2016/12/12(月) - 09:22
ツール・ド・おきなわはレースだけにあらず。沖縄本島北部の大自然を満喫するサイクリングがやんばるセンチュリーライドだ。海岸線とジャングルのアップダウンが待つタフなコースが人気のロングライドを実走取材した。
ツール・ド・おきなわのレース部門が開催される前日の土曜日、同エリアでサイクリング部門が開催される。用意されるコースは6つ。100kmチャレンジサイクリング、恩納村ファミリーサイクリング70km、伊是名島サイクリング、伊江島ファミリーサイクリング、そして土日の2日間で行われる本島一周サイクリング。そして、その同じコースで土曜のみを走るのがここで紹介するやんばるセンチュリーライド176kmだ。
朝7時、各サイクリング部門に参加するサイクリストたちが名護市民会館前に集まってくる。サイクリング部門には合計960人が参加。昨夜は沖縄の美味しい料理とオリオンビール、泡盛を楽しんだであろう参加者たち。本州と違い半袖で十分な夏のような気温は嬉しい。
天気予報は晴れで、降水確率は0%。「天気が良いのは皆さんの行いが良いからです!」とは、おなじみ森兵次実行委員長。名護桜太鼓の勇ましい応援を受けてスタート。ウェーブ形式で走り出していく。
長く伸びる隊列の一行は本部半島へ。まぶしい朝陽を浴びながら走る。1日で走る距離はプログラムには176kmとあるが、実測では186kmほどにおよぶ。しかもアップダウンが厳しいことで名高いレース部門とほぼ同様の道を行くのだ。
ツーリング部門も国際色豊かなツール・ド・おきなわ。最近目立つのが台湾からの参加者の皆さんで、じつに本島一周の半数以上の約200人が台湾人というから驚きだ。そして今年は香港やタイ、マレーシアからの参加者も。インターネット時代の今、このサイクリングの良さを知り参加したという感度の良さだ。cyclowiredのジャージを着て取材していると、嬉しいことに「そのサイトで知りました」と話しかけてくれるアジアのサイクリストも。聞けばgoogle翻訳で読んでいるんだとか。
本部半島をぐるり走ると、屋我地島のワルミ大橋へと出る。ここから遠くに見えるは美ら島センチュリーランでもお馴染みの古宇利大橋。ダイナミックな景観に回すペダルを止め、記念写真を撮りあう姿。青い海に浮かぶ長い橋の眺めは最高だ。ちなみにアジアのサイクリストはファッション面で日本人より一歩先を行っているからすぐに分かる。
ピーカン晴れだと真夏のような暑さになるのだが、午前中は気温こそ高めだが、天気予報と違って空は薄曇りで、走りゃすくて楽だった。(名護から南を走るチャレンジサイクリングなどはかなり暑かったらしい)
大宜味の道の駅では付近の名産であるシークヮーサーのドリンクが振る舞われた。JAや地元メーカーごとの数種が用意され、甘酸っぱい風味を楽しむ。この日はこの後のほとんどすべてのエイドでこのシークヮーサードリンクが提供され、スポーツドリンク要らずだった。
風に乗って海岸線をひたすら北上する。沿道に今年も現れたのはキジムナー(沖縄の伝説的な妖怪)の格好をした小学生の子どもたち。太鼓を叩いての応援がなんとも可愛いらしく、嬉しくなる。
レース部門の難所である普久川ダムへの登り「与那の坂」は登らず、辺戸岬の方へと進路を取る。辺戸岬を越えると、ここからは坂の厳しいやんばるが待っている。
昼食は沖縄本島いちの過疎地である奥のエイドにて、豚汁とカレーライスが振る舞われる。そのたっぷりの量に「サイクリング中にそんなに食べれない」と思うかもしれないが、厳しいやんばる路はガッツリ食べておかなくては乗り切れないというのがホントのところ。
昼食を終えると、ここからの山道は本当に厳しくなる。繰り返すアップダウンに、早々にバイクを押して歩き出す人も。後方には回収車が控えている(笑)。
今回、心配されたのは高江付近のヘリパッド建設に対する反対デモ。ちょうどメディアの報道も加熱していた時期で、思わず緊張してしまったが、しかし通るときには座り込みをする人たちから手を振って「チバリヨー」と応援されてしまう(笑)。ちなみに翌日のレースのときも何も問題は起こらなかった。
北端で折り返してからのやんばる路は、鬱蒼としたジャングルの広がる森のなかを貫く道路だ。しんと静まり返って、通過するクルマもほとんどいない。ときおり通るのは明日のレースの試走を行うサイクリストと、そのサポートカーだけだ。
道は険しく、エイドステーションの間は距離があるが、沖縄独特のコミュニティスーパー「共同売店」があるので、立ち寄って補給するには困らない。地元のおじい、おばあに応援される。
