2017/08/06(日) - 09:11
7月23日(日)に長野県は大町・白馬といった地域を舞台に行われた「北アルプス山麓グランフォンド」。雨天ながらも楽しげに走る参加者が多く見られた、ルート、エイド共にボリューム満点のこのイベントの模様を150kmクラスに沿ってお届け。
高々とそびえる北アルプスの山岳を遠目に眺めつつ、山間深い信州の緑豊かなルートと地元がもてなす温かなエイドが人気の「北アルプス山麓グランフォンド」。第6回目を迎えた今年は新たに獲得標高3000mにもなる150kmクラスが設けられ、既存のクラスもルートのボリュームアップを図るなど、大会実行委員長の西沢さんの言葉を借りれば”よりパンチの効いた”イベントへ進化して開催された。
開催時期も昨年の9月から7月へと変更され、その影響で参加人数が減ることも覚悟したというが、フタを開けてみれば昨年から約200人増、3割程も多くなった900人弱の応募があったという。その過半数以上が大会参加2度目、3度目のリピーターというのだから、いかに魅力あるイベントかが分かるというもの。
メイン会場となる鹿島槍スポーツヴィレッジには、長野自動車道の安曇野ICや上信越自動車道の長野ICから車で1時間と、東京方面や名古屋方面、はたまた北陸方面といった各方面からもアクセスしやすく、イベント駐車場には他県ナンバーも多く見受けられた。また、大会と同じ日程で市内では「若一王子祭り」が開かれたり、大町市全域では「北アルプス国際芸術祭」の開催期間中であったりと、そちらも観光として楽しんだ方もいたことだろう。
前日の土曜日も受付を済ますだけでなく、会場ではウェルカムイベントが催され、今年はバイクトライアル競技の全日本チャンピオンである西窪友海さんも招き、ショーを開催するなど、大会会場は例年以上に盛り上がりを見せた様子だった。
梅雨明けしたにも関わらず、大会当日はあいにくの雨。しかしながら20度を超える気温に、参加者の多くは半袖ジャージにウインドブレーカーで調節する程度で済んだようだ。150kmのロングクラス新設に伴いスタート時間も昨年より2時間ほど早まったが、早朝でも寒さは感じられず、かつ日中も暑すぎない気温で一日を通して走りやすいコンディションとなった。
晴れていれば爺ヶ岳の雄大な山脈を背にスタートできるここ鹿島槍スポーツヴィレッジだが、曇った天候でそれは叶わず。まずは150kmクラスが前列に並び、2~5人でエントリーしたチームごとに1組ずつスタートが切られた。会場に響くMCアケさんによる元気いっぱいの司会とスタートの合図も、より気分を高めてくれたことだろう。
スタートしてすぐ右手に曲がると、150kmクラスのみに設けられた絶景ポイント「小熊山」への登りに差し掛かる。朝の霧がかった幻想的な山道を行く3kmほどのヒルクライム。雲がかかりながらも頂上からは木崎湖が見下ろせる景色が広がり、みな足を止め記念撮影を行っていた。小熊山はトレッキングコースも引かれているため、木崎湖畔でのキャンプも含め夏のレジャーとして訪れるのもオススメのポイントだ。
濡れた路面と細かなコーナーに気をつけながら下ってくると、先ほど上から眺めていた木崎湖脇に出る。そこからは仁科三湖を横目に北上、全行程通して唯一の平坦路とも言える白馬村の道を軽快に駆けていく。晴れていれば正面に白馬の山々を望みながら走れるはずであったが、残念ながら雲で隠れるロケーションに。JR大糸線を跨ぐ飯森陸橋からは”白馬のジャンプ台”もうっすら見えたのだが、雨の中の走行でそれどころではないというのが参加者の心情だったのかもしれない。
栂池高原に向けて短めの登りをこなすと、視界が開けた先に200mほどの長さになる「栂池パノラマ橋」が見えてくる。スキー場へのアクセスを高めるために2013年に造られたこの橋からは、下を覗けば田園風景も広がり高台からの眺めのような景色も味わえるのだ。栂池方面に向かう際は下りなので一瞬で通り過ぎてしまうが、逆方面から登る際はその風景も参加者の目についたことと思う。
40kmというやや長めの道のりを走った先には本大会最初の「栂池高原エイド」で一息。ここでは、この一帯の名産品でもあるお蕎麦が振る舞われる。使われるのはもちろん地元小谷村産のそば粉で、「小谷流そば打ち伝承人」という地元の団体が協力し、第1エイドだけに大会当日の早朝から準備してくれたという有り難いおもてなし具合だ。
