2012/04/23(月) - 08:53
局所的にバケツをひっくり返したような雨と、限りなく続くアップダウン。タフなコンディションに見舞われたリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに挑んだ別府史之と土井雪広は、どちらもアシストとしての働きを全うし、途中でレースを降りた。日本チーム正ゴールキーパーの川島永嗣選手が訪れたレースの模様を振り返る。
川島永嗣選手がロードレース初観戦
リエージュのサンランベール広場に、ひと際大きな存在感を放つ日本人が登場した。ベルギーのジュピラーリーグ、リールセSKでプレイする川島永嗣選手が日本人選手の激励に訪れた。
世界に挑むアスリートの語学習得を応戦するプログラム、グローバルアスリートプロジェクトのアンバサダーを務める川島選手。
同じく同プログラムのアンバサダーを務める別府史之(グリーンエッジ)のチームバスを訪れ、固く握手を交わす。川島選手、全日本チャンピオンの別府、そして土井雪広(アルゴス・シマノ)は同じ1983年生まれ。
ロードレース観戦初体験の川島選手は「ロードレースの存在は知っていたけど、実際に見るのはこれが初めて。(リースセSKの)チームメイトたちが前日のレースで誰が勝ったという話をしていたけど、自分は分からなかった」と話す。
川島選手は急勾配のコート・ド・サンロシュに「こんなところを自転車で登るとは」と驚き、選手たちが260kmの距離を走破することに驚く。刺激的なロードレース観戦になったようだ。
伏兵イグリンスキーの独走勝利
「晴れて気温が20度以上に上がれば、スペイン人選手に有利になると思う。でも雨が降って気温が下がれば、ベルギー人向きだ」。前日のチームプレゼンテーションで、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)はそう語っていた。
蓋を開けてみれば、レース当日は雨と曇りと晴れが入り乱れる慌ただしい天候に。局所的な豪雨が選手を襲い、雹がコースに打ち付け、強い風が南西から吹き付ける。レースコンディション的には極限まで厳しい状況。
アルデンヌ・クラシックの最終戦として、アムステル・ゴールドレースやフレーシュ・ワロンヌと並んでカウントされるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。しかしその難易度は際立って高い。アムステルとフレーシュが「丘のクラシック」なら、リエージュは「山のクラシック」。延々と続くスケールの大きな丘陵地帯を突っ走る。
「ニーバリを追ってカウンターアタックを仕掛けたとき、まさか自分が勝つとは思わなかった」。カザフスタンチームに所属するカザフスタン人選手、イグリンスキーは記者会見でそう振り返る。
2010年のストラーデ・ビアンケで優勝し、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネやツール・ド・ロマンディでステージ優勝しているイグリンスキー。アスタナはエンリーコ・ガスパロット(イタリア)のアムステル制覇に続くアルデンヌ勝目。しかもガスパロットが3位争いのスプリントを制し、ワンスリー勝利を飾っている。
2005年と2010年のアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)に続くカザフスタンチャンピオンの誕生。ヨーロッパチームを渡り歩き、2007年からアスタナに所属する31歳は「長いキャリアの中で最も大きな勝利」と喜んだ。
アシストを終え、途中リタイアした別府史之と土井雪広
日本から出場した別府史之と土井雪広は、結果的にリエージュDNFに終わった。土井は前半からアタックを仕掛けたものの決まらず。逃げが決まってからはエースのアレックス(ジェニエ)のアシストとして風よけになり、ボトルや補給食を運び、最後の勝負どころに備えた。
ゴールまで20kmを残してバイクを降りた土井は「完全に出し切った。これ以上ないと言えるぐらい追い込めた。3週間のブエルタ・ア・エスパーニャを走り終えたときよりも疲れきっている。でも、疲れているけど調子は良い」と語る。
土曜日にお伝えした通り、土井は翌日のフライトで日本に帰る。シーズン前半の目標であり、調子のピークを合わせていたアルデンヌ・クラシックを終えたばかりの好コンディションで、1週間後の全日本選手権に挑むことになる。
今年の全日本選手権は、昨年同様岩手県八幡平で行なわれる。周回数が増やされたため、全長は200から250kmに延長。当然一日の獲得標高も膨れ上がり、計算では4000mを超える。「(全日本の)タイトルを取りに行く」。土井は高いコンディションとモチベーションをもって日本に帰国する。
