前日はといえば仕事と用事で一日が暮れ、自転車は全く乗れず。さすがにここまで何の準備もしてないので、「明日は走れる気がしないんですが」と弱気発言の一つも吐いてみたところ、「全然楽勝でしょ」と一言で片付けられました。元プロが言うのだから楽勝なんでしょう。はいはい、楽勝楽勝。
今回のエタップ挑戦は「どんなレベルのサイクリストでもエタップは楽しめる」という宮澤の唱える大前提のもと、万年初心者から抜け出せない私が完走することを目標としました。よってタイムは無視。
それにしたって、相当走れる人達が一様に気を引き締めて臨むエタップに、体力無し・スキル無し・トレーニング無し、前日に至っても全く気が引き締まらない人間が、果たして本当に完走なるのか?
A SUIVRE.(後半に続く)
text:Mami Matsuura
photo:TEAM BRAVO
筆者プロフィール:松浦 まみ
昨年11月より宮澤崇史マネージャー&TEAM BRAVO協働仕事人。栃木県の名門ホテル「二期倶楽部」(2017年末に閉館)の広報時代に立ち上げた日本初のラグジュアリーライド「NIKI RIDE」が米ウォールストリート・ジャーナルに取り上げられ、海外で評判を呼ぶ。並行して同ホテルの系列施設「アートビオトープ那須」で食の教室を昨年まで主宰。現在はTEAM BRAVOを中心に自転車と食とホスピタリティの三本柱を仕事としている。
Instagram: www.instagram.com/mamimatsuura
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