2010/02/24(水) - 22:59
2010年2月14日、東京・調布の味の素スタジアム ブレンディ広場特設会場で、未就学児から中学生までのキッズ世代の育成を目的とした「ロード・トゥ・キング U15ジュニアサイクルロードレース」の、2009年度第2戦となる「味の素スタジアム大会」が開催された。
「将来の夢を高いレベルで」と三浦恭資さん
今年で約7年目となる同シリーズは、大人のレースとの併催を含めて関東と関西を中心に過去20戦ほどを行っているが、キッズクリテリウムの単独開催はこれが初めて。単独開催にもかかわらず、三重県、福島県など遠方の各地からも”栄冠”を目指すキッズ約120人が集まった。
低学年のレースであってもぴりっとした緊張感のただよう会場は、「子供のときから、将来の夢を高いレベルで持ってほしい。そのひとつの登竜門になれば」(コース監修・三浦恭資さん)という大会ならではの空気を感じさせた。
会場となったのは、味の素スタジアム外周北側のブレンディ広場。展示会や試乗会などに使われている舗装スペースで、ここに1周約400mの特設コースがパイロンでレイアウトされた。
年齢ごとにU-6からU-15に分けられた5カテゴリには、各15~30人ほどが参加。大会は朝から昼過ぎまでのスケジュールで、プログラム前半は小学校4年以下(U-6・U-8・U-10)、後半は小学校5年以上(U-12・U-15)のレース。カテゴリごとにコース1周のタイムトライアル(U-6を除く)と、1周(U-6)~25周(U-15)でのクリテリウムをそれぞれ行った。
朝から気合十分!
U-6、8、10の試走は朝8時から。凍結した路面が融けるのを待って朝の冷たい空気のなか、キッズたちがコースに出てゆく。「もっとまわして!ギア軽い!」「外から行け!」お父さんたちの真剣な声が飛ぶ。なかには、外周から携帯のヘッドマイクに指示を飛ばしているお父さんの姿も。
大人顔負けに3本ローラーでアップしているのはU-10の日置大介くん。「U-6の古谷田耀くんも、幼稚園児だけど乗れる…」とのこと。ふたりは、東京都自転車競技連盟が定期的に実施している自転車学校によく参加している仲間なのだそうだ。
TTからスタート
試走が終わると、まずはU-8・U-10のTTだ。
今大会のゲストは、チームブリヂストン・アンカーの飯島誠・清水都貴選手。五輪出場、パリ~コレーズ優勝などのビッグな実績を持つ現役プロ選手が、レースの先導やアドバイスをしてくれるのだ。TTの前にも、まず飯島選手がみんなにお手本を見せてくれる。
「ジマさん、タカさんって呼ぼう!」MCのニコニコやさしいお姉さんは、ツール・ド・フランスの取材などでおなじみのライター・土肥志穂さん。「いま、スタートのお手本を見せてくれているジマさんは、シドニー、アテネ、北京と3回もオリンピックに出場した選手なんですよ!」雰囲気はホンワカしつつも、キッズたちに伝える情報はしっかりと濃い。コースを走り抜ける飯島選手の姿には、周囲の大人もキッズたちも注目だ。「ジマさんフィニッシュ! さすが速いですねー!」
飯島選手の走りでTTのイメージがしっかりできたところで、本番スタート。緊張したおももちのキッズたちは、ホルダーの手を離れて次々にコースに走り出す。多くのキッズがレースを走り慣れた様子で、みんな速い! 急なコーナーも、手慣れた様子でバイクを倒し込んで次々に曲がっていく。
プログラム後半のU-12・U-15も、同様にクリテリウムの前にまずTTが行われたが、この日は参加者の多かったU-10とU-12では、TTのタイムでA、Bの2組に分けてクリテリウムを行うことに。B組は表彰対象ではないとあって、キッズたちはより一層必死のスパートをかける。
「あー、ラインが甘いな」「あのフレームって、どうかな?」注がれる大人の視線も、”コドモのファンレース”とはどこか違う。”未来のトップ選手たち”の走りを無言で見守るのはチームブリヂストン・アンカーの藤田監督。真剣な目が、同時に何だかものすごく楽しそうだ。
