2015/06/23(火) - 11:18
絶好のサイクリング日和に恵まれた”アルプスあづみのセンチュリーライド”。安曇野の景観を思う存分に堪能した私たちは”あづみの公園大町エイド”に滑り込む。このエイドではあの男が心待ちにしている”ネギ味噌おにぎり”が並んでいるはずだ。
「いよ~!待ってました!やっぱコレだよな!」エイドに到着するや否や、奇声を発しながら一目散に補給テントへと駆けよる”黄色い弾丸”。順番待ちの列に加わると落ち着きなくそわそわしながらもその目線は決して”ネギ味噌おにぎり”から外れる事は無い。この男は本当にコレを楽しみにしていた様子だ。
待望の自分の番が廻ってくると、オニギリをミス大町の手から奪い取るかのように受取り、ネギ味噌をだっぷり塗りたくったかと思うと一気に食らいつく。静かに目を閉じ、暫しの沈黙の後に腹の底から搾り出すように声を発する。「ん~!やっぱ美味い!長野のシャリは最高!やっぱ日本男児たるものシャリこそがパワーの源だな!」
普段の社内では決してお目に掛かれないような輝く笑顔で嬉しそうに”ネギ味噌おにぎり”を頬張るメタボ会長を見ていると何故だか心が和んでくる。そんなホッコリした気分に浸る私の横で、当のオヤジはおもむろに隣のわらび餅コーナーに近づくなり、わらび餅を5.6個まとめてバクリだ。
ただ、わらび餅のきな粉量が多過ぎたらしく咳き込みながら騒いでいる。「口の中の水分を全部もっていかれた~!水くれ~!みず~!」さすがにもう付き合い切れない。
そんな大はしゃぎっぷりだから参加者さんに見つからない訳が無い。「あっ!メタボ会長がいるぞ~!」「うわっ!本物の会長だよ!ウケんだけど!」と参加者さんが集まって来てしまう。ここでも恒例の記念撮影の始まりだ。
「いつも読んでます。頑張って下さいね!」と初々しい控えめな態度で一緒にカメラに収まる参加者さんがいる一方で、「会長!久し振り~!」とすっかり小慣れた感じの常連さんが居たりと人間模様も様々だ。
中には男性なのにも関わらずオヤジの腕にコッソリと腕を絡め「おい!ちょっと!ばか!やめろよ~!」とたじろぐメタボ会長を追いかけ廻して「会長!俺とも腕組んでよ~!」と困らせるツワモノもいる。基本的には女性サイクリスト以外とは決して腕を組まないというのがメタボ会長のポリシーなのだ!(当たり前です)
こうしてひと仕切り遊び終えた私たちは次なる”大町木崎エイド”目指してコースに戻る。長閑な田園風景の中を進みつつ前を行くオヤジの背中を見ていると、さっきのエイドで参加者さんたちと楽しそうに触れあっていた彼の姿に対して不思議な感覚が湧いてくる。
今私の目の前にいる会長は、いつも社内で纏っているオーラのようなモノは微塵も無く、まるでご当地でよく見かける”ユルキャラ”の様な柔らかさを感じさせるのだ。
基本的に体育会系の我社の上下関係は厳格だ。本店工事部の社員たちは会長に対して直立不動で接しているし、トップの小山社長ですらオヤジには最敬礼だ。社内で会長に接する態度が一番フレンドリーなのが私たち編集部と言われているくらいだが、そんな私たちでも稀に会長と面と向かって話をする時は緊張の余り変な脇汗をかく。
もちろん会長自身が肩で風を切りながら威張り散らしている訳ではなく、いつもの温和な表情を浮かべてはいるのだが、何とも言えない独特の威圧感が漂っているのもまた事実だ。(と思い込んでいたのだ!)
これら会長の偶像は本店工事部の態度によって私たちが洗脳されていただけで、今私の前を走る”黄色い弾丸”自体は、実はただの気のイイおじさんで、特段気を遣う必要も無いのでは?(もしそうであれば、今後の私の人生がどれだけ楽になる事か!)
