2014/06/06(金) - 09:00
前回のレポートではスタートから折り返し地点までを紹介したアルプスあづみのセンチュリーライド。後編では、折り返し地点の白馬エイドから、ゴールまでを紹介しよう。
さて、折り返し地点となる白馬エイドでは、温かい豚汁と紫米おこわがふるまわれる。後半のコースは上りはほとんどないものの、往路と比べるとエイドが少ないため、ここでのエネルギー補給は重要だ。ここまでくれば大丈夫と慢心していると、後半でハンガーノックという思わぬしっぺ返しをくらうことになるので、注意しよう。
このエイドステーションが設けられる白馬ジャンプ競技場は日本で唯一ノーマルヒル、ラージヒル用のジャンプ台が2つ並んで設置されているスキージャンプ競技場。圧倒的な迫力を持って背後にそびえる2連のスキージャンプ台を眺めながら食べるおこわと豚汁は格別の味わい。
ここで、復路に電車を利用するトレインコースの人たちとはお別れ。仁科三湖沿いを通るコースへ向けて走っていく。と、その前に白馬エイド近くにあるアイスクリームショップで一息。巨峰の味わいが濃厚なソフトクリームに元気と糖分をもらって、再び自転車に跨る。
安曇野アートラインの緩やかな登り坂をこなすとその先に、青木湖、中綱湖、木崎湖の「仁科三湖」が待っている。穏やかな湖面を右に見つつ、長閑な田舎道を走っていく。数年前までは主要道路であった湖畔道路は、バイパスが整備されたため、交通量も少なくサイクリングにぴったり。
そんなゆったりとした時間が流れる仁科三湖の中でも、一番南に位置する木崎湖はアニメ「おねがい☆ティーチャー」「おねがい☆ツインズ」の舞台として有名な土地。いわゆる聖地巡礼のはしりともなった場所であり、地元の人と、訪れるアニメファンが一体となって地域を盛り上げることに成功したモデルケースとして有名なスポットなのだ。
その木崎湖がコースの一部に組み入れられていることもあって、この大会には多くのアニメファンのサイクリストが参加しているのが大きな特徴。自転車系同人誌「ロングライダース」のチームジャージや、痛ジャージを着た参加者の比率がぱっと見たところでも非常に多く、ディスクホイールにアニメキャラをモチーフにしたシートを貼った痛車の割合も高い。
木崎湖畔のコースを走っていると、コンビニになにやらたくさんの参加者が集まっている。そう、このコンビニ、Yショップニシは、作中で登場人物の実家やアルバイト先として登場する「縁川商店」のモデルになったスポット。店内には「おねがい」シリーズのグッズやロングライダースなどの自転車系同人誌、アニメにちなんだメニューなどが用意されており、もはやただのコンビニではない。
痛ジャージに身を固めた参加者たちが、行列を作りつつも和気あいあいとした様子で聖地の空気を楽しんでいる様子は傍から見ていても楽しそう。自転車だけではない共通の趣味があることで、より深くつながったコミュニティになっている様子。TPOに合わせて、チームジャージから「おねてぃ」ジャージに着替える人がいたり、コースから少し外れるものの聖地の一つである木崎湖キャンプ場に寄り道する人がいたりと、そのアグレッシブさには頭が下がる。
木崎湖に別れを告げて、松本に向けて緩やかな下り坂を快調に走っていく。木崎湖から先、20kmほどの区間はずっと1%程度の下り坂で、速度が出すぎることもなく安全・快適に高速巡航が楽しめる。途中には大町エイドがあるものの、少し遅い時間帯に通過したため先を急ぐ参加者が多かった。
大町エイドの少し先には、かぼちゃやま農場という観光農園があり、そこで休憩する参加者もたくさんいた。大町エイドをショートカットする場合は、ここでソフトクリームや軽食をとって、ゴールまでのエネルギーを補給するといいだろう。
穂高川の支流、乳川沿いの農道を走りぬけ、耳塚の交差点を右折すれば最後の難所、アートヒルズへの坂が待っている。130km走ってきたサイクリストたちの前に現れる直登の坂を登りきれば、北アルプス牧場の直売店で優しい風味のソフトクリームが待っている。そんな名物ソフトを求めて疲れきった参加者たちが行列を作っている。
