2009/06/20(土) - 19:19
6月13、14日に恒例の「三宅島ロード」が開催された。初日の土曜日には島一周サイクリングとヒルクライムTT、そして前夜祭が、2日目には阿古地区での周回ロードレースが行われ、参加者はたっぷり2日間のロード三昧を堪能したのであった。
三宅島のロードレースは、20年以上の長い歴史を持っている。しかし、2000年の雄山の噴火によって島民全員が強制避難を余儀なくされ、ロードレースも中断されることとなった。避難が全面解除になったのは2005年2月のことだが、しばらくはレースができるような状況ではなかった。4年5ヶ月間も人が住んでいなかった家は荒れ果て、ほとんどの建物が改修を必要としたのだ。
ロードレースが復活したのは2007年のこと。日刊スポーツ新聞社とJCRC(日本サイクルクラブレーシング協会)が復興支援に立ち上がり、伝統の市民レース「ツール・ド・ジャパン」の一戦として三宅島を取り入れたのだ。かつては島一周で行われていたレースだが、火山ガスの危険性から島一周は不可能と判断され、復活後は阿古地区での周回レースという形式で行われることとなった。
しかし、2008年の大会では2日目に風向きの影響で阿古地区に火山ガスが流れ込み、レース中止を余儀なくされてしまった。今でも、島に上陸する人にはガスマスクの携行が義務づけられている三宅島であるから、そのような事態も起こり得たわけである。
そのため、今年の大会は万全の準備をした。阿古地区に火山ガスが流れ込んだ場合のために、代替コースが設定されたのである。幸い今年の風向きはよく、2日間とも予定通りにプログラムが消化された。
三宅島上陸前に、まずは行きの船での話をしなければならない。三宅島への往復は、竹芝桟橋~三宅島~御蔵島~八丈島を往復する東海汽船のさるびあ丸を使う。そこに参加者&役員のほぼ全員が乗り込むわけだが、6月12日夜の出航後に船上で「出発式」が行われた。
今年も昨年に引き続き、歌手の錦野旦さんがゲスト参加してくれた。また、来年メジャーデビューが予定されている黒木姉妹や、MTBの元アジアチャンピオン・山口孝徳選手もゲスト参加してくれて、船上は異様な盛り上がりを見せる。
13日早朝、三宅島に到着すると、選手達はいったん宿に入り休憩。そして10時に阿古小学校の受付に集まり、まずは島一周サイクリングに出かける。三宅島一周道路は約30kmほどで、のんびり走っても2時間もあれば走り切れてしまう。途中、1983年の噴火でできた溶岩流を横切る場所や、かすかにイオウの匂いが漂っている箇所もあり、この島が生きた火山島であることを実感できる。
15時から行われたヒルクライムTTは、3.5kmの距離で標高0mから153.5mまで一気に駆け上がる難コースだ。このレースを制したのは、7分58秒883という好タイムをマークした波田正之(ルマーケ・エスプレッソ)だった。
また、ヒルクライムTTの前には未就学児童によるキッズレースも行われ、こちらは選手の子供達よりまわりの大人の方がはしゃいでいた!?