ここは一念発起してフレンドリーなタメ口で話しかけてみる価値はありそうだ。ただ、古参の社員は皆が口を揃えて「昔はよく会長にブン殴られたモンだよ」と話していた事も気にはなるところであるが・・・。
そんなどうでも良い事を考えている間に、私たちは”大町木崎エイド”に到着してしまう。このエイドではほんのりと納豆の匂いが漂う地元名物の”おざんざ”と”漬物バイキング”が優しく迎えてくれる。メタボ会長が銀シャリに拘りがあるように、私的にはこの”おざんざ”無くしては、AACRに来たという実感が持てないのだ。個人的に待望だった”おざんざ”の風味を楽しんでいると、遠くからオヤジの声が響く。
「お~い!ちょっと来てくれっか?この葉っぱって何か知ってる?抜群に美味いんだけど?」おざんざの風味を楽しむ時間に水を差された私が渋々近づいてみると、それはレタスにも見える野菜だ。この正体をスタッフさんに聞くと”サラダ菜”。
「これならボール一杯でも食えちゃうな!」とハタ迷惑な言葉を発しながらサラダ菜の前に居座るオヤジ。終いには「ダメだ!この葉っぱから離れらんねえ!誰か俺をココから引っぺがして連れてってくれ~!」と、どんだけ意志が弱いねん!という言葉まで発する始末だが、その気持ちも判らなくは無い。
”サラダ菜”に後ろ髪を引かれつつ”大町木崎エイド”を後にした私たちは、いよいよ”白馬ジャンプ競技場”を目指してペダルを踏む。今年のコースは大幅な変更が加えられていて、昨年までの復路が往路に使われている。
従って私が楽しみにしているオヤジ悶絶の”美麻郵便局”からの登坂が往路には無い。そればかりか地味に脚を削られる籠川沿いの緩斜面も通らない。ちなみに160kmコースの獲得標高を昨年コースと比すると10%以上低い。この英断を下したコースプロデューサーの鈴木雷太さんに私はアッパレ!と伝えたい!(偉そうでスミマセン)
オヤジの悶絶が見られない事だけに関して言えば残念ではあるものの、このルート変更は自転車人気の裾野を広げるという意味でも素晴らしい判断だと思う。私のような貧脚にも余裕を持って安心かつ安全に”アルプスあづみの”の景観を楽しんでもらおうという心配りがヒシヒシと伝わってくるからだ。そう!サイクリングとは本来は苦しむものではなく楽しめるモノであるべきはずだ!(あれ?誰かに似てきてる?)
昨年までの復路を逆走する新鮮なルートを辿る私たちは、木崎湖、中網湖、青木湖の順で仁科三湖畔を駆け抜ける。そのまま新緑の生い茂る広々とした”安曇野アートライン”を下って行くと”白馬ジャンプ競技場”は目前だ。
ただ今年のルートはここでひと捻りがある。神城駅の南側から五竜スキー場までの1.3km平均勾配6%の登坂が用意されているのだ。往路唯一のこの登坂は昨年までの美麻坂に比すると難易度は低い。
初お目見えの登坂路を淡々とこなす私たちを、左岸を流れる渓流が優しく見守る。お洒落な佇まいの”シャレータケダ”の前では、六段堰を流れ落ちる渓流からマイナスイオンがこれでもかと降り注いで来る。そんな素敵なロケーションに「去年までのキツイ無名峠より俺はコッチの登坂の方が好きだな。何故か水の流れが見えてるだけで何か落ち着くんだよ。」とメタボ会長が言葉を漏らす。おそらく水の流れ云々ではなく単純に難易度の問題だとは思うが、これで唯一の難所もクリアだ。
五竜スキー場から北側に下り、いつもの白馬別荘地に戻ってきた私たちは”白馬ジャンプ競技場”へのアプローチに取り掛かる。何度訪れてもここの景観は美しく、緑のジャンプ台を見ると今年も来たんだなという実感が押し寄せる。ただ、楽しみにしていたジャンプ台下のジェラート屋さんが休業だった事だけは心残りだ。
”白馬エイド”で豚汁と紫米おこわを堪能した私たちは、白馬駅目指して進んでゆく。今年の160kmは白馬駅前を通過するため私たちも初めて通るルートとなる。”トレインコース”のメタボ会長とのお別れも白馬駅前という予定だ。
その駅に向かう途中ですら素晴らしい景観が拡がるのがここ白馬地区だ。冠雪を抱く山々を背景に気持ち良く駆け抜けて行く車列は実に絵になる。
思わぬハイライトポイントを発見し暫しの撮影に取り組んだ私たちは、その先で幸運にも”ジェラート屋”さんに遭遇する。このお店に立ち寄っている多くの参加者さん達の安堵の表情は、心残りだった私の気持ちを代弁するかのようだ。予想外の幸運2連発に気を良くした私たちは、いよいよ”白馬駅”に到着する。
「じゃ!ここでバイバイだ!後はヨロシクな!」こんなメタボ会長の言葉とともに、ここでオヤジとは別行動となり、合わせて私も”お払い箱”となる。できれば私も会長と一緒に電車で戻りたい所ではあるが、そんな甘えた事は編集長が怖くて言えない。メタボ会長が羨ましい限りだ。だってイイトコ取りだもん!
