2016/09/10(土) - 09:13
まだまだ残暑厳しい9月の第1週。長野県大町市を中心に「北アルプス山麓グランフォンド」が開催された。ぐずつく天気予報を吹き飛ばし、青空のもと約700人が駆け抜けた山岳ロングライドの様子をお届けします。
5回目を迎えた北アルプス山麓グランフォンド
今年で5回目という節目を迎えた「北アルプス山麓グランフォンド」。その名の通り、北アルプス周辺の山々を駆け巡るダイナミックなロングライドイベントとして人気を集めるイベントである。周辺には白馬三山、爺ヶ岳や鹿島槍ヶ岳といった名峰が広がり、年間を通して登山客が集まるエリアでもある。
東京からだと中央道から長野道を経由し、安曇野ICで下道へ。ICからは1時間弱で立山・黒部アルペンルートの長野側の玄関口である大町温泉郷へと到着する。そこから少し登っていくと北アルプス山麓グランフォンドのメイン会場となる「鹿島槍スポーツヴィレッジ」が姿を見せる。朝6時ごろ、既に駐車場では多くの参加者が準備を始めていた。
会場となる鹿島槍スポーツヴィレッジ
鹿島槍スポーツヴィレッジにはマヴィックのホイールレンタルサービスなども用意されている
大会のコースを設定した鈴木雷太さん
爺ヶ岳がくっきりと背後に見える
ちなみに大会の前日にはここ鹿島槍スポーツヴィレッジで豪華なウェルカムイベントが開かれ、多くの人が参加したという。また、地元の大町市と連携した「三蔵呑み歩き」という、日本酒の飲み比べイベントも開かれており、そちらも大盛況だったそう。ぜひとも、来年は前日入りしたいものである。
さて、前日の天気予報では、ところどころで雨がぱらつくという予報で、今年も曇りかも?なんて思っていたが、蓋を開けてみればアルプスの稜線がくっきり見える快晴に。これまでのイベント史上もっとも綺麗に爺ヶ岳と鹿島槍ヶ岳がその姿を見せてくれた。
4人ずつのパックでスタートしていきます
中網湖を遠くに望みながらダウンヒル
女性ライダーも楽しげに走っていました
この大会はリピーターも多く、昨年の雨を知っている参加者も沢山いるだけに、この光景は感動的だったよう。あちらこちらから写真を撮るシャッター音が聞こえてくる。会場全体がこの天気にテンションが上がっている様子が見て取れる。
MCを務めてくれるアケさんの軽快なトークの下、まずは120kmの参加者たちが4人ずつのグループでスタートしていく。メイン会場は峠のピークとなっているため、スタートすると直ぐに下ることに。テクニカルな下りだが、路面もドライで走りやすい。爽快なダウンヒルを楽しんだら、中網湖と青木湖が姿を現す。
白馬のジャンプ台が見えてきた
朝はやっぱり味噌汁ですね
ジャンプ台をバックに
春に行われるAACRでもルートに含まれるこの区間は、シクロワイアード編集部員にとってはもはや勝手知ったる他県の道。青く水を湛える2つの湖を左手に見ながら一路北上し、目指すは白馬ジャンプ競技場だ。
スキーリゾートとあって、おしゃれなロッジやペンション、別荘などが立ち並ぶ白馬エリアを駆け抜ける。少し登った先にあるのが、長野オリンピックのジャンプ競技の会場ともなった白馬ジャンプ競技場だ。朝イチのエイドステーションで振る舞われたのはお味噌汁。早起きの身体に塩気のきいた味噌汁が沁み渡っていくと、シャッキリした気分になるのは日本人のDNAに刻まれた反射なのだろうか。
松川を渡って走っていきます
緩やかな登りを走っていく
歩道橋(?)の下をくぐっていく
栂池高原へと向けて登っていく
次に目指すのは小谷村(おたりむら)にある栂池高原エイドステーション。松川にかかる橋を越えると、栂池高原までは登り基調の区間となる。本格的に登るのは2kmほどだが、最初のヒルクライム区間とあって、ペースを守って登りたいところ。ピークを過ぎると栂池バイパスにかかる「栂池パノラマ橋」を下り、エイドステーションに駆け込むことに。
2つ目となるこの栂池高原エイドステーションで振る舞われるのは打ちたての蕎麦。そう、この近辺は蕎麦の名産地なのだ。「栂池そばの会」と「小谷流そば打ち伝承人」という二つの団体が協力し、前日に打ってしまうと味が落ちるということで大会当日の早朝から打ちはじめてくれているのだとか。しかも外の風に当たるのも風味に影響が出るとのことで、茹でるのも別の屋内で行うというこだわりっぷり。これも全て参加者の皆さんに美味しいそばを味わってほしいという気持ちのなせるおもてなしである。そうして、茹でたてのそばがどんどんと運ばれてきては、並ぶ参加者たちへと配られていく。
