8月、ラファが企画した女子だけのライド「Rapha Women's Prestige YATSUGATAKE」に、寄せ集めで結成された5人のチームが挑戦した。まずは顔合わせの練習会で親睦を深め、チームワークの下準備。これから本番に向けて楽しい冒険が始まる。



もうすっかりお馴染みの「Rapha Gentlemen's Race」。走行距離100km超、獲得標高3000m超、舗装路が無かった時代を再現したかのような過酷なコースも組み込まれ、時には背中を押し、友と助け合いながらゴールを目指す。そんな紳士的ライドイベントで知られているが、米国ではその女性版が先行して開催されている。

そして今年9月、いよいよ日本にも上陸。“女性だらけの過酷なライドイベント”とすれば、何やら別の意味で興味をそそられる響きではあるが、参加した私たちは完走するために周到な計画を立て、同時に女性ならではの楽しみ方も十分に堪能した。ただゴール目がけてまっしぐらなんてつまらない。ちょっと回り道だけどその過程で派生するさまざまな物事を体験しながら旅を楽しむのだ。トラブルもどんと来い!

「Detour」は回り道、遠回りの意味。私たち「team Detour Party」の回り道大作戦ともなった「Rapha Women's Prestige YATSUGATAKE」参戦記にどうぞお付き合いください。

Rapha Women's Prestige YATSUGATAKE 参戦記(準備編)by林口幸恵(とめっち)

はじまりは、夏真っ盛りのサマークロス

サマークロス出場のチームメイトの応援。マディソンは見た目にも面白いサマークロス出場のチームメイトの応援。マディソンは見た目にも面白い photo:Nadeschan「何やら野辺山で女性限定のライドイベントがあるみたいなんだけど」。

チームメイトの応援に来ていた私に、レースを終えたばかりのけいぞうが耳元で囁いてきた。どうやらあの「Rapha Gentlemen's Race」の女性版があるらしい。
ふむ、女性版? 女性だけでそんなにチーム集まるの? いや実はこの時点でそんな心配などこれっぽっちもしていない。頭の中では「野辺山、女性限定、Rapha、野辺山…」というキーワードだけがぐるぐると回っていた。リアクションを考えながらうんうんと頷くが、喉のこの辺まで出かかっている言葉はこうだ。

「んで、他に誰かいるの??」

一番気がかりなこと、それは「一緒に走るのは誰?」なのだ。私の目線はレース中の選手たちにぼやっと向いているが、心ではけいぞうの顔を覗き込んで「あとだれー?」と叫んでいる。

7月とは言え夏のクロスはキツイ。ほれほれ水だぞ〜プシュプシュ7月とは言え夏のクロスはキツイ。ほれほれ水だぞ〜プシュプシュ いいから落ち着いてと言わんばかりに、「あとね、ワカとアキ。みぃちゃんは日程が合わないみたいなのでもう一人探さないと。」この耳が聞いた名前はたしかに関東のシクロクロス会場では顔なじみの面々。私にとっては心強い最強メンバーだ。スカウト活動はとっくに始まっていたのだ。むむ、この誘いに乗らないわけにはいかない。なるようになれ!誘ってくれたけいぞうに感謝し、参加を快諾した。

あと一人、みぃちゃんの代わりを探さねば。そんな心配をよそに、裏ではけいぞうが臭覚を利かせしっかり動いていたのでリクルーティングに時間は掛からなかった。「ともにゅ、か。」

それもさほど遠くない場所で、鴨ネギがハンモックに揺られながら昼寝をしていたところを捕獲(※イメージです)。でかしたぞけいぞう!経験者の獲得はでかい。ともにゅはGentlemen's Raceを2度経験している。ノウハウもきっとあるだろうと期待が膨らむ。

チームの構成は無理なく自然にこうなった。けいぞう、ワカ、アキ、ともにゅ、私(とめっち)。チームCX北関東支部(仮)の誕生だ。ともにゅがさっそくネギをまな板に乗せてアップ開始、けいぞうの最初の指示を今かと待っている。

