2016/09/18(日) - 09:15
辺り一面の田んぼに、蕎麦の白い花、真っ赤に色づいたりんご、生き生きとした濃い緑が覆う山々。北信州の豊かな自然を満喫しながら走る信越五高原ロングライド。CW編集部による実走レポート後編をお届けします(前編はこちらから)。
季節はずれな夏空の下を走る信越五高原ロングライド
まだまだハードな登りが続きます
信越五高原ロングライドは登りが多い分、下りも多い
信越五高原が開催される9月上旬にもなると、秋の気配を感られる北信州だが、お昼に近づくにつれ、更に気温が上昇。「なんでアームウォーマーを持ってきた?」と自責したくなるほどの暑さに。地元の方に聞いてみると、9月初旬で30℃を上回るのは、とても珍しいことなのだとか。真夏の空の下、風に揺れる稲穂や収穫が間近に迫ったりんごの木々を横目に次のエイドへ向かって歩を進める。
ラスト1kmの登りこそパンチがあるものの、おおむね下り基調で第3エイドの「サンクゼール」というワイナリーに到着。もちろんワインは飲めないが、ワインと同じくらいこだわって作られるジャムと、天然酵母を使用したこだわりのパンで一休み。
まんまる赤いりんごは収穫間近
サンクゼールの手作りジャムと天然酵母のパン、ワインビネガーで一休み
ワインビネガーの水割りは、地元の小学生の女の子が作ってくれました
各エイドにサインボードをおくことで、参加者の安全を管理
ジャムは砂糖不使用ながらも、加糖のジャムと同程度の濃厚な甘みに仕上がっているからびっくり。こちらも自家製というワインビネガーは、水で割った状態で供され、適度な酸味が疲れた身体に効いたという参加者は少なかったはずだ。
サンクゼールから、もう1つのスタート地点である第4エイドの斑尾高原スキー場までは、途中斜度が緩む区間こそあるものの、14kmで標高差500mを登らなくてはならない。サイクルコンピューターの斜度欄は常に8~9%を表示し続け、時には12%に達することも。
そして、この登りは日陰が少なく、じりじりと身体を照りつけて来る日差しと、登りの負荷でオーバーヒート寸前。そのキツさは、スタート地点が池ノ平と斑尾のどちらであろうとも変わらないという印象だ。ちなみに、筆者が今大会で唯一ふくらはぎを攣りかけたのもこの登りだった。
人の気配があまりない、細々とした林道を走る
少しずつ色づく稲を横目に走る
コースはキツいけど、女子はまだまだ元気いっぱい
サイクリングは人生のようと言われるように、頑張った後にはご褒美がなきゃやってられん。というわけで、なんとか斑尾までの登りを終えると、エイドでは、地元のお母さんたちが握ってくれたおにぎりに、具沢山のきのこ汁、真っ赤でみずみずしいトマト、野沢菜、きゅうりのかっぱ漬け、梅干しが用意されていた。暑さのせいで塩分の流れでた身体には嬉しいラインアップで、走っている最中に甘い補給食を摂った参加者にとっては良いお口直しになったことだろう。
また斑尾エイドでは、地元長野県中野市の特産品であるりんごジュースの飲み比べも。用意された6種類は、いずれも生産者のこだわりが詰まっており、濃度や酸味が微妙に異なるのだ。この試飲をキッカケに、りんごジュースをお土産として買って帰ったという参加者は少なくないのでは?
特産品であるりんごジュースのテイスティングも
斑尾エイドでは、暑い日に嬉しいお漬物に、真っ赤でジューシーなトマト、おにぎり、きのこ汁が用意された
おにぎりは地元のお母さんたちの手作り
コース上の安全をチェックするバイクライダーが各所に配置されていた
エイドで休むにも、テントの下でもないと暑すぎるぐらいの1日となった
なんだか古びた看板が並んだ味のあるバス停で一休み?