激戦のクリテリウム
続いて、前半はU-8・U-10・U-6、後半はU-12・U-15のクリテリウム。未就学児のU-6をのぞくと、ロードバイクを中心としたスポーツ車の比率が高い。しかし、未就学児の補助輪つき自転車にもちゃんと計測チップがついていることが、この大会の姿勢を物語る。
「このレースシリーズのほかに、うちでは、まず自転車に乗れない子の乗り方の教室もやっているんですよ」と語るのは、この大会を主催する特定非営利活動法人マイヨジョーヌ理事の高谷徳成さん。このレースシリーズのネーミングには、自転車に初めて乗るようなキッズたちが、ニッポンの自転車界を背負って立つ選手に成長していく道すじのひとつであれば、という思いが込められているのだ。
一般車もロードバイクも入り交じって、懸命の走りを見せるなか、強い印象を残すのはレベルの高い走りを見せているロードバイクの先頭集団だ。
終盤、「うしろなんか見るな!前見ろ前!!」外周から、おそらくお父さんであろう”コーチ”の怒号が飛ぶ。低年齢であっても走り慣れているキッズたちは、フィニッシュラインでのハンドル投げも当然のようにやってのける。その迫力あるレースぶりは、ゴールを撮影していた他社のベテラン自転車カメラマンも「すごいゴールスプリントだ!」と感心していたほど。
いっぽう、補助輪つきの愛車で参加したキッズたちも、最後尾を走っていた笑顔の飯島選手をつれて、満足そうにゴール。ちびっこキッズも自分のレースを走る楽しさをしっかり満喫していた。
プロのアドバイスも盛りだくさん
TTを終えてクリテリウムが始まる前には、前半後半とも、キッズたちに飯島・清水選手がアドバイスしてくれる「クリニック」の時間がとられた。
前半のU-6・U-8・U-10のクリニックでは、ヘルメットのかぶり方や走り出しのギアの選択など、基本的なことをしっかり確認だ。
後半のU-12・U-15のクリニックでは、高学年らしい質問も飛び出した。
「清水選手は、レースで緊張しますか?」
「はい、気持ち悪くなります。うえーってなります。」
「どうやってこくふくしますか?」
「うーん、できないですねー(笑)。…トレーニングで克服します!」
自分たちに対して「選手同士」として真摯に応えてくれている選手の姿を、キッズたちはしっかり見つめていた。
後半のクリニックでは、大会運営側のひとりでもある三浦さんからのアドバイスも。「コーナーはみんな速さはそう変わらないので、抜けてからの立ち上がりをはやく、直線でスピードを出すといいね。ギアは軽めにスタートして、少しずつ重く。コーナーはペダルを踏まないで、左周りなら左を上げて回るのを忘れないで!」
リザルトも表彰も本格的
このレースでは、カテゴリごとにリザルトを貼り出し、表彰も本格的に実施。
U-6で優勝した古谷田耀くんは、手慣れた様子で1位のプレートを掲げてのフォトセッション。ヨーロッパのキッズレースの光景を思わせる、堂々としたチャンピオンぶりだ。
U-10優勝の石井洋輝くんは「競輪選手になりたい」、U-15優勝の木下大輝くんは「海外で走れるようなロード選手になりたい」と将来の目標をしっかりとした口調で語っていた。
大会の最後は、ゲストの選手たちからの一言コメント。
「みんなの元気な走りが印象に残りました」と飯島選手。
「みんなうまくてびっくりしました。ぼくがこの域に達したのって、大学の頃なので!」と清水選手。また、三浦さんからは
「最初にジュニアの大会を始めたときは、参加人数が少なくてどうなるかと思いましたが、参加してくれた選手のなかから世界選手権に出るジュニア選手が出たり、海外に行きたいという選手が出てきて、うれしく思います。ブリヂストンの選手たちもきてくれて、みなさんのご協力に感謝しています。これからもお力添えをよろしくお願いします!」との言葉があった。
まだまだ走り足りない様子の元気なキッズたちは、選手のサインや次の目標を抱えて、それぞれの家路についていった。
Road to KINGとは?
