2017/08/19(土) - 08:37
7月23日に開催された「北アルプス山麓グランフォンド」。獲得標高3000mの150kmクラスは、長野県ならではの山深いルートを突き進む。「いったいどれだけ登るの?」という声が聞こえてきそうなイベントレポート後編をお届け(前編はこちら)。
大町市美麻地区の「ぽかぽかランドエイド」から後編はスタート。ここでは地元で取れた色とりどりの夏野菜がバイキング形式で並べられ、みな思い思いに箸を伸ばす。また味噌が有名な長野県とあって、2種類の辛さが用意された味噌をおにぎりに塗っていただく。ご飯が進む濃さながらしつこくない味は運動時でも食べやすく、汗をかいて塩分を欲した身体には美味しさがより増したようにも感じられた。
さらには、デザートに今が旬のブルーベリーを沈めたレモンゼリーまで用意されるほどで、これから来たる登りに備えるどころか、逆に体が重くなってしまうのでは?と思うほどに美味しいエイドを堪能することができた。
ちょうどよく走り、ぽかぽかランドでお風呂にでも浸かりたいと思っていたけれど、この頃になると雨も止み始め、「よし、まだまだ走れるぞ」という気分になってくるのは不思議なもの。ただその気持ちも、エイドを出発すると直後に差し掛かる登りで心折られた人もいたに違いない。次の美麻支所給水所まで再び約4kmの登りをこなしていくことになる。
エイドで回復して元気な様子で登っていく人、度重なる登りにギブアップして自転車を降りて押す人、参加者の中でも真逆の様子が見て取れる4kmとなった。登りの途中にある「堀切見晴台」からは雨も止んだとあって、完全には見えないものの北アルプスの片鱗を感じさせる景色が広がっていた。ただ、この地点も登りの途中に足を止めて振り返らなければならず、気づけた人は少なかったのではないだろうか。
登り切った頂上にある大町市美麻支所は、水のみが用意された給水所に。飲み水だけでなく桶にも水が準備され、エイドに寄った人の多くが自転車についた泥や砂を流し、気持ち新たにスタートを切っていった。美麻支所では地元の団体である「源流美麻太鼓」の皆さんが偶然にも練習をしており、その力強い音色で気持ちも高まり先へ進むパワーを与えてくれた。
青々とした田んぼを脇目に美麻の集落内を駆ける一行。このまま平地が続いて欲しいと思ったのも束の間、短めではあるがまたも登りが登場する。ただ、暑さ対策を十分に講じた大会側の采配により、10kmに満たない走行距離にも関わらずその先には再び給水所が設けられた。
大町市八坂地区に用意された、ここ「曽山給水所」ではスポーツドリンクとバナナがいただけた。美麻のエイドから数えてもう2度の登りを経ており、小腹が空いたかなと思えるグッドタイミングでの補給だ。もちろん必要ない人はそのまま寄らずに進んでしまうのだが、バナナを見ると、こう補給したくなるのはサイクリストの性というものだろうか。
細かいアップダウンを経た先には120kmと150kmの分岐地点が現れ、そのまま直進すれば大町市街へ、左折すると更に南下し松川村へというルートになる。150kmクラスにエントリーしていても、これまでの疲労度や満足度を考え120kmへ変更したチームもいたようだ。自分の無理なく安全に走れる選択が可能であり、参加者みんなが最後まで楽しめるよう工夫されている点である。
150kmクラスでは分岐後ほどなくして「大峰高原エイド」に。ここでは花見(けみ)自治会と池田町観光協会による各種漬物とおにぎりがまたもずらりと並ぶ。東京で一人暮らしの筆者としては、地元のお母様方が作った優しい味の漬物が、まるで実家に帰ってきたかのような安心させられる味で、ほっとするひと時を過ごすことができた。池田町特産である桑茶も自由に飲むことができ、クセのないさっぱりとした味わいは、体も心もシャキッと引き締まる、そんな気分にもさせてくれた。
ここからは松川村の中心部まで一気に下る。白馬から80kmほどを走った東側のルートにお別れを告げ、いよいよ残りは約30km。道中、秋の紅葉時期には様々な色合いを見せる「大峰高原七色大カエデ」も道脇に佇んでおり、走りながらも一際目立つ大樹に目を奪われてしまうほどだった。
山道を抜け、久々に街に戻ってきたぞと感じつつ、次なる「松川エイド」がある安曇野ちひろ公園へ。大会当日は園内の”トットちゃん広場”がオープンからちょうど1年という日に当たり、ワークショップも開かれるなど楽しげな雰囲気に包まれていた。公園の敷地は広く、エイドのテントを広げても遠目から見ると寂しげに感じるほど。散歩したり駆け回ったりもできるほどで、親子で遊びに来ても十分に楽しめそうだ。
