2013/01/20(日) - 11:52
2013年1月20日、南オーストラリア州アデレードでツアー・ダウンアンダー(UCIワールドツアー)が開幕。非公認クリテリウムを含む1週間の闘いに、ディフェンディングチャンピオンや世界チャンピオンらが揃う。「まだまだシーズン初戦で乗れてない」という選手の言葉とは裏腹に、その目は真剣そのものだ。
最終日前日のオールドウィランガヒルで決着
ツアー・ダウンアンダーは今年で開催15回目。2008年にUCI(国際自転車競技連合)のトップレースカテゴリーであるUCIプロレース(現在UCIワールドツアーレース)に指定され、ロードレースの国際化の先駆けとなった。
「ダウンアンダー」は、元々イギリスから見て地球の裏側にあるオーストラリアやニュージーランドを指す言葉。ヨーロッパ在住の選手たちは長時間のフライトの疲れを取り、大きな気温の変化に慣れ、そして10時間近い時差を解消するため、時間に余裕をもって現地入りしている。
なお、日本との時差は0.5時間(現在はサマータイム期間中なので日本時間+1.5時間)ある。
南半球オーストラリアは夏の盛りで、最高気温は30度オーバー。開催期間は1月20日から27日までの8日間で、初日の「ピープルズチョイス・クラシック」はUCI非公認の顔見せクリテリウム。1日の休息日を挟み、本戦が1月22日から合計6ステージで争われる。
アデレード近郊には大きな山脈が無く、大会の最標高地点も標高500m程度と低い。海沿いの平野部や、ワインの産地として世界的に有名なバロッサバレー、クレアバレー、アデレードヒルズと呼ばれる丘陵地帯がコースの大部分を占めている。
スプリンター向きの平坦ステージが多く設定されているため、例年マッチョなスプリンターたちが総合争いを繰り広げて来た。しかし、ゴール直前に最大勾配10%のKOM(カテゴリー山岳)が設定された第2ステージや、名物のアップダウンコース&登りゴールが設定された第3ステージなど、単純な平坦コースばかりではない。
さらに、昨年からオールドウィランガヒルの頂上ゴールが登場。7%ほどの勾配が3kmに渡って続く大会最大の難所で、オールラウンダーたちがアタック合戦を繰り広げる。最終日は恒例のアデレード市内で行なわれるクリテリウムだ。
ツアー・ダウンアンダー2013ステージリスト
クラシック 1月20日 アデレード・ライミルパーク周回コース 51km
第1ステージ 1月22日 プロスペクト〜ロベサル 135km
第2ステージ 1月23日 マウントバーカー〜ロスターバー 116.5km
第3ステージ 1月24日 アンレー〜スターリング 139km
第4ステージ 1月25日 モッドベリー〜タヌンダ 126.5km
第5ステージ 1月26日 マクラーレンヴェイル〜オールドウィランガヒル 151.5km
第6ステージ 1月27日 アデレード市街地サーキット 90km
地元の期待を背負うゲランス連覇なるか?ジルベールやAシュレクが登場
昨年、オーストラリア初のUCIプロチームとして発足し、地元オーストラリアでのシーズン初戦で総合優勝を成し遂げたオリカ・グリーンエッジ。今年はサイモン・ゲランス(オーストラリア)がディフェンディングチャンピオンとしてアデレードに降り立った。
オーストラリア最大のレースだけに、チームの意気込みは強い。史上初めてオーストラリア選手権でロードとタイムトライアルのダブルタイトルを獲得したルーク・ダーブリッジ(オーストラリア)や、エーススプリンターのマシュー・ゴス(オーストラリア)、そして地元アデレード出身のスチュアート・オグレディ(オーストラリア)ら、正真正銘の一軍を揃えて来た。
ハイシーズンを迎えているオージー勢を揃えていることは大きな強み。今年もオールドウィランガヒルでゲランスが総合リーダージャージ目がけて飛び出すだろう。
世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)は5年ぶりの出場。2004年大会に初出場し、ステージ優勝&総合4位&新人賞獲得。2008年大会では山岳賞を獲得している。
コースの難易度的にはジルベール向き。しかしまだまだシーズン序盤であり、世界チャンピオンはオージーたちの調子の良さを警戒する。記者会見では「現実的に、総合優勝候補の筆頭ではない。でもUCIワールドツアーでは一つでもポイントを落とせない。出来るだけ総合上位を狙う」とコメントしている。
怪我により長らくレースを離れていたアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)が、南半球で初めてシーズンインを迎える。「昨年ツアー・オブ・北京に出場したけど、レースを走った(争った)とは言えない。だからこれが実質的な怪我からの復帰戦。最初はレーススピードに戸惑うかもしれないけど、すべては夏に向けてのコンディショニング」とAシュレク。チームはベン・ヘルマンス(ベルギー)やティアゴ・マシャド(ポルトガル)をエースに据える可能性も。