みんなワクワクする気持ちが先行しているけど、(Araiレーシングのワカとアキは例外だが)実は全員がじっくり顔を突き合わせて話したことはほぼ無い。普段は同じレースで戦うライバル同士なのだ。ライバル同士はまるでナショナルチームよろしく、これからは同じ方向を向いて心を一つにしなければならない。いや、心はそれぞれでもいいのだけど、手をつなぐことが大事だ。得手不得手、弱い部分をカバーし合って常に一緒に走りゴールするのがRapha Gentlemen's Race、Women's Prestigeなのだ。

雨にも風にも負けない。しかし台風ならビールしかない(笑)

台風もなんのその。大事な会議なのでMile Post Cafeを選択(笑)。しげちゃんのお出迎え付き台風もなんのその。大事な会議なのでMile Post Cafeを選択(笑)。しげちゃんのお出迎え付き 2度目のGentlemen's Raceを女子チームで走ったともにゅは、メンバーが全員揃った「はじめましてのご挨拶」が風呂だったと話す。リーダーけいぞうは当初、埼玉での練習会と温泉をセットにした顔合わせを考えていた。知った顔とはいえ、やはりリレーションを深めるには裸の付き合いが手っ取り早いのか?
私たちは子供のように練習会+風呂の日まで指折り数えて過ごしていたが、どうやら台風が接近しているとの情報により状況が一変。

「ここはチームミーティングだけにしよう。with BEERで!(キラキラ)」

まじめに会議中。だいたい決まったのでそろそろメモとペンをビールに変更まじめに会議中。だいたい決まったのでそろそろメモとペンをビールに変更
選んだジャージはピンク! 胸にはDetour Partyのワッペンを付けて選んだジャージはピンク! 胸にはDetour Partyのワッペンを付けて そんなこんなで顔合わせを兼ねたチームミーティングを隅田川のほとりにあるMile Post Cafeにて開催。私は都合で欠席となってしまったが、SNSを通してリアルタイムにその場の雰囲気を味わっていた。お約束だがやはり時代はSNSである。当日までの間もSNSを活用してお揃いのジャージ候補をいくつか挙げ全員で情報共有、ミーティングで最終決定しようという流れにしたのだが、他にもチーム名、イベント当日までの準備・段取り…と盛りだくさん。

しかしここでけいぞうからのお達しが。「この場でちゃんと決めたらビールが飲める!(逆に決まらないといつまでもお預け状態)」。みんなのお尻に火がついた。SNSである程度の下準備ができていたおかげで決まるのも早い。いや、エサが強力だからか。

ところで、私たちが数ある候補から決めたお揃いのジャージは意外にもピンク。ワカが言った。「自分一人だったらピンクは選ばなかった。」その心は、「これ逃したら一生ピンクは着ないかもしれない、けどみんなと一緒なら冒険できる」なのだ。みんな同じ気持ち。もう旅は始まっている。

このピンクのジャージに寄り道印のワッペンを付けていざ!「team Detour Party」のエンジンが掛った。ガソリンはビールで!

その名も「餃子練」。もちろんお風呂も@宇都宮

本番まで1ヵ月を切っている。台風のせいで一回目の貴重な練習会がビールに化けてしまった(私は飲んでない うぐぐ...)が、暴風にあおられながらもわざわざ新川まで出向いた背景にはビールが…。いや、大事な会議だったし心配事がほぼなくなったので良しとする。しかし残りの限られた週末は全員揃って練習したいところだ。せっかくなので私の地元である宇都宮にメンバーを呼んで練習会を開催することに。

宇都宮で初の練習会。何でしょうこの若干遠慮がちな等間隔。まだ気持ちが離れてるな(笑)宇都宮で初の練習会。何でしょうこの若干遠慮がちな等間隔。まだ気持ちが離れてるな(笑)
宇都宮森林公園に着いたらちょうどRide ON!の撮影中だった。廣瀬GMがこの中に埋もれている宇都宮森林公園に着いたらちょうどRide ON!の撮影中だった。廣瀬GMがこの中に埋もれている パンクの神様降臨。都合よく練習になりました。パンクの神様降臨。都合よく練習になりました。 ひとっ風呂浴びて参りますひとっ風呂浴びて参ります わーい餃子来たー!おとなし目にまずは一皿ずつわーい餃子来たー!おとなし目にまずは一皿ずつ 宇都宮と言えば餃子かブリッツェン。練習後に餃子のご褒美を用意したのでここは「餃子練」としよう。ちなみに、練習後にブリッツェンを用意してブリ練としてもよかったが、現実的ではないので自己却下。ともにゅが喜びそうだがもうみんな餃子のことしか頭に無い。気のせいか目が餃子の形に見えて来た。みんなやる気だ。やはりエサがすべてである。

