2016/09/27(火) - 09:14
列車に自転車を乗せ、流れゆく景色に旅情を感じつつ、駅弁をひとつまみ。行動範囲を大きく広げてくれる輪行サイクリングは伝統的な旅の手法です。バイクプラス多摩センターに勤める鉄道好きの「テツ店長」こと河井さんが、日本各地を輪行で旅する連載が始まります。
旅する人 河井孝介プロフィール
バイクプラス多摩センターの店長を務める48歳。前職で足かけ10年にわたる勤務を鉄道の無い(モノレール除く)沖縄県で過ごした反動からか、帰京後は輪行サイクリングの虜となり、現在は鉄道と自転車を組み合わせ、鉄道廃線跡や未成線など鉄道の歴史を辿るサイクリングをライフワークとする。鉄道趣味のジャンルは「乗り鉄」。旧国鉄型車両を心から愛し、ひそかにJR全線乗車にチャレンジ中。非常勤の防衛省職員である予備三等陸曹の身分も合わせ持っている。
みなさんはじめまして! 輪行サイクリングで全国の鉄道廃線跡を巡ることをライフワークとする、テツ店長こと河井孝介です。今回の輪行サイクリングは夏休み特別企画として、新潟&福島廃線巡りライドです。鉄道マニアの計画したライドですので、かなり鉄分豊富な内容になりますが、温かく見守りながら楽しんでもらえたら幸いです。夏休み期間中ということで、ここはJR全線乗り放題の青春18きっぷを駆使しての旅になります。
旅のはじまりは午前0時を回ってから。青春18きっぷは1日分を24時間使えるので、0時から行動開始するのが一番効率が良いのですね!この日のために期間限定で運行される臨時夜行列車の指定席券を1ケ月前に確保しておきました。快速ムーンライト信州81号白馬行き、今夜の宿はこちらの列車になります。
使用されるのは、少々古い国鉄型特急電車の189系。もとは特急「あさま」で活躍していましたが、今は臨時列車で余生を送っている感じ。朝目が覚めると列車は大糸線を走っていました。車窓から見える北アルプスや仁科三湖は何度見ても本当に美しく、これから始まる一日にも思わず期待が高まります。
そして5:40白馬駅に到着!早朝の白馬は標高が高い(697m)と言うこともあって、少し肌寒いくらい。張り切って下車すると、ちょっと急ぎ足で自転車を組み立ててサイクリングをスタートします。これから目指すのは、このまま大糸線を下ったところにある平岩駅。ムーンライト信州は白馬止まりで、しかも大糸線の 南小谷~糸魚川間は日本屈指のローカル線。とにかく列車本数が少なく、電車のみだったら大きなロスタイムが発生するので、ここは糸魚川への始発列車が出る平岩駅まで自転車で移動してしまおうという算段なのです。
いきなりですが、ここからが今日1日を決める天王山と言っても過言ではありません。上手く乗り継ぐには、 白馬駅から27km先にある平岩駅7:06発の始発列車に乗り込まなければなりません!持ち時間1時間26分で、自転車の組み立て&分解と移動の両方をこなさなければいけないとなると、かなり時間に余裕がないことが当初から予想されていました。名付けて「輪行タイムトライアル」ということで、輪行のスキルと脚力の両方が試されることとなったのですが......
走り始めた当初はけっこうペースを上げて頑張っていましたが、実際に走っていると、概ね下り基調ということもあり、思ったより早く移動することができ、余裕を持って目的地である平岩駅まで到着することができました。駅に着くと自転車はさっそく分解。途中アブの群れに襲われながらも、何とかパッキングも終えて無事に糸魚川行きの始発列車に乗り込むことが出来ました。
このあたりは雪も多く、さらに中央構造線が走る地質の悪い地域らしく、この路線もしばしば土砂災害で不通になるのですが、姫川沿いの険しい谷あいを進む大糸線のディーゼルカーから車窓を眺めていると、巨大な岩がゴロゴロしている川床や、いかついスノーシェッドに覆われた線路と国道が並走する景色など、圧倒的な自然の力を感じずにはいられません。
そんなこんなであっという間に終点の糸魚川駅に到着。これから新潟方面に向かうわけですが、ここ糸魚川から直江津までは、第三セクターのえちごトキめき鉄道・日本海ひすいラインを通ってゆきます。ホームで待っていると、やって来たのはやはり旧国鉄型特急電車の485系です!顔はかなり整形されてしまっていますが、これも今では貴重な車両であることには変わりません。
この糸魚川発新潟行きの快速列車に約2時間半揺られての旅が続きます。車内設備はさすが特急型だけあって快適そのもの!時間もたっぷりあるのでシートをリクライニングしてたっぷり睡眠をとらせて頂きました(笑)
ここまでたっぷり鉄道の旅を満喫したあとは、新潟駅の二つ手前にある亀田駅で下車してサイクリング再開です。とは言うものの、まず向かった先は新潟市中央卸売市場。ここでちょっと早い昼食を頂いていくことにします。
市場の食堂に行けば、安くて新鮮な料理にありつけるのでは?と期待していきましたが、決して裏切られることはありませんでした!注文した握り寿司のネタは巨大と言っても良いくらいで、新鮮さも申し分無し。調子に乗って地元B級グルメらしい、マグロたれカツ丼も注文してみましたが、こちらもまた美味しくってペロリと平らげてしまったのでした。
