2013/10/02(水) - 08:25
朝日眩しい野辺山をスタートした女性チーム「#fccoffee」のメンバーたち。いよいよ差し掛かった最初の登りから、今回のレポートはスタートする。登りをクリアした後に続く、乗車も困難なグラベル、そして再び現れる登り。痛快な文章と共に読み進んで頂きたい。
一発目ののぼりはとにかく心臓にキツイ。ここまで1時間ほど、ほとんど心拍の上がらない平和なサイクリングをしてきたのだから、実質ここがアップになる。心臓びっくりしてはるわ。
にゃおちが上りで遅れるのは織り込み済みだ。ナツキが下りで遅れることも、事前に一緒に走っていたことで把握している。走力のあるちはるこ、ぬえたんは体調が思わしくないながらも、予想通り、先行する。チームは5人が揃ってチェックポイント通過するルール。完走も然り。まったくペースを合わせる必要はないが、先行するにせよ、遅れをカバーするも『ほどほどの範囲内で』というのがお互いにとって疲労が減って理想的、といったところ。
それがそうもいかなくなったのが、グラベル、と呼ばれる未舗装路。グラベルに入ったらシクロクロッサーであるちはるこ、にゃおち、ぬえたんに先行してもらい、ナツキとわたしの街乗り組は後方から自分のペースで、と思っていた。それなのに…しょっぱなのグラベルで位置取りを誤ってちはるこ、ちゅなどん、にゃおちの順になっちまった!
しまった!これはまずい!必死でペダルを回す。キツい。シクロクロスは高心拍だと聞いていたけれど、これはヤバいよ、死んじゃうよ!脚止められなーい!橋に出たタイミングで順番交代したものの、うわ!見るからに深そうな泥エリアが出てきた!ギャーもうムリーっっ
断末魔の叫びでズボっとハマる…チーン。
その横をエレクトリカルパレードのメロディを口ずさみながら行くちはるこ、続くにゃおち…さすがやー。泥沼を脱出しボトルの水で軽くブレーキに噛んだ泥を流して再スタート。
これは…キツい…(それしか言うことないんかい!)
やっとこさー、でグラベルをやっつけて少し長い上り。落ち着いて上る。今回のRGR、わたしのテーマのひとつは【最初にアゲすぎない】。前半ツッコミすぎて、後半ダレるパターンにハマらないようにすること、だ。性格上『元気なうちにがんばっちゃえ!おーぅ!』となりがちなところだけれど、ちょうどひと月前に走ったイベント(Attack299:160kmー3600m UP)でまさにこのパターンにハマり、前半のがんばり過ぎで膝を痛めてしまったこともあり、今回はとても慎重…
あげすぎない、あげすぎない。抑えめに抑えめに…それでも前を走るちはるこ、ぬえたんからそう大きく離れることもないようなのでそれ以上の無理はしなくてよさそうだ。後ろのナツキ、にゃおちまでもそう大きく差がでない範囲にいる。自然と理想的、な展開になっている。
CP1。スタッフの笑顔とたくさんのおにぎり、バナナ、レッドブルに迎えられた。そんなにゆっくり休んでもいられなさそうだが、ここは全員揃うまで通過できないルール。各自に配られたスタンプカードにスタンプを押してもらう。
「次の補給まで、かなり距離あるからしっかり食べてってね!」
上りたてホヤホヤって胃が圧迫されてるのか、あんまり食べられないんだけど、半ば無理矢理におにぎり、レッドブル、と補給。グラベルで泥を被ったブレーキとディレイラーをもう一度ボトルの水で掃除して、減ったボトルの水も満たす。
実は補給も、最悪どこか途中(少しルートを逸れれば)にコンビニがあれば買えるんじゃないか…くらいに思っていたんだけど、とんでもなく甘かった。コンビニどころか、食品を売っていそうな商店すら見かけない山道、林道ばかり。もちろん、ゼリー類は必要と思われる最低量を背中に積んでいったけど、雨が降るかも、という予報に、自分で焼いていったパンを持って走るのはは泣く泣くあきらめた。山の中で美味しいパンで癒されようと思ってたのに…作戦失敗。今回、ただひとつの無念である。
チェックポイントに全員が揃い、リーダーちはるこのサインを持って、通過確認完了。全員、補給もしっかり摂ったので揃って下山。だが、ここから先は上り3連発だ。
舗装路であるのが救い。ただ、それだけである。
山間部に入ると一般車と会うことは少なく、エンジン音がすれば、それは大抵関係者車両だ。Raphaが用意しているカメラマンと他メディアの取材車両が入れ替わり、私たちが走る横をクラクション鳴らしながら過ぎていく。窓から覗くレンズ。笑っちゃいけない、笑っちゃ…耐えきれず顔を背ける。ダメだ。わたしには無理だーーーー。ぜったい微妙なヘン顔になってる。大体カメラ向けられたら満面の笑みでサービスするもんだろ、普通…(と勝手に思い込んでいる)
そうだ。どこだったか…ちょっと長いのぼり…突然流れるAKB(というのはあとで聞いた)、唄うちはるこ!続くちゅなどん(わかってないのに聞いたことがあるから唄えたんだ)。でもサビしかわかんない!と次の曲へ…ってナニがはじまったんだ?ちはるこのDJタイム。おもろいな。楽しんでる。
静かな山にちはるこの背中のポケットから流れるミュージックが響く。こーゆーのは新鮮だ。わたしもiPhoneはいつも持ってるし、同じことをしようと思えばできたんだけど、やったことはなかったな。山では山の音、木の葉ずれ、鳥の声を楽しむものだと思い込んでいた。解き放たれた自由なお楽しみの時間だった。フリーダム!
