2012/08/29(水) - 07:12
第9ステージ終了後すぐ、選手たちは空路でイベリア半島を横断してガリシア州に入った。休息日明けの選手たちを待っていたのは、スプリンター向きの平坦ステージ。複雑に入り組んだ美しい湾(リアス式海岸)を縫うように走り、海沿いの街サンシェンショにゴールする。
2年連続スタートを迎え入れたポンテアレアスに集まったのは193名の選手たち。ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル)は胃腸トラブルでスタートに姿を見せなかった。
海が近いことを感じさせる、水分を含むヒンヤリとした空気が朝方からコースを覆っていたが、レースがスタートする頃には気温は25度まで上昇した。40度超えを何度も経験したブエルタ1週目とは比べ物にならないとは言え、まだまだ夏の暑さがスペインを包む。
「一般的にスプリント向きのステージだと言われているが、レース前半はアップダウンがあるので、大きな逃げには警戒しないといけない。我々はすでに3勝しているので、他のチームはレースコントロールを任せてくるだろう」と、アルゴス・シマノのクリスティアン・ギベルトー監督は難しい顔で話す。
全日本チャンピオンの土井雪広(アルゴス・シマノ)は、デゲンコルブのサポートを言い渡された選手の一人。アルゴス・シマノは完全にデゲンコルブのスプリント勝利&グリーンジャージ獲得にフォーカスしている。
チームの中で『スピードのある選手』として評価されている土井雪広は「集団コントロールというより、レース終盤にジョン(デゲンコルブ)らを引き連れて集団前方に上がって、ポジションを守ることが仕事。平地なのに平気で60km/hを超えるようなシチュエーションなので、正直言って、集団をコントロールしているほうがよっぽど楽だ」と打ち明ける。この日も逃げの許可は降りず、集団コントロールに徹した。
2011年大会で総合敢闘賞に輝いたアドリアン・パロマレス(スペイン、アンダルシア)と、今大会すでに2勝を飾ったハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)がこの日の勇敢なる逃げ挑戦者。ギベルトー監督の言葉通り、レース序盤はカウンターアタックで何人もの選手が飛び出したが、2人の先行が決まるとメイン集団はスピードを落とした。
59km地点でタイム差は6分42秒まで広がる。『リアス式海岸』の語源ともなった一帯を、海沿いに北上。メイン集団のコントロールを担ったのはやはりアルゴス・シマノで、土井もローテーションに加わる。
オリカ・グリーンエッジの集団ペースアップに伴って、逃げのリードは儚くも縮小傾向に。ゴールまで32kmを残してパロマレスとアラメンディアは吸収。海風が吹き付けるポイントでチームスカイがペースアップを図ると、たまらずファンホセ・コーボ(スペイン、モビスター)は千切れてしまう。
チームスカイが主導権を握った状態でラスト10kmを迎えたが、その後方ではアルゴス・シマノやレディオシャック・ニッサンが着々とトレイン形成の準備を整える。土井はラスト7kmからチームメイトを引き連れて集団前方に上がっていく。
ゴール地点サンシェンショが近づくにつれてスプリンターチームの攻防戦は更に激化。中切れによって幾分人数を減らした集団がゴールに向けて突進した。
ベン・スウィフト(イギリス)を好位置で解き放ちたいチームスカイが持ち前のスピードで有利にレースを進めたが、フラムルージュが近づくとレディオシャック・ニッサンとアルゴス・シマノが先頭に。
クーン・デコルト(オランダ)に強力にリードされたデゲンコルブは、ラスト250mで早めに仕掛けたダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)のスリップストリームに飛び乗る。緩やかに登るゴール前で、伸びないベンナーティに代わってデゲンコルブが先頭へ。
ゴール直前でナセル・ブアニ(フランス、FDJ・ビッグマット)が並びかけたが、デゲンコルブは先頭を譲らない。最後まで伸び続けたデゲンコルブが4本指を立ててゴールした。
ゴール直後、駆けつけたチームメイトを抱き寄せるデゲンコルブ。大集団のゴールスプリントで負け無しの4勝目。
「今日のフィニッシュはハイスピードでタフだった。でもチームメイトを100%信用しているし、彼らはスプリントに尽くしてくれる。これでステージ4勝目だけど、地面に脚をつけて、グリーンジャージのキープに力を注ぎたい」。
デゲンコルブはスプリントポイントでもしっかりポイントを稼ぎ、18ポイント差でポイント賞トップの座をホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)から奪い返した(ポイント賞2位のためジャージを着用中)。
2分40秒遅れでゴールした土井は、充血させた目を擦りながら一日を振り返る。「体重が56kg台に突入している今、高出力を維持して大柄な選手に対抗するのは酷な仕事。チームメイトたちを引き連れて、ペースが上がった集団の前に上がっていった。ラスト8kmあたりから前に上がって、ラスト6kmあたりで後ろのチームメイトに託した。本当にキツかった。でもしっかりエースが勝ってくれるので報われる。とにかくジョンが強い」。
アルゴス・シマノは10ステージ中4勝。チームとしてシーズン21勝目を掴んだ。
総合上位陣は力を使うことなく集団ゴール。翌日の個人タイムトライアルで総合成績に変動が起こるのは間違いない。
「明日のレース後、総合トップ4(ロドリゲス、フルーム、コンタドール、バルベルデ)の誰がマイヨロホを着ていてもおかしくない。一番重要なことは、明日総合トップに立つことではなくて、最終的に総合優勝すること。とにかくタイムトライアルが楽しみだ」と、総合3位のアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)は語る。レースはいよいよ折り返し地点に差し掛かる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第10ステージ結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 4h47'24"
2位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ・ビッグマット)
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)
4位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル)
5位 マヌエル・カルドソ(ポルトガル、カハルーラル)
6位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
7位 ピム・リヒハルト(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 ダヴィデ・ヴィガノ(イタリア、ランプレ・ISD)