斑尾エイドを出ると一旦標高差250mをほど下って、その分を登り返す「樽本林道」を走る。軽自動車が1台通れるか否かというほど細々した道は、ほとんど人の気配がない。聞けば地元住民もあまり通らない道で、大会前には大規模な草刈りが必要になるのだとか。
左右に青々とした木々が鬱蒼と生い茂る一方で、人の背丈と同じくらい高さのあるススキが風で揺らめいており、この日初めて季節の移り変わりを感じられた瞬間であった。一部区間は北側に視界が開けており、上越の町並みと日本海の先には、佐渡島を姿も。
沿道には、ビュースポットを知らせてくれる看板も
沿道では背の高いススキが揺れる。暑い1日ではあったが、秋を感じさせてくれた
樽本林道終盤からのハイスピードなダウンヒル
ゴルフ場の綺麗な芝を脇目に、10kmで標高差650mを急降下
樽本林道の終盤からは、10kmで標高差650mを下るハイスピードなダウンヒルに突入。林道区間とは対照的に、人の手が入った綺麗な芝のゴルフ場を左右に見ながら、ぐんぐんと標高を下げていくと、普段では中々見ることのできない速度をサイクルコンピューターが表示する。
下りを終えると、妙高ふれあいパークエイドで小休止を挟んで、かつて国内で唯一の藩営温泉であったという赤倉温泉への登りが始まる。行く手には妙高山が、後方には大平山がそびえ立ち、6~7%ほどの勾配が続く約2kmの直登区間では、蛇行や押しが入る参加者も。
妙高山に向かって伸びる2kmの直登。斜度は6~7%ながら、疲れの溜まった脚には堪える
直登区間を終えると、勾配は5%ほどに落ち着くものの、そうは簡単に完走させてくれないのが信越五高原ロングライド。大会の名物的な激坂「鬼の洗濯板」が目の前に現れる。等間隔に滑り止め用のコブが配列された400mは平均勾配14%で、最大勾配18.6%にも達する。
正直な所、斑尾スタートだとアクセントぐらいにしか感じられなかった「鬼の洗濯板」だが、池の平をスタートして115km/獲得標高2,500mをこなしてきた満身創痍の身体にはかなり堪える。ペダルに込めた力がコブの振動に打ち消されるような感覚は筆舌に尽くしがたい。鬼の洗濯板を脱出した先の数百mは、アスファルトにこそ変わるものの、更に急勾配となり、STRAVAのデータによると斜度は20%越え!ハンドルにしがみつきながら、やっとの思いで赤倉温泉へ。
最大勾配18.6%の激坂「鬼の洗濯板」にアタック。ペダルに込めた力がコブの振動に打ち消されるような感覚は筆舌に尽くしがたい
全身を使って「鬼の洗濯板」をよじ登る
一杯いっぱいになりながらも、なんとか完走しました!達成感は格別ですね
完走証を手に仲間と記念撮影
「いやー、きつかった…」
出涸らしの身体にとってはこの上なく美味なきのこ汁
鬼の洗濯岩とその先の激坂を越えれば、フィニッシュはすぐそこ。赤倉温泉の中の登り下りをこなし、スタート地点の池の平イベント広場へむけて1km登れば、晴れて信越五高原ロングライド完走だ。西日に照らされた芝生の広場で配られたきのこ汁は、出涸らしの身体にとってはこの上なく美味。取材後に立ち寄った近所の温泉は、まさに極楽であった。
季節はずれの暑さに見舞われたものの、盛況のうちに幕を閉じた7回目の信越五高原ロングライド。例年どおりハードなコースだなと思わされるが、走破した達成感の高さが格別なのも相変わらず。「少し走れてきたかな」と感じている初~中級者には、ぜひともはチャレンジして欲しいイベントだ。今回で3回目の完走となった筆者としては、スタートが違うだけでコースの印象が異なるというのが新鮮であった。是非。来年も開催されることを期待したい。
text&photo:Yuya.Yamamoto
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信越五高原が開催される9月上旬にもなると、秋の気配を感られる北信州だが、お昼に近づくにつれ、更に気温が上昇。「なんでアームウォーマーを持ってきた?」と自責したくなるほどの暑さに。地元の方に聞いてみると、9月初旬で30℃を上回るのは、とても珍しいことなのだとか。真夏の空の下、風に揺れる稲穂や収穫が間近に迫ったりんごの木々を横目に次のエイドへ向かって歩を進める。
ラスト1kmの登りこそパンチがあるものの、おおむね下り基調で第3エイドの「サンクゼール」というワイナリーに到着。もちろんワインは飲めないが、ワインと同じくらいこだわって作られるジャムと、天然酵母を使用したこだわりのパンで一休み。