肝心なエイドはといえば、毎年フルーツエイドとされたここ松川だけに、今年も実の詰まった地元産のブルーベリーとトマトが用意された。まさに旬といった深く濃い味わいに舌鼓を打つ。晴れていれば芝生でゴロゴロとひと休みしても気持ち良いことだろう。ただ天気は相変わらず優れず、雨が降るか降らないかのギリギリの天気のまま最終エイドへ向かうことに。
大町市の西側の山沿いに沿って北上していく。まだ、お昼を過ぎてそう時間は経っていないという時間帯なのだが、すでに参加者はまばらになっており、大会側も想像以上に早いペースで来ていると驚きの声。それだけ走れるライダーが多く参加したという証拠だろう。年々ルートレイアウトが厳しくなるとともに、それに対応した参加者のレベルも上がっていると感じさせてくれた。
車通りの少ない農道を繋いでいき、誘導されるは仏崎観音寺の参道。道の両脇には100体の石仏が立ち並び、その奥にある鳥居まで吸い込まれそうになる、なんだかパワースポットのような所を抜け、更には高瀬川を渡る赤い欄干が特徴的な大出橋を越えれば程なくして「大町温泉郷エイド」に到着だ。
麺に始まり麺に終わるということなのだろうか、最初のエイドでお蕎麦をいただいたが、最後のエイドでは冷や麦が用意されていたのだ。長野県産の地粉を用いた冷や麦でお腹を満たし、加えて大町の藤長菓子舗の水ようかんで糖分も補給。ゴールに向かう最後の腹ごしらえを済まし、「後は完走するだけ」と、みな意気揚々と走り出した。
両脇に青々とした葉を揺らす田んぼを眺めつつ、緩やかな登り基調の県道325号を行く。去年までは一面に花を付けたそば畑スポットとなった場所も、今年は時期が早く絵にならず。途中には鹿島槍ガーデンの釣り堀でゆったりと釣りに興じる人を脇目に、それどころではないといった雰囲気でペダルを回す参加者の姿もあった。
鹿島槍スポーツヴィレッジの看板が見えれば残りはあと僅か。だが気は抜けない。ゴールに向かってラストスパートとなる2kmのヒルクライムが待ち受けるのだ。ゴールが近いと思えば思うほど長く感じるこの登り。だが、ここまでいくつもの峠を越えてきた参加者は今更こんな登りでへこたれる訳もなく、ペダリングには逆に力強ささえも感じることができた。
フィニッシュアーチ前に姿を現した人の表情はみな達成感に満ちた笑顔。見ているこっちまで嬉しくなるような元気いっぱいのガッツポーズで各々ゴールに飛び込んでくる。大会実行委員長の西沢さんもゴールで待ち受け、ハイタッチで一人ひとり出迎えるほどだ。
お揃いのジャージで120kmクラスを完走した、福井県からお越しの福岡さん親子はなんと第1回から6年連続の出場。「息子が中学に上がったので今回初めて120kmに挑戦してみました。けっこうしんどかったけど、楽しめましたね。次は息子が自分を引っ張って走ってくれると嬉しいですね。この大会は好きなので来年もまた出たいです」とお父様はコメントしてくれた。
ほかにも親子連れも多数参加していたが、みな軒並み完走していたそうだ。120km以上は少しハードなルート設定だけに、親子や友達、チームの仲間との参加で絆はより深まるのではないだろうか。
今回、雨ということもありパンクなどトラブルもやや多めだったかもしれないが、各々がその場でしっかり対処できており、かつ安定した走行ペースや走行マナーの良さなど全体的な参加者のレベルが高く、大会自体も非常に気持ちのよいものとなっていた。150kmクラスが追加されたより走りごたえのあるルートと、地域ならではのおもてなしエイドが堪能できる「北アルプス山麓グランフォンド」を、ぜひまた来年も楽しみに待っていて欲しい。
「より魅力あふれるルート作りを目指していく」西沢勇人さん(大会実行委員長)
5年目の節目を終え、今年は第6回ということで150kmクラスを新設したり、ウェルカムイベントにトライアルのショーを取り入れたりと新たな試みを多数盛り込みました。結果的に参加者の皆さんにも大変楽しんでいただけて、大成功に終わったかなと。各ルートもややハードめな設定ではありましたが、みなさんトラブルも少なく走って頂けたので、まだまだボリュームアップできる余地はあると思っております。リピーターも多い大会となってますので、より変化をつけて魅力あるイベントにしていきたいですね。
今回は雨ということで、北アルプスの美しい景色を参加者の皆さんに見せられなかったのが心残りです。来年も北アルプスならではの風景やエイドを存分に楽しめるイベントとしていきますので、ぜひご参加下さい。