一つ上ってはピークで脚を揃え、下りきって右左折があれば止まって後続を待つ。そんなリズムができあがり、私たちは3つの連続する上りを無事終えた。
ここまで、気持ちも切れていないし、脚も(膝はとっくに痛くなっているが)大丈夫。だけど…お腹がすきました!さっきのCPでバナナも欲張って食べてくればよかった… 普段は手を付けないジェルを迷うこと無く開封し、一気に飲む。でもやっぱり固形物が欲しい。このあとに控えるもっとも長く厳しい上りに備え、ちょうど見つけた【町の駅】という産直でよもぎ饅頭(大福だった)をもぐもぐ。ここでトイレもお借りしてちょっと長めの休憩。
この次のグラベル込みの15kmの上りのピークがCP2。ここはGalibeer Service Station(ガリビエサービスステーション)と銘打ってある。昨年このRGRを走ったチームGalibeerがサービスを行うここにコーヒーとマフィンがある、とスタート時に聞いていた。「じゃあ、コーヒーはそこで飲めるねー」なんて言っていたのだが…
このコーヒーまでの道のりはほんとうに、ほんとうにーーーー長く、険しいものだったーーーー。
わたしはーーー私たち5人はコーヒーが好きなのだ。だからチーム名もFive Continetnal Coffeeという。
なのに、今朝目覚めてからここまでコーヒーを飲んでいない。5人が揃ってMoka Express(直火式エスプレッソメーカーの代表格である)のシルエットが入ったembrocation の靴下を履いているのにも関わらず、だ。中でもナツキは盆栽自転車店のバリスタなんだぞ。朝から夕方までずっとエスプレッソの香りに包まれて生きているのに、だ。
目指せピーク!コーヒー!コーヒー!
と、心の中で威勢がいいのは…最初だけだった。目の前に現れた、草が両側から生い茂っている軽トラ一台が走って轍を作ったと思しき1本道。もちろん上りだ。それもほとんど直登。
これか…(ゴクリ)
ひとまずは乗ってみる。何事も挑戦だ。だがしかし…10mほどでズボっ、チーン。リムがずっぽりと沈む、ふかふかのダート。轍の真ん中、草が生えているところなら行けるか!と乗り直す。少し進む。が、草に隠れている石を踏む、衝撃で脇へ…ズボっ。チーン。もう笑うしかない。仕方ない。残り時間はたっぷりある。押して歩こう。
雨がパラついてきた。押し歩きも予想はしていたからクリートカバーを持ってきていたんだけれど、また乗れそうなトコで外すのがめんどくさいじゃん…泥に汚れたクリートカバーを背中のポケットに入れて白いジャージが汚れるのもイヤー。読みが甘かった。
結局、クリートカバーは使わずにSPDーSL、ロードバイク仕様のままグラベルを自転車片手に登山する。こうなったら自転車は杖代わりだ。けれど、それでもふかふかの土に自分の足はもちろんタイヤも沈み、腕に重さを感じる。んもーーーーーっ。杖どころか、これじゃ荷物だな。自転車を投げたくなる、ってこういうことなのか、とぼんやり思う。すでに痛みが出ている膝が歩くとさらにしくしく痛む。
後ろから追いついてきた他のチームの男性が勢いよく乗車のまま追い越していき、おおぉー!と感嘆の声をあげたそのときーーーずぼっ、チーン。あはは!みんなやっぱそうなるよね!ちょっと元気になる。が、膝の痛みで歩く方がおもうように進まない。同じように押し歩く男性陣にもどんどん追いつかれ、追い抜かれ。歩き始めた頃すぐ前を歩いていたナツキの背中も見えなくなった。
少し乗れそうなところでふたたび乗車!が、クリートが嵌らない。最初のグラベルでも泥が詰まって嵌らなくなった。途中の水たまりで詰まった泥を溶かしてことなきを得た。
またか…水たまりはそんな都合良くあらわれない。あきらめて嵌らないままペダル軸をずらさないよう気を遣うペダリング。なるべく乗り続けたい。道路脇の草ギリギリのところを走る。おぉっ。今度は行けそうだ!
