2018/07/04(水) - 09:06
ネパールで行われたアジアエンデューロシリーズへ出場したオルタナティブバイシクル代表の北澤肯さん。体調を崩し、リタイアを決意して迎えた大会当日でしたが……?(※前編はこちら)
朝方、誰かが部屋のドアをノックした。開けてみると、なんと角南さんがレースのウェアを整えて戸口に立っていた。既に体調が回復してレースに出るという。てっきり角南さんもレースはリタイアかと思っていたのでビックリ。んー、じゃあ俺も出るか!と思い直し急いでレースの準備をする。
ハイドレーションパックにORSを詰め、ホテルのレストランでなんとか喉に通り消化の良さそうなヨーグルトとバナナを腹に詰める。レース中の携帯食にバナナを失敬し、ザックに詰める。フラフラしながらも、なんとか用意を終えて、最終出走グループのトラックを待つ。
スタートの下の広場でトラックを降りて、自走で登り始める。しかし体調不良とエネルギー不足でとにかくパワーが出ない。ヒーヒー言って登る。なんとか登りきり、SS1のスタートに向かう。スタートの列に並ぶと、アドレナリンの効果か少し元気になる。最初の区間はソコソコのペースで行けた。
しかし急斜面のスイッチバックで前転してしまい、かなり時間をロス。最後の長い緩やかな下りでは、パワー不足で漕げず、不甲斐ない走りに。でも、まあ無事SS1は終了。ここからSS2のスタートまで押し上げ。なんと本番はトラックでの搬送サービスがないので全て自走で登らなければならないのだ!
ヘロヘロになりながらなんとかバイクを押してSS2のスタートへ。このコースもテクニカルでとにかく長い。でも、気持ち悪さが先行して、トレイルを怖がる余裕もない。とにかく早く終わって欲しい。なんとか大きなミスもなくクリア。試走では楽しく走った村人の生活道のリエゾンも今日は苦行だ。アップダウンをなんとか走り抜ける。道端からの村人の応援が嬉しい。舗装路に出て、もうシンドくて乗れないのでバイクを押してトボトボ歩く。僕より少し後にスタートした角南さんが追いついてきた。二人でトボトボ押して歩く。先のグループでスタートしたIさんが既にSS4に向かうらしく、元気良さそうにグイグイと舗装路を登っていく。
なんとかSS3のスタート地点に着く。ここで角南さんが食べかけのエナジージェルをくれた。これが凄い効き目なのだ。いきなりパワーが出て、SS3はかなりいい感じで走ることができた。この日本製のエナジージェルは、かなり水っぽく消化吸収がいいのだろう。一瞬ではあったが十分効果を得られた。SS3を終えて、またSS4までテクテクとバイクを押して登る。SS4は登り返しの多い、最もこの時の体調にはきついコースだ。ほとんど入っていないエナジージェルを絞り出すようにして舐めて、スタート。登り返しでは失敗してタイムロスをしてしまう。それでもなんとかゴール。もう動けない。でもホテルまでも自走なのだ。
大変なコンディションだったけど、一応、完走して晴れ晴れとした気持ちでホテルに向かう。途中のナガルコットの町でバナナラッシーを飲もうかと角南さんとカフェに寄るが、注文した後に、「あれ?これのリエゾン制限時間あるかも?」と不安になり、ラッシーも飲まずに全速力でホテルまでの登り坂を急ぐ。結局、ホテルまではリエゾンではなかったのでラッシー損に。
計測チップを計測機に入れると、マスターBの20人中16位であった。まあ、こんなもんだろう。ブルネイのリアーナという女の子に「SS4どうしたの?私なんてチェーン2回も外れたけどタイム余り変わらないじゃない?」なんて言われてしまう。。ボロボロの体でバイクを担いで部屋まで下ろして、シャワーを浴び、バイクの清掃にウェアやプロテクターの洗濯。レストランでスープを飲んで、ベッドに倒れこむ。
翌朝起きると体が元気に満ち満ちている感じだ。おお!これなら行けると、レストランでパワーが出そうな豆のカレーやパンや卵を詰め込む。食べられるので今日は行けるだろう。下痢も収まっている。走る準備を整え、トラックに乗り込む。一番難しいSS5だが、試走の時よりはドライでコンディションも良いはずだ。弾む気持ちでスタートを切り、急斜面のスイッチバックもなんとかクリア!しかし一箇所ラインを間違えて、段差を登れずバイクを降りて押しが入る。最後の急斜面も落ち着いてクリア。