ちょうど朝ごはんにもちょうどいい時間帯で、軽くするりと食べられるお蕎麦は参加者としても食べやすかったことだろう。それでいて蕎麦の風味がしっかりと味濃く口に広がり、エイドのクオリティの高さを早くも実感できた部分であった。例年は秋開催ということで沿道のそば畑には一面花が咲き乱れる中を走れたのだが、今年はまだ花をつける時期でもなく、昨年とはまた違った景色を感じながら走れたのではないだろうか。
栂池エイドを過ぎたら今度は北アルプスを背に東側へ進路を取る。道中で渡った「松川大橋」からは眺めの良い北アルプスが見え…ることはなく、ただ靄がかった川が背後の山とともに雰囲気の良い景色を醸し出していた。直進なら70,100kmのショートルート、曲がれば120,150kmのロングルートという分かれ道を迷わず左折。ヒルクライムの大会ならこれ1本で満足とも言える、峠好きのサイクリストならご存知「嶺方峠」の7kmにもなる登りへと差し掛かる。
カーブは少なく淡々と続く登りに、チーム内でも脚力差が出始め、”オレに構わず先にいけー”という人もいたのではないだろうか。でも安心して欲しい、頂上の「白沢洞門」は開けたスペースになっておりチーム員を待つにもちょうどいい場所になっているのだ。本来なら見晴らしの良いビューポイントなのだが、雨に濡れたくないという思いもあってか、みな足早に去ってしまっていた。ぜひ晴れた日にリベンジしてほしいと思うばかりである。
登りがあれば下りがあるということで、長野市の鬼無里地区まで一気に15kmほどにもなる下り基調の道を行く。道中、温泉宿泊施設の「鬼無里の湯」にて給水所が設けられ、地元の農産物直売所「ちょっくら」より今が旬のきゅうりが大量に振る舞われた。みずみずしくも肉厚のきゅうりに、これまた地元で作られた味噌をつけて頂く。水分と塩分を一緒に補給できる、夏には最高の補給食に違いない。
鬼無里からは小川アルプスラインに沿って南下していくルート。次のエイドまではまた4kmの登りとなり、時折10%を超えるような勾配も出てくるほどで、参加者もややペースダウンといったところ。かなり走った気分にはなっているが、まだまだ全体のルートの半分ほど。後半に向けて体力を温存しつつ走るとしよう。
登り切った地点からやや下った場所にある、大洞(おおどう)高原の観光施設「星と緑のロマン館」で再度エイド休憩。天文台もあるほど星がキレイに見える場所になり、満点の星空を満喫しに旅行にくるのも良さそうだ。ここのエイドでは、信州名物のおやきがずらりと並ぶ。野沢菜と大根の2種類が用意されたおやきは、隣接する大洞地場産センターで作られたとあって温かく、雨で冷えた体にも嬉しい味わいだ。
雨が降り止まないとあって、参加者はみなテントの下に身を寄せ合い談笑しながら一息つく。雲で隠れて見えないのだが、遠くにそびえる北アルプスに思いを馳せる人もいたことだろう。ここ大洞高原からは、まさに目線の高さに山々を望むことができるスポットとなっているのだが、それはまた来年の楽しみに取っておくこととしよう。
小川アルプスラインエイドを過ぎ、残りの道のりもちょうど半分といったところ。小川村の中心地に向かって濡れた路面に気をつけながら、7kmほどの下りをこなす。道中には県宝にも指定された三重塔を持つ「高山寺」や、北アルプスの山々を一挙に見渡せる「アルプス展望広場」といったポイントもあったのだが、下り基調の道でわざわざ足を止める人は数少なかったのかもしれない。
小川村の中心部から車で10分ほど行けば、日本一のおやき生産量を誇る「小川の庄おやき村」も観光地として賑わいを見せるため、大会前日に訪れるのも良いだろう。長野市から小川村、大町市へと繋ぐ県道31号”オリンピック道路”に出た後は、緩やかに登り基調となった道を大町市美麻地区まで行く。
山道を駆けた今までの区間からは道幅も広くなり、より軽快に進んでいく。参加者に危険がないように、途中にあるトンネル内は通らず迂回するルートが組まれる細かな配慮も見て取れた。小川村のエイドからは15kmほどの距離だろうか、程よく走った後に現れる「ぽかぽかランドエイド」へ到着だ。
