2018/08/25(土) - 13:34
全国からMTBライダーが集まる夏のお祭り、シマノバイカーズフェスティバルが今年も開催。迫る台風を跳ね返し、多くのサイクリストたちが富士見パノラマへと集まった2日間となった。
国内最大級のオフロードイベントとして、高い人気と長い歴史を誇るシマノバイカーズフェスティバル。全日本選手権の会場として、何度も用いられてきたロケーションを最大限に生かし、クロスカントリーからダウンヒル、さらには様々なツーリング種目まで、ありとあらゆる自転車の楽しみ方を2日間に詰め込んだ老舗大会だ。
今年は東から西へと進路を変えるという、前代未聞の台風12号が大会が開催される週末に上陸するという予報が流れ、開催可否も危ぶまれる事態となったが、1日目の午後の種目の時間やコースを変更することで、両日とも開催することとなった。
初日の早朝、出発した東京は既に雨が降り始めており、文字通り怪しい雲行き。しかし、一山超えると雨足がだんだんと弱まってきた。とはいえ、台風は東から西へとやってくるという。そのうちこの辺りも直に追いつかれるのだろう、と悲観的になりつつ今年も富士見へと向かうのだった。
直前に西日本の豪雨による大きな被害が出たことや、台風が異例の進路をとることも相まって、多くの人が自宅待機を選んだのか、会場の活気は例年よりも控え目。だが、それでも開会式の時間が近づくにつれて、会場へ活気が満ちてくる。
天気予報を確認すれば、どうやら日中は天気が持ちそうということで、集まってきた参加者の皆さん、そして運営するシマノのスタッフさんたちも明るい表情。空模様ももちろん快晴とまではいかないけれど、ところどころに青空が覗くタイミングも。
2日間のイベントの幕開けを飾るのは、60分クロスカントリー。今年はコースレイアウトを少し変更し、昨年まで存在したフライオーバーも姿を消すことに。シングルトラック部分がより長くなったが、全体的に走りやすいコースとなったようだ。
チームブリヂストンサイクリングの平野星矢や、メリダミヤタバイキングチームの恩田祐一、更には全日本王者である山本幸平など、シマノにサポートされるトップライダーたちが参加者たちとともに走り、安全確保に努めてくれるのもシマノバイカーズの魅力の一つ。間近で彼らの走りを目にし、学ぶことが出来る貴重な機会でもある。
1時間のクロスカントリーレースが始まるころ、広大な富士見パノラマでは、他の種目も動き始めている。リフトに10分ほど揺られた先にあるダウンヒルスタート地点では、DHエンデューロが。逆にクロスカントリーエリアの下の駐車場からは、富士見エリア、更には八ヶ岳周辺までを楽しむ数々のツーリング種目の参加者がスタートしていく。中にはE-BIKEによるツーリングなんてのも。
オフロード系のツーリングコースだけでなく、八ヶ岳や諏訪を周遊するオンロード系のコースも用意され、実はローディーでも楽しめるのがシマノバイカーズフェスティバルの魅力であり、懐の深さでもある。”バイカーズフェスティバル”という名の通り、自転車乗りすべてに向けたお祭りであるのだ。
また、毎年進化を遂げているのもこのイベントの魅力の一つ。今年注目を集めていたのは、完全新設種目のクロスカントリーエリミネーターだ。500mほどのショートコースで4名が同時に発走し、順位を競い合うスプリント種目。一瞬の判断と反応が勝敗を分けるスリリングな種目に注目が集まった。
そしてもう一つの種目が富士見キングオブマウンテン。長距離のクロスカントリーマラソンとして開催されてきた伝統の種目が大幅リニューアルを果たし、2日間のステージレースへと変更されたのだ。DHエンデューロ、ヒルクライム、ショートXC、2時間エンデュランスの4種目を同じバイクで競いあう、MTBレーサーとしての総合力が問われる王者決定戦にふさわしいカテゴリとなった。残念ながら1日目の午後に予定されていたヒルクライムは台風の影響でキャンセルとなり、3つのステージで争われることに。チャンピオンには世界に今のところ一つだけとなるバイカーズロゴの刺繍入りバッグが贈られ、力の入れようが窺えた。
エリミネーターが終わった後のXCエリアの主役は子供たちへと移っていく。小学生たちがショートコースを駆け抜けていく様は微笑ましいもの。とはいえ、高学年のレースは大人顔負けのトップ争いが行われ、将来のエリートレーサーがここから生まれる予感。
