2015/07/08(水) - 11:22
過ごしやすかった春の陽気もどこへやら、じりじりとした熱気が日を追うごとに強さを増していく5月終盤。Blackburnを取り扱う「インターテック」が企画するOUT THERE NIPPONというキャンプツーリングに帯同したレポートをお届けしよう。
まだ5月だというに、真夏のように蒸した空気が広がる編集部。外はこんなにいい陽気なのに、なぜ僕らは穴蔵のようなオフィスにこもっていないといけないのだ。出来ることなら、今すぐ自転車で飛び出したい。
できれば、レースだとか練習だとか、そういうのじゃなくて、途中で川に飛び込んだり、バーベキューを楽しんだり、そんなゆるい感じのライドが良い。できればテントを張って、自然の中で一晩過ごすことができたらこれ以上ないリフレッシュになるだろう。
淀んだ空気のせいか、はたまたモニターに向かい過ぎのせいか、うまく働かない頭でそんなことを考えていたその時、一通のメールが編集部に届いた。差出人はヘルメットのBELLやタイヤのマキシスなどを取り扱う、インターテックの大森さんだ。
「今度、OUT THERE NIPPONの一つとしてブルーラグさんとブラックバーンがコラボしたキャンプツーリングをするんですが、ぜひご一緒にどうですか?」と言う内容。ちなみにブルーラグとは、東京・幡ヶ谷にある感度の高いサイクリストのツボをついた品ぞろえが人気の自転車ショップ。
ブラックバーンはクオリティの高いラックや、バック、ライトなどをラインアップするインターテックの看板ブランドの一つで、OUT THERE NIPPONと称したアドベンチャーツーリングを主宰している。
隠しカメラでも仕掛けられているのかと疑ってしまいそうになるくらい、あまりもジャストタイミングなご提案に「ぜひ行きます!」と二つ返事で答える我々編集部。こうして、初夏のツーリングに仕事という名目で出かけることができるようになった次第である。
5月20日、武蔵五日市の駅前に集合と伝えられた僕らは朝の仕事を終え、合流地点へと急いでいく。五日市の駅前につくと、インターテックの大森さんと今日のツーリングのルートを案内してくれる「裏山ライドTOKYO」主宰のジンケンさんが迎えてくれた。
ちなみに本隊は幡ヶ谷のブルーラグに集合したのち、武蔵五日市へと向かっているという。しかし、これがなかなか来ない。なにかトラブルでもあったのだろうか?と心配しはじめたころに、どっさりと荷物を積んだ自転車の隊列がやってきた。
「いやー、もういろいろと楽しくなっちゃいまして(笑)」と言いながら走ってきた皆さん。どうやら、かなり色々な寄り道をしてきた様子。幡ヶ谷から、調布飛行場や多摩川や秋川沿いを通って、サマーランドをかすめつつ武蔵五日市まで来たという。それは時間がかかるわけだ。
普通なら遅刻されると少しは怒りたくもなるものだけれど、みなさんの楽しそうな顔をみているとそんな気分よりも、羨ましさが勝ってしまう。うーむ、こんなことなら朝のルーチンワークは編集部の誰かに任せて幡ヶ谷に直行したほうが良かったかも?なんて思いながら顔合わせを済ませる。
ここから先は、奥多摩の表も裏も知り尽くしたジンケンさん設計のコースを通って、お昼ご飯を用意していくれているという檜原村のレストランまで走っていくという。とはいえ、私も多摩地区のサイクリストのはしくれ。奥多摩には数えきれないほど訪れているし、そんな驚くようなことはないだろうという考えが甘かったことはすぐに思い知らされることとなった。
ロードで奥多摩を訪れる人の大半は、武蔵五日市から檜原街道をずっと走って都民の森や風張峠へと至るというルートを通るのではないだろうか。逆にいうとそれ以外のルートって実は走ったことがない人の方が多いハズ。そう、よく見知った武蔵五日市の駅から出発してすぐ、檜原街道を離れたこのツーリングは、知らない道、風景の連続だった。