その先にある穂高エイドでは、最後の休憩ができる。「湯多里饅頭」や「あずさ」、そしてバナナをいただいてゴールまで残り約17kmを走りきるエネルギーをもらう。リンゴ畑の中を抜けて、ゴールを目指して走っていくサイクリストたち。疲労と達成感が入り混じった表情は、自転車の楽しさの本質を見せてくれるよう。
スタート地点から移動され、梓水苑の奥に移されたスペシャライズドのエアアーチをくぐりぬけると、MCが一人づつにねぎらいの言葉をかけてくれる。ゴール会場には、完走証発行や完走おめでタイ焼きがふるまわれたり、ステージ上で大会バックパネルを背景にした記念写真の撮影ができたりと、完走の喜びを増幅させてくれるいろいろな企画が用意される。
走り終わった後は、何はさておき汗を流したいところ。その点も抜かりないのがアルプスあづみのセンチュリーライドだ。ゴール会場の梓水苑には温泉もあり、ゴール会場から移動することなくお風呂に浸かって、一日の汗を流して帰ることもできる。
初心者でも走りやすいコース設定、豊富で地域色に満ちたエイドステーションの食べ物に加え、スペシャライズドやマヴィックをはじめとした協賛社との緊密な協力、聖地巡礼というサブカルチャーとの融合など、ロングライドイベントとして基本的な運営はもちろんのこと、どんなタイプのサイクリストでも楽しめる工夫が施された大会がアルプスあづみのセンチュリーライドだ。
定員がすぐに埋まってしまうというのも納得の、ホスピタリティあふれるこのイベントは、サイクリストの「聖地」として、発展していくのではないだろうか。こんな大会が日本中に増えれば良いな、と考えながら走った160km。今年走れなかった人は、来年のエントリー開始を首を長くして待っていてほしい。
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO Naoki.Yasuoka
フォトギャラリー(CW FaceBook)
さて、折り返し地点となる白馬エイドでは、温かい豚汁と紫米おこわがふるまわれる。後半のコースは上りはほとんどないものの、往路と比べるとエイドが少ないため、ここでのエネルギー補給は重要だ。ここまでくれば大丈夫と慢心していると、後半でハンガーノックという思わぬしっぺ返しをくらうことになるので、注意しよう。
このエイドステーションが設けられる白馬ジャンプ競技場は日本で唯一ノーマルヒル、ラージヒル用のジャンプ台が2つ並んで設置されているスキージャンプ競技場。圧倒的な迫力を持って背後にそびえる2連のスキージャンプ台を眺めながら食べるおこわと豚汁は格別の味わい。
ここで、復路に電車を利用するトレインコースの人たちとはお別れ。仁科三湖沿いを通るコースへ向けて走っていく。と、その前に白馬エイド近くにあるアイスクリームショップで一息。巨峰の味わいが濃厚なソフトクリームに元気と糖分をもらって、再び自転車に跨る。
安曇野アートラインの緩やかな登り坂をこなすとその先に、青木湖、中綱湖、木崎湖の「仁科三湖」が待っている。穏やかな湖面を右に見つつ、長閑な田舎道を走っていく。数年前までは主要道路であった湖畔道路は、バイパスが整備されたため、交通量も少なくサイクリングにぴったり。
そんなゆったりとした時間が流れる仁科三湖の中でも、一番南に位置する木崎湖はアニメ「おねがい☆ティーチャー」「おねがい☆ツインズ」の舞台として有名な土地。いわゆる聖地巡礼のはしりともなった場所であり、地元の人と、訪れるアニメファンが一体となって地域を盛り上げることに成功したモデルケースとして有名なスポットなのだ。
その木崎湖がコースの一部に組み入れられていることもあって、この大会には多くのアニメファンのサイクリストが参加しているのが大きな特徴。自転車系同人誌「ロングライダース」のチームジャージや、痛ジャージを着た参加者の比率がぱっと見たところでも非常に多く、ディスクホイールにアニメキャラをモチーフにしたシートを貼った痛車の割合も高い。