そして1日目を締めくくるのは最も多くの参加者が集まる4時間エンデュランス。今年は競技時間が短縮され2時間での開催となったが、それでも多くのライダーが集まり、スタートしていく。ピットで応援するチームの盛り上がりは例年通り。いや、むしろ台風をものともせずにやってきた猛者たちだけに、より一層熱が入っていたような。悪天候が予想された1日目だったが、結局このレースが終わるまで本格的な雨が降ることは無く。むしろ今年の猛暑も嘘のような涼しさで、最高に過ごしやすい1日に。
恐れていた台風は夜中に通過し、2日目を迎えることとなった。晴れ間が広がる2日目は前日と同じく様々な種目が開催されるが、この日の花形となるのはダウンヒル種目。台風一過、路面はかなりウェットでスリッピーに。
そんなタフコンディションに追い打ちをかけるのが、今年新しく設定されたコースだ。曰く「全日本レベルのコース設定」とのことで、相当ハードなコースプロフィール。一番難易度が高いのがスタート直後のドロップオフで、テクニックが問われるセクションに。
もっとも着地しやすい地点は、深い轍となり時が経つにつれて難しくなっていく。テクニカルで見応えと走り応えのあるコースで、ゲストライダーの井出川直樹選手も「本当に楽しいコースでした!」とフィニッシュしてから振り返った。
多くのレースやツーリングに盛り上がる2日間だったが、それだけがバイカーズの魅力ではない。多くのブランドが軒を連ねるブースエリアでは、数々の新製品がお披露目されるほか、気になる最新バイクを試すことも。
特に今年力を入れられていたのは、ついに日本でも本格的な展開が始まったE-BIKEたち。シマノのブースには、ミヤタのリッジランナーやミズタニのセラフなど、同社が展開するユニットであるSTEPSを搭載したバイクがずらりと並べられたほか、ヤマハやパナソニック、ベスビーやベネリといったブランドも出展。特別に用意された2kmほどの試乗コースにはオンロードもあればオフロードもあり、登りもあれば下りもあり、その実力を存分に体感することができた。
E-BIKEについていえば、試乗だけでなく専用のツーリング種目が用意されたり、2日間を締めくくる激坂ゲレンデヒルクライムにエキシビジョンで登場したりと、その魅力を伝えるための取り組みが盛りだくさん。その詳細については別記事にてお伝えする予定です。
さて、そして今年のバイカーズではサイクリストのみならず、参加者のパートナーや子供たちも共に楽しめるような企画がボリュームアップ。例年行われている豚の丸焼きパーティーはもちろん今年も継続されたが、今年はさらにユニークな企画が登場し、人気を集めていた。
バイカーズマルシェと名付けられたブースには、地産の食材やグルメが大集結。メロンよりもあまいという折井農園の八ヶ岳生トウモロコシや、富士見町名産のルバーブ、地元で人気のベーカリーの焼き立てパン、蓼科高原で手作りされたハムやソーセージなど、このエリアならではの逸品を求めて、多くの人が詰めかけた。
その場でパンをお昼にするもよし、お土産にするもよし。はたまた、夜をキャンプで過ごすならば、仲間や家族とBBQの食材にすれば、箸が進むことも間違いない。今年は、夜に台風が訪れたためキャンプ泊は厳しかっただろうが、晴れていれば焚火を囲んで地元の恵みを戴くなんて贅沢なひと時が来年は過ごせるかも。
そして会場を行き交う人々を虜にしていたのが、もふもふのアルパカ。富士見町は野生のアルパカが生息することで有名……というわけではなく、「八ヶ岳アルパカ牧場」からやってきた飼いアルパカなのだけれど、これがまた可愛いのなんの。
子供たちに大人気!との触れ込みでやってきたのだけれど、その魅力はとどまるところ知らず。キッズたちだけでなく大人のお兄さんお姉さんもメロメロに。一緒に写真を撮っても嫌がるそぶり一つ見せず、カメラに視線を送るプロフェッショナルな仕事ぶり。SNSにはたくさんのアルパカ写真がバイカーズのタグと共にアップされたはず。
クロスカントリーとダウンヒル、MTBとロードバイク、レースとファンライド、男性と女性、大人とこども、そしてサイクリストとそうでない人たち。多くのイベントが対立するこれらの要素のどちらかにフォーカスしているけれど、バイカーズは違う。
多くの種目が用意され、いろんな自転車の楽しみ方を包摂し、どんなレベルの人も楽しめるような工夫がされている。そして、今年からは自転車に乗らない家族や子供も楽しめるような取り組みも始まった。既存の自転車イベントという枠組みを乗り越え、拡張していくバイカーズフェスティバル。その発展に目が離せない。