時折、森の展望が開けるスポットからは太古の息吹が聞こえてきそうな原始の風景が覗き見ることができる。運が良ければ国の天然記念物「ヤンバルクイナ」に会うことができるというが、それも納得の秘境の雰囲気だ。
東海岸の村「東村(ひがしそん)」はパイナップルの産地として有名な村。エイドでは荒く切ったカットパインが食べ放題。そして冷たい素麺と、シークワーサー、パインゼリーなどが振る舞われる。そうめんにシークヮーサー(亜種のカーブチ)の酸っぱい果汁をかけて食べると、何杯でもイケます。
じつはこのやんばるサイクリングのエイドの内容は、数年前までバナナと黒糖、飴や塩のみといった質素さだったが、昨年来からのエイドで供される補給食の充実度は目を見張るものがある。やはりこのライドを走りきるには相当量の栄養が必要なこと、かつ海外からの参加者増加に対しておもてなしを重視しているのか、沖縄の名産品がたくさん供されるようになったの嬉しい。
最後のエイドは静かな海を臨む道の駅「わんさか大浦パーク」で。この地点での足切りタイムは17時。これに間に合えば山越えで名護まで走ることができる。時刻を過ぎれば乗合バスで山を越えて帰ることになるが、コースの厳しさにここで自主降参する人も多い。
ここからはレース部門の最後の勝負どころと言われる羽地ダムへの上りを登る。レースコースは番越トンネルから右折するが、サイクリング部門は直進し、軽くもうひと山越えて名護へと向かう。
峠からダイナミックなダウンヒルをこなすと、名護市だ。下りきったところはオリオンビール工場の前。時間に余裕があれば見学と試飲をしたいところだ(笑)。
フィニッシュはレースと共通の会場。市民レーサーたちがたくさん集まってなごやかな雰囲気だ。会場には沖縄そばの露店なども多く、食券で食べることができる。ガーミン実測で186kmの長い長いツーリングは終了。非常に厳しく、充実感たっぷり。今夜も走りきった仲間とオリオンビールでの乾杯が待っている。
やんばるサイクリングを走った人の中には翌日のレースに出るツワモノもいるようだ。さすがに長距離クラスは影響があると思うのでおすすめできないが、市民50kmの部ならちょうどよい足慣らしになるかも?
photo&text:Makoto.AYANO
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ツール・ド・おきなわのレース部門が開催される前日の土曜日、同エリアでサイクリング部門が開催される。用意されるコースは6つ。100kmチャレンジサイクリング、恩納村ファミリーサイクリング70km、伊是名島サイクリング、伊江島ファミリーサイクリング、そして土日の2日間で行われる本島一周サイクリング。そして、その同じコースで土曜のみを走るのがここで紹介するやんばるセンチュリーライド176kmだ。
朝7時、各サイクリング部門に参加するサイクリストたちが名護市民会館前に集まってくる。サイクリング部門には合計960人が参加。昨夜は沖縄の美味しい料理とオリオンビール、泡盛を楽しんだであろう参加者たち。本州と違い半袖で十分な夏のような気温は嬉しい。
天気予報は晴れで、降水確率は0%。「天気が良いのは皆さんの行いが良いからです!」とは、おなじみ森兵次実行委員長。名護桜太鼓の勇ましい応援を受けてスタート。ウェーブ形式で走り出していく。
長く伸びる隊列の一行は本部半島へ。まぶしい朝陽を浴びながら走る。1日で走る距離はプログラムには176kmとあるが、実測では186kmほどにおよぶ。しかもアップダウンが厳しいことで名高いレース部門とほぼ同様の道を行くのだ。
ツーリング部門も国際色豊かなツール・ド・おきなわ。最近目立つのが台湾からの参加者の皆さんで、じつに本島一周の半数以上の約200人が台湾人というから驚きだ。そして今年は香港やタイ、マレーシアからの参加者も。インターネット時代の今、このサイクリングの良さを知り参加したという感度の良さだ。cyclowiredのジャージを着て取材していると、嬉しいことに「そのサイトで知りました」と話しかけてくれるアジアのサイクリストも。聞けばgoogle翻訳で読んでいるんだとか。
本部半島をぐるり走ると、屋我地島のワルミ大橋へと出る。ここから遠くに見えるは美ら島センチュリーランでもお馴染みの古宇利大橋。ダイナミックな景観に回すペダルを止め、記念写真を撮りあう姿。青い海に浮かぶ長い橋の眺めは最高だ。ちなみにアジアのサイクリストはファッション面で日本人より一歩先を行っているからすぐに分かる。
