今大会最後の頂上ゴールが設定されたヴェスヴィオ火山。ディルーカとメンショフが激しい攻防を繰り返す中、再びカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ)が飛び立った。

カジーノ、カジーノ、カジーノ!

今日の展望をガゼッタ紙でチェック今日の展望をガゼッタ紙でチェック photo:Kei Tsujiカンパニア州の州都ナポリから東に約40km。第19ステージは山間の街アヴェリーノをスタートした。

ナポリが近いこともあり、明らかに街の雰囲気が今までと違う。騒がしいというか何というか、とにかく落ち着かない。交通規制を巡っての一般市民との衝突はつきものだが、北イタリアのそれとは勢いが違う。警備担当者も「ナポリの近くはいつもカジーノ(混沌とした状態、英語のカオス)だ!」とあきれ顔だ。

知ってる選手来ないかなぁ知ってる選手来ないかなぁ photo:Kei Tsuji方言もキツく、一般市民の話す言葉が30%ぐらいしか分からない・・・。本当にイタリア語??と思うほど、標準語からかけ離れている。大会スタッフにこの悩みを打ち明けると、彼らも「何を言っているか分からない時が多い」という。ちょっと安心した。

そんなアヴェリーノ市民の熱烈な声援を受けてスタートしたレースは、一路アマルフィ海岸へと向かう。同海岸は風光明媚な景色が続くことで有名で、その中心の街アマルフィは映画「アマルフィ 女神の報酬(7月公開)」の舞台だ。

「これは行くしかないでしょう!」と鼻息を荒げたが、ゴール地点へのアクセスの悪さと、プレスルーム駐車場の入場時間がシビアだったことから泣く泣く断念。アヴェリーノのスタート地点だけ撮って、ヴェスヴィオ火山に直行した。

ヴェスヴィオを舞台にした最後の決戦

中腹の駐車場に向かう道は大渋滞中腹の駐車場に向かう道は大渋滞 photo:Kei Tsujiナポリを見下ろすように佇む標高1281mの火山、悪名高きヴェスヴィオ。西暦79年(一世紀)に大噴火を起こし、火砕流でポンペイの街を壊滅させたことはあまりにも有名だ。山頂まで登山電車が走っており、そのコマーシャルソング「フニクリ・フニクラ」は民謡として世界的に知られる。

ヴェスヴィオがジロのゴールを迎え入れるのは3回目。全体の平均勾配は7.4%だが、街中を抜ける序盤の4kmを省けば平均勾配は8.5%に達する。ラスト2kmを切ると10%近くまで跳ね上がる。マリアローザ争いにおける最後の闘いの舞台だ。

ヴェスヴィオ山頂ゴールは盛り上がる!ヴェスヴィオ山頂ゴールは盛り上がる! photo:Kei Tsujiここでもナポリ節が炸裂した。麓の交通整理が徹底されていなかったため、中腹(ゴール8km手前)に用意された駐車場は一般車で満杯に。駐車場に向けて大渋滞が起こり、プレスカードの威光をもってしても、駐車スペースを見つけるのに30分近くかかってしまった。

審判車をヒッチハイクしてプレスルーム(ゴール5km手前)に荷物を置き、シャトルバスを乗り継いでゴールに到着。道が狭く、限られたスペースに表彰台など一式を詰め込んだので、ゴール地点は選手たちの到着を待たずしてぎゅうぎゅう詰めだ。

相変わらず沿道の観客の優勝者予想はダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)。「メンショフが強いのは分かっている。だがディルーカは必ず何かやってくれる」と願う観客たち。その勢いに押され、上りでの撮影を諦め、マリアローザのディルーカが見たくてゴールに陣取る。観客を盛り上げるMCにマイクを渡され、自己紹介とシクロワイアードの宣伝(恥ずかしかった・・・)をしたりしてゴールを待つ。

サストレのクライミング能力が炸裂!

先頭でヴェスヴィオ頂上に姿を現したカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ)先頭でヴェスヴィオ頂上に姿を現したカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ) photo:Kei Tsuji総合成績で4位に沈んでいたイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)は「今のチームには2つの目標がある。一つはペッリツォッティの総合成績アップ。そしてもう一つは重要なヴェスヴィオステージを制すること」と、前日のインタビューで語っていた。それならば期待する他に手はない。

しかしそんなバッソのアタックを利用して飛び出したのはカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ)だった。かつてCSC時代にエースとアシストだった2人は、今は別々のチームでエースを担う。サストレはかつての主将を振り切り、再び難関頂上ゴールを制した。

ゴール後、報道陣に囲まれるフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)ゴール後、報道陣に囲まれるフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) photo:Kei Tsujiサストレはラスト10.4kmを27分33秒(平均22.65km/h)で上りきった。1時間に換算すると標高1745mを上ったことになる。ガゼッタ紙によるとこれはジロの歴代最高記録なのだそう。ちなみにサストレは2005年ブエルタで標高1907m/1時間という記録を持っている・・・・凄すぎる。

この日、ディルーカは確認されただけで4回アタックを繰り返した。ディルーカアタックのアナウンスの度に沿道は盛り上がったが、マリアローザは最後まで離れなかった。

狭いゴール地点は選手とスタッフで満杯に狭いゴール地点は選手とスタッフで満杯に photo:Kei Tsuji結局ディルーカはステージ3位に食い込み、ボーナスタイム8秒獲得でメンショフとの総合タイム差は18秒に。1回のステージ優勝(ボーナスタイム20秒)でひっくり返るタイム差だ。翌日は上り勾配のゴール(ラスト2.7kmが平均4.7%)が設定されており、ディルーカのマリアローザ奪回の可能性はまだ僅かながら残されている。ディルーカも「まだ終わっちゃいない」と諦めていない。

ゴール時間の遅さと回線の遅さによりプレスルームでの現地レポートアップを断念。下山してナポリの街に向かった。前日から数えて3人から「ナポリではくれぐれも盗難に気をつけろよ。カメラとかPCは絶対に車内に置くな」と助言されていたが、幸い車上荒らしの被害を受けずに済んでホッとしている。

ジロは残り2ステージ。いよいよローマが近づいてきた。

text&photo:Kei Tsuji

最新ニュース(全ジャンル)