text&photo:Naoki.Yasuoka
国内最大級のオフロードイベントとして、高い人気と長い歴史を誇るシマノバイカーズフェスティバル。全日本選手権の会場として、何度も用いられてきたロケーションを最大限に生かし、クロスカントリーからダウンヒル、さらには様々なツーリング種目まで、ありとあらゆる自転車の楽しみ方を2日間に詰め込んだ老舗大会だ。
今年は東から西へと進路を変えるという、前代未聞の台風12号が大会が開催される週末に上陸するという予報が流れ、開催可否も危ぶまれる事態となったが、1日目の午後の種目の時間やコースを変更することで、両日とも開催することとなった。
初日の早朝、出発した東京は既に雨が降り始めており、文字通り怪しい雲行き。しかし、一山超えると雨足がだんだんと弱まってきた。とはいえ、台風は東から西へとやってくるという。そのうちこの辺りも直に追いつかれるのだろう、と悲観的になりつつ今年も富士見へと向かうのだった。
直前に西日本の豪雨による大きな被害が出たことや、台風が異例の進路をとることも相まって、多くの人が自宅待機を選んだのか、会場の活気は例年よりも控え目。だが、それでも開会式の時間が近づくにつれて、会場へ活気が満ちてくる。
天気予報を確認すれば、どうやら日中は天気が持ちそうということで、集まってきた参加者の皆さん、そして運営するシマノのスタッフさんたちも明るい表情。空模様ももちろん快晴とまではいかないけれど、ところどころに青空が覗くタイミングも。
2日間のイベントの幕開けを飾るのは、60分クロスカントリー。今年はコースレイアウトを少し変更し、昨年まで存在したフライオーバーも姿を消すことに。シングルトラック部分がより長くなったが、全体的に走りやすいコースとなったようだ。
チームブリヂストンサイクリングの平野星矢や、メリダミヤタバイキングチームの恩田祐一、更には全日本王者である山本幸平など、シマノにサポートされるトップライダーたちが参加者たちとともに走り、安全確保に努めてくれるのもシマノバイカーズの魅力の一つ。間近で彼らの走りを目にし、学ぶことが出来る貴重な機会でもある。
1時間のクロスカントリーレースが始まるころ、広大な富士見パノラマでは、他の種目も動き始めている。リフトに10分ほど揺られた先にあるダウンヒルスタート地点では、DHエンデューロが。逆にクロスカントリーエリアの下の駐車場からは、富士見エリア、更には八ヶ岳周辺までを楽しむ数々のツーリング種目の参加者がスタートしていく。中にはE-BIKEによるツーリングなんてのも。
オフロード系のツーリングコースだけでなく、八ヶ岳や諏訪を周遊するオンロード系のコースも用意され、実はローディーでも楽しめるのがシマノバイカーズフェスティバルの魅力であり、懐の深さでもある。”バイカーズフェスティバル”という名の通り、自転車乗りすべてに向けたお祭りであるのだ。
また、毎年進化を遂げているのもこのイベントの魅力の一つ。今年注目を集めていたのは、完全新設種目のクロスカントリーエリミネーターだ。500mほどのショートコースで4名が同時に発走し、順位を競い合うスプリント種目。一瞬の判断と反応が勝敗を分けるスリリングな種目に注目が集まった。
そしてもう一つの種目が富士見キングオブマウンテン。長距離のクロスカントリーマラソンとして開催されてきた伝統の種目が大幅リニューアルを果たし、2日間のステージレースへと変更されたのだ。DHエンデューロ、ヒルクライム、ショートXC、2時間エンデュランスの4種目を同じバイクで競いあう、MTBレーサーとしての総合力が問われる王者決定戦にふさわしいカテゴリとなった。残念ながら1日目の午後に予定されていたヒルクライムは台風の影響でキャンセルとなり、3つのステージで争われることに。チャンピオンには世界に今のところ一つだけとなるバイカーズロゴの刺繍入りバッグが贈られ、力の入れようが窺えた。
エリミネーターが終わった後のXCエリアの主役は子供たちへと移っていく。小学生たちがショートコースを駆け抜けていく様は微笑ましいもの。とはいえ、高学年のレースは大人顔負けのトップ争いが行われ、将来のエリートレーサーがここから生まれる予感。
そして1日目を締めくくるのは最も多くの参加者が集まる4時間エンデュランス。今年は競技時間が短縮され2時間での開催となったが、それでも多くのライダーが集まり、スタートしていく。ピットで応援するチームの盛り上がりは例年通り。いや、むしろ台風をものともせずにやってきた猛者たちだけに、より一層熱が入っていたような。悪天候が予想された1日目だったが、結局このレースが終わるまで本格的な雨が降ることは無く。むしろ今年の猛暑も嘘のような涼しさで、最高に過ごしやすい1日に。