16時30分からは阿古小学校体育館で前夜祭が行われた。島のみなさんから名物「明日葉のてんぷら」や「苦竹の天ぷら」、「三宅島産の焼酎」などが振る舞われ、参加者全員が舌鼓を打つ。そして黒木姉妹、“スター”錦野旦さんの歌が披露され、参加者だけでなく集まった島のみなさんも一体となり大盛り上がりの前夜祭となった。本当に素晴らしい交流の場であった。
今回のツール・ド・ジャパン第3戦は、単なるレースだけでなく、三宅島の「復興支援」という意味合いも持っている。素晴らしいレースコースを提供していただくお返しとして、参加者が民宿に泊まり、三宅島の経済に少しでも貢献しようというわけだ。このような「ギブ&テイク」の関係は、これからもレースをさせて頂く我々ホビーレーサーにとって、とても重要なものだと言えよう。三宅村村長からは「来年は島一周のレースを実現させたい」という力強い発言もあった。
2日目朝一番に行われたのは、3人1組で戦うチームTTだ。とはいっても、チームの受付は前日に行われるというお気楽なもの。船上で盛り上がった仲間による混成チームもあり、和気あいあいとレースがスタートした。優勝したのは、ヒルクライムTTを制した波田正之を擁する「ニコリン・エスプレッソ」チーム。チーム名はニコタマサイクル、チームユキリン、ルマーケ・エスプレッソの混成であることに由来する。
続いて各クラスのレースが行われ、最高峰のSクラスはまたまた波田正之が制し、見事ヒルクライムTT、チームTT、個人ロードの3冠を達成した。その波田はこう話す。「以前はJCRCのレースに行っても、知らない人と話す事なんてぜんぜんなかったのに、三宅島に来るようになってから、たくさんの知り合いが出来ました。景色やレースの楽しさだけでなく、そんな人との交流も三宅島の魅力ですね」。
“船”そして“島”という空間が作り出す一体感は、ここでしか体験できないものだ。他人とのつきあいが希薄になってきた現代にあって、三宅島には古き良き日本を思い出させる何かがあるような気がした。
各クラス優勝者は以下の通り。
【ヒルクライムTT総合】
波田正之(ルマーケ・エスプレッソ)
【チームTT】
ニコリン・エスプレッソ(波田正之、井上明、山根誠司)
【Sクラス】
波田正之(ルマーケ・エスプレッソ)
【Aクラス】
山口賢二(Team FITTE)
【Bクラス】
向井数詞(輪工房APEX)
【Cクラス】
籠田徳行(Team NCC)
【Dクラス】
阿部秀昭(Piano Piano)
【Eクラス】
古屋穂高(つねさぶろうRC)
【Fクラス】
金子幸司(ちりりんRC)
【Oクラス】
渡辺正彦(ALPHAWK)
【Gクラス】
細山正一(ウゴーレーシング)
【Wクラス】
安藤雅子(内房レーシングクラブ)
【Xクラス】
蓮岡和久(チームちゃりつく)
【K高学年クラス】
山崎有喜
【K低学年クラス】
山崎有晴
大会の楽しい模様はフォトギャラリーをご覧ください。
詳しいリザルトはJCRCのウェブサイトへ
photo&text :Takashi NAKAZAWA
噴火から再起した三宅島でのレース
三宅島のロードレースは、20年以上の長い歴史を持っている。しかし、2000年の雄山の噴火によって島民全員が強制避難を余儀なくされ、ロードレースも中断されることとなった。避難が全面解除になったのは2005年2月のことだが、しばらくはレースができるような状況ではなかった。4年5ヶ月間も人が住んでいなかった家は荒れ果て、ほとんどの建物が改修を必要としたのだ。
ロードレースが復活したのは2007年のこと。日刊スポーツ新聞社とJCRC(日本サイクルクラブレーシング協会)が復興支援に立ち上がり、伝統の市民レース「ツール・ド・ジャパン」の一戦として三宅島を取り入れたのだ。かつては島一周で行われていたレースだが、火山ガスの危険性から島一周は不可能と判断され、復活後は阿古地区での周回レースという形式で行われることとなった。
しかし、2008年の大会では2日目に風向きの影響で阿古地区に火山ガスが流れ込み、レース中止を余儀なくされてしまった。今でも、島に上陸する人にはガスマスクの携行が義務づけられている三宅島であるから、そのような事態も起こり得たわけである。
そのため、今年の大会は万全の準備をした。阿古地区に火山ガスが流れ込んだ場合のために、代替コースが設定されたのである。幸い今年の風向きはよく、2日間とも予定通りにプログラムが消化された。
出発式から異様な盛り上がり!?