ダイジェストムービー
text&photo:Yuto.Murata
大町市美麻地区の「ぽかぽかランドエイド」から後編はスタート。ここでは地元で取れた色とりどりの夏野菜がバイキング形式で並べられ、みな思い思いに箸を伸ばす。また味噌が有名な長野県とあって、2種類の辛さが用意された味噌をおにぎりに塗っていただく。ご飯が進む濃さながらしつこくない味は運動時でも食べやすく、汗をかいて塩分を欲した身体には美味しさがより増したようにも感じられた。
さらには、デザートに今が旬のブルーベリーを沈めたレモンゼリーまで用意されるほどで、これから来たる登りに備えるどころか、逆に体が重くなってしまうのでは?と思うほどに美味しいエイドを堪能することができた。
ちょうどよく走り、ぽかぽかランドでお風呂にでも浸かりたいと思っていたけれど、この頃になると雨も止み始め、「よし、まだまだ走れるぞ」という気分になってくるのは不思議なもの。ただその気持ちも、エイドを出発すると直後に差し掛かる登りで心折られた人もいたに違いない。次の美麻支所給水所まで再び約4kmの登りをこなしていくことになる。
エイドで回復して元気な様子で登っていく人、度重なる登りにギブアップして自転車を降りて押す人、参加者の中でも真逆の様子が見て取れる4kmとなった。登りの途中にある「堀切見晴台」からは雨も止んだとあって、完全には見えないものの北アルプスの片鱗を感じさせる景色が広がっていた。ただ、この地点も登りの途中に足を止めて振り返らなければならず、気づけた人は少なかったのではないだろうか。
登り切った頂上にある大町市美麻支所は、水のみが用意された給水所に。飲み水だけでなく桶にも水が準備され、エイドに寄った人の多くが自転車についた泥や砂を流し、気持ち新たにスタートを切っていった。美麻支所では地元の団体である「源流美麻太鼓」の皆さんが偶然にも練習をしており、その力強い音色で気持ちも高まり先へ進むパワーを与えてくれた。
青々とした田んぼを脇目に美麻の集落内を駆ける一行。このまま平地が続いて欲しいと思ったのも束の間、短めではあるがまたも登りが登場する。ただ、暑さ対策を十分に講じた大会側の采配により、10kmに満たない走行距離にも関わらずその先には再び給水所が設けられた。
大町市八坂地区に用意された、ここ「曽山給水所」ではスポーツドリンクとバナナがいただけた。美麻のエイドから数えてもう2度の登りを経ており、小腹が空いたかなと思えるグッドタイミングでの補給だ。もちろん必要ない人はそのまま寄らずに進んでしまうのだが、バナナを見ると、こう補給したくなるのはサイクリストの性というものだろうか。
細かいアップダウンを経た先には120kmと150kmの分岐地点が現れ、そのまま直進すれば大町市街へ、左折すると更に南下し松川村へというルートになる。150kmクラスにエントリーしていても、これまでの疲労度や満足度を考え120kmへ変更したチームもいたようだ。自分の無理なく安全に走れる選択が可能であり、参加者みんなが最後まで楽しめるよう工夫されている点である。
150kmクラスでは分岐後ほどなくして「大峰高原エイド」に。ここでは花見(けみ)自治会と池田町観光協会による各種漬物とおにぎりがまたもずらりと並ぶ。東京で一人暮らしの筆者としては、地元のお母様方が作った優しい味の漬物が、まるで実家に帰ってきたかのような安心させられる味で、ほっとするひと時を過ごすことができた。池田町特産である桑茶も自由に飲むことができ、クセのないさっぱりとした味わいは、体も心もシャキッと引き締まる、そんな気分にもさせてくれた。
ここからは松川村の中心部まで一気に下る。白馬から80kmほどを走った東側のルートにお別れを告げ、いよいよ残りは約30km。道中、秋の紅葉時期には様々な色合いを見せる「大峰高原七色大カエデ」も道脇に佇んでおり、走りながらも一際目立つ大樹に目を奪われてしまうほどだった。
山道を抜け、久々に街に戻ってきたぞと感じつつ、次なる「松川エイド」がある安曇野ちひろ公園へ。大会当日は園内の”トットちゃん広場”がオープンからちょうど1年という日に当たり、ワークショップも開かれるなど楽しげな雰囲気に包まれていた。公園の敷地は広く、エイドのテントを広げても遠目から見ると寂しげに感じるほど。散歩したり駆け回ったりもできるほどで、親子で遊びに来ても十分に楽しめそうだ。