恐れていた台風は夜中に通過し、2日目を迎えることとなった。晴れ間が広がる2日目は前日と同じく様々な種目が開催されるが、この日の花形となるのはダウンヒル種目。台風一過、路面はかなりウェットでスリッピーに。
そんなタフコンディションに追い打ちをかけるのが、今年新しく設定されたコースだ。曰く「全日本レベルのコース設定」とのことで、相当ハードなコースプロフィール。一番難易度が高いのがスタート直後のドロップオフで、テクニックが問われるセクションに。
もっとも着地しやすい地点は、深い轍となり時が経つにつれて難しくなっていく。テクニカルで見応えと走り応えのあるコースで、ゲストライダーの井出川直樹選手も「本当に楽しいコースでした!」とフィニッシュしてから振り返った。
多くのレースやツーリングに盛り上がる2日間だったが、それだけがバイカーズの魅力ではない。多くのブランドが軒を連ねるブースエリアでは、数々の新製品がお披露目されるほか、気になる最新バイクを試すことも。
特に今年力を入れられていたのは、ついに日本でも本格的な展開が始まったE-BIKEたち。シマノのブースには、ミヤタのリッジランナーやミズタニのセラフなど、同社が展開するユニットであるSTEPSを搭載したバイクがずらりと並べられたほか、ヤマハやパナソニック、ベスビーやベネリといったブランドも出展。特別に用意された2kmほどの試乗コースにはオンロードもあればオフロードもあり、登りもあれば下りもあり、その実力を存分に体感することができた。
E-BIKEについていえば、試乗だけでなく専用のツーリング種目が用意されたり、2日間を締めくくる激坂ゲレンデヒルクライムにエキシビジョンで登場したりと、その魅力を伝えるための取り組みが盛りだくさん。その詳細については別記事にてお伝えする予定です。
さて、そして今年のバイカーズではサイクリストのみならず、参加者のパートナーや子供たちも共に楽しめるような企画がボリュームアップ。例年行われている豚の丸焼きパーティーはもちろん今年も継続されたが、今年はさらにユニークな企画が登場し、人気を集めていた。
バイカーズマルシェと名付けられたブースには、地産の食材やグルメが大集結。メロンよりもあまいという折井農園の八ヶ岳生トウモロコシや、富士見町名産のルバーブ、地元で人気のベーカリーの焼き立てパン、蓼科高原で手作りされたハムやソーセージなど、このエリアならではの逸品を求めて、多くの人が詰めかけた。
その場でパンをお昼にするもよし、お土産にするもよし。はたまた、夜をキャンプで過ごすならば、仲間や家族とBBQの食材にすれば、箸が進むことも間違いない。今年は、夜に台風が訪れたためキャンプ泊は厳しかっただろうが、晴れていれば焚火を囲んで地元の恵みを戴くなんて贅沢なひと時が来年は過ごせるかも。
そして会場を行き交う人々を虜にしていたのが、もふもふのアルパカ。富士見町は野生のアルパカが生息することで有名……というわけではなく、「八ヶ岳アルパカ牧場」からやってきた飼いアルパカなのだけれど、これがまた可愛いのなんの。
子供たちに大人気!との触れ込みでやってきたのだけれど、その魅力はとどまるところ知らず。キッズたちだけでなく大人のお兄さんお姉さんもメロメロに。一緒に写真を撮っても嫌がるそぶり一つ見せず、カメラに視線を送るプロフェッショナルな仕事ぶり。SNSにはたくさんのアルパカ写真がバイカーズのタグと共にアップされたはず。
クロスカントリーとダウンヒル、MTBとロードバイク、レースとファンライド、男性と女性、大人とこども、そしてサイクリストとそうでない人たち。多くのイベントが対立するこれらの要素のどちらかにフォーカスしているけれど、バイカーズは違う。
多くの種目が用意され、いろんな自転車の楽しみ方を包摂し、どんなレベルの人も楽しめるような工夫がされている。そして、今年からは自転車に乗らない家族や子供も楽しめるような取り組みも始まった。既存の自転車イベントという枠組みを乗り越え、拡張していくバイカーズフェスティバル。その発展に目が離せない。
text&photo:Naoki.Yasuoka
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