ソウル五輪ロードやアトランタ五輪MTB出場などで知られる”キング三浦”こと、三浦恭資さんの名をタイトルに掲げたこの大会は、三浦さん自身も運営にかかわる、特定非営利法人マイヨジョーヌが主催するもの。同法人のwebによれば「日本で始めて15歳以下の青少年を対象とするサイクルロードレース」で、「レースを通じて子供の社会性を高め、サイクルロードレースの普及と競技能力の向上、そして次世代の世界に通用する選手の育成を目指」す。
特定非営利法人マイヨジョーヌの理事長は、元競輪選手で世界選手権10連覇の中野浩一さん。「自分が今あるのは自転車のおかげ。社会貢献をしたい」と考えた中野浩一さんが、財団法人日本自転車振興会(現・財団法人JKA)の資金的支援を得、キッズ世代の育成をしていた三浦さん、高谷さんらとともに活動を始めたのが同法人だ。このレースシリーズのほか「初心者のための自転車安全教室」なども年数回各地で開催している。
Road to KINGシリーズについて、三浦さんに聞いた。
-本人もお父さんたちも本気、の濃いレースでした。
「遊びでなくて真剣勝負です。最初はこちらも甘く考えていたんです。ゴール前で泣く小さな子を見て、そんなに真剣に走っているなら、こちらもまじめに取り組まないと…と考えを改めました。見習わなくてはいけない大人の自転車選手だっていっぱいいます。自分が始めたときの気持ちは、そうだったはず。」
-ゲストも豪華な顔ぶれですが。
「ゲストのプロ選手と真剣勝負する子もいます。野球教室にイチローや長嶋さんが来てくれる、みたいに、プロとの交流は必ず入れようと思っています。子供のときから、将来の夢をもっと高いレベルで持ってほしい。子供のチームがあって子供が走る場や、目標となる場が少ないので、このレースが一流選手になるステップアップの、ひとつの登竜門になればと思います。」
-15歳以下で単独の大会、というのには、明確な目的意識を感じます。
じつは相当すごいことをしている大会なのではないか、と。
「はい、やっているほうはそのつもりでやっています! 今回は単独開催は初めてですが、予想以上に多くの方に参加してもらってよかったです。継続してやることによって、みんなレベルが高くなっている。長良川(昨年12月開催の2009年度第1戦、木曽三川公園大会)で優勝した子が東京にも来てくれたりと、子供だけのレースでも遠方からもみんな来てくれて。中学生になった女子が、今日はバレンタインだからってチョコレートを持ってきてくれたり…。やっぱり、そういうのはうれしいねぇ(笑)。
次は3月7日、播磨中央公園で第3戦です!」
今後のスケジュールは、マイヨジョーヌのホームページに掲載されるとのこと。Kingを目指すキッズたち(&その保護者たち)は、今後の情報を要チェックだ。
■Road to KING 2009 味の素スタジアム大会
主な競技結果
【タイムトライアル】(1周400m)
U-8 1位 古林一夢 48.72
U-10 1位 清水大樹 46.52
U-12 1位 小野康太郎 42.29
U-15 1位 木下大輝 37.17
【クリテリウム】
U-6(1周400m)
1位 古谷田耀 0:59.24
2位 高梨千帆里 01:06.86
3位 木村亮太 01:14.91
U-8(4周1.6km)
1位 古林一夢 3:27.16
2位 高梨万里王 3:31.84
3位 冨樫由稀 3:36.38
U-10 A組(10周4km)
1位 石井洋輝 7:57.74
2位 古谷田貴斗 7:58.71
3位 鵜沼碧 7:59.18
U-12 A組(15周6km)
1位 佐藤大紀 12:08.46
2位 小野康太郎 12:08.77
3位 古山稀絵 12:09.02
U-15(25周10km)
1位 木下大輝 18:11.40
2位 池田隆人 18:25.45
3位 元植裕紀 18:49.17