村人の生活道のリエゾンを楽しく走る。上りでもペダルに力が入るし、本当に食べられるって素晴らしいなと思う。昨日はトボトボ押した舗装路もガンガン登って、SS6のスタートへ。一箇所間違えやすい箇所を案の定ミスコースしてゴール。長いSS7も、気を付けていたけどジープロードに出るところでミスコース。でもコース脇の小学生たちの歓声を背に受けて走るのは気持ちがいい。ユーモラスな見た目で、どこでもファットバイクは人気の的だ。僕が敢えてファットバイクでエンデューロにチャレンジする理由だ。
最後のSS8はタイムトライアルをしたところ。前回は2回もミスコースをしたので今回は気をつけて走る。なんとかミスコースせずにゴールする。でも結局タイムは2秒くらいしか変わらなかった。ゴールして計測のピッという音を聞いて、一安心。あー、よかったー。完走できたー。辛かったけど、楽しかったー。お弁当のスパゲッティをチュルチュル食べていると角南さんもゴール。最後パンクして数キロメートルをそのまま走ってきて、リムがベコベコになってしまっていた。それでも2人とも、体調不良や怪我等のトラブルを乗り越えて無事に完走できたので、大興奮してお互いの健闘を讃え合う。
ホテルに戻り、バイクやウェアを洗いシャワーを浴びる。お待ちかねの表彰式とパーティーだ。クラス別の表彰の後には、各国の参加者の紹介。そして主催のシャムから、ホテルの支配人、医療班、メディア班、スンダルやペンバ・シェルパのロジスティック担当、コース保安員をしてくれた軍関係者、レースへの様々な協力者へお礼と感謝の言葉が贈られたのが印象的だった。本当にたくさんの人たちの献身的な協力のおかげで開催できたイベントだったんだろうということが感じられた。
入賞関係では、体調を壊していたハワードが流石のスポーツインストラクターで、マスターB準優勝。エリートクラス優勝は地元ネパールのYETIのサポートライダーであるラジャッシュ。僕は100人中80位で、角南さんは僕の少し下くらい。1日目の体調が悪くなければ 僕も60位くらいにはなれたかもしれないけど、でも60位でも80位でも特に何も変わらない。この場にいて、この仲間たちとネパールでレースできたことが重要なのだ。
パーティーでは豚の丸焼きが供され、脂肪の箇所が柔らかく大層美味しかったけど、これでお腹を壊した人も多かった様だ。早速作られたレースの動画が上映されたが、上映中に機材のタコ足配線によりステージ横でいきなり火事が発生し、会場が煙に包まれるハプニングもあり、そこで一旦パーティーが一区切り。ローカルライダー達は夜更けまで騒いでいたようだが、海外組は疲労や体調不良から、早めに部屋に戻っていたようだ。
翌朝、荷物をまとめ皆でマイクロバスに分乗しカトマンズへ向かう。ホテルでチェックインし、旅行者に有名なタメル地区の日本食レストランで久しぶりに日本食に舌鼓を打ち、翌日からのトロンラ峠チャレンジのために同行するIさん、翌日帰国する角南さんとおみやげ屋や薬局、アウトドアショップを回る。翌日からの準備を整え、高山病予防のダイアモックスを服用する。さあ、明日からがネパール後半のハイライト、トロンラ峠だ。
text&photo:Koh.Kitazawa
朝方、誰かが部屋のドアをノックした。開けてみると、なんと角南さんがレースのウェアを整えて戸口に立っていた。既に体調が回復してレースに出るという。てっきり角南さんもレースはリタイアかと思っていたのでビックリ。んー、じゃあ俺も出るか!と思い直し急いでレースの準備をする。
ハイドレーションパックにORSを詰め、ホテルのレストランでなんとか喉に通り消化の良さそうなヨーグルトとバナナを腹に詰める。レース中の携帯食にバナナを失敬し、ザックに詰める。フラフラしながらも、なんとか用意を終えて、最終出走グループのトラックを待つ。
スタートの下の広場でトラックを降りて、自走で登り始める。しかし体調不良とエネルギー不足でとにかくパワーが出ない。ヒーヒー言って登る。なんとか登りきり、SS1のスタートに向かう。スタートの列に並ぶと、アドレナリンの効果か少し元気になる。最初の区間はソコソコのペースで行けた。
しかし急斜面のスイッチバックで前転してしまい、かなり時間をロス。最後の長い緩やかな下りでは、パワー不足で漕げず、不甲斐ない走りに。でも、まあ無事SS1は終了。ここからSS2のスタートまで押し上げ。なんと本番はトラックでの搬送サービスがないので全て自走で登らなければならないのだ!