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ジャムは砂糖不使用ながらも、加糖のジャムと同程度の濃厚な甘みに仕上がっているからびっくり。こちらも自家製というワインビネガーは、水で割った状態で供され、適度な酸味が疲れた身体に効いたという参加者は少なかったはずだ。
サンクゼールから、もう1つのスタート地点である第4エイドの斑尾高原スキー場までは、途中斜度が緩む区間こそあるものの、14kmで標高差500mを登らなくてはならない。サイクルコンピューターの斜度欄は常に8~9%を表示し続け、時には12%に達することも。
そして、この登りは日陰が少なく、じりじりと身体を照りつけて来る日差しと、登りの負荷でオーバーヒート寸前。そのキツさは、スタート地点が池ノ平と斑尾のどちらであろうとも変わらないという印象だ。ちなみに、筆者が今大会で唯一ふくらはぎを攣りかけたのもこの登りだった。
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サイクリングは人生のようと言われるように、頑張った後にはご褒美がなきゃやってられん。というわけで、なんとか斑尾までの登りを終えると、エイドでは、地元のお母さんたちが握ってくれたおにぎりに、具沢山のきのこ汁、真っ赤でみずみずしいトマト、野沢菜、きゅうりのかっぱ漬け、梅干しが用意されていた。暑さのせいで塩分の流れでた身体には嬉しいラインアップで、走っている最中に甘い補給食を摂った参加者にとっては良いお口直しになったことだろう。
また斑尾エイドでは、地元長野県中野市の特産品であるりんごジュースの飲み比べも。用意された6種類は、いずれも生産者のこだわりが詰まっており、濃度や酸味が微妙に異なるのだ。この試飲をキッカケに、りんごジュースをお土産として買って帰ったという参加者は少なくないのでは?
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斑尾エイドを出ると一旦標高差250mをほど下って、その分を登り返す「樽本林道」を走る。軽自動車が1台通れるか否かというほど細々した道は、ほとんど人の気配がない。聞けば地元住民もあまり通らない道で、大会前には大規模な草刈りが必要になるのだとか。
左右に青々とした木々が鬱蒼と生い茂る一方で、人の背丈と同じくらい高さのあるススキが風で揺らめいており、この日初めて季節の移り変わりを感じられた瞬間であった。一部区間は北側に視界が開けており、上越の町並みと日本海の先には、佐渡島を姿も。
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下りを終えると、妙高ふれあいパークエイドで小休止を挟んで、かつて国内で唯一の藩営温泉であったという赤倉温泉への登りが始まる。行く手には妙高山が、後方には大平山がそびえ立ち、6~7%ほどの勾配が続く約2kmの直登区間では、蛇行や押しが入る参加者も。
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正直な所、斑尾スタートだとアクセントぐらいにしか感じられなかった「鬼の洗濯板」だが、池の平をスタートして115km/獲得標高2,500mをこなしてきた満身創痍の身体にはかなり堪える。ペダルに込めた力がコブの振動に打ち消されるような感覚は筆舌に尽くしがたい。鬼の洗濯板を脱出した先の数百mは、アスファルトにこそ変わるものの、更に急勾配となり、STRAVAのデータによると斜度は20%越え!ハンドルにしがみつきながら、やっとの思いで赤倉温泉へ。
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鬼の洗濯岩とその先の激坂を越えれば、フィニッシュはすぐそこ。赤倉温泉の中の登り下りをこなし、スタート地点の池の平イベント広場へむけて1km登れば、晴れて信越五高原ロングライド完走だ。西日に照らされた芝生の広場で配られたきのこ汁は、出涸らしの身体にとってはこの上なく美味。取材後に立ち寄った近所の温泉は、まさに極楽であった。
季節はずれの暑さに見舞われたものの、盛況のうちに幕を閉じた7回目の信越五高原ロングライド。例年どおりハードなコースだなと思わされるが、走破した達成感の高さが格別なのも相変わらず。「少し走れてきたかな」と感じている初~中級者には、ぜひともはチャレンジして欲しいイベントだ。今回で3回目の完走となった筆者としては、スタートが違うだけでコースの印象が異なるというのが新鮮であった。是非。来年も開催されることを期待したい。
text&photo:Yuya.Yamamoto
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