2014/10/02(木) - 09:13
2000人が参加し、好転のもと大成功に終わったツール・ド・NIKKO2014。前回お伝えした「ファンライド山岳日光コース」に続き、今回は最長の「チャレンジ山岳コース」を実走取材したレポートをお届け。非常に充実度の高い、走り応えたっぷりの良イベントだった。
日光と聞いて何を思い浮かべるだろう。歴史好きなら徳川家が興した東照宮や杉並木?サイクリストだったら日光連山やいろは坂?はたまた旅好きだったら温泉に、グルメ通には蕎麦に湯葉…。
それら日光の名物を一度に走れ、味わえ楽しめるイベントがあることをあなたは知っているだろうか。しっかりと走り応えあるルートを走りつつ、一粒で三つも四つも美味しいお得な?ロングライドイベント、それが今年4回目の開催を迎えた「ツール・ド・NIKKO」である。既にお伝えしている「ファンライド山岳日光コース」に続き、今回は最長の「チャレンジ山岳コース」のレポートをお伝えしようと思う。
ツール・ド・NIKKOのスゴい所は、まだ4年目と新しい大会にも関わらず、とてもその内容が充実していることにある。コースは目的や脚力に合わせて「山岳チャレンジ」「ファンライド山岳」「ファンライド」「サイクリング」と4つ用意されていて、そのどれもグルメや名所巡りなど、一般的なロングライドイベント以上に高い満足度を味わえるのだ。
しかも主催は地元栃木のプロチーム・宇都宮ブリッツェンだけあって、参加車人数は4回目にして2000人(!)。賑わう会場で聞いてみると、昨年大会の口コミに加え、都心からそう遠くないことも人気の理由の一つらしい。華やかなスタートセレモニーを経て、ブリッツェンのゲスト選手を先頭に続々と参加者がスタートを切っていく。
個人的な大会ハイライトはスタート直後にやってきた。苔むした石畳路の両側には杉の巨木がビッシリと並んでいて、石畳はいつしか砂利道に。趣ある道だなぁと思ったのだが、それもそのはず。これこそかつて徳川家に仕えた松平正綱が植樹したといういわれを持つ天然記念物の「日光杉並木街道」で、中でも当時の面影を最も色濃く残す区間を走っていたのだ。
かの松尾芭蕉も「奥の細道」の序盤に歩いたという街道を、鮮やかなジャージに身を包んだ2000人ものサイクリストが一斉に駆け抜けていく。いきなりの砂利道走行に戸惑う方も少なくなかったが、私はというと大好物のグラベルロードにテンションは上がりっぱなしだ(笑)。
当日は絶好のイベント日和に恵まれたため、空の青と山の緑、それから稲穂の黄金色がとても色濃く美しい。かの芭蕉先生は「あらたふと青葉若葉の日の光り」、"日光山から降り注ぐ太陽はなんと尊いんだろうか"と詠んでいるが、まさにそれを地で行くようだ。稲穂の香りを思いっきり吸いながら、気持ちの良いサイクリングが続く。
さて、ツール・ド・NIKKOの一つの特徴として、エイドステーションが充実していることを忘れてはいけない。例えば鬼怒川エイドでは日光グルメの王道を行く湯波のおむすび(普通ゆばは漢字で「湯葉」と書くが、ここ日光では「湯波」である)を食べることができたし、第3エイドに設定された「そば処 ひなた」では打ちたて・茹でたての美味しいお蕎麦を頂けた。
こと蕎麦と言えば信州が有名であるが、実はここ今市地区はソバ生育に適した気候と地形だったことから、古くからの産地として定評がある。そこで収穫された蕎麦は「今市蕎麦」や「日光蕎麦」と呼ばれ、今では「日光そばまつり」が開催されるほどの人気ぶりなのである。
メインはこの2つだが、その他にも新鮮な野菜やお漬物があったり、キンキンに冷えた豆腐があったり、おおよそ「グルメライド」と謳っても遜色が無いし実際に美味い。各エイドステーションでは地元の方々が暖かく迎えてくれ、ありきたりの言葉で申し訳ないが、地元からのバックアップをたいへん強い感じる大会だと思う。
さて、臨時で設けられた川治温泉エイドでしばし足湯を楽しんだ後は、幾つものトンネルを通って川治ダムへ。アーチ式コンクリートダムとしては日本で4番目という高さ(140m!)の天端の上からの眺めは、うっかりすると足元がすくんでしまうくらいだ。ちなみにこの川治ダムは"カード"の準備もあるぞ。