いきなり北秋川のほとりまで下り、川沿いの道を走ることに。途中で河原に下りて、すこし水遊びを楽しんでみたり。秋川は檜原街道から良く見えていたけれど、こんなに近くまで来たのは実は初めてだ。その後は「黒茶屋」さんでおやきをいただく。幡ヶ谷から走ってきた皆さんの疲れはかなり癒されていた様子。
そこからもう一度檜原街道を横断し、今度は北側の裏道を走っていく。けっこうパンチのきいたアップダウンの連続で、荷物を満載した自転車だと少し押しが入ってしまう人もいたけれど、基本的に短い坂なのですぐに越えていくことができる。途中には、ダート区間も現れいかにも「裏・奥多摩」といった雰囲気。
木立が織りなす日向と日影のコントラストの美しさに心奪われながら走っていく。「瀬音の湯」の裏を通り、しばらく行くと、秋川の上にかかった橋が現れる。その先のほそーい登りをこなすと、見知った檜原街道に出た。そこから先は檜原村の役場がある交差点を右に曲がり、払沢の滝駐車場近くにあるイタリアンレストラン「ヴィッラ・デルピーノ」でお昼休憩だ。
出発が遅かったこともあり、すこし遅めの昼食ということになったが、空腹分を差し引いてもあまりある美味しい料理が並べられる。スープとサラダに2種類のパスタと、ボリュームも十分。それぞれ檜原村でとれた食材を使っているとのことで、まさしく檜原村を味わいつくすツーリング。
いつまでものんびりしていたいところだけれど、ここから先は峠越え。時坂峠を越え、神戸岩(かのといわ)キャンプ場まで辿りつかないといけないのだ。大きくなったお腹と、バイクに付けた荷物を揺らしながら、ゆるゆると時坂峠を登っていく。平坦斜度は8%とかなり厳しめの時坂峠だけど、距離が3.8kmと短いので、荷物満載でも40分もあれば頂上に辿りつくはず。
しかも、ブラックバーンのキャリアやバッグは軽く、安定性も高いのでダンシングしたりしても、そこまで違和感なく登っていくことができるのだ。特にフロントバックと、シートパックの組み合わせであれば、積載量の割にかなり軽快な走行が楽しめるのもうれしいポイント。
途中にはガードレールに遮られることもない、大パノラマが広がるポイントもあり、つい足を止めてしまう。決して荷物が重いとか、疲れたからとかではない、ハズ(笑)峠のピークには湧水があり、汗まみれの顔を洗うメンバーも。今日の宿であるキャンプ場まではこの先を下るだけ、というところでいきなりポケットの電話が鳴った。どうやら残してきた編集部員からである。
「お楽しみのところ悪いんですが」「そういう含みのある言い方はどうかと思うよ、フジワラくん」「明日アップする記事が出来てないじゃないかって編集長が怒っていて……。」「あ」「そういうことなんです。」プツッ……。ツーツー。
何とも悲しい幕切れである。自業自得というものなのかもしれないが、こんな時くらいと思わずにはいられない。不思議そうな顔のみなさんにかくかくしかじか、と事情を話すとかわいそうな人を見る目で「がんばってね」と励まされた。
ここまでキャンプ道具を積んで登ってきた意味を自問自答しつつ、みなさんに別れを告げ、とぼとぼと来た道を引き返していく。真っ暗で誰もいない編集部についてSNSを覗くと、そこには楽しそうにキャンプを張る、さっきまで共に走った仲間の姿がアップロードされていた。
さて、奥多摩の普段見えない魅力がたっぷり詰まったツーリングの様子はお伝えできただろうか。これまでキャンプツーリングと言えば、前後キャリアを付けて荷物満載というイメージがあったかもしれないが、今回の参加者の半数ほどが、キャリアを装着しない状態でツーリングに参加していた。
それが可能になったのは、近年のULブームの影響でテントやシュラフが小型・軽量化されているということが一つ。そして、特大のシートパックやハンドルバーロールといったキャリア不要ながらも大容量のバッグの登場が大きな要素といえる。
そんなキャンプツーリングの最先端スタイルで走った参加者たちのバイクは、次回の記事で紹介予定。自分もキャンプツーリングに出かけたい!と少しでも思った方には、きっと参考になるだろう。ぜひお楽しみに!
