2016/03/28(月) - 08:47
2月6・7日にタイで開催されたチェンライ国際MTBチャレンジ。少数民族が住む山岳地帯を走る2日間のステージレースを、今年も全コース実走取材しての参加レポートでお伝えします。
レースの舞台となるのはタイのスイスの異名をもつ、北部の小さな街ChangRai(チェンライ)。タイ人グループやアジア各国の参加者も居る海外レースながら、日本人主催者である「R1ジャパン」が開催する、ほぼ日本の大会だ。今年で開催17回目を数え、熱心なリピーターに支持される人気大会となっている。
今年はアンカーが主催する参加ツアーも催行された。このツアーには日本から、そしてアジア圏のアンカー販売店関係者も参加。MTBの普及に熱心なブリヂストンサイクルとアンカーは社をあげて大会をバックアップする体勢だ。
このアンカーツアーにはかつての全日本XCチャンピオンの宇田川聡仁さんとレーシングチームのメカニシャンでもある金田正さんのアテンドがあった。他にも過去数回の出場を重ねている社員さんも参加して居るので、参加者には心強い限り。
チェンライに集まったのは11歳から74歳までの70人以上。なかには15回も出場しているマンモスリピーターさんもいる。国内トップライダーの平野星矢、松尾純、廣瀬由紀さんらも参加した。
レースは参加クラスが「インターナショナル」「スポーツ」「ファン」の3クラスから選べる。それぞれのクラスで年代別グループに分けてのスタートで競われるのだ。
インターナショナルクラスのコースは山岳が厳しく、2日間で4ステージ、合計約127km以上を走るステージレース制だ。日本のレースで言えばSDA王滝並の難易度のレースを2日連続で行う感じだが、女性や初心者を除く過半数の参加者がこのインターナショナルを走る。
主催者のR1ジャパンはクルマとオートバイ(モトクロス)のラリーレイド「アジアクロスカントリーラリー」をタイやカンボジアなど東南アジア圏で開催しているイベント会社で、そのノウハウで企画されるので、MTBレースも面白く、タフになるというわけだ。
気候が暑く厳しい熱帯の国タイだが、今年は天候が優れずちょっと肌寒かった。結果的に2日間のレースで雨が降ることはなかったが、走る選手たちにとっては、いつもより涼しい、負担の少ないレースになったようだ。
地元でもますます自転車が盛んになり、多くのサイクリストを見かけるようになってきたタイ。初日のスタート地点になっている観光公園「シンハーパーク」は年々施設をグレードアップ。MTBコースやプレイフィールドが充実。広大な園内には隅々までサイクリングコースが拡充されていた。ここでは最近クリテリウムやロードレースなども開催されているらしい。
スタートした選手たちは、しばらくは園内のサイクリングコースと茶畑のトレールを縫うように走って、山岳地帯へと入っていく。この先、レースコースは少数民族が暮らす素朴な村を繋いで設定されているのだ。
コースに数カ所の川渡りポイントがあるのは例年のこと。数日前の雨で増水した川にジャブン! 勢いをつけすぎてひっくり返った阿部さんは全身ずぶ濡れだ(笑)。川渡りを皮切りに、この先様々な試練や難所が待っている。
平野の田園地帯を抜けると、待っているのは厳しい山岳の上り。2日間でもっとも厳しいこの区間で、バイクに乗って登っていけるのはかなりの実力者のみ。たいていは竹林のなか伸びる登りトレールを、バイクを押して延々と歩いて登らなくてはいけない。小1時間は続くため、ふくらはぎが悲鳴を上げる。
しかし肌寒いぶん、汗が吹き出てこないので例年より身体の負担は軽かった。給水も頻繁にせずに済むので、いつもよりずいぶん楽だった。
少数民族の住む村々の辺境エリアは、日本の道では現れないような勾配の激坂が待っている。エンジン付きの車両も助走でしっかりと勢いをつけないと途中で失速するほどの急坂だ。30度に近い傾斜を、青息吐息で登る。舗装路ならインナーローでギリギリ、足を着かずに乗っていける。
SS1の締めは豪快な山岳ダウンヒル。林間のテクニカルなシングルトラックを長時間下るのはゴキゲンな気分だ。この区間のために、純XCよりも下り系に振ったセッティングのバイクで参加する人もいるほどだ。
ゴールはタイ料理のブッフェが楽しめるランチポイントになっている。ココナツミルクたっぷりのグリーンカレーやバラエティいっぱいの食事に、つい食べ過ぎてしまうけど、午後のステージが残っていることも忘れてはダメ。