ここからいよいよ本格的サイクリングが開始!と意気込みましたが、どうも空は今にも泣きだしそうな天候になってきました。
途中の寄り道スポットと考えていた「新津鉄道資料館」に着くころには、すっかり本降りとなってしまったので、ここで雨宿りも兼ねて館内見学をしていくことにします。なかなかサイクリングが進まないことに、一抹の焦りを感じつつも、館内に入ると大好きな鉄道の資料や物品がいっぱいで、すっかり時間の経つことも忘れてしまっていたのでした(笑)
そこにはこれから探索に行く予定の廃線になった路線の資料展示などもあり、相当充実した内容でありました。これで入館料300円というのは、かなり良心的とも言えるでしょう。けっこう鉄分豊富なスポットではありましたが、非テツの人でも十分楽しめるのではないかと思います。
そんなこんなで遊んでいるうちに雨も上がり、青空も見えるようになってきました。だいぶ時間も押してきてしまったので、そろそろお暇して本命の廃線探訪に向かうことにしましょう。
新津から目的の蒲原鉄道の終着駅があった五泉駅までは距離にして約10km程度なので、まあひとっ走りといった感じです。あとは車両の保存されている場所を探してうろちょろするのですが、こんな時には自転車の機動力が本当に役に立ってくれますね。
まずは五泉高校前の展示車両を見学して、そのあと線路の跡に沿って進んでゆくと、蒲原鉄道の本社でもあり車両基地もあった村松駅の建物が現存していました。1997年の廃線からもう20年が経ちますが、駅ビル?に掛かるレールのマークが入った社紋に、かつてここに鉄道が走っていたんだということを今に伝えてくれています。
さらにすすんで行った村松城跡公園にもポツンと古い電車が展示されていました。車体はかなり傷んでおり、先ほどみた車両よりもさらに古そうです。
でもこんな時間が止まって風化するに任せた風情にこの世の儚さと言いますか、歴史の証人としてそこに立ち続ける力強さなども感じて、なんとも感慨深い気持ちになってしまうのは、鉄道を愛するが故なのか?まあそんなことを考えている間に時間だけは過ぎ去ってゆき、蒲原鉄道廃線跡をこの先加茂駅まで全線辿るのは難しくなってきました。途中雨宿りして遊んでいたので致し方ないですね……
この先はまた別の機会に探訪しに来ることとして、今回はここで勇気ある撤退することにしましょう!
text&photo:河井孝介
旅する人 河井孝介プロフィール
バイクプラス多摩センターの店長を務める48歳。前職で足かけ10年にわたる勤務を鉄道の無い(モノレール除く)沖縄県で過ごした反動からか、帰京後は輪行サイクリングの虜となり、現在は鉄道と自転車を組み合わせ、鉄道廃線跡や未成線など鉄道の歴史を辿るサイクリングをライフワークとする。鉄道趣味のジャンルは「乗り鉄」。旧国鉄型車両を心から愛し、ひそかにJR全線乗車にチャレンジ中。非常勤の防衛省職員である予備三等陸曹の身分も合わせ持っている。
みなさんはじめまして! 輪行サイクリングで全国の鉄道廃線跡を巡ることをライフワークとする、テツ店長こと河井孝介です。今回の輪行サイクリングは夏休み特別企画として、新潟&福島廃線巡りライドです。鉄道マニアの計画したライドですので、かなり鉄分豊富な内容になりますが、温かく見守りながら楽しんでもらえたら幸いです。夏休み期間中ということで、ここはJR全線乗り放題の青春18きっぷを駆使しての旅になります。
旅のはじまりは午前0時を回ってから。青春18きっぷは1日分を24時間使えるので、0時から行動開始するのが一番効率が良いのですね!この日のために期間限定で運行される臨時夜行列車の指定席券を1ケ月前に確保しておきました。快速ムーンライト信州81号白馬行き、今夜の宿はこちらの列車になります。
使用されるのは、少々古い国鉄型特急電車の189系。もとは特急「あさま」で活躍していましたが、今は臨時列車で余生を送っている感じ。朝目が覚めると列車は大糸線を走っていました。車窓から見える北アルプスや仁科三湖は何度見ても本当に美しく、これから始まる一日にも思わず期待が高まります。
そして5:40白馬駅に到着!早朝の白馬は標高が高い(697m)と言うこともあって、少し肌寒いくらい。張り切って下車すると、ちょっと急ぎ足で自転車を組み立ててサイクリングをスタートします。これから目指すのは、このまま大糸線を下ったところにある平岩駅。ムーンライト信州は白馬止まりで、しかも大糸線の 南小谷~糸魚川間は日本屈指のローカル線。とにかく列車本数が少なく、電車のみだったら大きなロスタイムが発生するので、ここは糸魚川への始発列車が出る平岩駅まで自転車で移動してしまおうという算段なのです。
いきなりですが、ここからが今日1日を決める天王山と言っても過言ではありません。上手く乗り継ぐには、 白馬駅から27km先にある平岩駅7:06発の始発列車に乗り込まなければなりません!持ち時間1時間26分で、自転車の組み立て&分解と移動の両方をこなさなければいけないとなると、かなり時間に余裕がないことが当初から予想されていました。名付けて「輪行タイムトライアル」ということで、輪行のスキルと脚力の両方が試されることとなったのですが......