9位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
10位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
160位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +2'40"
敢闘賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 39h32'23"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +53"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +1'00"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'07"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +2'01"
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +2'08"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +2'34"
8位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +3'07"
9位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +3'18"
10位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +3'27"
136位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +1h00'35"
ポイント賞(プントス)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 103pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 85pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 76pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 21pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 17pts
3位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ ) 16pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 5pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 8pts
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 19pts
チーム総合成績
1位 ラボバンク 118h07'44"
2位 アージェードゥーゼル +2'27"
3位 チームスカイ +3'47"
text&photo:Kei Tsuji in Sanxenxo, Spain
2年連続スタートを迎え入れたポンテアレアスに集まったのは193名の選手たち。ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル)は胃腸トラブルでスタートに姿を見せなかった。
海が近いことを感じさせる、水分を含むヒンヤリとした空気が朝方からコースを覆っていたが、レースがスタートする頃には気温は25度まで上昇した。40度超えを何度も経験したブエルタ1週目とは比べ物にならないとは言え、まだまだ夏の暑さがスペインを包む。
「一般的にスプリント向きのステージだと言われているが、レース前半はアップダウンがあるので、大きな逃げには警戒しないといけない。我々はすでに3勝しているので、他のチームはレースコントロールを任せてくるだろう」と、アルゴス・シマノのクリスティアン・ギベルトー監督は難しい顔で話す。
全日本チャンピオンの土井雪広(アルゴス・シマノ)は、デゲンコルブのサポートを言い渡された選手の一人。アルゴス・シマノは完全にデゲンコルブのスプリント勝利&グリーンジャージ獲得にフォーカスしている。
チームの中で『スピードのある選手』として評価されている土井雪広は「集団コントロールというより、レース終盤にジョン(デゲンコルブ)らを引き連れて集団前方に上がって、ポジションを守ることが仕事。平地なのに平気で60km/hを超えるようなシチュエーションなので、正直言って、集団をコントロールしているほうがよっぽど楽だ」と打ち明ける。この日も逃げの許可は降りず、集団コントロールに徹した。
2011年大会で総合敢闘賞に輝いたアドリアン・パロマレス(スペイン、アンダルシア)と、今大会すでに2勝を飾ったハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)がこの日の勇敢なる逃げ挑戦者。ギベルトー監督の言葉通り、レース序盤はカウンターアタックで何人もの選手が飛び出したが、2人の先行が決まるとメイン集団はスピードを落とした。
59km地点でタイム差は6分42秒まで広がる。『リアス式海岸』の語源ともなった一帯を、海沿いに北上。メイン集団のコントロールを担ったのはやはりアルゴス・シマノで、土井もローテーションに加わる。
オリカ・グリーンエッジの集団ペースアップに伴って、逃げのリードは儚くも縮小傾向に。ゴールまで32kmを残してパロマレスとアラメンディアは吸収。海風が吹き付けるポイントでチームスカイがペースアップを図ると、たまらずファンホセ・コーボ(スペイン、モビスター)は千切れてしまう。
チームスカイが主導権を握った状態でラスト10kmを迎えたが、その後方ではアルゴス・シマノやレディオシャック・ニッサンが着々とトレイン形成の準備を整える。土井はラスト7kmからチームメイトを引き連れて集団前方に上がっていく。
ゴール地点サンシェンショが近づくにつれてスプリンターチームの攻防戦は更に激化。中切れによって幾分人数を減らした集団がゴールに向けて突進した。
ベン・スウィフト(イギリス)を好位置で解き放ちたいチームスカイが持ち前のスピードで有利にレースを進めたが、フラムルージュが近づくとレディオシャック・ニッサンとアルゴス・シマノが先頭に。
クーン・デコルト(オランダ)に強力にリードされたデゲンコルブは、ラスト250mで早めに仕掛けたダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)のスリップストリームに飛び乗る。緩やかに登るゴール前で、伸びないベンナーティに代わってデゲンコルブが先頭へ。