ピーカン晴れだと真夏のような暑さになるのだが、午前中は気温こそ高めだが、天気予報と違って空は薄曇りで、走りゃすくて楽だった。(名護から南を走るチャレンジサイクリングなどはかなり暑かったらしい)
大宜味の道の駅では付近の名産であるシークヮーサーのドリンクが振る舞われた。JAや地元メーカーごとの数種が用意され、甘酸っぱい風味を楽しむ。この日はこの後のほとんどすべてのエイドでこのシークヮーサードリンクが提供され、スポーツドリンク要らずだった。
風に乗って海岸線をひたすら北上する。沿道に今年も現れたのはキジムナー(沖縄の伝説的な妖怪)の格好をした小学生の子どもたち。太鼓を叩いての応援がなんとも可愛いらしく、嬉しくなる。
レース部門の難所である普久川ダムへの登り「与那の坂」は登らず、辺戸岬の方へと進路を取る。辺戸岬を越えると、ここからは坂の厳しいやんばるが待っている。
昼食は沖縄本島いちの過疎地である奥のエイドにて、豚汁とカレーライスが振る舞われる。そのたっぷりの量に「サイクリング中にそんなに食べれない」と思うかもしれないが、厳しいやんばる路はガッツリ食べておかなくては乗り切れないというのがホントのところ。
昼食を終えると、ここからの山道は本当に厳しくなる。繰り返すアップダウンに、早々にバイクを押して歩き出す人も。後方には回収車が控えている(笑)。
今回、心配されたのは高江付近のヘリパッド建設に対する反対デモ。ちょうどメディアの報道も加熱していた時期で、思わず緊張してしまったが、しかし通るときには座り込みをする人たちから手を振って「チバリヨー」と応援されてしまう(笑)。ちなみに翌日のレースのときも何も問題は起こらなかった。
北端で折り返してからのやんばる路は、鬱蒼としたジャングルの広がる森のなかを貫く道路だ。しんと静まり返って、通過するクルマもほとんどいない。ときおり通るのは明日のレースの試走を行うサイクリストと、そのサポートカーだけだ。
道は険しく、エイドステーションの間は距離があるが、沖縄独特のコミュニティスーパー「共同売店」があるので、立ち寄って補給するには困らない。地元のおじい、おばあに応援される。
時折、森の展望が開けるスポットからは太古の息吹が聞こえてきそうな原始の風景が覗き見ることができる。運が良ければ国の天然記念物「ヤンバルクイナ」に会うことができるというが、それも納得の秘境の雰囲気だ。
東海岸の村「東村(ひがしそん)」はパイナップルの産地として有名な村。エイドでは荒く切ったカットパインが食べ放題。そして冷たい素麺と、シークワーサー、パインゼリーなどが振る舞われる。そうめんにシークヮーサー(亜種のカーブチ)の酸っぱい果汁をかけて食べると、何杯でもイケます。
じつはこのやんばるサイクリングのエイドの内容は、数年前までバナナと黒糖、飴や塩のみといった質素さだったが、昨年来からのエイドで供される補給食の充実度は目を見張るものがある。やはりこのライドを走りきるには相当量の栄養が必要なこと、かつ海外からの参加者増加に対しておもてなしを重視しているのか、沖縄の名産品がたくさん供されるようになったの嬉しい。
最後のエイドは静かな海を臨む道の駅「わんさか大浦パーク」で。この地点での足切りタイムは17時。これに間に合えば山越えで名護まで走ることができる。時刻を過ぎれば乗合バスで山を越えて帰ることになるが、コースの厳しさにここで自主降参する人も多い。
ここからはレース部門の最後の勝負どころと言われる羽地ダムへの上りを登る。レースコースは番越トンネルから右折するが、サイクリング部門は直進し、軽くもうひと山越えて名護へと向かう。
峠からダイナミックなダウンヒルをこなすと、名護市だ。下りきったところはオリオンビール工場の前。時間に余裕があれば見学と試飲をしたいところだ(笑)。
フィニッシュはレースと共通の会場。市民レーサーたちがたくさん集まってなごやかな雰囲気だ。会場には沖縄そばの露店なども多く、食券で食べることができる。ガーミン実測で186kmの長い長いツーリングは終了。非常に厳しく、充実感たっぷり。今夜も走りきった仲間とオリオンビールでの乾杯が待っている。
やんばるサイクリングを走った人の中には翌日のレースに出るツワモノもいるようだ。さすがに長距離クラスは影響があると思うのでおすすめできないが、市民50kmの部ならちょうどよい足慣らしになるかも?
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