後日、トレインコースに帯同した雷太さんに聞いた話では、オヤジは電車に乗り込むなり終点の一日市場駅に着くまで、ず~っと爆睡してたと言うから、羨ましいやらムカツクやら、ふざけんなよ!って話しである!
一方、編集長と安岡と共に復路に挑んだ私ではあったが、なかなかどうして、この復路も魅力タップリの素敵なコースで、先程のハイライトポイントを更に上回る絶景ハイライトポイントに巡り合えたりと、素晴らしい景観が満載の素敵なルートだった事が私にとっては救いだった。詳しくはコチラをご覧ください。
こうして健脚2人に引っ張られながら何とか160kmをこなした私はゴールを迎える。体力的にはまだ余裕があるものの、やはり私レベルだと160kmの達成感は絶大だ。隠しきれない嬉しさから、前を行く2人に見つからない様に小さくガッツポーズを繰り出しながらゴールに飛び込む。そんな私をメタボ会長自らが笑顔で迎えてくれる。
「ずいぶん時間かかったな!まったくどんだけ待たせりゃ気が済むんだ?」おいおい?その優しい笑顔と発する言葉がまるで噛み合ってないんですけど?相も変わらず嫌な男である。おまけにその出で立ちはサッパリとし、風呂上りである事は誰の目にも明らかだ。
とは云え私も業務で来ている以上は仕事をこなさなければならない。サッパリ風呂上がりの会長相手に汗だくの私はヒアリングに取り掛かる。「会長、取り敢えずいつもの感想を下さい。」
ボロ雑巾のような私にメタボ会長が応える。「正直言うと全く文句なし!これはトレインだけに限らずだ!アルプスあづみの地区の恵まれた環境が大きいこともあるけど、コースの難易度を下げるっていう簡単そうで難しい選択をした主催者サイドには頭が下がるよ。自転車人気の裾野を広げるために何をすべきかをスタッフさんが良く判ってる!日本屈指の安定感抜群の大会と言い切っても問題ないと思うよ。」あらら?私と似たような感想じゃないの?などと感じている私にオヤジが言葉を続ける。
「この大会ほど安全に対して厳しくてうるさいイベントは他に無いだろ?この安全に対する拘りには感服だよ!当たり前の事だけど、根本的にどんなイベントでも安全あっての楽しみ喜びだからね!安全こそは何事にも優先する最も基本的でかつ最も大切な事なんだよ!我社のモットーも安全第一だろ?それより、詳しい事は帰りの車で喋るから君も早く風呂に入ってきなよ。後取材は2人に任せて一緒に帰ろう。俺はクルマで待ってるから10分で風呂終わらせろよ!あんま遅いと置いて帰っちまうからな!」
そう言い残して駐車場へと向かうメタボ会長。その遠ざかる背中が「安全への拘りは、時に窮屈に感じる事もあるけど、決して忘れてはいけないぞ!」と語りかけてくる声が私にはハッキリと聞こえた。
今回、編集部チームが実走取材にお伺いした"アルプスあづみのセンチュリーライド2015"を支えて下さった大会関係者並びにサポートスタッフの皆様に心より御礼申し上げます。 <編集部一同>
メタボ会長連載のバックナンバーは こちら です
「いよ~!待ってました!やっぱコレだよな!」エイドに到着するや否や、奇声を発しながら一目散に補給テントへと駆けよる”黄色い弾丸”。順番待ちの列に加わると落ち着きなくそわそわしながらもその目線は決して”ネギ味噌おにぎり”から外れる事は無い。この男は本当にコレを楽しみにしていた様子だ。
