2018/04/14(土) - 09:06
山梨県甲府市で行われた「信玄公祭り」にて、同イベント史上初めてとなるクリテリウムが開催された。甲府駅前の大通りで炭素繊維の騎馬を駆った猛者たちが、大いに祭りを盛り上げた様子をレポートしよう。
甲府の街並みを今も見守る武田信玄公
町中を甲冑武者たちが練り歩くまるでタイムスリップか、異世界に迷い込んだかのような体験
駅前では甲冑に身を包んだ武者たちが合戦する さながら川中島?
戦国の梟雄、武田信玄。その本拠であった甲府市で、まちを挙げて大々的に行われるのが、「信玄公祭り」だ。山梨県最大のお祭りとして県内外から多くの人を集めるイベントとなり、武田二十四将を模した騎馬軍団が街を練り歩く「甲州軍団出陣」の様子は、まるで甲府市街が戦国時代にタイムスリップしたような感覚に襲われるほどの規模を誇る、山梨最大のお祭りである。
今年で47回目を迎えることとなった信玄公祭りで、初となる自転車レースが開催された。「信玄公サイクルロードレース」と名付けられたレースは、甲州軍団出陣の直前に多くの観客が詰めかける中、甲府駅南口の平和通りを封鎖して行われた本格的なクリテリウム。
甲府駅北口で行われたステージイベント 東京オリンピックロードレースで山梨がコースになることなどが語られた
地元FM番組などにも出演し、人気を誇る今中大介氏
駅前広場は多くの観光客でにぎわった 最近流行りのゆるキャン△のトークショーなども行われ、老若男女県内外問わずたくさんの来場者が集った まさに山梨一のイベントだと実感
きっかけとなったのは、2020年東京五輪で自転車ロードレースが山梨県を通る可能性が高まってきたこと。自身も甲府を生活の拠点とし、精力的に自転車に関する文化を発信し続けている今中大介氏や、自転車を通じて山梨を活性化しようというNPO法人「やまなしサイクルプロジェクト」の皆さんが働きかけ、このレースの開催が決まった。
中央分離帯で区切られた片側2車線の大通りを完全封鎖して行われる都市型クリテリウムとなり、人出の多さはジャパンカップクリテリウムやさいたまクリテリウムのよう。ただ違いを挙げるとすれば、それらの観客は多くをサイクリストが占めるが、この信玄公ロードレースはそうではないことだろう。
クリテリウム参加選手たちに加え、多くの地元サイクリストらが加わったパレードラン
タンデムレーサーたちが脚を競った1周目 アテネパラリンピック銀メダリストの大木卓也も出場
また、UCIレースとして行われるジャパンカップの前座イベントや、ツール・ド・フランスのチャンピオンが来日するさいたまクリテリウムとは異なり、海外から著名選手が参加しているわけでは無い。ただ、「本物のレースの迫力を伝えたい」という思いから、参加した選手たちは佐野淳也(マトリックスパワータグ)や中村龍太郎(チームコバリン)といった全日本チャンピオン経験者ら、さらにレジェンドライダーとして今中大介氏もスタートラインについた。
パレード走行を行う集団の前方では、アテネパラリンピック銀メダリストの大木卓也も出場したタンデムレーサーによるスプリントが1周目に行われたのち、レースは本格的にスタート。高野淳(YOUCAN山梨)が逃げを決め、全6周中4周まで逃げ続ける。
地元のサイクルショップ、YOU CAN山梨店の高野淳が逃げる
甲府駅前のロータリーを駆け抜ける集団
ラップされつつある甲冑武者とゴールスプリントに入った先頭集団
中村龍太郎(チームコバリン)のパフォーマンスに盛り上がる観客達 口をあんぐり開いた男の子が自転車のカッコよさにとりつかれてるといいですね
その後ろでは佐野や中村、中井路雅と徳田優のTeam UKYOコンビが前を引くメイン集団が迫り、ラスト2周を残して吸収。そのままの集団で、最終周に入り、勝負はスプリントに持ち込まれた。甲冑を着てレースに参加した田中さんをラップしつつの最終スプリント、向かい風の中伸びたのは山梨県出身の中村だった。
レースが始まった最初のうちこそ、沿道の観客の皆さんは初めて見るロードレースに戸惑う様子も見られたが、展開に熱が入るにつれて応援もヒートアップ。最後のスプリントの迫力には、2重3重に押し寄せた人々が思わず息を呑む様子が伝わってきた。大半の人々が選手たちのプロフィールもロードレースという競技のルールや作法も知らなかっただろうけど、きっとその魅力の一端に触れることができたはず。
入賞選手らによるシャンパンファイト 甲州ワインのキスヴィン・ワイナリーが提供するスパークリングワインの芳香が立ち込める
今回のロードレースに参加した選手の方々と協力されたスタッフの皆さん お疲れ様でした!