当日の各クラスの熱戦の模様はフォトギャラリーでお楽しみください。
Photo&text:Yuko.SATO
写真とレポート:佐藤有子
「将来の夢を高いレベルで」と三浦恭資さん
今年で約7年目となる同シリーズは、大人のレースとの併催を含めて関東と関西を中心に過去20戦ほどを行っているが、キッズクリテリウムの単独開催はこれが初めて。単独開催にもかかわらず、三重県、福島県など遠方の各地からも”栄冠”を目指すキッズ約120人が集まった。
低学年のレースであってもぴりっとした緊張感のただよう会場は、「子供のときから、将来の夢を高いレベルで持ってほしい。そのひとつの登竜門になれば」(コース監修・三浦恭資さん)という大会ならではの空気を感じさせた。
会場となったのは、味の素スタジアム外周北側のブレンディ広場。展示会や試乗会などに使われている舗装スペースで、ここに1周約400mの特設コースがパイロンでレイアウトされた。
年齢ごとにU-6からU-15に分けられた5カテゴリには、各15~30人ほどが参加。大会は朝から昼過ぎまでのスケジュールで、プログラム前半は小学校4年以下(U-6・U-8・U-10)、後半は小学校5年以上(U-12・U-15)のレース。カテゴリごとにコース1周のタイムトライアル(U-6を除く)と、1周(U-6)~25周(U-15)でのクリテリウムをそれぞれ行った。
朝から気合十分!
U-6、8、10の試走は朝8時から。凍結した路面が融けるのを待って朝の冷たい空気のなか、キッズたちがコースに出てゆく。「もっとまわして!ギア軽い!」「外から行け!」お父さんたちの真剣な声が飛ぶ。なかには、外周から携帯のヘッドマイクに指示を飛ばしているお父さんの姿も。
大人顔負けに3本ローラーでアップしているのはU-10の日置大介くん。「U-6の古谷田耀くんも、幼稚園児だけど乗れる…」とのこと。ふたりは、東京都自転車競技連盟が定期的に実施している自転車学校によく参加している仲間なのだそうだ。
TTからスタート
試走が終わると、まずはU-8・U-10のTTだ。
今大会のゲストは、チームブリヂストン・アンカーの飯島誠・清水都貴選手。五輪出場、パリ~コレーズ優勝などのビッグな実績を持つ現役プロ選手が、レースの先導やアドバイスをしてくれるのだ。TTの前にも、まず飯島選手がみんなにお手本を見せてくれる。
「ジマさん、タカさんって呼ぼう!」MCのニコニコやさしいお姉さんは、ツール・ド・フランスの取材などでおなじみのライター・土肥志穂さん。「いま、スタートのお手本を見せてくれているジマさんは、シドニー、アテネ、北京と3回もオリンピックに出場した選手なんですよ!」雰囲気はホンワカしつつも、キッズたちに伝える情報はしっかりと濃い。コースを走り抜ける飯島選手の姿には、周囲の大人もキッズたちも注目だ。「ジマさんフィニッシュ! さすが速いですねー!」
飯島選手の走りでTTのイメージがしっかりできたところで、本番スタート。緊張したおももちのキッズたちは、ホルダーの手を離れて次々にコースに走り出す。多くのキッズがレースを走り慣れた様子で、みんな速い! 急なコーナーも、手慣れた様子でバイクを倒し込んで次々に曲がっていく。
プログラム後半のU-12・U-15も、同様にクリテリウムの前にまずTTが行われたが、この日は参加者の多かったU-10とU-12では、TTのタイムでA、Bの2組に分けてクリテリウムを行うことに。B組は表彰対象ではないとあって、キッズたちはより一層必死のスパートをかける。
「あー、ラインが甘いな」「あのフレームって、どうかな?」注がれる大人の視線も、”コドモのファンレース”とはどこか違う。”未来のトップ選手たち”の走りを無言で見守るのはチームブリヂストン・アンカーの藤田監督。真剣な目が、同時に何だかものすごく楽しそうだ。
激戦のクリテリウム