待望の自分の番が廻ってくると、オニギリをミス大町の手から奪い取るかのように受取り、ネギ味噌をだっぷり塗りたくったかと思うと一気に食らいつく。静かに目を閉じ、暫しの沈黙の後に腹の底から搾り出すように声を発する。「ん~!やっぱ美味い!長野のシャリは最高!やっぱ日本男児たるものシャリこそがパワーの源だな!」
普段の社内では決してお目に掛かれないような輝く笑顔で嬉しそうに”ネギ味噌おにぎり”を頬張るメタボ会長を見ていると何故だか心が和んでくる。そんなホッコリした気分に浸る私の横で、当のオヤジはおもむろに隣のわらび餅コーナーに近づくなり、わらび餅を5.6個まとめてバクリだ。
ただ、わらび餅のきな粉量が多過ぎたらしく咳き込みながら騒いでいる。「口の中の水分を全部もっていかれた~!水くれ~!みず~!」さすがにもう付き合い切れない。
そんな大はしゃぎっぷりだから参加者さんに見つからない訳が無い。「あっ!メタボ会長がいるぞ~!」「うわっ!本物の会長だよ!ウケんだけど!」と参加者さんが集まって来てしまう。ここでも恒例の記念撮影の始まりだ。
「いつも読んでます。頑張って下さいね!」と初々しい控えめな態度で一緒にカメラに収まる参加者さんがいる一方で、「会長!久し振り~!」とすっかり小慣れた感じの常連さんが居たりと人間模様も様々だ。
中には男性なのにも関わらずオヤジの腕にコッソリと腕を絡め「おい!ちょっと!ばか!やめろよ~!」とたじろぐメタボ会長を追いかけ廻して「会長!俺とも腕組んでよ~!」と困らせるツワモノもいる。基本的には女性サイクリスト以外とは決して腕を組まないというのがメタボ会長のポリシーなのだ!(当たり前です)
こうしてひと仕切り遊び終えた私たちは次なる”大町木崎エイド”目指してコースに戻る。長閑な田園風景の中を進みつつ前を行くオヤジの背中を見ていると、さっきのエイドで参加者さんたちと楽しそうに触れあっていた彼の姿に対して不思議な感覚が湧いてくる。
今私の目の前にいる会長は、いつも社内で纏っているオーラのようなモノは微塵も無く、まるでご当地でよく見かける”ユルキャラ”の様な柔らかさを感じさせるのだ。
基本的に体育会系の我社の上下関係は厳格だ。本店工事部の社員たちは会長に対して直立不動で接しているし、トップの小山社長ですらオヤジには最敬礼だ。社内で会長に接する態度が一番フレンドリーなのが私たち編集部と言われているくらいだが、そんな私たちでも稀に会長と面と向かって話をする時は緊張の余り変な脇汗をかく。
もちろん会長自身が肩で風を切りながら威張り散らしている訳ではなく、いつもの温和な表情を浮かべてはいるのだが、何とも言えない独特の威圧感が漂っているのもまた事実だ。(と思い込んでいたのだ!)
これら会長の偶像は本店工事部の態度によって私たちが洗脳されていただけで、今私の前を走る”黄色い弾丸”自体は、実はただの気のイイおじさんで、特段気を遣う必要も無いのでは?(もしそうであれば、今後の私の人生がどれだけ楽になる事か!)