ものっすごい心拍あがってるけど、息するのも忘れちゃいそうなくらい集中して脚を回す。前輪をちょっと浮かせる感じだな。すこしコツを掴んで調子に乗る。だけど…く、、くるしい・・・もうダメ…だ。ガクッ。と脚が止まる。そしてしばらく歩いて息を整える…これを何度か繰り返した。
霧なのか、雲の中なのか、白っけた中に雨が落ちてくる。幸い、風がないのと身体を動かしているから冷えは感じない(脂肪が守ってくれていることを実感する)。
コー…ヒー…
幻影すら見えてきそうである。立ちこめる霧のその先にあるんじゃないか、と辿り着いてもそこはまだ…あぁ、今日のコーヒーはやたら遠い。な…。
ガーミンの画面に表示させている高低図ではそろそろピークにいるはず。なのだけれど、縮尺の都合でよくわからない。現在地を示す●がとんがりのてっぺんに表示されてからどれほど歩いただろう。ようやく、ほんとうにようやく、辿り着いた。CP2。Galibeer Service Station 。
参りました。そんな気分である。
自転車を道路脇に横たえ、コーヒーの香りに誘われるままテントに。小さな紙コップのコーヒー。熱いのをひとくちすすると全身、心の底にまで沁み渡る。甘いマフィンも嬉しい。コーヒーにはやっぱり甘いものが合う。ガリビエ最高!ありがとう!さんざん待たせたチームのみんなでコーヒー片手にカンパイをした。
text:Miho.Ishii
photo:fccoffee、Kazuhiro/Watanabe / Rapha.cc、Rapha.cc
一発目ののぼりはとにかく心臓にキツイ。ここまで1時間ほど、ほとんど心拍の上がらない平和なサイクリングをしてきたのだから、実質ここがアップになる。心臓びっくりしてはるわ。
にゃおちが上りで遅れるのは織り込み済みだ。ナツキが下りで遅れることも、事前に一緒に走っていたことで把握している。走力のあるちはるこ、ぬえたんは体調が思わしくないながらも、予想通り、先行する。チームは5人が揃ってチェックポイント通過するルール。完走も然り。まったくペースを合わせる必要はないが、先行するにせよ、遅れをカバーするも『ほどほどの範囲内で』というのがお互いにとって疲労が減って理想的、といったところ。
それがそうもいかなくなったのが、グラベル、と呼ばれる未舗装路。グラベルに入ったらシクロクロッサーであるちはるこ、にゃおち、ぬえたんに先行してもらい、ナツキとわたしの街乗り組は後方から自分のペースで、と思っていた。それなのに…しょっぱなのグラベルで位置取りを誤ってちはるこ、ちゅなどん、にゃおちの順になっちまった!
しまった!これはまずい!必死でペダルを回す。キツい。シクロクロスは高心拍だと聞いていたけれど、これはヤバいよ、死んじゃうよ!脚止められなーい!橋に出たタイミングで順番交代したものの、うわ!見るからに深そうな泥エリアが出てきた!ギャーもうムリーっっ
断末魔の叫びでズボっとハマる…チーン。
その横をエレクトリカルパレードのメロディを口ずさみながら行くちはるこ、続くにゃおち…さすがやー。泥沼を脱出しボトルの水で軽くブレーキに噛んだ泥を流して再スタート。
これは…キツい…(それしか言うことないんかい!)