続いて、前半はU-8・U-10・U-6、後半はU-12・U-15のクリテリウム。未就学児のU-6をのぞくと、ロードバイクを中心としたスポーツ車の比率が高い。しかし、未就学児の補助輪つき自転車にもちゃんと計測チップがついていることが、この大会の姿勢を物語る。
「このレースシリーズのほかに、うちでは、まず自転車に乗れない子の乗り方の教室もやっているんですよ」と語るのは、この大会を主催する特定非営利活動法人マイヨジョーヌ理事の高谷徳成さん。このレースシリーズのネーミングには、自転車に初めて乗るようなキッズたちが、ニッポンの自転車界を背負って立つ選手に成長していく道すじのひとつであれば、という思いが込められているのだ。
一般車もロードバイクも入り交じって、懸命の走りを見せるなか、強い印象を残すのはレベルの高い走りを見せているロードバイクの先頭集団だ。
終盤、「うしろなんか見るな!前見ろ前!!」外周から、おそらくお父さんであろう”コーチ”の怒号が飛ぶ。低年齢であっても走り慣れているキッズたちは、フィニッシュラインでのハンドル投げも当然のようにやってのける。その迫力あるレースぶりは、ゴールを撮影していた他社のベテラン自転車カメラマンも「すごいゴールスプリントだ!」と感心していたほど。
いっぽう、補助輪つきの愛車で参加したキッズたちも、最後尾を走っていた笑顔の飯島選手をつれて、満足そうにゴール。ちびっこキッズも自分のレースを走る楽しさをしっかり満喫していた。
プロのアドバイスも盛りだくさん
TTを終えてクリテリウムが始まる前には、前半後半とも、キッズたちに飯島・清水選手がアドバイスしてくれる「クリニック」の時間がとられた。
前半のU-6・U-8・U-10のクリニックでは、ヘルメットのかぶり方や走り出しのギアの選択など、基本的なことをしっかり確認だ。
後半のU-12・U-15のクリニックでは、高学年らしい質問も飛び出した。
「清水選手は、レースで緊張しますか?」
「はい、気持ち悪くなります。うえーってなります。」
「どうやってこくふくしますか?」
「うーん、できないですねー(笑)。…トレーニングで克服します!」
自分たちに対して「選手同士」として真摯に応えてくれている選手の姿を、キッズたちはしっかり見つめていた。
後半のクリニックでは、大会運営側のひとりでもある三浦さんからのアドバイスも。「コーナーはみんな速さはそう変わらないので、抜けてからの立ち上がりをはやく、直線でスピードを出すといいね。ギアは軽めにスタートして、少しずつ重く。コーナーはペダルを踏まないで、左周りなら左を上げて回るのを忘れないで!」
リザルトも表彰も本格的
このレースでは、カテゴリごとにリザルトを貼り出し、表彰も本格的に実施。
U-6で優勝した古谷田耀くんは、手慣れた様子で1位のプレートを掲げてのフォトセッション。ヨーロッパのキッズレースの光景を思わせる、堂々としたチャンピオンぶりだ。
U-10優勝の石井洋輝くんは「競輪選手になりたい」、U-15優勝の木下大輝くんは「海外で走れるようなロード選手になりたい」と将来の目標をしっかりとした口調で語っていた。
大会の最後は、ゲストの選手たちからの一言コメント。
「みんなの元気な走りが印象に残りました」と飯島選手。
「みんなうまくてびっくりしました。ぼくがこの域に達したのって、大学の頃なので!」と清水選手。また、三浦さんからは
「最初にジュニアの大会を始めたときは、参加人数が少なくてどうなるかと思いましたが、参加してくれた選手のなかから世界選手権に出るジュニア選手が出たり、海外に行きたいという選手が出てきて、うれしく思います。ブリヂストンの選手たちもきてくれて、みなさんのご協力に感謝しています。これからもお力添えをよろしくお願いします!」との言葉があった。
まだまだ走り足りない様子の元気なキッズたちは、選手のサインや次の目標を抱えて、それぞれの家路についていった。
Road to KINGとは?