走り始めた当初はけっこうペースを上げて頑張っていましたが、実際に走っていると、概ね下り基調ということもあり、思ったより早く移動することができ、余裕を持って目的地である平岩駅まで到着することができました。駅に着くと自転車はさっそく分解。途中アブの群れに襲われながらも、何とかパッキングも終えて無事に糸魚川行きの始発列車に乗り込むことが出来ました。
このあたりは雪も多く、さらに中央構造線が走る地質の悪い地域らしく、この路線もしばしば土砂災害で不通になるのですが、姫川沿いの険しい谷あいを進む大糸線のディーゼルカーから車窓を眺めていると、巨大な岩がゴロゴロしている川床や、いかついスノーシェッドに覆われた線路と国道が並走する景色など、圧倒的な自然の力を感じずにはいられません。
そんなこんなであっという間に終点の糸魚川駅に到着。これから新潟方面に向かうわけですが、ここ糸魚川から直江津までは、第三セクターのえちごトキめき鉄道・日本海ひすいラインを通ってゆきます。ホームで待っていると、やって来たのはやはり旧国鉄型特急電車の485系です!顔はかなり整形されてしまっていますが、これも今では貴重な車両であることには変わりません。
この糸魚川発新潟行きの快速列車に約2時間半揺られての旅が続きます。車内設備はさすが特急型だけあって快適そのもの!時間もたっぷりあるのでシートをリクライニングしてたっぷり睡眠をとらせて頂きました(笑)
ここまでたっぷり鉄道の旅を満喫したあとは、新潟駅の二つ手前にある亀田駅で下車してサイクリング再開です。とは言うものの、まず向かった先は新潟市中央卸売市場。ここでちょっと早い昼食を頂いていくことにします。
市場の食堂に行けば、安くて新鮮な料理にありつけるのでは?と期待していきましたが、決して裏切られることはありませんでした!注文した握り寿司のネタは巨大と言っても良いくらいで、新鮮さも申し分無し。調子に乗って地元B級グルメらしい、マグロたれカツ丼も注文してみましたが、こちらもまた美味しくってペロリと平らげてしまったのでした。
ここからいよいよ本格的サイクリングが開始!と意気込みましたが、どうも空は今にも泣きだしそうな天候になってきました。
途中の寄り道スポットと考えていた「新津鉄道資料館」に着くころには、すっかり本降りとなってしまったので、ここで雨宿りも兼ねて館内見学をしていくことにします。なかなかサイクリングが進まないことに、一抹の焦りを感じつつも、館内に入ると大好きな鉄道の資料や物品がいっぱいで、すっかり時間の経つことも忘れてしまっていたのでした(笑)
そこにはこれから探索に行く予定の廃線になった路線の資料展示などもあり、相当充実した内容でありました。これで入館料300円というのは、かなり良心的とも言えるでしょう。けっこう鉄分豊富なスポットではありましたが、非テツの人でも十分楽しめるのではないかと思います。
そんなこんなで遊んでいるうちに雨も上がり、青空も見えるようになってきました。だいぶ時間も押してきてしまったので、そろそろお暇して本命の廃線探訪に向かうことにしましょう。
新津から目的の蒲原鉄道の終着駅があった五泉駅までは距離にして約10km程度なので、まあひとっ走りといった感じです。あとは車両の保存されている場所を探してうろちょろするのですが、こんな時には自転車の機動力が本当に役に立ってくれますね。
まずは五泉高校前の展示車両を見学して、そのあと線路の跡に沿って進んでゆくと、蒲原鉄道の本社でもあり車両基地もあった村松駅の建物が現存していました。1997年の廃線からもう20年が経ちますが、駅ビル?に掛かるレールのマークが入った社紋に、かつてここに鉄道が走っていたんだということを今に伝えてくれています。
さらにすすんで行った村松城跡公園にもポツンと古い電車が展示されていました。車体はかなり傷んでおり、先ほどみた車両よりもさらに古そうです。
でもこんな時間が止まって風化するに任せた風情にこの世の儚さと言いますか、歴史の証人としてそこに立ち続ける力強さなども感じて、なんとも感慨深い気持ちになってしまうのは、鉄道を愛するが故なのか?まあそんなことを考えている間に時間だけは過ぎ去ってゆき、蒲原鉄道廃線跡をこの先加茂駅まで全線辿るのは難しくなってきました。途中雨宿りして遊んでいたので致し方ないですね……
この先はまた別の機会に探訪しに来ることとして、今回はここで勇気ある撤退することにしましょう!
text&photo:河井孝介
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