木崎湖畔のコースを走っていると、コンビニになにやらたくさんの参加者が集まっている。そう、このコンビニ、Yショップニシは、作中で登場人物の実家やアルバイト先として登場する「縁川商店」のモデルになったスポット。店内には「おねがい」シリーズのグッズやロングライダースなどの自転車系同人誌、アニメにちなんだメニューなどが用意されており、もはやただのコンビニではない。
痛ジャージに身を固めた参加者たちが、行列を作りつつも和気あいあいとした様子で聖地の空気を楽しんでいる様子は傍から見ていても楽しそう。自転車だけではない共通の趣味があることで、より深くつながったコミュニティになっている様子。TPOに合わせて、チームジャージから「おねてぃ」ジャージに着替える人がいたり、コースから少し外れるものの聖地の一つである木崎湖キャンプ場に寄り道する人がいたりと、そのアグレッシブさには頭が下がる。
木崎湖に別れを告げて、松本に向けて緩やかな下り坂を快調に走っていく。木崎湖から先、20kmほどの区間はずっと1%程度の下り坂で、速度が出すぎることもなく安全・快適に高速巡航が楽しめる。途中には大町エイドがあるものの、少し遅い時間帯に通過したため先を急ぐ参加者が多かった。
大町エイドの少し先には、かぼちゃやま農場という観光農園があり、そこで休憩する参加者もたくさんいた。大町エイドをショートカットする場合は、ここでソフトクリームや軽食をとって、ゴールまでのエネルギーを補給するといいだろう。
穂高川の支流、乳川沿いの農道を走りぬけ、耳塚の交差点を右折すれば最後の難所、アートヒルズへの坂が待っている。130km走ってきたサイクリストたちの前に現れる直登の坂を登りきれば、北アルプス牧場の直売店で優しい風味のソフトクリームが待っている。そんな名物ソフトを求めて疲れきった参加者たちが行列を作っている。
その先にある穂高エイドでは、最後の休憩ができる。「湯多里饅頭」や「あずさ」、そしてバナナをいただいてゴールまで残り約17kmを走りきるエネルギーをもらう。リンゴ畑の中を抜けて、ゴールを目指して走っていくサイクリストたち。疲労と達成感が入り混じった表情は、自転車の楽しさの本質を見せてくれるよう。
スタート地点から移動され、梓水苑の奥に移されたスペシャライズドのエアアーチをくぐりぬけると、MCが一人づつにねぎらいの言葉をかけてくれる。ゴール会場には、完走証発行や完走おめでタイ焼きがふるまわれたり、ステージ上で大会バックパネルを背景にした記念写真の撮影ができたりと、完走の喜びを増幅させてくれるいろいろな企画が用意される。
走り終わった後は、何はさておき汗を流したいところ。その点も抜かりないのがアルプスあづみのセンチュリーライドだ。ゴール会場の梓水苑には温泉もあり、ゴール会場から移動することなくお風呂に浸かって、一日の汗を流して帰ることもできる。
初心者でも走りやすいコース設定、豊富で地域色に満ちたエイドステーションの食べ物に加え、スペシャライズドやマヴィックをはじめとした協賛社との緊密な協力、聖地巡礼というサブカルチャーとの融合など、ロングライドイベントとして基本的な運営はもちろんのこと、どんなタイプのサイクリストでも楽しめる工夫が施された大会がアルプスあづみのセンチュリーライドだ。
定員がすぐに埋まってしまうというのも納得の、ホスピタリティあふれるこのイベントは、サイクリストの「聖地」として、発展していくのではないだろうか。こんな大会が日本中に増えれば良いな、と考えながら走った160km。今年走れなかった人は、来年のエントリー開始を首を長くして待っていてほしい。
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO Naoki.Yasuoka
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