前述した第3エイドで蕎麦をすすると、いよいよ日光連山に向けてのて本格的な登りが登場だ。鬼怒川上流沿いから脇に逸れた矢先、坂がぐっ、と立ち上がってくる。
急峻な山々を前に道路はつづら折れを描き、手元のガーミンが示すマップ向きもくるくると落ち着かない。脚にじわじわ来る峠を5kmほど登った先は、女峰山東山麓に広がる霧降高原。最後のエイドステーションが用意された「大笹牧場」から先は、初めてだと少し驚いてしまうような絶景が広がっていた。
山麓に広がる牧草地からは遠く眼下の街並みが見渡せて、その光景はどこか日本離れした感じ。「日光を見ずして結構と言うなかれ」とは東照宮の美しさを差す言葉だが、いやはや、自転車乗りだったらば、「霧降高原を走らずして…」といったところだろう。
合計15kmもの登りをクリアしたら、あとはゴールに向かって下るだけ。12kmの下りをサポートライダーさん先導のもと、ゆっくりと下りていく。下り好きの方からすれば勿体ないところだが、あっという間にスピードが出てしまう勾配なので誘導はあった方が良い。最後は東武鬼怒川線と併走し、ゴールのだいや川公園に滑り込んだ。
いやはや、参加前こそ「120kmで1750mアップだったらそこまでキツくないじゃん」とタカをくくっていたのが正直なところだが、後半におよそ15kmもの登りが待ち構えているので、想像以上にタフなコースだった。これならば健脚派だって大満足間違い無しだし、脱ビギナーを目指す方にもぴったりかもしれない。
もちろん充実したエイドステーションがあるからグルメライドとしての側面も持っているし、迎えてくれる人も、風景も良い。それから温泉(足湯)だって日光観光には欠かせないものの一つだ。それらを全部堪能できる、美味しいロングライドイベントが、ツール・ド・NIKKOなのである。
人気イベントたる理由は走れば分かる。まだ走ったことの無い方だったら、来年の参加を検討してみる価値は十分にあると思う。CWでも来年の実走取材が楽しみだ。
text&photo:So.Isobe
日光と聞いて何を思い浮かべるだろう。歴史好きなら徳川家が興した東照宮や杉並木?サイクリストだったら日光連山やいろは坂?はたまた旅好きだったら温泉に、グルメ通には蕎麦に湯葉…。
それら日光の名物を一度に走れ、味わえ楽しめるイベントがあることをあなたは知っているだろうか。しっかりと走り応えあるルートを走りつつ、一粒で三つも四つも美味しいお得な?ロングライドイベント、それが今年4回目の開催を迎えた「ツール・ド・NIKKO」である。既にお伝えしている「ファンライド山岳日光コース」に続き、今回は最長の「チャレンジ山岳コース」のレポートをお伝えしようと思う。
ツール・ド・NIKKOのスゴい所は、まだ4年目と新しい大会にも関わらず、とてもその内容が充実していることにある。コースは目的や脚力に合わせて「山岳チャレンジ」「ファンライド山岳」「ファンライド」「サイクリング」と4つ用意されていて、そのどれもグルメや名所巡りなど、一般的なロングライドイベント以上に高い満足度を味わえるのだ。
しかも主催は地元栃木のプロチーム・宇都宮ブリッツェンだけあって、参加車人数は4回目にして2000人(!)。賑わう会場で聞いてみると、昨年大会の口コミに加え、都心からそう遠くないことも人気の理由の一つらしい。華やかなスタートセレモニーを経て、ブリッツェンのゲスト選手を先頭に続々と参加者がスタートを切っていく。
個人的な大会ハイライトはスタート直後にやってきた。苔むした石畳路の両側には杉の巨木がビッシリと並んでいて、石畳はいつしか砂利道に。趣ある道だなぁと思ったのだが、それもそのはず。これこそかつて徳川家に仕えた松平正綱が植樹したといういわれを持つ天然記念物の「日光杉並木街道」で、中でも当時の面影を最も色濃く残す区間を走っていたのだ。