ランチポイントにはタイで合宿中のロードレーサーたちのメンツが来てくれた。新城幸也の「タイのお父さん」として知られる中川茂さんのもとでトレーニングに明け暮れる若者たちが、トレーニング途中の目的地として訪問してくれるのだ。しばしの交流で嬉しかったのは日本を離れて練習漬けの毎日を送っている若者たちかも。
第2SSは川沿いのジープロードを走る10kmのショートTTだ。このステージ名物のボロボロだった吊橋は、数カ月前にシンハービールのスポンサーにより改修されていた。
ゴールすると待っているのは象。象の背中に乗って川を渡るのだ。自転車ごと象に揺られて川を渡る写真がこのレースの象徴的シーンになっているけれど、実際に体験してみるとけっこう揺れるのでおっかない。対岸にたどり着くと、待っているのはシンハービール。この大会、冠スポンサーにシンハービールがついているので、一日の終りには無料ビールのサービスがあるのだ(なんとおつまみも用意されている)。
ほろ酔い気分で帰路へ。ここからはMTBをポンコツのロングボートに載せ、川でホテルに帰るのだ。水を蹴立て、風を切って進むボートは肌寒い。ウィンドブレイカーを持ってなかった人は土産物屋で少数民族の手編みしたショールを買って、お土産も兼ねるのがナイスなアイデアだ。
2日目の難所は勾配30%の「赤い壁」の激坂登り
2日目も同様に山岳系のロングステージとTTステージの組み合わせ。天気も良好、しかし今日もちょっと肌寒い、熱帯のタイとは思えない快適コンディションだ。
第3ステージは例年とは違い、序盤のコースに変更があった。スタート地点になったのは郊外に新しくできたお寺。できたとたんに観光名所となった、巨大な白い大仏とガラス細工のようなお寺、そして仏舎利塔の前が選ばれた。ときどきコースが変わるのはリピーターさんにも新鮮だ。
序盤はフラットダートのハイスピードコース。パイナップル畑を抜け、田舎道へ。山林の中に散在する小さな村をつないでいくルートだ。
村々を走り抜けるとき、もうレースが通過することを恒例のように知っている村の子供たちが手を振って歓迎してくれるのが嬉しい。スポーツクラスの参加者たちは交流するためにおみやげを持って走る人も。
牛がのんびり草をはむ畑を抜け、2日目の名物「赤い壁」へ。とにかく天に突き抜けるようにまっすぐ一直線に伸びる激坂で、短いながらもここをバイクに乗ってクリアしたのはたった5人。そのうちの一人、宇田川さんはさすが昔とった杵柄。他に平野選手ら、選手レベルのテクがあればなんとかイケるようです。
この日のコースはアップダウンに富んでいて、登ったり下ったりが繰り返すので忙しい。最後の下りは荒れたシングルトラック。流れた水に侵食されて掘れているのでけっこう危険だ。
2日目のランチはタイ北部のカレー風味のヌードル「カオソーイ」が供された。カオソーイファンは多いので、歓声が上がる。レース中に提供される料理はでれも屋外ブッフェと思えないほどハイレベル。第4ステージが控えているけど、お代わりもイタダキマス。
第4ステージはショートTT。ラストスパート次第で最後に順位の変動が狙えるので、各クラス上位争いの人の間には緊張が走る。スタートしてしばらくの小山の急坂を越えると、あとは平坦が続くので、その小さな登りが差をつけるアタックポイントだ。
2日間で合計127kmを走りきり、15歳も74歳もインターナショナルクラスを完走。今回は第4ステージで落車してしまった2人が病院に直行、残念ながらリタイア扱いになってしまった。
ゴールしたら、ホテルまでは小1時間のリエゾン移動だ。帰りのスーパーマーケットでは皆でアイスを食べるのがお約束。
夜は美味しいブッフェとシンハービール飲み放題の楽しいアワードパーティが待っている。
各クラスの上位入賞者に贈られる賞金もけっこうな高額(1位3000バーツ=12,000円相当)だ。タイ合宿組の選手たちもパーティに合流し、会食を楽しんだ。新城幸也選手からはサイン入りプレゼントグッズも託されていた。
そして、栄誉と引き換えに待っているのは「プール落としの刑」。すっかり名物となってしまった感のあるこの儀式は、年長あるいは年少者を除いて優勝者はプールに落とされるというもの。落とす方も落とされる方も、けっこう楽しんでいるのではあるが.....。
とにかくアットホームさが人気のこの大会。この先も末永く続いて欲しいMTBラリーだ。R1ジャパン主催の海外サイクルイベントは、6月には台湾でタロコヒルクライムが開催される。そちらにも続けて出場するリピーターも多く、興味のある人はぜひチェックして欲しい。
photo&text:Makoto.AYANO