このダウンアンダーでステージ通算10勝を飾っているアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)は、今年もステージ優勝量産体制に入るか。チームにはグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)を始め、強力なリードアウトマンたちが揃っている。今大会最速トレインを組めるのはロットだ。
スプリンターはグランツール並、もしくはそれ以上の豪華な面子。タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)やホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)、ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、アージェードゥーゼル)、そしてUCIプロチーム入りしたアルゴス・シマノのマルセル・キッテル(ドイツ)や、アスタナに移籍したアンドレア・グアルディーニ(イタリア)も揃う。
スプリント力と登坂力を兼ね備えた選手として注目したいのがエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)だ。ボアッソンハーゲンは昨年初出場のダウンアンダーで連日ステージ上位に絡み、総合7位&ポイント賞。今年は例年以上に早い時期からカラダ作りを始め、ダウンアンダーに合わせて来た。ゴール前では、スカイトレインとロットトレインが激突するだろう。
地元アデレード出身のジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)や、アタック&逃げでレースを沸かすトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)ら、スプリンター以外にも役者は揃っている。
2年連続出場の宮澤崇史は、今年もジョナサン・キャントウェル(オーストラリア)のサポート役。気温が45度まで上がった3日前のトレーニングライドで宮澤は脱水症状に苦しんだというが、チームの雰囲気はよく、レースを楽しんでいる様子が伺える。
text&photo:Kei Tsuji
最終日前日のオールドウィランガヒルで決着
ツアー・ダウンアンダーは今年で開催15回目。2008年にUCI(国際自転車競技連合)のトップレースカテゴリーであるUCIプロレース(現在UCIワールドツアーレース)に指定され、ロードレースの国際化の先駆けとなった。
「ダウンアンダー」は、元々イギリスから見て地球の裏側にあるオーストラリアやニュージーランドを指す言葉。ヨーロッパ在住の選手たちは長時間のフライトの疲れを取り、大きな気温の変化に慣れ、そして10時間近い時差を解消するため、時間に余裕をもって現地入りしている。
なお、日本との時差は0.5時間(現在はサマータイム期間中なので日本時間+1.5時間)ある。
南半球オーストラリアは夏の盛りで、最高気温は30度オーバー。開催期間は1月20日から27日までの8日間で、初日の「ピープルズチョイス・クラシック」はUCI非公認の顔見せクリテリウム。1日の休息日を挟み、本戦が1月22日から合計6ステージで争われる。
アデレード近郊には大きな山脈が無く、大会の最標高地点も標高500m程度と低い。海沿いの平野部や、ワインの産地として世界的に有名なバロッサバレー、クレアバレー、アデレードヒルズと呼ばれる丘陵地帯がコースの大部分を占めている。
スプリンター向きの平坦ステージが多く設定されているため、例年マッチョなスプリンターたちが総合争いを繰り広げて来た。しかし、ゴール直前に最大勾配10%のKOM(カテゴリー山岳)が設定された第2ステージや、名物のアップダウンコース&登りゴールが設定された第3ステージなど、単純な平坦コースばかりではない。
さらに、昨年からオールドウィランガヒルの頂上ゴールが登場。7%ほどの勾配が3kmに渡って続く大会最大の難所で、オールラウンダーたちがアタック合戦を繰り広げる。最終日は恒例のアデレード市内で行なわれるクリテリウムだ。
ツアー・ダウンアンダー2013ステージリスト
クラシック 1月20日 アデレード・ライミルパーク周回コース 51km
第1ステージ 1月22日 プロスペクト〜ロベサル 135km
第2ステージ 1月23日 マウントバーカー〜ロスターバー 116.5km
第3ステージ 1月24日 アンレー〜スターリング 139km