ここは一念発起してフレンドリーなタメ口で話しかけてみる価値はありそうだ。ただ、古参の社員は皆が口を揃えて「昔はよく会長にブン殴られたモンだよ」と話していた事も気にはなるところであるが・・・。
そんなどうでも良い事を考えている間に、私たちは”大町木崎エイド”に到着してしまう。このエイドではほんのりと納豆の匂いが漂う地元名物の”おざんざ”と”漬物バイキング”が優しく迎えてくれる。メタボ会長が銀シャリに拘りがあるように、私的にはこの”おざんざ”無くしては、AACRに来たという実感が持てないのだ。個人的に待望だった”おざんざ”の風味を楽しんでいると、遠くからオヤジの声が響く。
「お~い!ちょっと来てくれっか?この葉っぱって何か知ってる?抜群に美味いんだけど?」おざんざの風味を楽しむ時間に水を差された私が渋々近づいてみると、それはレタスにも見える野菜だ。この正体をスタッフさんに聞くと”サラダ菜”。
「これならボール一杯でも食えちゃうな!」とハタ迷惑な言葉を発しながらサラダ菜の前に居座るオヤジ。終いには「ダメだ!この葉っぱから離れらんねえ!誰か俺をココから引っぺがして連れてってくれ~!」と、どんだけ意志が弱いねん!という言葉まで発する始末だが、その気持ちも判らなくは無い。
”サラダ菜”に後ろ髪を引かれつつ”大町木崎エイド”を後にした私たちは、いよいよ”白馬ジャンプ競技場”を目指してペダルを踏む。今年のコースは大幅な変更が加えられていて、昨年までの復路が往路に使われている。
従って私が楽しみにしているオヤジ悶絶の”美麻郵便局”からの登坂が往路には無い。そればかりか地味に脚を削られる籠川沿いの緩斜面も通らない。ちなみに160kmコースの獲得標高を昨年コースと比すると10%以上低い。この英断を下したコースプロデューサーの鈴木雷太さんに私はアッパレ!と伝えたい!(偉そうでスミマセン)
オヤジの悶絶が見られない事だけに関して言えば残念ではあるものの、このルート変更は自転車人気の裾野を広げるという意味でも素晴らしい判断だと思う。私のような貧脚にも余裕を持って安心かつ安全に”アルプスあづみの”の景観を楽しんでもらおうという心配りがヒシヒシと伝わってくるからだ。そう!サイクリングとは本来は苦しむものではなく楽しめるモノであるべきはずだ!(あれ?誰かに似てきてる?)
昨年までの復路を逆走する新鮮なルートを辿る私たちは、木崎湖、中網湖、青木湖の順で仁科三湖畔を駆け抜ける。そのまま新緑の生い茂る広々とした”安曇野アートライン”を下って行くと”白馬ジャンプ競技場”は目前だ。
ただ今年のルートはここでひと捻りがある。神城駅の南側から五竜スキー場までの1.3km平均勾配6%の登坂が用意されているのだ。往路唯一のこの登坂は昨年までの美麻坂に比すると難易度は低い。
初お目見えの登坂路を淡々とこなす私たちを、左岸を流れる渓流が優しく見守る。お洒落な佇まいの”シャレータケダ”の前では、六段堰を流れ落ちる渓流からマイナスイオンがこれでもかと降り注いで来る。そんな素敵なロケーションに「去年までのキツイ無名峠より俺はコッチの登坂の方が好きだな。何故か水の流れが見えてるだけで何か落ち着くんだよ。」とメタボ会長が言葉を漏らす。おそらく水の流れ云々ではなく単純に難易度の問題だとは思うが、これで唯一の難所もクリアだ。
五竜スキー場から北側に下り、いつもの白馬別荘地に戻ってきた私たちは”白馬ジャンプ競技場”へのアプローチに取り掛かる。何度訪れてもここの景観は美しく、緑のジャンプ台を見ると今年も来たんだなという実感が押し寄せる。ただ、楽しみにしていたジャンプ台下のジェラート屋さんが休業だった事だけは心残りだ。
”白馬エイド”で豚汁と紫米おこわを堪能した私たちは、白馬駅目指して進んでゆく。今年の160kmは白馬駅前を通過するため私たちも初めて通るルートとなる。”トレインコース”のメタボ会長とのお別れも白馬駅前という予定だ。
その駅に向かう途中ですら素晴らしい景観が拡がるのがここ白馬地区だ。冠雪を抱く山々を背景に気持ち良く駆け抜けて行く車列は実に絵になる。
思わぬハイライトポイントを発見し暫しの撮影に取り組んだ私たちは、その先で幸運にも”ジェラート屋”さんに遭遇する。このお店に立ち寄っている多くの参加者さん達の安堵の表情は、心残りだった私の気持ちを代弁するかのようだ。予想外の幸運2連発に気を良くした私たちは、いよいよ”白馬駅”に到着する。
「じゃ!ここでバイバイだ!後はヨロシクな!」こんなメタボ会長の言葉とともに、ここでオヤジとは別行動となり、合わせて私も”お払い箱”となる。できれば私も会長と一緒に電車で戻りたい所ではあるが、そんな甘えた事は編集長が怖くて言えない。メタボ会長が羨ましい限りだ。だってイイトコ取りだもん!