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レースの舞台となるのはタイのスイスの異名をもつ、北部の小さな街ChangRai(チェンライ)。タイ人グループやアジア各国の参加者も居る海外レースながら、日本人主催者である「R1ジャパン」が開催する、ほぼ日本の大会だ。今年で開催17回目を数え、熱心なリピーターに支持される人気大会となっている。
今年はアンカーが主催する参加ツアーも催行された。このツアーには日本から、そしてアジア圏のアンカー販売店関係者も参加。MTBの普及に熱心なブリヂストンサイクルとアンカーは社をあげて大会をバックアップする体勢だ。
このアンカーツアーにはかつての全日本XCチャンピオンの宇田川聡仁さんとレーシングチームのメカニシャンでもある金田正さんのアテンドがあった。他にも過去数回の出場を重ねている社員さんも参加して居るので、参加者には心強い限り。
チェンライに集まったのは11歳から74歳までの70人以上。なかには15回も出場しているマンモスリピーターさんもいる。国内トップライダーの平野星矢、松尾純、廣瀬由紀さんらも参加した。
レースは参加クラスが「インターナショナル」「スポーツ」「ファン」の3クラスから選べる。それぞれのクラスで年代別グループに分けてのスタートで競われるのだ。
インターナショナルクラスのコースは山岳が厳しく、2日間で4ステージ、合計約127km以上を走るステージレース制だ。日本のレースで言えばSDA王滝並の難易度のレースを2日連続で行う感じだが、女性や初心者を除く過半数の参加者がこのインターナショナルを走る。
主催者のR1ジャパンはクルマとオートバイ(モトクロス)のラリーレイド「アジアクロスカントリーラリー」をタイやカンボジアなど東南アジア圏で開催しているイベント会社で、そのノウハウで企画されるので、MTBレースも面白く、タフになるというわけだ。
気候が暑く厳しい熱帯の国タイだが、今年は天候が優れずちょっと肌寒かった。結果的に2日間のレースで雨が降ることはなかったが、走る選手たちにとっては、いつもより涼しい、負担の少ないレースになったようだ。
地元でもますます自転車が盛んになり、多くのサイクリストを見かけるようになってきたタイ。初日のスタート地点になっている観光公園「シンハーパーク」は年々施設をグレードアップ。MTBコースやプレイフィールドが充実。広大な園内には隅々までサイクリングコースが拡充されていた。ここでは最近クリテリウムやロードレースなども開催されているらしい。
スタートした選手たちは、しばらくは園内のサイクリングコースと茶畑のトレールを縫うように走って、山岳地帯へと入っていく。この先、レースコースは少数民族が暮らす素朴な村を繋いで設定されているのだ。
コースに数カ所の川渡りポイントがあるのは例年のこと。数日前の雨で増水した川にジャブン! 勢いをつけすぎてひっくり返った阿部さんは全身ずぶ濡れだ(笑)。川渡りを皮切りに、この先様々な試練や難所が待っている。
平野の田園地帯を抜けると、待っているのは厳しい山岳の上り。2日間でもっとも厳しいこの区間で、バイクに乗って登っていけるのはかなりの実力者のみ。たいていは竹林のなか伸びる登りトレールを、バイクを押して延々と歩いて登らなくてはいけない。小1時間は続くため、ふくらはぎが悲鳴を上げる。
しかし肌寒いぶん、汗が吹き出てこないので例年より身体の負担は軽かった。給水も頻繁にせずに済むので、いつもよりずいぶん楽だった。
少数民族の住む村々の辺境エリアは、日本の道では現れないような勾配の激坂が待っている。エンジン付きの車両も助走でしっかりと勢いをつけないと途中で失速するほどの急坂だ。30度に近い傾斜を、青息吐息で登る。舗装路ならインナーローでギリギリ、足を着かずに乗っていける。
SS1の締めは豪快な山岳ダウンヒル。林間のテクニカルなシングルトラックを長時間下るのはゴキゲンな気分だ。この区間のために、純XCよりも下り系に振ったセッティングのバイクで参加する人もいるほどだ。
ゴールはタイ料理のブッフェが楽しめるランチポイントになっている。ココナツミルクたっぷりのグリーンカレーやバラエティいっぱいの食事に、つい食べ過ぎてしまうけど、午後のステージが残っていることも忘れてはダメ。
ランチポイントにはタイで合宿中のロードレーサーたちのメンツが来てくれた。新城幸也の「タイのお父さん」として知られる中川茂さんのもとでトレーニングに明け暮れる若者たちが、トレーニング途中の目的地として訪問してくれるのだ。しばしの交流で嬉しかったのは日本を離れて練習漬けの毎日を送っている若者たちかも。
