2015/09/10(木) - 10:01
世界遺産登録を果たし更なる注目が集まる富士山。サイクリストにとっても魅力あふれる彼の地を満喫できるロングライドイベントとして長い歴史をもつ「フジエコ」ことMt.FUJIエコサイクリング2015が今年も開催された。大幅リニューアルを果たした老舗イベントを実走レポートします。
Mt.FUJIエコサイクリングといえば、富士山を一周するロングライドとして昔から高い人気を誇る大会であった。ただここ数年は悪天候が続き、サイクリストの足が遠のいていたのもまた事実。富士山周辺はもともと天候が不安定なエリアであり、広い範囲にわたって開催されるこれまでのフジエコは潜在的にリスクが高かったともいえる。しかし、今年は富士五湖周遊コースとして山梨県側に開催範囲を狭めることで天候に対する不安が少なくなった。
また、昨年まではアップダウンも多く、かなりの健脚派向けのイベントになっていたフジエコだが、富士山一周サイクリングから富士五湖周遊コースへとリニューアルしたことで高低差も少なくなり、より初心者へと向けたイベントへと生まれ変わったという。そんな新生フジエコに密着取材を行った。
さて、フジエコの朝は早い。6時のスタートにむけて、4時30分にオープンする駐車場には続々と車が集まってくる。会場となるのは富士五湖の中でも最も東側にある山中湖のほとりにある「山中湖交流プラザきらら」。少し前までの暑さが嘘のような涼しさに包まれた待機エリアとなる広場には多くのサイクリストが集まってきた。
大会の前週から雨続きのなかで、そばにあるはずの山中湖の姿が見えるか見えないかというくらいの深い霧に覆われた会場だが、幸いなことに雨は落ちてこない。そんななかでMCの絹代さんが天気予報が好転し、雨の確率が下がったことを伝えると会場がホッとした空気に。
6時のスタート時間になると、50人ほどに分けられたグループごとにコースへと走りだしていく。キャンプ場や大学の研修センター、遊覧船乗り場など、レジャー施設が充実した山中湖の南岸を走り抜け、河口湖へと向かっていく。途中、鎌倉往還を左に入り、富士五湖自動車道沿いの新道へと入ると車の数もグッと少なくなり、一気に走りやすくなった。
富士山エリアの観光の起点として整備された富士北麓駐車場を通り過ぎ、河口湖大橋通りへと走っていく。河口湖大橋へと下っていく途中を左に入ると、第一エイドとなる河口湖町役場に到着だ。朝一番のエイドということもあり、ここは軽めに水とバナナのみとなっているので、朝ごはんはしっかりと摂ってきたほうが安心だろう。少し足を休ませた後は、河口湖大橋に向けて出発。
湖は反時計まわりに走るというセオリー通りに河口湖岸を走っていくころには、ところどころ青空が顔を覗かせる。しかも、朝は霧に隠れていた富士山までも姿を見せてくれた。やっぱり、フジエコというからには富士山は欠かせない。その思いは参加者のみなさん同じだったようで、脚を停めて記念撮影する人も沢山。
河口湖北岸から西湖へとアプローチする途中には1.5km程度の登りがあるが、そこまで厳しいわけではないのでゆったりと登れば大丈夫。トンネルを抜けるとすぐに西湖がその姿を現す。絶滅種のクニマスの再発見で一躍注目を浴びた西湖の北岸を走っていく参加者たち。河口湖に比べると短めのルートを走り抜けた先にある野鳥の森公園が2つ目のエイドステーションだ。
野鳥の森公園では、具だくさんのトン汁が振る舞われる。エコの観点から配られた参加賞のマイ箸を使ってトン汁を戴く参加者のみなさん。芝生の広がる青々とした景色のなかで食べるトン汁は最高の一品。ちょうどお腹がすき始めているころでもあり、出来ればお替りしたいくらい。