三宅島上陸前に、まずは行きの船での話をしなければならない。三宅島への往復は、竹芝桟橋~三宅島~御蔵島~八丈島を往復する東海汽船のさるびあ丸を使う。そこに参加者&役員のほぼ全員が乗り込むわけだが、6月12日夜の出航後に船上で「出発式」が行われた。
今年も昨年に引き続き、歌手の錦野旦さんがゲスト参加してくれた。また、来年メジャーデビューが予定されている黒木姉妹や、MTBの元アジアチャンピオン・山口孝徳選手もゲスト参加してくれて、船上は異様な盛り上がりを見せる。
島一周サイクリングとヒルクライムTTで楽しんだ
13日早朝、三宅島に到着すると、選手達はいったん宿に入り休憩。そして10時に阿古小学校の受付に集まり、まずは島一周サイクリングに出かける。三宅島一周道路は約30kmほどで、のんびり走っても2時間もあれば走り切れてしまう。途中、1983年の噴火でできた溶岩流を横切る場所や、かすかにイオウの匂いが漂っている箇所もあり、この島が生きた火山島であることを実感できる。
15時から行われたヒルクライムTTは、3.5kmの距離で標高0mから153.5mまで一気に駆け上がる難コースだ。このレースを制したのは、7分58秒883という好タイムをマークした波田正之(ルマーケ・エスプレッソ)だった。
また、ヒルクライムTTの前には未就学児童によるキッズレースも行われ、こちらは選手の子供達よりまわりの大人の方がはしゃいでいた!?
錦野旦さんの歌が前夜祭を盛り上げる
16時30分からは阿古小学校体育館で前夜祭が行われた。島のみなさんから名物「明日葉のてんぷら」や「苦竹の天ぷら」、「三宅島産の焼酎」などが振る舞われ、参加者全員が舌鼓を打つ。そして黒木姉妹、“スター”錦野旦さんの歌が披露され、参加者だけでなく集まった島のみなさんも一体となり大盛り上がりの前夜祭となった。本当に素晴らしい交流の場であった。
今回のツール・ド・ジャパン第3戦は、単なるレースだけでなく、三宅島の「復興支援」という意味合いも持っている。素晴らしいレースコースを提供していただくお返しとして、参加者が民宿に泊まり、三宅島の経済に少しでも貢献しようというわけだ。このような「ギブ&テイク」の関係は、これからもレースをさせて頂く我々ホビーレーサーにとって、とても重要なものだと言えよう。三宅村村長からは「来年は島一周のレースを実現させたい」という力強い発言もあった。
波田正之がチームTT、Sクラスも制し3冠を達成する
2日目朝一番に行われたのは、3人1組で戦うチームTTだ。とはいっても、チームの受付は前日に行われるというお気楽なもの。船上で盛り上がった仲間による混成チームもあり、和気あいあいとレースがスタートした。優勝したのは、ヒルクライムTTを制した波田正之を擁する「ニコリン・エスプレッソ」チーム。チーム名はニコタマサイクル、チームユキリン、ルマーケ・エスプレッソの混成であることに由来する。
続いて各クラスのレースが行われ、最高峰のSクラスはまたまた波田正之が制し、見事ヒルクライムTT、チームTT、個人ロードの3冠を達成した。その波田はこう話す。「以前はJCRCのレースに行っても、知らない人と話す事なんてぜんぜんなかったのに、三宅島に来るようになってから、たくさんの知り合いが出来ました。景色やレースの楽しさだけでなく、そんな人との交流も三宅島の魅力ですね」。
“船”そして“島”という空間が作り出す一体感は、ここでしか体験できないものだ。他人とのつきあいが希薄になってきた現代にあって、三宅島には古き良き日本を思い出させる何かがあるような気がした。
各クラス優勝者は以下の通り。
【ヒルクライムTT総合】
波田正之(ルマーケ・エスプレッソ)
【チームTT】
ニコリン・エスプレッソ(波田正之、井上明、山根誠司)
【Sクラス】
波田正之(ルマーケ・エスプレッソ)
【Aクラス】
山口賢二(Team FITTE)
【Bクラス】
向井数詞(輪工房APEX)
【Cクラス】
籠田徳行(Team NCC)
【Dクラス】
阿部秀昭(Piano Piano)
【Eクラス】
古屋穂高(つねさぶろうRC)
【Fクラス】
金子幸司(ちりりんRC)
【Oクラス】
渡辺正彦(ALPHAWK)
【Gクラス】
細山正一(ウゴーレーシング)
【Wクラス】
安藤雅子(内房レーシングクラブ)
【Xクラス】
蓮岡和久(チームちゃりつく)
【K高学年クラス】
山崎有喜
【K低学年クラス】
山崎有晴
大会の楽しい模様はフォトギャラリーをご覧ください。
詳しいリザルトはJCRCのウェブサイトへ
photo&text :Takashi NAKAZAWA