まじめな話、本番で全員が一緒にゴールするためにはお互いの走りを知っておくべきだし、今のうちに補えるところがあればやってしまいたい。レースの顔は知っているけれど、それは今回は重要ではない。息を合わせること。もちろんすべての場面で合わせるのは難しい。脚質や性格の違いもある。でもここという場面で息を合わせることができれば全員で一緒にゴールすることはできるはず。それを知るために集まったのだ。決して餃子とお風呂だけではないので念のため。

今回は、ジャパンカップサイクルロードレースの会場でもある宇都宮森林公園に集合。メンバー全員が初めて揃った記念すべき日だ。ふと見ると、栃木のローカル番組「Ride ON!」の撮影? ブリッツェンGM廣瀬佳正さんを発見! 鶴カントリークラブ付近ではJ SPORTSの撮影で栗村氏と安田大サーカス団長の姿もあり、「さすが宇都宮!」と思わせる状況にみんなソワソワしている。さっそく私はいつもの練習コースにメンバーを引き連れてスタートした。

チームメンバーがわざわざ地元に来てくれるということで、私は前日から少々興奮気味。みんなと走れる嬉しさも相まって、どうしてもペースが上げ気味になりけいぞうから指導が入る。
Rapha Women's Prestige本番では速く走る必要がない。むしろ景色を楽しんだり、おしゃべりしながらのペースが理想。ここには、みんなの足並みを見て本番当日のことをイメージしながらペース調整をしたり、どんどん先に行ってしまうアキを呼び戻したり、下りが苦手なともにゅにそっとアドバイスもするリーダーけいぞうが居た。やはり彼女あってのこのメンバーなのか、とあらためて思った。

そんなけいぞうにパンクの神様が降りて来た。
レース当日はこういったトラブルもあるだろう。パンク修理は全員が経験済みだが、ここはおさらいだ。けいぞうの周りにみんなが集まりパンク修理を手伝う。そこでワカがけいぞうにTips的なアドバイスをひとつ。とても心強い。本番も彼女に頼り切りではなくしっかり学ばせてもらおう。

走行中はお猿にも遭遇し、きっとみんなには宇都宮(とその界隈)を堪能してもらえたはず。走った後はやっぱり温泉にご案内。ついに裸の付き合いができるのだ。これをしなければ本音は語れない(ことも無いが・笑)。練習やシクロクロスのこと、その他かなりギリギリなネタなど湯船に浸かりながらどうでもいい話をたくさんした。それがいいのだ。さぁ、のぼせる前にお風呂を脱出して、次はお待ちかねの餃子よ!

さっぱりしたメンバーを有名店にご案内。席に座るやいなや小皿に醤油・ラー油・お酢のセット完了。気が早い(笑)。そしてとても女子とは思えぬ量の餃子を店主に伝える。注文もスピーディに行わなければ暴動が起きそうだ。ごま油の良い薫りが漂うと焼き上がったばかりの餃子がテーブルに並べられた。
「来た来たっ。」お腹を空かせたみんなの口に餃子がどんどん運ばれていく様は何だか頼もしい。


私は、餃子をつまみながら特に遠慮もなく素で話すみんなを見て、このチームで走れる幸せを噛みしめた。本番が楽しみである。

女子、たくさん集まるかなあ? とにかくこの日の餃子は格別だった。

team Detour Party メンバー
けいぞう(cycleclub 3up/チバポンズ)
ワカ(ARAI Muraca/ Team CHAINRING)
アキ(ARAI Muraca)
ともにゅ(なるしまフレンド/ W.V.OTA twin)
とめっち(SNEL CYCLOCRSS TEAM/栃ナビ自転車部)

Text:Yukie.Hayashiguchi
Edit:Tomoko.Yasuda

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