text:Naoki.YASUOKA
photo:Nobuhiko Tanabe,CW編集部
まだ5月だというに、真夏のように蒸した空気が広がる編集部。外はこんなにいい陽気なのに、なぜ僕らは穴蔵のようなオフィスにこもっていないといけないのだ。出来ることなら、今すぐ自転車で飛び出したい。
できれば、レースだとか練習だとか、そういうのじゃなくて、途中で川に飛び込んだり、バーベキューを楽しんだり、そんなゆるい感じのライドが良い。できればテントを張って、自然の中で一晩過ごすことができたらこれ以上ないリフレッシュになるだろう。
淀んだ空気のせいか、はたまたモニターに向かい過ぎのせいか、うまく働かない頭でそんなことを考えていたその時、一通のメールが編集部に届いた。差出人はヘルメットのBELLやタイヤのマキシスなどを取り扱う、インターテックの大森さんだ。
「今度、OUT THERE NIPPONの一つとしてブルーラグさんとブラックバーンがコラボしたキャンプツーリングをするんですが、ぜひご一緒にどうですか?」と言う内容。ちなみにブルーラグとは、東京・幡ヶ谷にある感度の高いサイクリストのツボをついた品ぞろえが人気の自転車ショップ。
ブラックバーンはクオリティの高いラックや、バック、ライトなどをラインアップするインターテックの看板ブランドの一つで、OUT THERE NIPPONと称したアドベンチャーツーリングを主宰している。
隠しカメラでも仕掛けられているのかと疑ってしまいそうになるくらい、あまりもジャストタイミングなご提案に「ぜひ行きます!」と二つ返事で答える我々編集部。こうして、初夏のツーリングに仕事という名目で出かけることができるようになった次第である。
5月20日、武蔵五日市の駅前に集合と伝えられた僕らは朝の仕事を終え、合流地点へと急いでいく。五日市の駅前につくと、インターテックの大森さんと今日のツーリングのルートを案内してくれる「裏山ライドTOKYO」主宰のジンケンさんが迎えてくれた。
ちなみに本隊は幡ヶ谷のブルーラグに集合したのち、武蔵五日市へと向かっているという。しかし、これがなかなか来ない。なにかトラブルでもあったのだろうか?と心配しはじめたころに、どっさりと荷物を積んだ自転車の隊列がやってきた。
「いやー、もういろいろと楽しくなっちゃいまして(笑)」と言いながら走ってきた皆さん。どうやら、かなり色々な寄り道をしてきた様子。幡ヶ谷から、調布飛行場や多摩川や秋川沿いを通って、サマーランドをかすめつつ武蔵五日市まで来たという。それは時間がかかるわけだ。
普通なら遅刻されると少しは怒りたくもなるものだけれど、みなさんの楽しそうな顔をみているとそんな気分よりも、羨ましさが勝ってしまう。うーむ、こんなことなら朝のルーチンワークは編集部の誰かに任せて幡ヶ谷に直行したほうが良かったかも?なんて思いながら顔合わせを済ませる。
ここから先は、奥多摩の表も裏も知り尽くしたジンケンさん設計のコースを通って、お昼ご飯を用意していくれているという檜原村のレストランまで走っていくという。とはいえ、私も多摩地区のサイクリストのはしくれ。奥多摩には数えきれないほど訪れているし、そんな驚くようなことはないだろうという考えが甘かったことはすぐに思い知らされることとなった。
ロードで奥多摩を訪れる人の大半は、武蔵五日市から檜原街道をずっと走って都民の森や風張峠へと至るというルートを通るのではないだろうか。逆にいうとそれ以外のルートって実は走ったことがない人の方が多いハズ。そう、よく見知った武蔵五日市の駅から出発してすぐ、檜原街道を離れたこのツーリングは、知らない道、風景の連続だった。
いきなり北秋川のほとりまで下り、川沿いの道を走ることに。途中で河原に下りて、すこし水遊びを楽しんでみたり。秋川は檜原街道から良く見えていたけれど、こんなに近くまで来たのは実は初めてだ。その後は「黒茶屋」さんでおやきをいただく。幡ヶ谷から走ってきた皆さんの疲れはかなり癒されていた様子。