朝早い出発だったことを考えると、この辺でお昼ご飯かな?といったお腹の空き具合。しっかり補給を摂って次の道のりに備えよう。
後編へ続く。
text&photo:Yuto.Murata
高々とそびえる北アルプスの山岳を遠目に眺めつつ、山間深い信州の緑豊かなルートと地元がもてなす温かなエイドが人気の「北アルプス山麓グランフォンド」。第6回目を迎えた今年は新たに獲得標高3000mにもなる150kmクラスが設けられ、既存のクラスもルートのボリュームアップを図るなど、大会実行委員長の西沢さんの言葉を借りれば”よりパンチの効いた”イベントへ進化して開催された。
開催時期も昨年の9月から7月へと変更され、その影響で参加人数が減ることも覚悟したというが、フタを開けてみれば昨年から約200人増、3割程も多くなった900人弱の応募があったという。その過半数以上が大会参加2度目、3度目のリピーターというのだから、いかに魅力あるイベントかが分かるというもの。
メイン会場となる鹿島槍スポーツヴィレッジには、長野自動車道の安曇野ICや上信越自動車道の長野ICから車で1時間と、東京方面や名古屋方面、はたまた北陸方面といった各方面からもアクセスしやすく、イベント駐車場には他県ナンバーも多く見受けられた。また、大会と同じ日程で市内では「若一王子祭り」が開かれたり、大町市全域では「北アルプス国際芸術祭」の開催期間中であったりと、そちらも観光として楽しんだ方もいたことだろう。
前日の土曜日も受付を済ますだけでなく、会場ではウェルカムイベントが催され、今年はバイクトライアル競技の全日本チャンピオンである西窪友海さんも招き、ショーを開催するなど、大会会場は例年以上に盛り上がりを見せた様子だった。
梅雨明けしたにも関わらず、大会当日はあいにくの雨。しかしながら20度を超える気温に、参加者の多くは半袖ジャージにウインドブレーカーで調節する程度で済んだようだ。150kmのロングクラス新設に伴いスタート時間も昨年より2時間ほど早まったが、早朝でも寒さは感じられず、かつ日中も暑すぎない気温で一日を通して走りやすいコンディションとなった。
晴れていれば爺ヶ岳の雄大な山脈を背にスタートできるここ鹿島槍スポーツヴィレッジだが、曇った天候でそれは叶わず。まずは150kmクラスが前列に並び、2~5人でエントリーしたチームごとに1組ずつスタートが切られた。会場に響くMCアケさんによる元気いっぱいの司会とスタートの合図も、より気分を高めてくれたことだろう。
スタートしてすぐ右手に曲がると、150kmクラスのみに設けられた絶景ポイント「小熊山」への登りに差し掛かる。朝の霧がかった幻想的な山道を行く3kmほどのヒルクライム。雲がかかりながらも頂上からは木崎湖が見下ろせる景色が広がり、みな足を止め記念撮影を行っていた。小熊山はトレッキングコースも引かれているため、木崎湖畔でのキャンプも含め夏のレジャーとして訪れるのもオススメのポイントだ。
濡れた路面と細かなコーナーに気をつけながら下ってくると、先ほど上から眺めていた木崎湖脇に出る。そこからは仁科三湖を横目に北上、全行程通して唯一の平坦路とも言える白馬村の道を軽快に駆けていく。晴れていれば正面に白馬の山々を望みながら走れるはずであったが、残念ながら雲で隠れるロケーションに。JR大糸線を跨ぐ飯森陸橋からは”白馬のジャンプ台”もうっすら見えたのだが、雨の中の走行でそれどころではないというのが参加者の心情だったのかもしれない。
栂池高原に向けて短めの登りをこなすと、視界が開けた先に200mほどの長さになる「栂池パノラマ橋」が見えてくる。スキー場へのアクセスを高めるために2013年に造られたこの橋からは、下を覗けば田園風景も広がり高台からの眺めのような景色も味わえるのだ。栂池方面に向かう際は下りなので一瞬で通り過ぎてしまうが、逆方面から登る際はその風景も参加者の目についたことと思う。
40kmというやや長めの道のりを走った先には本大会最初の「栂池高原エイド」で一息。ここでは、この一帯の名産品でもあるお蕎麦が振る舞われる。使われるのはもちろん地元小谷村産のそば粉で、「小谷流そば打ち伝承人」という地元の団体が協力し、第1エイドだけに大会当日の早朝から準備してくれたという有り難いおもてなし具合だ。