肝心なエイドはといえば、毎年フルーツエイドとされたここ松川だけに、今年も実の詰まった地元産のブルーベリーとトマトが用意された。まさに旬といった深く濃い味わいに舌鼓を打つ。晴れていれば芝生でゴロゴロとひと休みしても気持ち良いことだろう。ただ天気は相変わらず優れず、雨が降るか降らないかのギリギリの天気のまま最終エイドへ向かうことに。
大町市の西側の山沿いに沿って北上していく。まだ、お昼を過ぎてそう時間は経っていないという時間帯なのだが、すでに参加者はまばらになっており、大会側も想像以上に早いペースで来ていると驚きの声。それだけ走れるライダーが多く参加したという証拠だろう。年々ルートレイアウトが厳しくなるとともに、それに対応した参加者のレベルも上がっていると感じさせてくれた。
車通りの少ない農道を繋いでいき、誘導されるは仏崎観音寺の参道。道の両脇には100体の石仏が立ち並び、その奥にある鳥居まで吸い込まれそうになる、なんだかパワースポットのような所を抜け、更には高瀬川を渡る赤い欄干が特徴的な大出橋を越えれば程なくして「大町温泉郷エイド」に到着だ。
麺に始まり麺に終わるということなのだろうか、最初のエイドでお蕎麦をいただいたが、最後のエイドでは冷や麦が用意されていたのだ。長野県産の地粉を用いた冷や麦でお腹を満たし、加えて大町の藤長菓子舗の水ようかんで糖分も補給。ゴールに向かう最後の腹ごしらえを済まし、「後は完走するだけ」と、みな意気揚々と走り出した。
両脇に青々とした葉を揺らす田んぼを眺めつつ、緩やかな登り基調の県道325号を行く。去年までは一面に花を付けたそば畑スポットとなった場所も、今年は時期が早く絵にならず。途中には鹿島槍ガーデンの釣り堀でゆったりと釣りに興じる人を脇目に、それどころではないといった雰囲気でペダルを回す参加者の姿もあった。
鹿島槍スポーツヴィレッジの看板が見えれば残りはあと僅か。だが気は抜けない。ゴールに向かってラストスパートとなる2kmのヒルクライムが待ち受けるのだ。ゴールが近いと思えば思うほど長く感じるこの登り。だが、ここまでいくつもの峠を越えてきた参加者は今更こんな登りでへこたれる訳もなく、ペダリングには逆に力強ささえも感じることができた。
フィニッシュアーチ前に姿を現した人の表情はみな達成感に満ちた笑顔。見ているこっちまで嬉しくなるような元気いっぱいのガッツポーズで各々ゴールに飛び込んでくる。大会実行委員長の西沢さんもゴールで待ち受け、ハイタッチで一人ひとり出迎えるほどだ。
お揃いのジャージで120kmクラスを完走した、福井県からお越しの福岡さん親子はなんと第1回から6年連続の出場。「息子が中学に上がったので今回初めて120kmに挑戦してみました。けっこうしんどかったけど、楽しめましたね。次は息子が自分を引っ張って走ってくれると嬉しいですね。この大会は好きなので来年もまた出たいです」とお父様はコメントしてくれた。
ほかにも親子連れも多数参加していたが、みな軒並み完走していたそうだ。120km以上は少しハードなルート設定だけに、親子や友達、チームの仲間との参加で絆はより深まるのではないだろうか。
今回、雨ということもありパンクなどトラブルもやや多めだったかもしれないが、各々がその場でしっかり対処できており、かつ安定した走行ペースや走行マナーの良さなど全体的な参加者のレベルが高く、大会自体も非常に気持ちのよいものとなっていた。150kmクラスが追加されたより走りごたえのあるルートと、地域ならではのおもてなしエイドが堪能できる「北アルプス山麓グランフォンド」を、ぜひまた来年も楽しみに待っていて欲しい。
「より魅力あふれるルート作りを目指していく」西沢勇人さん(大会実行委員長)
5年目の節目を終え、今年は第6回ということで150kmクラスを新設したり、ウェルカムイベントにトライアルのショーを取り入れたりと新たな試みを多数盛り込みました。結果的に参加者の皆さんにも大変楽しんでいただけて、大成功に終わったかなと。各ルートもややハードめな設定ではありましたが、みなさんトラブルも少なく走って頂けたので、まだまだボリュームアップできる余地はあると思っております。リピーターも多い大会となってますので、より変化をつけて魅力あるイベントにしていきたいですね。
今回は雨ということで、北アルプスの美しい景色を参加者の皆さんに見せられなかったのが心残りです。来年も北アルプスならではの風景やエイドを存分に楽しめるイベントとしていきますので、ぜひご参加下さい。
ダイジェストムービー
text&photo:Yuto.Murata
Amazon.co.jp