ソウル五輪ロードやアトランタ五輪MTB出場などで知られる”キング三浦”こと、三浦恭資さんの名をタイトルに掲げたこの大会は、三浦さん自身も運営にかかわる、特定非営利法人マイヨジョーヌが主催するもの。同法人のwebによれば「日本で始めて15歳以下の青少年を対象とするサイクルロードレース」で、「レースを通じて子供の社会性を高め、サイクルロードレースの普及と競技能力の向上、そして次世代の世界に通用する選手の育成を目指」す。
特定非営利法人マイヨジョーヌの理事長は、元競輪選手で世界選手権10連覇の中野浩一さん。「自分が今あるのは自転車のおかげ。社会貢献をしたい」と考えた中野浩一さんが、財団法人日本自転車振興会(現・財団法人JKA)の資金的支援を得、キッズ世代の育成をしていた三浦さん、高谷さんらとともに活動を始めたのが同法人だ。このレースシリーズのほか「初心者のための自転車安全教室」なども年数回各地で開催している。
Road to KINGシリーズについて、三浦さんに聞いた。
-本人もお父さんたちも本気、の濃いレースでした。
「遊びでなくて真剣勝負です。最初はこちらも甘く考えていたんです。ゴール前で泣く小さな子を見て、そんなに真剣に走っているなら、こちらもまじめに取り組まないと…と考えを改めました。見習わなくてはいけない大人の自転車選手だっていっぱいいます。自分が始めたときの気持ちは、そうだったはず。」
-ゲストも豪華な顔ぶれですが。
「ゲストのプロ選手と真剣勝負する子もいます。野球教室にイチローや長嶋さんが来てくれる、みたいに、プロとの交流は必ず入れようと思っています。子供のときから、将来の夢をもっと高いレベルで持ってほしい。子供のチームがあって子供が走る場や、目標となる場が少ないので、このレースが一流選手になるステップアップの、ひとつの登竜門になればと思います。」
-15歳以下で単独の大会、というのには、明確な目的意識を感じます。
じつは相当すごいことをしている大会なのではないか、と。
「はい、やっているほうはそのつもりでやっています! 今回は単独開催は初めてですが、予想以上に多くの方に参加してもらってよかったです。継続してやることによって、みんなレベルが高くなっている。長良川(昨年12月開催の2009年度第1戦、木曽三川公園大会)で優勝した子が東京にも来てくれたりと、子供だけのレースでも遠方からもみんな来てくれて。中学生になった女子が、今日はバレンタインだからってチョコレートを持ってきてくれたり…。やっぱり、そういうのはうれしいねぇ(笑)。
次は3月7日、播磨中央公園で第3戦です!」
今後のスケジュールは、マイヨジョーヌのホームページに掲載されるとのこと。Kingを目指すキッズたち(&その保護者たち)は、今後の情報を要チェックだ。
■Road to KING 2009 味の素スタジアム大会
主な競技結果
【タイムトライアル】(1周400m)
U-8 1位 古林一夢 48.72
U-10 1位 清水大樹 46.52
U-12 1位 小野康太郎 42.29
U-15 1位 木下大輝 37.17
【クリテリウム】
U-6(1周400m)
1位 古谷田耀 0:59.24
2位 高梨千帆里 01:06.86
3位 木村亮太 01:14.91
U-8(4周1.6km)
1位 古林一夢 3:27.16
2位 高梨万里王 3:31.84
3位 冨樫由稀 3:36.38
U-10 A組(10周4km)
1位 石井洋輝 7:57.74
2位 古谷田貴斗 7:58.71
3位 鵜沼碧 7:59.18
U-12 A組(15周6km)
1位 佐藤大紀 12:08.46
2位 小野康太郎 12:08.77
3位 古山稀絵 12:09.02
U-15(25周10km)
1位 木下大輝 18:11.40
2位 池田隆人 18:25.45
3位 元植裕紀 18:49.17
当日の各クラスの熱戦の模様はフォトギャラリーでお楽しみください。
Photo&text:Yuko.SATO
写真とレポート:佐藤有子
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