トン汁を満喫したあとは、樹海の中を走って精進湖に到着。富士五湖中もっとも小さい湖をくるっと1周。小さい割に釣り人が多く、ルアーロッドを携えたバサーや釣り座にどっしりと腰を据えたへら師が湖畔に連なっている。小さいながらも人気の高さが窺えるエリアで、今度は釣りに来てもいいかも、なんて考えていると富士パノラマラインに再び合流することに。
そして、富士五湖最西端の本栖湖に到着。西湖、精進湖ともともとは同じ剗の海(せのうみ)であったと言われる本栖湖は、地下で今も繋がっているとのことで、3つの湖の湖面標高はほぼ同じ900mであるという。なので、この3つの湖の間の区間は平坦なのかと思いきや、意外とアップダウンが連続して現れるので、ついつい頑張り過ぎないように注意しながら走りたい。
本州最高の透明度と富士五湖最大の深度によってもたらされる深い青を湛えた本栖湖の美しい眺めを見ながら快調に走っていく。本栖湖を一周して現れるのが折り返しとなる3つ目のエイドステーション。こちらで用意されているのがほうとう日本一として名高い「歩成」の黄金ほうとう。かぼちゃをはじめとした具がどっさりと乗っかったほうとうのボリュームは器を受け取った時に感じるどっしりとした重さから伝わってくる。もちもちとした噛みごたえのある麺とあいまって最高の昼食となった。
例年であれば、本栖湖まで来た後は朝霧高原を越えて富士宮方面へと下っていくところだが、今年はここで折り返し山中湖へと戻っていく。とはいえ来た道をそのまま辿るわけではなく、今度は富士の裾野に広がる樹海の中を走り抜けることに。
ゆるーく登っているのだが、距離はそれほど長くない。ビギナーでも時間にして5分以下で越えられる坂をいくつか越えれば、あとは樹海の中を爽快にダウンヒル。下り切った先には富岳風穴エイドが待っている。こちらでは地元鳴沢村名産の「鳴沢菜漬」が振る舞われた。風味豊かでどこか懐かしさを感じさせる味についつい箸が進んでしまう。
富岳風穴エイドを後にすると、再び舞台は西湖へと。このころには少し雨がぱらつく場面もあったが、昨年の豪雨に比べると可愛いもの。河口湖へと辿りつくころには再び雨は止んでいた。しかし、雨雲レーダーをみるといつの間にやら南側から大きな雨雲が迫ってきている。すこし駆け足で八木崎公園エイドでドーナツを戴き、先へ急ぐ。
再び河口湖大橋を渡り、今年の3月に開通したばかりの新倉河口湖トンネルに向かう。全長2476メートルのトンネルは河口湖北岸から富士吉田の市街地を約10分で結ぶ新たなルートとして計画されたもの。交通渋滞の緩和などに力を発揮すると期待された新道なのだが、通勤通学や観光に使用できるように幅2mの歩道が整備されており、自転車も安心して通ることができるように設計されているのだ。トンネルの内部は照明もふんだんに設置されているので、明るく安全。週末は混雑することの多い河口湖近辺にできた新たなルートとして、富士山周辺を走るときには便利な道となりそうだ。
トンネルの先、火祭りロードレースなどが行われることで有名な富士吉田の市街を抜けて、日本屈指の湧水地帯である忍野エリアへと向かう。最後のエイドであるおさかな公園エイドでは、あまーい草餅で最後の元気を分けてもらい一路山中湖へと走り抜ける。途中には美しい花畑がひろがる「花の都公園」の横を走るシーンも。
山中湖まで帰ってくれば、ゴール地点のきららはもうすぐ。北側に整備されたサイクリングロードは幅も広く完全フラットなので、120㎞走ってきた参加者にとってはご褒美のようなもの。ところどころ、砂が浮いている箇所があるのでスリップしないように注意が必要だが、基本的には非常に走りやすい。そしてきららに到着したら、絹代さんが120kmの労をねぎらってくれるなか、、日にいろいろなイベントが行われていたステージへとフィニッシュ!