ヘロヘロになりながらなんとかバイクを押してSS2のスタートへ。このコースもテクニカルでとにかく長い。でも、気持ち悪さが先行して、トレイルを怖がる余裕もない。とにかく早く終わって欲しい。なんとか大きなミスもなくクリア。試走では楽しく走った村人の生活道のリエゾンも今日は苦行だ。アップダウンをなんとか走り抜ける。道端からの村人の応援が嬉しい。舗装路に出て、もうシンドくて乗れないのでバイクを押してトボトボ歩く。僕より少し後にスタートした角南さんが追いついてきた。二人でトボトボ押して歩く。先のグループでスタートしたIさんが既にSS4に向かうらしく、元気良さそうにグイグイと舗装路を登っていく。
なんとかSS3のスタート地点に着く。ここで角南さんが食べかけのエナジージェルをくれた。これが凄い効き目なのだ。いきなりパワーが出て、SS3はかなりいい感じで走ることができた。この日本製のエナジージェルは、かなり水っぽく消化吸収がいいのだろう。一瞬ではあったが十分効果を得られた。SS3を終えて、またSS4までテクテクとバイクを押して登る。SS4は登り返しの多い、最もこの時の体調にはきついコースだ。ほとんど入っていないエナジージェルを絞り出すようにして舐めて、スタート。登り返しでは失敗してタイムロスをしてしまう。それでもなんとかゴール。もう動けない。でもホテルまでも自走なのだ。
大変なコンディションだったけど、一応、完走して晴れ晴れとした気持ちでホテルに向かう。途中のナガルコットの町でバナナラッシーを飲もうかと角南さんとカフェに寄るが、注文した後に、「あれ?これのリエゾン制限時間あるかも?」と不安になり、ラッシーも飲まずに全速力でホテルまでの登り坂を急ぐ。結局、ホテルまではリエゾンではなかったのでラッシー損に。
計測チップを計測機に入れると、マスターBの20人中16位であった。まあ、こんなもんだろう。ブルネイのリアーナという女の子に「SS4どうしたの?私なんてチェーン2回も外れたけどタイム余り変わらないじゃない?」なんて言われてしまう。。ボロボロの体でバイクを担いで部屋まで下ろして、シャワーを浴び、バイクの清掃にウェアやプロテクターの洗濯。レストランでスープを飲んで、ベッドに倒れこむ。
翌朝起きると体が元気に満ち満ちている感じだ。おお!これなら行けると、レストランでパワーが出そうな豆のカレーやパンや卵を詰め込む。食べられるので今日は行けるだろう。下痢も収まっている。走る準備を整え、トラックに乗り込む。一番難しいSS5だが、試走の時よりはドライでコンディションも良いはずだ。弾む気持ちでスタートを切り、急斜面のスイッチバックもなんとかクリア!しかし一箇所ラインを間違えて、段差を登れずバイクを降りて押しが入る。最後の急斜面も落ち着いてクリア。
村人の生活道のリエゾンを楽しく走る。上りでもペダルに力が入るし、本当に食べられるって素晴らしいなと思う。昨日はトボトボ押した舗装路もガンガン登って、SS6のスタートへ。一箇所間違えやすい箇所を案の定ミスコースしてゴール。長いSS7も、気を付けていたけどジープロードに出るところでミスコース。でもコース脇の小学生たちの歓声を背に受けて走るのは気持ちがいい。ユーモラスな見た目で、どこでもファットバイクは人気の的だ。僕が敢えてファットバイクでエンデューロにチャレンジする理由だ。
最後のSS8はタイムトライアルをしたところ。前回は2回もミスコースをしたので今回は気をつけて走る。なんとかミスコースせずにゴールする。でも結局タイムは2秒くらいしか変わらなかった。ゴールして計測のピッという音を聞いて、一安心。あー、よかったー。完走できたー。辛かったけど、楽しかったー。お弁当のスパゲッティをチュルチュル食べていると角南さんもゴール。最後パンクして数キロメートルをそのまま走ってきて、リムがベコベコになってしまっていた。それでも2人とも、体調不良や怪我等のトラブルを乗り越えて無事に完走できたので、大興奮してお互いの健闘を讃え合う。
ホテルに戻り、バイクやウェアを洗いシャワーを浴びる。お待ちかねの表彰式とパーティーだ。クラス別の表彰の後には、各国の参加者の紹介。そして主催のシャムから、ホテルの支配人、医療班、メディア班、スンダルやペンバ・シェルパのロジスティック担当、コース保安員をしてくれた軍関係者、レースへの様々な協力者へお礼と感謝の言葉が贈られたのが印象的だった。本当にたくさんの人たちの献身的な協力のおかげで開催できたイベントだったんだろうということが感じられた。
入賞関係では、体調を壊していたハワードが流石のスポーツインストラクターで、マスターB準優勝。エリートクラス優勝は地元ネパールのYETIのサポートライダーであるラジャッシュ。僕は100人中80位で、角南さんは僕の少し下くらい。1日目の体調が悪くなければ 僕も60位くらいにはなれたかもしれないけど、でも60位でも80位でも特に何も変わらない。この場にいて、この仲間たちとネパールでレースできたことが重要なのだ。
パーティーでは豚の丸焼きが供され、脂肪の箇所が柔らかく大層美味しかったけど、これでお腹を壊した人も多かった様だ。早速作られたレースの動画が上映されたが、上映中に機材のタコ足配線によりステージ横でいきなり火事が発生し、会場が煙に包まれるハプニングもあり、そこで一旦パーティーが一区切り。ローカルライダー達は夜更けまで騒いでいたようだが、海外組は疲労や体調不良から、早めに部屋に戻っていたようだ。
翌朝、荷物をまとめ皆でマイクロバスに分乗しカトマンズへ向かう。ホテルでチェックインし、旅行者に有名なタメル地区の日本食レストランで久しぶりに日本食に舌鼓を打ち、翌日からのトロンラ峠チャレンジのために同行するIさん、翌日帰国する角南さんとおみやげ屋や薬局、アウトドアショップを回る。翌日からの準備を整え、高山病予防のダイアモックスを服用する。さあ、明日からがネパール後半のハイライト、トロンラ峠だ。
text&photo:Koh.Kitazawa
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