後日、トレインコースに帯同した雷太さんに聞いた話では、オヤジは電車に乗り込むなり終点の一日市場駅に着くまで、ず~っと爆睡してたと言うから、羨ましいやらムカツクやら、ふざけんなよ!って話しである!
一方、編集長と安岡と共に復路に挑んだ私ではあったが、なかなかどうして、この復路も魅力タップリの素敵なコースで、先程のハイライトポイントを更に上回る絶景ハイライトポイントに巡り合えたりと、素晴らしい景観が満載の素敵なルートだった事が私にとっては救いだった。詳しくはコチラをご覧ください。
こうして健脚2人に引っ張られながら何とか160kmをこなした私はゴールを迎える。体力的にはまだ余裕があるものの、やはり私レベルだと160kmの達成感は絶大だ。隠しきれない嬉しさから、前を行く2人に見つからない様に小さくガッツポーズを繰り出しながらゴールに飛び込む。そんな私をメタボ会長自らが笑顔で迎えてくれる。
「ずいぶん時間かかったな!まったくどんだけ待たせりゃ気が済むんだ?」おいおい?その優しい笑顔と発する言葉がまるで噛み合ってないんですけど?相も変わらず嫌な男である。おまけにその出で立ちはサッパリとし、風呂上りである事は誰の目にも明らかだ。
とは云え私も業務で来ている以上は仕事をこなさなければならない。サッパリ風呂上がりの会長相手に汗だくの私はヒアリングに取り掛かる。「会長、取り敢えずいつもの感想を下さい。」
ボロ雑巾のような私にメタボ会長が応える。「正直言うと全く文句なし!これはトレインだけに限らずだ!アルプスあづみの地区の恵まれた環境が大きいこともあるけど、コースの難易度を下げるっていう簡単そうで難しい選択をした主催者サイドには頭が下がるよ。自転車人気の裾野を広げるために何をすべきかをスタッフさんが良く判ってる!日本屈指の安定感抜群の大会と言い切っても問題ないと思うよ。」あらら?私と似たような感想じゃないの?などと感じている私にオヤジが言葉を続ける。
「この大会ほど安全に対して厳しくてうるさいイベントは他に無いだろ?この安全に対する拘りには感服だよ!当たり前の事だけど、根本的にどんなイベントでも安全あっての楽しみ喜びだからね!安全こそは何事にも優先する最も基本的でかつ最も大切な事なんだよ!我社のモットーも安全第一だろ?それより、詳しい事は帰りの車で喋るから君も早く風呂に入ってきなよ。後取材は2人に任せて一緒に帰ろう。俺はクルマで待ってるから10分で風呂終わらせろよ!あんま遅いと置いて帰っちまうからな!」
そう言い残して駐車場へと向かうメタボ会長。その遠ざかる背中が「安全への拘りは、時に窮屈に感じる事もあるけど、決して忘れてはいけないぞ!」と語りかけてくる声が私にはハッキリと聞こえた。
今回、編集部チームが実走取材にお伺いした"アルプスあづみのセンチュリーライド2015"を支えて下さった大会関係者並びにサポートスタッフの皆様に心より御礼申し上げます。 <編集部一同>
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メタボ会長
身長 : 172cm 体重 : 82kg 自転車歴 : 6年
当サイト運営法人の代表取締役。平成元年に現法人を設立、平成17年に社長を辞し会長職に退くも、平成20年に当サイトが属するメディア事業部の責任者兼務となったことをキッカケに自転車に乗り始める。豊富な筋肉量を生かした瞬発力はかなりのモノだが、こと登坂となるとその能力はべらぼうに低い。日本一登れない男だ。
身長 : 172cm 体重 : 82kg 自転車歴 : 6年
当サイト運営法人の代表取締役。平成元年に現法人を設立、平成17年に社長を辞し会長職に退くも、平成20年に当サイトが属するメディア事業部の責任者兼務となったことをキッカケに自転車に乗り始める。豊富な筋肉量を生かした瞬発力はかなりのモノだが、こと登坂となるとその能力はべらぼうに低い。日本一登れない男だ。
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