それぞれに個性豊かな5つの湖や、樹海に花畑といったバラエティ豊かな景観、ほうとうや鳴沢菜など地元食材を活かしたエイドと富士山周辺の魅力をぎっしりと詰め込んでリニューアルを果たしたMt.FUJIエコサイクリング2015。雨というジンクスを少し振り払った今年は、この大会の本来の魅力が伝わってきたのではないだろうか。来年はくっきりと富士山が見える中を走れそうな、そんな気がする。
text&photo:Naoki.YASUOKA
Mt.FUJIエコサイクリングといえば、富士山を一周するロングライドとして昔から高い人気を誇る大会であった。ただここ数年は悪天候が続き、サイクリストの足が遠のいていたのもまた事実。富士山周辺はもともと天候が不安定なエリアであり、広い範囲にわたって開催されるこれまでのフジエコは潜在的にリスクが高かったともいえる。しかし、今年は富士五湖周遊コースとして山梨県側に開催範囲を狭めることで天候に対する不安が少なくなった。
また、昨年まではアップダウンも多く、かなりの健脚派向けのイベントになっていたフジエコだが、富士山一周サイクリングから富士五湖周遊コースへとリニューアルしたことで高低差も少なくなり、より初心者へと向けたイベントへと生まれ変わったという。そんな新生フジエコに密着取材を行った。
さて、フジエコの朝は早い。6時のスタートにむけて、4時30分にオープンする駐車場には続々と車が集まってくる。会場となるのは富士五湖の中でも最も東側にある山中湖のほとりにある「山中湖交流プラザきらら」。少し前までの暑さが嘘のような涼しさに包まれた待機エリアとなる広場には多くのサイクリストが集まってきた。
大会の前週から雨続きのなかで、そばにあるはずの山中湖の姿が見えるか見えないかというくらいの深い霧に覆われた会場だが、幸いなことに雨は落ちてこない。そんななかでMCの絹代さんが天気予報が好転し、雨の確率が下がったことを伝えると会場がホッとした空気に。
6時のスタート時間になると、50人ほどに分けられたグループごとにコースへと走りだしていく。キャンプ場や大学の研修センター、遊覧船乗り場など、レジャー施設が充実した山中湖の南岸を走り抜け、河口湖へと向かっていく。途中、鎌倉往還を左に入り、富士五湖自動車道沿いの新道へと入ると車の数もグッと少なくなり、一気に走りやすくなった。
富士山エリアの観光の起点として整備された富士北麓駐車場を通り過ぎ、河口湖大橋通りへと走っていく。河口湖大橋へと下っていく途中を左に入ると、第一エイドとなる河口湖町役場に到着だ。朝一番のエイドということもあり、ここは軽めに水とバナナのみとなっているので、朝ごはんはしっかりと摂ってきたほうが安心だろう。少し足を休ませた後は、河口湖大橋に向けて出発。
湖は反時計まわりに走るというセオリー通りに河口湖岸を走っていくころには、ところどころ青空が顔を覗かせる。しかも、朝は霧に隠れていた富士山までも姿を見せてくれた。やっぱり、フジエコというからには富士山は欠かせない。その思いは参加者のみなさん同じだったようで、脚を停めて記念撮影する人も沢山。
河口湖北岸から西湖へとアプローチする途中には1.5km程度の登りがあるが、そこまで厳しいわけではないのでゆったりと登れば大丈夫。トンネルを抜けるとすぐに西湖がその姿を現す。絶滅種のクニマスの再発見で一躍注目を浴びた西湖の北岸を走っていく参加者たち。河口湖に比べると短めのルートを走り抜けた先にある野鳥の森公園が2つ目のエイドステーションだ。
野鳥の森公園では、具だくさんのトン汁が振る舞われる。エコの観点から配られた参加賞のマイ箸を使ってトン汁を戴く参加者のみなさん。芝生の広がる青々とした景色のなかで食べるトン汁は最高の一品。ちょうどお腹がすき始めているころでもあり、出来ればお替りしたいくらい。
トン汁を満喫したあとは、樹海の中を走って精進湖に到着。富士五湖中もっとも小さい湖をくるっと1周。小さい割に釣り人が多く、ルアーロッドを携えたバサーや釣り座にどっしりと腰を据えたへら師が湖畔に連なっている。小さいながらも人気の高さが窺えるエリアで、今度は釣りに来てもいいかも、なんて考えていると富士パノラマラインに再び合流することに。
