S-WORKSロードシューズのフルモデルチェンジもビッグニュースである。スペシャライズド製品の中で最も高い使用率を誇る名品のモデルチェンジだけに、注目度はルーベ同様に高い。現行モデルが登場して3年。未だに売れ続けている大ヒットシューズを、スペシャライズドはどのように変えてきたのか。

2年の開発期間を経て姿を現した新型S-WORKSロードシューズ2年の開発期間を経て姿を現した新型S-WORKSロードシューズ photo:Yukio Yasui

2年の開発期間を経て姿を現した新型シューズ。デザイナーにコンセプトを聞いたところ、さらなる快適性の向上と軽量化、とのこと。アッパー、ソールとも一新されたニューモデルはいかにも最先端なデザインで、各国のジャーナリスト達にもウケがいい。試乗のために持ち込んだ現行モデルがいきなり古臭く見えてくるから不思議だ。

無駄をそぎ落として剛性と軽量化を両立

一新されたソール形状。黒い部分と白い部分との境目には段差があり、白い部分はかなり薄く作られている一新されたソール形状。黒い部分と白い部分との境目には段差があり、白い部分はかなり薄く作られている photo:Specialized足底形状(ソールの足側)やソール厚みは従来モデルから変更はない。名作と言われているモデルだけに、変えるべきではないポイントはしっかりと引き継がれている。しかしアウターソール(ソールのクリート側)の形状はガラリと変更されている。

設計段階でソールに99か所の圧力測定ポイントを設け、踏み込み時にどこに圧力がかかっているかを測定したという。その結果、剛性が必要とされるのは内側(親指側)で、外側(小指側)にはさほど力がかかっていということが分かった。そのデータをふまえて新型のソールは、内側を強化しつつ外側を薄くすることで、前作比約15%の軽量化を達成しているという。

薄く、軽く、そして強くなったアッパー

2年の開発期間を経て姿を現した新型S-WORKSロードシューズ2年の開発期間を経て姿を現した新型S-WORKSロードシューズ photo:Yukio Yasuiソックスを履いているような快適性を目指したというアッパーは、素材がさらに薄くなり、縫い目がゼロのサーモボンデッドを採用。アッパー素材の内側にメッシュ生地を圧着することで、旧モデルよりも通気性もアップしている。ラスト(足型)も一新された。

薄く軽くなったからといってヤワでは話にならないがダイヤルで締め付けたときに引っ張り力がかかる箇所はノンストレッチ素材となっており、軽量シューズながらトップスプリンターの大馬力ペダリングにも耐える堅牢性も持っているという。事実、今シーズン初頭のツアー・オブ・カタールでトム・ボーネンに新型シューズのプロトタイプを渡したところ、「すぐに同じものを3足用意してくれ!」と大いに気に入っていたらしい。「移動時にはロストバゲッジを嫌って機内に持ち込むほど惚れ込んでくれた。コンタドールも気に入っていたみたいだね」と誇らしげなエンジニア。

クロージャーシステムも見直された

クロージャーはBOAダイヤル×2、ベルクロ×1という構成に。BOAダイヤル自体も改良されており、工具がなくても交換ができるようになっている(薄いコインなどで簡単に外すことができるため、ワイヤーを切ってしまったときなどに素早い復帰が可能)。ダイヤル内部のラチェットのツメも従来の3つから4つへと増えている。1ノッチで1mmと細かい調整ができることも大きなメリットだ(他メーカーが使うバックルでは1ノッチで3mmほど動いてしまう)。大きな締め付け力が必要とされないつま先側のみベルクロが採用されている。

作られたプロトタイプは35足以上。その一部が展示されていた。様々なタイプのクロージャーが検討されていたことが分かる作られたプロトタイプは35足以上。その一部が展示されていた。様々なタイプのクロージャーが検討されていたことが分かる photo:Yukio Yasuiスペシャライズドシューズにはなくてはならないフットベッドもフルモデルチェンジ。欠点を潰してきたスペシャライズドシューズにはなくてはならないフットベッドもフルモデルチェンジ。欠点を潰してきた photo:Yukio Yasui

同時に生まれ変わったフットベッド

好評のフットベッド(インソール)も同時にモデルチェンジ。従来比で15%の軽量化を達成しながら、踏み込んでも潰れにくい素材に変更され、脚力の伝達性と耐久性を向上させた。従来のフットベッドは半年~一年ほどでヘタって薄くなってしまうという欠点があったため、これは地味だが嬉しい改善ポイントだ。ヒール部は密度の異なる2種類の素材が組み合わされ、カカトのサポート性が向上しているという。土踏まずのアーチ形状が異なる3種類がラインナップされる点は前作と変わっていない。

新型S-WORKSロードシューズをインプレッション

現行モデルを愛用する筆者が早速インプレッション現行モデルを愛用する筆者が早速インプレッション photo:Yukio Yasuiあれほどよかった現行モデルのどこをどう変えるのか。というか、これ以上どこがよくなるというのか。そう思われた従来型とはき比べても、確かに進化していた。アッパーのしなやかさが明確に向上しているにもかかわらず、ホールド力は高いレベルを維持している。引き足時に足の甲にかかるストレスも少なくなっており、アッパー全体の圧力集中を徹底的に低くした印象。

前作は3足も買ったほど気に入っていた筆者の主観もあるが、隙の全くない圧倒的な完成度を持っている。全シューズメーカーのお手本となるべき最高のシューズである。

カラーラインナップは4種類。左から、人気が出そうなブラック×ホワイトとレッド×ホワイト、精悍なオールブラック、一番右は女性用カラーラインナップは4種類。左から、人気が出そうなブラック×ホワイトとレッド×ホワイト、精悍なオールブラック、一番右は女性用 photo:Yukio Yasui

photo&text:Yukio Yasui in Snowbird, USA

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