自転車で走っていると、黄金色に波打つ田圃とならんで多く見かけるのが可憐な白い花をつける蕎麦畑。間もなく収穫を迎える秋蕎麦の季節は直ぐそこにやってきている。例年10月から11月にかけて催される「小谷新そば祭り」で振る舞われるのだろう。
美味しい蕎麦をいただきました
蕎麦を作ってくれたみなさん
蕎麦を受け取るために行列ができています
一方、エイドで振る舞われているのは夏蕎麦だろうか、しっかりと角が立った麺は歯ごたえがあり、噛みしめるほどにふくよかな風味が口いっぱいに広がっていく。まさに口福。すでにこの時点でかなり満足度は高く、もうゴール地点に戻っても良いんじゃ?と思うほどである。
しかし、ここから先もまだまだ魅力的なルートが待ち受けるのが北アルプス山麓グランフォンド。栂池高原エイドを出て、今度は栂池パノラマ橋を登って引き返していく。下り側車線に歩道があるため実はこの橋の「パノラマ」を味わえるのはこの登り。
高所恐怖症気味の人にとってはちょっと怖いかも?と思うほどだが、橋から見える景色はまるでドローンによる空撮映像のよう。鳥になったような気分で小谷村の田圃や蕎麦畑が眼下に広がる絶景を眺めていると、立ち止まって写真に収める参加者もちらほら。
栂池パノラマ橋はなんと5%の斜度
眼下には広く田園風景が広がっている
田圃の海へと潜っていくよう
再び白馬へと下り、大糸線を渡って長閑な川沿いの田舎道を南下していく。その後は少しだけ国道148号線を走って右折。一路美麻への登りへと向かっていく。美麻トンネルの迂回路となる「峠」という名の峠は、最初の方こそ緩やかだが、トンネル手前の脇道からは5%程度の斜度がしばらく続くことに。
このころには日も大分高くなり、登っているとかなり汗ばんでくるほどの陽気に。ピークで一息入れた跡は「道の駅ぽかぽかランド美麻」に設置されたエイドへ向けてダウンヒル。この下りもテクニカルなので、自信のない人はゆっくり下ったほうが良いだろう。
3つめのエイドステーションとなるぽかぽかランド美麻。ここから先は本格的な山岳地帯へと突入することになる。その前に、ということなのだろう、このエイドでは「峠のお守り」としてバナナが丸ごと一本用意され、ヒルクライムへと挑む参加者を後押ししてくれていた。
道の駅ぽかぽかランド美麻を出発して、後半戦へ
前半を終えた時点で、既にかなりの満足感を味あわせてくれる北アルプス山麓グランフォンド。だが、ここから先が「山麓グランフォンド」の名に恥じないヒルクライム区間となるという。どんな峠が待ち受けているのか、後篇へと続く。
text&photo:Naoki.YASUOKA
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今年で5回目という節目を迎えた「北アルプス山麓グランフォンド」。その名の通り、北アルプス周辺の山々を駆け巡るダイナミックなロングライドイベントとして人気を集めるイベントである。周辺には白馬三山、爺ヶ岳や鹿島槍ヶ岳といった名峰が広がり、年間を通して登山客が集まるエリアでもある。
東京からだと中央道から長野道を経由し、安曇野ICで下道へ。ICからは1時間弱で立山・黒部アルペンルートの長野側の玄関口である大町温泉郷へと到着する。そこから少し登っていくと北アルプス山麓グランフォンドのメイン会場となる「鹿島槍スポーツヴィレッジ」が姿を見せる。朝6時ごろ、既に駐車場では多くの参加者が準備を始めていた。
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さて、前日の天気予報では、ところどころで雨がぱらつくという予報で、今年も曇りかも?なんて思っていたが、蓋を開けてみればアルプスの稜線がくっきり見える快晴に。これまでのイベント史上もっとも綺麗に爺ヶ岳と鹿島槍ヶ岳がその姿を見せてくれた。
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この大会はリピーターも多く、昨年の雨を知っている参加者も沢山いるだけに、この光景は感動的だったよう。あちらこちらから写真を撮るシャッター音が聞こえてくる。会場全体がこの天気にテンションが上がっている様子が見て取れる。
MCを務めてくれるアケさんの軽快なトークの下、まずは120kmの参加者たちが4人ずつのグループでスタートしていく。メイン会場は峠のピークとなっているため、スタートすると直ぐに下ることに。テクニカルな下りだが、路面もドライで走りやすい。爽快なダウンヒルを楽しんだら、中網湖と青木湖が姿を現す。