ちょうど朝ごはんにもちょうどいい時間帯で、軽くするりと食べられるお蕎麦は参加者としても食べやすかったことだろう。それでいて蕎麦の風味がしっかりと味濃く口に広がり、エイドのクオリティの高さを早くも実感できた部分であった。例年は秋開催ということで沿道のそば畑には一面花が咲き乱れる中を走れたのだが、今年はまだ花をつける時期でもなく、昨年とはまた違った景色を感じながら走れたのではないだろうか。
栂池エイドを過ぎたら今度は北アルプスを背に東側へ進路を取る。道中で渡った「松川大橋」からは眺めの良い北アルプスが見え…ることはなく、ただ靄がかった川が背後の山とともに雰囲気の良い景色を醸し出していた。直進なら70,100kmのショートルート、曲がれば120,150kmのロングルートという分かれ道を迷わず左折。ヒルクライムの大会ならこれ1本で満足とも言える、峠好きのサイクリストならご存知「嶺方峠」の7kmにもなる登りへと差し掛かる。
カーブは少なく淡々と続く登りに、チーム内でも脚力差が出始め、”オレに構わず先にいけー”という人もいたのではないだろうか。でも安心して欲しい、頂上の「白沢洞門」は開けたスペースになっておりチーム員を待つにもちょうどいい場所になっているのだ。本来なら見晴らしの良いビューポイントなのだが、雨に濡れたくないという思いもあってか、みな足早に去ってしまっていた。ぜひ晴れた日にリベンジしてほしいと思うばかりである。
登りがあれば下りがあるということで、長野市の鬼無里地区まで一気に15kmほどにもなる下り基調の道を行く。道中、温泉宿泊施設の「鬼無里の湯」にて給水所が設けられ、地元の農産物直売所「ちょっくら」より今が旬のきゅうりが大量に振る舞われた。みずみずしくも肉厚のきゅうりに、これまた地元で作られた味噌をつけて頂く。水分と塩分を一緒に補給できる、夏には最高の補給食に違いない。
鬼無里からは小川アルプスラインに沿って南下していくルート。次のエイドまではまた4kmの登りとなり、時折10%を超えるような勾配も出てくるほどで、参加者もややペースダウンといったところ。かなり走った気分にはなっているが、まだまだ全体のルートの半分ほど。後半に向けて体力を温存しつつ走るとしよう。
登り切った地点からやや下った場所にある、大洞(おおどう)高原の観光施設「星と緑のロマン館」で再度エイド休憩。天文台もあるほど星がキレイに見える場所になり、満点の星空を満喫しに旅行にくるのも良さそうだ。ここのエイドでは、信州名物のおやきがずらりと並ぶ。野沢菜と大根の2種類が用意されたおやきは、隣接する大洞地場産センターで作られたとあって温かく、雨で冷えた体にも嬉しい味わいだ。
雨が降り止まないとあって、参加者はみなテントの下に身を寄せ合い談笑しながら一息つく。雲で隠れて見えないのだが、遠くにそびえる北アルプスに思いを馳せる人もいたことだろう。ここ大洞高原からは、まさに目線の高さに山々を望むことができるスポットとなっているのだが、それはまた来年の楽しみに取っておくこととしよう。
小川アルプスラインエイドを過ぎ、残りの道のりもちょうど半分といったところ。小川村の中心地に向かって濡れた路面に気をつけながら、7kmほどの下りをこなす。道中には県宝にも指定された三重塔を持つ「高山寺」や、北アルプスの山々を一挙に見渡せる「アルプス展望広場」といったポイントもあったのだが、下り基調の道でわざわざ足を止める人は数少なかったのかもしれない。
小川村の中心部から車で10分ほど行けば、日本一のおやき生産量を誇る「小川の庄おやき村」も観光地として賑わいを見せるため、大会前日に訪れるのも良いだろう。長野市から小川村、大町市へと繋ぐ県道31号”オリンピック道路”に出た後は、緩やかに登り基調となった道を大町市美麻地区まで行く。
山道を駆けた今までの区間からは道幅も広くなり、より軽快に進んでいく。参加者に危険がないように、途中にあるトンネル内は通らず迂回するルートが組まれる細かな配慮も見て取れた。小川村のエイドからは15kmほどの距離だろうか、程よく走った後に現れる「ぽかぽかランドエイド」へ到着だ。
朝早い出発だったことを考えると、この辺でお昼ご飯かな?といったお腹の空き具合。しっかり補給を摂って次の道のりに備えよう。
後編へ続く。
text&photo:Yuto.Murata
Amazon.co.jp