そして、富士五湖最西端の本栖湖に到着。西湖、精進湖ともともとは同じ剗の海(せのうみ)であったと言われる本栖湖は、地下で今も繋がっているとのことで、3つの湖の湖面標高はほぼ同じ900mであるという。なので、この3つの湖の間の区間は平坦なのかと思いきや、意外とアップダウンが連続して現れるので、ついつい頑張り過ぎないように注意しながら走りたい。
本州最高の透明度と富士五湖最大の深度によってもたらされる深い青を湛えた本栖湖の美しい眺めを見ながら快調に走っていく。本栖湖を一周して現れるのが折り返しとなる3つ目のエイドステーション。こちらで用意されているのがほうとう日本一として名高い「歩成」の黄金ほうとう。かぼちゃをはじめとした具がどっさりと乗っかったほうとうのボリュームは器を受け取った時に感じるどっしりとした重さから伝わってくる。もちもちとした噛みごたえのある麺とあいまって最高の昼食となった。
例年であれば、本栖湖まで来た後は朝霧高原を越えて富士宮方面へと下っていくところだが、今年はここで折り返し山中湖へと戻っていく。とはいえ来た道をそのまま辿るわけではなく、今度は富士の裾野に広がる樹海の中を走り抜けることに。
ゆるーく登っているのだが、距離はそれほど長くない。ビギナーでも時間にして5分以下で越えられる坂をいくつか越えれば、あとは樹海の中を爽快にダウンヒル。下り切った先には富岳風穴エイドが待っている。こちらでは地元鳴沢村名産の「鳴沢菜漬」が振る舞われた。風味豊かでどこか懐かしさを感じさせる味についつい箸が進んでしまう。
富岳風穴エイドを後にすると、再び舞台は西湖へと。このころには少し雨がぱらつく場面もあったが、昨年の豪雨に比べると可愛いもの。河口湖へと辿りつくころには再び雨は止んでいた。しかし、雨雲レーダーをみるといつの間にやら南側から大きな雨雲が迫ってきている。すこし駆け足で八木崎公園エイドでドーナツを戴き、先へ急ぐ。
再び河口湖大橋を渡り、今年の3月に開通したばかりの新倉河口湖トンネルに向かう。全長2476メートルのトンネルは河口湖北岸から富士吉田の市街地を約10分で結ぶ新たなルートとして計画されたもの。交通渋滞の緩和などに力を発揮すると期待された新道なのだが、通勤通学や観光に使用できるように幅2mの歩道が整備されており、自転車も安心して通ることができるように設計されているのだ。トンネルの内部は照明もふんだんに設置されているので、明るく安全。週末は混雑することの多い河口湖近辺にできた新たなルートとして、富士山周辺を走るときには便利な道となりそうだ。
トンネルの先、火祭りロードレースなどが行われることで有名な富士吉田の市街を抜けて、日本屈指の湧水地帯である忍野エリアへと向かう。最後のエイドであるおさかな公園エイドでは、あまーい草餅で最後の元気を分けてもらい一路山中湖へと走り抜ける。途中には美しい花畑がひろがる「花の都公園」の横を走るシーンも。
山中湖まで帰ってくれば、ゴール地点のきららはもうすぐ。北側に整備されたサイクリングロードは幅も広く完全フラットなので、120㎞走ってきた参加者にとってはご褒美のようなもの。ところどころ、砂が浮いている箇所があるのでスリップしないように注意が必要だが、基本的には非常に走りやすい。そしてきららに到着したら、絹代さんが120kmの労をねぎらってくれるなか、、日にいろいろなイベントが行われていたステージへとフィニッシュ!
それぞれに個性豊かな5つの湖や、樹海に花畑といったバラエティ豊かな景観、ほうとうや鳴沢菜など地元食材を活かしたエイドと富士山周辺の魅力をぎっしりと詰め込んでリニューアルを果たしたMt.FUJIエコサイクリング2015。雨というジンクスを少し振り払った今年は、この大会の本来の魅力が伝わってきたのではないだろうか。来年はくっきりと富士山が見える中を走れそうな、そんな気がする。
text&photo:Naoki.YASUOKA
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