ゴール直前でナセル・ブアニ(フランス、FDJ・ビッグマット)が並びかけたが、デゲンコルブは先頭を譲らない。最後まで伸び続けたデゲンコルブが4本指を立ててゴールした。
ゴール直後、駆けつけたチームメイトを抱き寄せるデゲンコルブ。大集団のゴールスプリントで負け無しの4勝目。
「今日のフィニッシュはハイスピードでタフだった。でもチームメイトを100%信用しているし、彼らはスプリントに尽くしてくれる。これでステージ4勝目だけど、地面に脚をつけて、グリーンジャージのキープに力を注ぎたい」。
デゲンコルブはスプリントポイントでもしっかりポイントを稼ぎ、18ポイント差でポイント賞トップの座をホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)から奪い返した(ポイント賞2位のためジャージを着用中)。
2分40秒遅れでゴールした土井は、充血させた目を擦りながら一日を振り返る。「体重が56kg台に突入している今、高出力を維持して大柄な選手に対抗するのは酷な仕事。チームメイトたちを引き連れて、ペースが上がった集団の前に上がっていった。ラスト8kmあたりから前に上がって、ラスト6kmあたりで後ろのチームメイトに託した。本当にキツかった。でもしっかりエースが勝ってくれるので報われる。とにかくジョンが強い」。
アルゴス・シマノは10ステージ中4勝。チームとしてシーズン21勝目を掴んだ。
総合上位陣は力を使うことなく集団ゴール。翌日の個人タイムトライアルで総合成績に変動が起こるのは間違いない。
「明日のレース後、総合トップ4(ロドリゲス、フルーム、コンタドール、バルベルデ)の誰がマイヨロホを着ていてもおかしくない。一番重要なことは、明日総合トップに立つことではなくて、最終的に総合優勝すること。とにかくタイムトライアルが楽しみだ」と、総合3位のアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)は語る。レースはいよいよ折り返し地点に差し掛かる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第10ステージ結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 4h47'24"
2位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ・ビッグマット)
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)
4位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、ロット・ベリソル)
5位 マヌエル・カルドソ(ポルトガル、カハルーラル)
6位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
7位 ピム・リヒハルト(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 ダヴィデ・ヴィガノ(イタリア、ランプレ・ISD)
9位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
10位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
160位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +2'40"
敢闘賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 39h32'23"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +53"
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) +1'00"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'07"
5位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +2'01"
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +2'08"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +2'34"
8位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +3'07"
9位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +3'18"
10位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +3'27"
136位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +1h00'35"
ポイント賞(プントス)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) 103pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 85pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 76pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 21pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 17pts
3位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ ) 16pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 5pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 8pts
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) 19pts
チーム総合成績
1位 ラボバンク 118h07'44"
2位 アージェードゥーゼル +2'27"
3位 チームスカイ +3'47"
text&photo:Kei Tsuji in Sanxenxo, Spain
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