そして、これまでの都市型クリテリウムと明確に違うのが、自転車レースが主役の一日では無いということ。このレースはあくまで、「信玄公祭り」の一部として開催された。そう書くと、どこかネガティブなイメージだけれども、けしてそうではない。むしろ、これまでスポーツバイクに一切接点が無かった人たちが、初めてレースに触れるという機会としてこれ以上ないイベントだった。
細かなルールや選手の経歴を知らなくても、自転車レースはわかりやすい。一番にゴールラインへ飛び込んだ人が勝者なのだから。そして、選手たちとの距離の近さやスピード感がもたらす興奮は、お祭りを更に盛り上げてくれる。そんなエンターテイメントとしての自転車レースが持つポテンシャルを感じさせてくれたのが、この信玄公ロードレースだった。このレースが毎年開催されるようになれば、山梨、ひいては関東の自転車文化は大きな進歩を遂げるはずだ。
夜まで信玄公祭は続いている 屋台エリアも盛り上がっていた
一日中練り歩き続けた武者たち
土曜日のトリを飾る甲州軍団帰陣式 多くの観覧者が詰めかけた
信玄役の俳優渡辺大さん(右)と、山本勘助役の俳優升毅さん(左)が一日を締めくくり、盛り上がりのうちに終幕した信玄公祭
text&photo:Naoki.YASUOKA
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今年で47回目を迎えることとなった信玄公祭りで、初となる自転車レースが開催された。「信玄公サイクルロードレース」と名付けられたレースは、甲州軍団出陣の直前に多くの観客が詰めかける中、甲府駅南口の平和通りを封鎖して行われた本格的なクリテリウム。
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中央分離帯で区切られた片側2車線の大通りを完全封鎖して行われる都市型クリテリウムとなり、人出の多さはジャパンカップクリテリウムやさいたまクリテリウムのよう。ただ違いを挙げるとすれば、それらの観客は多くをサイクリストが占めるが、この信玄公ロードレースはそうではないことだろう。
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パレード走行を行う集団の前方では、アテネパラリンピック銀メダリストの大木卓也も出場したタンデムレーサーによるスプリントが1周目に行われたのち、レースは本格的にスタート。高野淳(YOUCAN山梨)が逃げを決め、全6周中4周まで逃げ続ける。
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レースが始まった最初のうちこそ、沿道の観客の皆さんは初めて見るロードレースに戸惑う様子も見られたが、展開に熱が入るにつれて応援もヒートアップ。最後のスプリントの迫力には、2重3重に押し寄せた人々が思わず息を呑む様子が伝わってきた。大半の人々が選手たちのプロフィールもロードレースという競技のルールや作法も知らなかっただろうけど、きっとその魅力の一端に触れることができたはず。
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細かなルールや選手の経歴を知らなくても、自転車レースはわかりやすい。一番にゴールラインへ飛び込んだ人が勝者なのだから。そして、選手たちとの距離の近さやスピード感がもたらす興奮は、お祭りを更に盛り上げてくれる。そんなエンターテイメントとしての自転車レースが持つポテンシャルを感じさせてくれたのが、この信玄公ロードレースだった。このレースが毎年開催されるようになれば、山梨、ひいては関東の自転車文化は大きな進歩を遂げるはずだ。
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text&photo:Naoki.YASUOKA
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