第4ステージ 1月25日 モッドベリー〜タヌンダ 126.5km
第5ステージ 1月26日 マクラーレンヴェイル〜オールドウィランガヒル 151.5km
第6ステージ 1月27日 アデレード市街地サーキット 90km
地元の期待を背負うゲランス連覇なるか?ジルベールやAシュレクが登場
昨年、オーストラリア初のUCIプロチームとして発足し、地元オーストラリアでのシーズン初戦で総合優勝を成し遂げたオリカ・グリーンエッジ。今年はサイモン・ゲランス(オーストラリア)がディフェンディングチャンピオンとしてアデレードに降り立った。
オーストラリア最大のレースだけに、チームの意気込みは強い。史上初めてオーストラリア選手権でロードとタイムトライアルのダブルタイトルを獲得したルーク・ダーブリッジ(オーストラリア)や、エーススプリンターのマシュー・ゴス(オーストラリア)、そして地元アデレード出身のスチュアート・オグレディ(オーストラリア)ら、正真正銘の一軍を揃えて来た。
ハイシーズンを迎えているオージー勢を揃えていることは大きな強み。今年もオールドウィランガヒルでゲランスが総合リーダージャージ目がけて飛び出すだろう。
世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)は5年ぶりの出場。2004年大会に初出場し、ステージ優勝&総合4位&新人賞獲得。2008年大会では山岳賞を獲得している。
コースの難易度的にはジルベール向き。しかしまだまだシーズン序盤であり、世界チャンピオンはオージーたちの調子の良さを警戒する。記者会見では「現実的に、総合優勝候補の筆頭ではない。でもUCIワールドツアーでは一つでもポイントを落とせない。出来るだけ総合上位を狙う」とコメントしている。
怪我により長らくレースを離れていたアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)が、南半球で初めてシーズンインを迎える。「昨年ツアー・オブ・北京に出場したけど、レースを走った(争った)とは言えない。だからこれが実質的な怪我からの復帰戦。最初はレーススピードに戸惑うかもしれないけど、すべては夏に向けてのコンディショニング」とAシュレク。チームはベン・ヘルマンス(ベルギー)やティアゴ・マシャド(ポルトガル)をエースに据える可能性も。
このダウンアンダーでステージ通算10勝を飾っているアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)は、今年もステージ優勝量産体制に入るか。チームにはグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)を始め、強力なリードアウトマンたちが揃っている。今大会最速トレインを組めるのはロットだ。
スプリンターはグランツール並、もしくはそれ以上の豪華な面子。タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)やホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)、ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、アージェードゥーゼル)、そしてUCIプロチーム入りしたアルゴス・シマノのマルセル・キッテル(ドイツ)や、アスタナに移籍したアンドレア・グアルディーニ(イタリア)も揃う。
スプリント力と登坂力を兼ね備えた選手として注目したいのがエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)だ。ボアッソンハーゲンは昨年初出場のダウンアンダーで連日ステージ上位に絡み、総合7位&ポイント賞。今年は例年以上に早い時期からカラダ作りを始め、ダウンアンダーに合わせて来た。ゴール前では、スカイトレインとロットトレインが激突するだろう。
地元アデレード出身のジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)や、アタック&逃げでレースを沸かすトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)ら、スプリンター以外にも役者は揃っている。
2年連続出場の宮澤崇史は、今年もジョナサン・キャントウェル(オーストラリア)のサポート役。気温が45度まで上がった3日前のトレーニングライドで宮澤は脱水症状に苦しんだというが、チームの雰囲気はよく、レースを楽しんでいる様子が伺える。
text&photo:Kei Tsuji
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