そこからもう一度檜原街道を横断し、今度は北側の裏道を走っていく。けっこうパンチのきいたアップダウンの連続で、荷物を満載した自転車だと少し押しが入ってしまう人もいたけれど、基本的に短い坂なのですぐに越えていくことができる。途中には、ダート区間も現れいかにも「裏・奥多摩」といった雰囲気。
木立が織りなす日向と日影のコントラストの美しさに心奪われながら走っていく。「瀬音の湯」の裏を通り、しばらく行くと、秋川の上にかかった橋が現れる。その先のほそーい登りをこなすと、見知った檜原街道に出た。そこから先は檜原村の役場がある交差点を右に曲がり、払沢の滝駐車場近くにあるイタリアンレストラン「ヴィッラ・デルピーノ」でお昼休憩だ。
出発が遅かったこともあり、すこし遅めの昼食ということになったが、空腹分を差し引いてもあまりある美味しい料理が並べられる。スープとサラダに2種類のパスタと、ボリュームも十分。それぞれ檜原村でとれた食材を使っているとのことで、まさしく檜原村を味わいつくすツーリング。
いつまでものんびりしていたいところだけれど、ここから先は峠越え。時坂峠を越え、神戸岩(かのといわ)キャンプ場まで辿りつかないといけないのだ。大きくなったお腹と、バイクに付けた荷物を揺らしながら、ゆるゆると時坂峠を登っていく。平坦斜度は8%とかなり厳しめの時坂峠だけど、距離が3.8kmと短いので、荷物満載でも40分もあれば頂上に辿りつくはず。
しかも、ブラックバーンのキャリアやバッグは軽く、安定性も高いのでダンシングしたりしても、そこまで違和感なく登っていくことができるのだ。特にフロントバックと、シートパックの組み合わせであれば、積載量の割にかなり軽快な走行が楽しめるのもうれしいポイント。
途中にはガードレールに遮られることもない、大パノラマが広がるポイントもあり、つい足を止めてしまう。決して荷物が重いとか、疲れたからとかではない、ハズ(笑)峠のピークには湧水があり、汗まみれの顔を洗うメンバーも。今日の宿であるキャンプ場まではこの先を下るだけ、というところでいきなりポケットの電話が鳴った。どうやら残してきた編集部員からである。
「お楽しみのところ悪いんですが」「そういう含みのある言い方はどうかと思うよ、フジワラくん」「明日アップする記事が出来てないじゃないかって編集長が怒っていて……。」「あ」「そういうことなんです。」プツッ……。ツーツー。
何とも悲しい幕切れである。自業自得というものなのかもしれないが、こんな時くらいと思わずにはいられない。不思議そうな顔のみなさんにかくかくしかじか、と事情を話すとかわいそうな人を見る目で「がんばってね」と励まされた。
ここまでキャンプ道具を積んで登ってきた意味を自問自答しつつ、みなさんに別れを告げ、とぼとぼと来た道を引き返していく。真っ暗で誰もいない編集部についてSNSを覗くと、そこには楽しそうにキャンプを張る、さっきまで共に走った仲間の姿がアップロードされていた。
さて、奥多摩の普段見えない魅力がたっぷり詰まったツーリングの様子はお伝えできただろうか。これまでキャンプツーリングと言えば、前後キャリアを付けて荷物満載というイメージがあったかもしれないが、今回の参加者の半数ほどが、キャリアを装着しない状態でツーリングに参加していた。
それが可能になったのは、近年のULブームの影響でテントやシュラフが小型・軽量化されているということが一つ。そして、特大のシートパックやハンドルバーロールといったキャリア不要ながらも大容量のバッグの登場が大きな要素といえる。
そんなキャンプツーリングの最先端スタイルで走った参加者たちのバイクは、次回の記事で紹介予定。自分もキャンプツーリングに出かけたい!と少しでも思った方には、きっと参考になるだろう。ぜひお楽しみに!
text:Naoki.YASUOKA
photo:Nobuhiko Tanabe,CW編集部
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