第2SSは川沿いのジープロードを走る10kmのショートTTだ。このステージ名物のボロボロだった吊橋は、数カ月前にシンハービールのスポンサーにより改修されていた。
ゴールすると待っているのは象。象の背中に乗って川を渡るのだ。自転車ごと象に揺られて川を渡る写真がこのレースの象徴的シーンになっているけれど、実際に体験してみるとけっこう揺れるのでおっかない。対岸にたどり着くと、待っているのはシンハービール。この大会、冠スポンサーにシンハービールがついているので、一日の終りには無料ビールのサービスがあるのだ(なんとおつまみも用意されている)。
ほろ酔い気分で帰路へ。ここからはMTBをポンコツのロングボートに載せ、川でホテルに帰るのだ。水を蹴立て、風を切って進むボートは肌寒い。ウィンドブレイカーを持ってなかった人は土産物屋で少数民族の手編みしたショールを買って、お土産も兼ねるのがナイスなアイデアだ。
2日目の難所は勾配30%の「赤い壁」の激坂登り
2日目も同様に山岳系のロングステージとTTステージの組み合わせ。天気も良好、しかし今日もちょっと肌寒い、熱帯のタイとは思えない快適コンディションだ。
第3ステージは例年とは違い、序盤のコースに変更があった。スタート地点になったのは郊外に新しくできたお寺。できたとたんに観光名所となった、巨大な白い大仏とガラス細工のようなお寺、そして仏舎利塔の前が選ばれた。ときどきコースが変わるのはリピーターさんにも新鮮だ。
序盤はフラットダートのハイスピードコース。パイナップル畑を抜け、田舎道へ。山林の中に散在する小さな村をつないでいくルートだ。
村々を走り抜けるとき、もうレースが通過することを恒例のように知っている村の子供たちが手を振って歓迎してくれるのが嬉しい。スポーツクラスの参加者たちは交流するためにおみやげを持って走る人も。
牛がのんびり草をはむ畑を抜け、2日目の名物「赤い壁」へ。とにかく天に突き抜けるようにまっすぐ一直線に伸びる激坂で、短いながらもここをバイクに乗ってクリアしたのはたった5人。そのうちの一人、宇田川さんはさすが昔とった杵柄。他に平野選手ら、選手レベルのテクがあればなんとかイケるようです。
この日のコースはアップダウンに富んでいて、登ったり下ったりが繰り返すので忙しい。最後の下りは荒れたシングルトラック。流れた水に侵食されて掘れているのでけっこう危険だ。
2日目のランチはタイ北部のカレー風味のヌードル「カオソーイ」が供された。カオソーイファンは多いので、歓声が上がる。レース中に提供される料理はでれも屋外ブッフェと思えないほどハイレベル。第4ステージが控えているけど、お代わりもイタダキマス。
第4ステージはショートTT。ラストスパート次第で最後に順位の変動が狙えるので、各クラス上位争いの人の間には緊張が走る。スタートしてしばらくの小山の急坂を越えると、あとは平坦が続くので、その小さな登りが差をつけるアタックポイントだ。
2日間で合計127kmを走りきり、15歳も74歳もインターナショナルクラスを完走。今回は第4ステージで落車してしまった2人が病院に直行、残念ながらリタイア扱いになってしまった。
ゴールしたら、ホテルまでは小1時間のリエゾン移動だ。帰りのスーパーマーケットでは皆でアイスを食べるのがお約束。
夜は美味しいブッフェとシンハービール飲み放題の楽しいアワードパーティが待っている。
各クラスの上位入賞者に贈られる賞金もけっこうな高額(1位3000バーツ=12,000円相当)だ。タイ合宿組の選手たちもパーティに合流し、会食を楽しんだ。新城幸也選手からはサイン入りプレゼントグッズも託されていた。
そして、栄誉と引き換えに待っているのは「プール落としの刑」。すっかり名物となってしまった感のあるこの儀式は、年長あるいは年少者を除いて優勝者はプールに落とされるというもの。落とす方も落とされる方も、けっこう楽しんでいるのではあるが.....。
とにかくアットホームさが人気のこの大会。この先も末永く続いて欲しいMTBラリーだ。R1ジャパン主催の海外サイクルイベントは、6月には台湾でタロコヒルクライムが開催される。そちらにも続けて出場するリピーターも多く、興味のある人はぜひチェックして欲しい。
photo&text:Makoto.AYANO
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