やっとこさー、でグラベルをやっつけて少し長い上り。落ち着いて上る。今回のRGR、わたしのテーマのひとつは【最初にアゲすぎない】。前半ツッコミすぎて、後半ダレるパターンにハマらないようにすること、だ。性格上『元気なうちにがんばっちゃえ!おーぅ!』となりがちなところだけれど、ちょうどひと月前に走ったイベント(Attack299:160kmー3600m UP)でまさにこのパターンにハマり、前半のがんばり過ぎで膝を痛めてしまったこともあり、今回はとても慎重…
あげすぎない、あげすぎない。抑えめに抑えめに…それでも前を走るちはるこ、ぬえたんからそう大きく離れることもないようなのでそれ以上の無理はしなくてよさそうだ。後ろのナツキ、にゃおちまでもそう大きく差がでない範囲にいる。自然と理想的、な展開になっている。
CP1。スタッフの笑顔とたくさんのおにぎり、バナナ、レッドブルに迎えられた。そんなにゆっくり休んでもいられなさそうだが、ここは全員揃うまで通過できないルール。各自に配られたスタンプカードにスタンプを押してもらう。
「次の補給まで、かなり距離あるからしっかり食べてってね!」
上りたてホヤホヤって胃が圧迫されてるのか、あんまり食べられないんだけど、半ば無理矢理におにぎり、レッドブル、と補給。グラベルで泥を被ったブレーキとディレイラーをもう一度ボトルの水で掃除して、減ったボトルの水も満たす。
実は補給も、最悪どこか途中(少しルートを逸れれば)にコンビニがあれば買えるんじゃないか…くらいに思っていたんだけど、とんでもなく甘かった。コンビニどころか、食品を売っていそうな商店すら見かけない山道、林道ばかり。もちろん、ゼリー類は必要と思われる最低量を背中に積んでいったけど、雨が降るかも、という予報に、自分で焼いていったパンを持って走るのはは泣く泣くあきらめた。山の中で美味しいパンで癒されようと思ってたのに…作戦失敗。今回、ただひとつの無念である。
チェックポイントに全員が揃い、リーダーちはるこのサインを持って、通過確認完了。全員、補給もしっかり摂ったので揃って下山。だが、ここから先は上り3連発だ。
舗装路であるのが救い。ただ、それだけである。
山間部に入ると一般車と会うことは少なく、エンジン音がすれば、それは大抵関係者車両だ。Raphaが用意しているカメラマンと他メディアの取材車両が入れ替わり、私たちが走る横をクラクション鳴らしながら過ぎていく。窓から覗くレンズ。笑っちゃいけない、笑っちゃ…耐えきれず顔を背ける。ダメだ。わたしには無理だーーーー。ぜったい微妙なヘン顔になってる。大体カメラ向けられたら満面の笑みでサービスするもんだろ、普通…(と勝手に思い込んでいる)
そうだ。どこだったか…ちょっと長いのぼり…突然流れるAKB(というのはあとで聞いた)、唄うちはるこ!続くちゅなどん(わかってないのに聞いたことがあるから唄えたんだ)。でもサビしかわかんない!と次の曲へ…ってナニがはじまったんだ?ちはるこのDJタイム。おもろいな。楽しんでる。
静かな山にちはるこの背中のポケットから流れるミュージックが響く。こーゆーのは新鮮だ。わたしもiPhoneはいつも持ってるし、同じことをしようと思えばできたんだけど、やったことはなかったな。山では山の音、木の葉ずれ、鳥の声を楽しむものだと思い込んでいた。解き放たれた自由なお楽しみの時間だった。フリーダム!
一つ上ってはピークで脚を揃え、下りきって右左折があれば止まって後続を待つ。そんなリズムができあがり、私たちは3つの連続する上りを無事終えた。
ここまで、気持ちも切れていないし、脚も(膝はとっくに痛くなっているが)大丈夫。だけど…お腹がすきました!さっきのCPでバナナも欲張って食べてくればよかった… 普段は手を付けないジェルを迷うこと無く開封し、一気に飲む。でもやっぱり固形物が欲しい。このあとに控えるもっとも長く厳しい上りに備え、ちょうど見つけた【町の駅】という産直でよもぎ饅頭(大福だった)をもぐもぐ。ここでトイレもお借りしてちょっと長めの休憩。
この次のグラベル込みの15kmの上りのピークがCP2。ここはGalibeer Service Station(ガリビエサービスステーション)と銘打ってある。昨年このRGRを走ったチームGalibeerがサービスを行うここにコーヒーとマフィンがある、とスタート時に聞いていた。「じゃあ、コーヒーはそこで飲めるねー」なんて言っていたのだが…
このコーヒーまでの道のりはほんとうに、ほんとうにーーーー長く、険しいものだったーーーー。
わたしはーーー私たち5人はコーヒーが好きなのだ。だからチーム名もFive Continetnal Coffeeという。
なのに、今朝目覚めてからここまでコーヒーを飲んでいない。5人が揃ってMoka Express(直火式エスプレッソメーカーの代表格である)のシルエットが入ったembrocation の靴下を履いているのにも関わらず、だ。中でもナツキは盆栽自転車店のバリスタなんだぞ。朝から夕方までずっとエスプレッソの香りに包まれて生きているのに、だ。
目指せピーク!コーヒー!コーヒー!