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春に行われるAACRでもルートに含まれるこの区間は、シクロワイアード編集部員にとってはもはや勝手知ったる他県の道。青く水を湛える2つの湖を左手に見ながら一路北上し、目指すは白馬ジャンプ競技場だ。
スキーリゾートとあって、おしゃれなロッジやペンション、別荘などが立ち並ぶ白馬エリアを駆け抜ける。少し登った先にあるのが、長野オリンピックのジャンプ競技の会場ともなった白馬ジャンプ競技場だ。朝イチのエイドステーションで振る舞われたのはお味噌汁。早起きの身体に塩気のきいた味噌汁が沁み渡っていくと、シャッキリした気分になるのは日本人のDNAに刻まれた反射なのだろうか。
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次に目指すのは小谷村(おたりむら)にある栂池高原エイドステーション。松川にかかる橋を越えると、栂池高原までは登り基調の区間となる。本格的に登るのは2kmほどだが、最初のヒルクライム区間とあって、ペースを守って登りたいところ。ピークを過ぎると栂池バイパスにかかる「栂池パノラマ橋」を下り、エイドステーションに駆け込むことに。
2つ目となるこの栂池高原エイドステーションで振る舞われるのは打ちたての蕎麦。そう、この近辺は蕎麦の名産地なのだ。「栂池そばの会」と「小谷流そば打ち伝承人」という二つの団体が協力し、前日に打ってしまうと味が落ちるということで大会当日の早朝から打ちはじめてくれているのだとか。しかも外の風に当たるのも風味に影響が出るとのことで、茹でるのも別の屋内で行うというこだわりっぷり。これも全て参加者の皆さんに美味しいそばを味わってほしいという気持ちのなせるおもてなしである。そうして、茹でたてのそばがどんどんと運ばれてきては、並ぶ参加者たちへと配られていく。
自転車で走っていると、黄金色に波打つ田圃とならんで多く見かけるのが可憐な白い花をつける蕎麦畑。間もなく収穫を迎える秋蕎麦の季節は直ぐそこにやってきている。例年10月から11月にかけて催される「小谷新そば祭り」で振る舞われるのだろう。
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一方、エイドで振る舞われているのは夏蕎麦だろうか、しっかりと角が立った麺は歯ごたえがあり、噛みしめるほどにふくよかな風味が口いっぱいに広がっていく。まさに口福。すでにこの時点でかなり満足度は高く、もうゴール地点に戻っても良いんじゃ?と思うほどである。
しかし、ここから先もまだまだ魅力的なルートが待ち受けるのが北アルプス山麓グランフォンド。栂池高原エイドを出て、今度は栂池パノラマ橋を登って引き返していく。下り側車線に歩道があるため実はこの橋の「パノラマ」を味わえるのはこの登り。
高所恐怖症気味の人にとってはちょっと怖いかも?と思うほどだが、橋から見える景色はまるでドローンによる空撮映像のよう。鳥になったような気分で小谷村の田圃や蕎麦畑が眼下に広がる絶景を眺めていると、立ち止まって写真に収める参加者もちらほら。
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再び白馬へと下り、大糸線を渡って長閑な川沿いの田舎道を南下していく。その後は少しだけ国道148号線を走って右折。一路美麻への登りへと向かっていく。美麻トンネルの迂回路となる「峠」という名の峠は、最初の方こそ緩やかだが、トンネル手前の脇道からは5%程度の斜度がしばらく続くことに。
このころには日も大分高くなり、登っているとかなり汗ばんでくるほどの陽気に。ピークで一息入れた跡は「道の駅ぽかぽかランド美麻」に設置されたエイドへ向けてダウンヒル。この下りもテクニカルなので、自信のない人はゆっくり下ったほうが良いだろう。
3つめのエイドステーションとなるぽかぽかランド美麻。ここから先は本格的な山岳地帯へと突入することになる。その前に、ということなのだろう、このエイドでは「峠のお守り」としてバナナが丸ごと一本用意され、ヒルクライムへと挑む参加者を後押ししてくれていた。
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前半を終えた時点で、既にかなりの満足感を味あわせてくれる北アルプス山麓グランフォンド。だが、ここから先が「山麓グランフォンド」の名に恥じないヒルクライム区間となるという。どんな峠が待ち受けているのか、後篇へと続く。
text&photo:Naoki.YASUOKA
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