かの松尾芭蕉も「奥の細道」の序盤に歩いたという街道を、鮮やかなジャージに身を包んだ2000人ものサイクリストが一斉に駆け抜けていく。いきなりの砂利道走行に戸惑う方も少なくなかったが、私はというと大好物のグラベルロードにテンションは上がりっぱなしだ(笑)。
当日は絶好のイベント日和に恵まれたため、空の青と山の緑、それから稲穂の黄金色がとても色濃く美しい。かの芭蕉先生は「あらたふと青葉若葉の日の光り」、"日光山から降り注ぐ太陽はなんと尊いんだろうか"と詠んでいるが、まさにそれを地で行くようだ。稲穂の香りを思いっきり吸いながら、気持ちの良いサイクリングが続く。
さて、ツール・ド・NIKKOの一つの特徴として、エイドステーションが充実していることを忘れてはいけない。例えば鬼怒川エイドでは日光グルメの王道を行く湯波のおむすび(普通ゆばは漢字で「湯葉」と書くが、ここ日光では「湯波」である)を食べることができたし、第3エイドに設定された「そば処 ひなた」では打ちたて・茹でたての美味しいお蕎麦を頂けた。
こと蕎麦と言えば信州が有名であるが、実はここ今市地区はソバ生育に適した気候と地形だったことから、古くからの産地として定評がある。そこで収穫された蕎麦は「今市蕎麦」や「日光蕎麦」と呼ばれ、今では「日光そばまつり」が開催されるほどの人気ぶりなのである。
メインはこの2つだが、その他にも新鮮な野菜やお漬物があったり、キンキンに冷えた豆腐があったり、おおよそ「グルメライド」と謳っても遜色が無いし実際に美味い。各エイドステーションでは地元の方々が暖かく迎えてくれ、ありきたりの言葉で申し訳ないが、地元からのバックアップをたいへん強い感じる大会だと思う。
さて、臨時で設けられた川治温泉エイドでしばし足湯を楽しんだ後は、幾つものトンネルを通って川治ダムへ。アーチ式コンクリートダムとしては日本で4番目という高さ(140m!)の天端の上からの眺めは、うっかりすると足元がすくんでしまうくらいだ。ちなみにこの川治ダムは"カード"の準備もあるぞ。
前述した第3エイドで蕎麦をすすると、いよいよ日光連山に向けてのて本格的な登りが登場だ。鬼怒川上流沿いから脇に逸れた矢先、坂がぐっ、と立ち上がってくる。
急峻な山々を前に道路はつづら折れを描き、手元のガーミンが示すマップ向きもくるくると落ち着かない。脚にじわじわ来る峠を5kmほど登った先は、女峰山東山麓に広がる霧降高原。最後のエイドステーションが用意された「大笹牧場」から先は、初めてだと少し驚いてしまうような絶景が広がっていた。
山麓に広がる牧草地からは遠く眼下の街並みが見渡せて、その光景はどこか日本離れした感じ。「日光を見ずして結構と言うなかれ」とは東照宮の美しさを差す言葉だが、いやはや、自転車乗りだったらば、「霧降高原を走らずして…」といったところだろう。
合計15kmもの登りをクリアしたら、あとはゴールに向かって下るだけ。12kmの下りをサポートライダーさん先導のもと、ゆっくりと下りていく。下り好きの方からすれば勿体ないところだが、あっという間にスピードが出てしまう勾配なので誘導はあった方が良い。最後は東武鬼怒川線と併走し、ゴールのだいや川公園に滑り込んだ。
いやはや、参加前こそ「120kmで1750mアップだったらそこまでキツくないじゃん」とタカをくくっていたのが正直なところだが、後半におよそ15kmもの登りが待ち構えているので、想像以上にタフなコースだった。これならば健脚派だって大満足間違い無しだし、脱ビギナーを目指す方にもぴったりかもしれない。
もちろん充実したエイドステーションがあるからグルメライドとしての側面も持っているし、迎えてくれる人も、風景も良い。それから温泉(足湯)だって日光観光には欠かせないものの一つだ。それらを全部堪能できる、美味しいロングライドイベントが、ツール・ド・NIKKOなのである。
人気イベントたる理由は走れば分かる。まだ走ったことの無い方だったら、来年の参加を検討してみる価値は十分にあると思う。CWでも来年の実走取材が楽しみだ。
text&photo:So.Isobe
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