と、心の中で威勢がいいのは…最初だけだった。目の前に現れた、草が両側から生い茂っている軽トラ一台が走って轍を作ったと思しき1本道。もちろん上りだ。それもほとんど直登。
これか…(ゴクリ)
ひとまずは乗ってみる。何事も挑戦だ。だがしかし…10mほどでズボっ、チーン。リムがずっぽりと沈む、ふかふかのダート。轍の真ん中、草が生えているところなら行けるか!と乗り直す。少し進む。が、草に隠れている石を踏む、衝撃で脇へ…ズボっ。チーン。もう笑うしかない。仕方ない。残り時間はたっぷりある。押して歩こう。
雨がパラついてきた。押し歩きも予想はしていたからクリートカバーを持ってきていたんだけれど、また乗れそうなトコで外すのがめんどくさいじゃん…泥に汚れたクリートカバーを背中のポケットに入れて白いジャージが汚れるのもイヤー。読みが甘かった。
結局、クリートカバーは使わずにSPDーSL、ロードバイク仕様のままグラベルを自転車片手に登山する。こうなったら自転車は杖代わりだ。けれど、それでもふかふかの土に自分の足はもちろんタイヤも沈み、腕に重さを感じる。んもーーーーーっ。杖どころか、これじゃ荷物だな。自転車を投げたくなる、ってこういうことなのか、とぼんやり思う。すでに痛みが出ている膝が歩くとさらにしくしく痛む。
後ろから追いついてきた他のチームの男性が勢いよく乗車のまま追い越していき、おおぉー!と感嘆の声をあげたそのときーーーずぼっ、チーン。あはは!みんなやっぱそうなるよね!ちょっと元気になる。が、膝の痛みで歩く方がおもうように進まない。同じように押し歩く男性陣にもどんどん追いつかれ、追い抜かれ。歩き始めた頃すぐ前を歩いていたナツキの背中も見えなくなった。
少し乗れそうなところでふたたび乗車!が、クリートが嵌らない。最初のグラベルでも泥が詰まって嵌らなくなった。途中の水たまりで詰まった泥を溶かしてことなきを得た。
またか…水たまりはそんな都合良くあらわれない。あきらめて嵌らないままペダル軸をずらさないよう気を遣うペダリング。なるべく乗り続けたい。道路脇の草ギリギリのところを走る。おぉっ。今度は行けそうだ!
ものっすごい心拍あがってるけど、息するのも忘れちゃいそうなくらい集中して脚を回す。前輪をちょっと浮かせる感じだな。すこしコツを掴んで調子に乗る。だけど…く、、くるしい・・・もうダメ…だ。ガクッ。と脚が止まる。そしてしばらく歩いて息を整える…これを何度か繰り返した。
霧なのか、雲の中なのか、白っけた中に雨が落ちてくる。幸い、風がないのと身体を動かしているから冷えは感じない(脂肪が守ってくれていることを実感する)。
コー…ヒー…
幻影すら見えてきそうである。立ちこめる霧のその先にあるんじゃないか、と辿り着いてもそこはまだ…あぁ、今日のコーヒーはやたら遠い。な…。
ガーミンの画面に表示させている高低図ではそろそろピークにいるはず。なのだけれど、縮尺の都合でよくわからない。現在地を示す●がとんがりのてっぺんに表示されてからどれほど歩いただろう。ようやく、ほんとうにようやく、辿り着いた。CP2。Galibeer Service Station 。
参りました。そんな気分である。
自転車を道路脇に横たえ、コーヒーの香りに誘われるままテントに。小さな紙コップのコーヒー。熱いのをひとくちすすると全身、心の底にまで沁み渡る。甘いマフィンも嬉しい。コーヒーにはやっぱり甘いものが合う。ガリビエ最高!ありがとう!さんざん待たせたチームのみんなでコーヒー片手にカンパイをした。
text:Miho.Ishii
photo:fccoffee、Kazuhiro/Watanabe / Rapha.cc、Rapha.cc
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