別府も同様にチームの仕事をこなし、レース終盤に遅れてバイクを降りた。「コンディションは悪くはないけれど、今日はハードなレースだった」と別府。
レース後すぐに別府はチームバスで移動。その日のうちに200km移動し、翌日スイスに向けて更に500km南下する。翌々日の火曜日には、2年連続出場となるツール・ド・ロマンディが開幕する。「ツール・ド・ロマンディでは良い走りがしたい」。ツール・ド・ロマンディは別府が全日本チャンピオンジャージを着て走る最後のレースとなる。
「そして、ジロ・デ・イタリアではステージ優勝を狙う」。別府のモチベーションは高い。カタルーニャとアルデンヌを共に走った1983年生まれの2人は、それぞれの大きな目標を持って、それぞれの道を突き進む。
text&photo:Kei Tsuji in Liege, Belgium
川島永嗣選手がロードレース初観戦
リエージュのサンランベール広場に、ひと際大きな存在感を放つ日本人が登場した。ベルギーのジュピラーリーグ、リールセSKでプレイする川島永嗣選手が日本人選手の激励に訪れた。
世界に挑むアスリートの語学習得を応戦するプログラム、グローバルアスリートプロジェクトのアンバサダーを務める川島選手。
同じく同プログラムのアンバサダーを務める別府史之(グリーンエッジ)のチームバスを訪れ、固く握手を交わす。川島選手、全日本チャンピオンの別府、そして土井雪広(アルゴス・シマノ)は同じ1983年生まれ。
ロードレース観戦初体験の川島選手は「ロードレースの存在は知っていたけど、実際に見るのはこれが初めて。(リースセSKの)チームメイトたちが前日のレースで誰が勝ったという話をしていたけど、自分は分からなかった」と話す。
川島選手は急勾配のコート・ド・サンロシュに「こんなところを自転車で登るとは」と驚き、選手たちが260kmの距離を走破することに驚く。刺激的なロードレース観戦になったようだ。
伏兵イグリンスキーの独走勝利
「晴れて気温が20度以上に上がれば、スペイン人選手に有利になると思う。でも雨が降って気温が下がれば、ベルギー人向きだ」。前日のチームプレゼンテーションで、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)はそう語っていた。
蓋を開けてみれば、レース当日は雨と曇りと晴れが入り乱れる慌ただしい天候に。局所的な豪雨が選手を襲い、雹がコースに打ち付け、強い風が南西から吹き付ける。レースコンディション的には極限まで厳しい状況。
アルデンヌ・クラシックの最終戦として、アムステル・ゴールドレースやフレーシュ・ワロンヌと並んでカウントされるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。しかしその難易度は際立って高い。アムステルとフレーシュが「丘のクラシック」なら、リエージュは「山のクラシック」。延々と続くスケールの大きな丘陵地帯を突っ走る。
「ニーバリを追ってカウンターアタックを仕掛けたとき、まさか自分が勝つとは思わなかった」。カザフスタンチームに所属するカザフスタン人選手、イグリンスキーは記者会見でそう振り返る。
2010年のストラーデ・ビアンケで優勝し、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネやツール・ド・ロマンディでステージ優勝しているイグリンスキー。アスタナはエンリーコ・ガスパロット(イタリア)のアムステル制覇に続くアルデンヌ勝目。しかもガスパロットが3位争いのスプリントを制し、ワンスリー勝利を飾っている。
2005年と2010年のアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)に続くカザフスタンチャンピオンの誕生。ヨーロッパチームを渡り歩き、2007年からアスタナに所属する31歳は「長いキャリアの中で最も大きな勝利」と喜んだ。
アシストを終え、途中リタイアした別府史之と土井雪広
日本から出場した別府史之と土井雪広は、結果的にリエージュDNFに終わった。土井は前半からアタックを仕掛けたものの決まらず。逃げが決まってからはエースのアレックス(ジェニエ)のアシストとして風よけになり、ボトルや補給食を運び、最後の勝負どころに備えた。
ゴールまで20kmを残してバイクを降りた土井は「完全に出し切った。これ以上ないと言えるぐらい追い込めた。3週間のブエルタ・ア・エスパーニャを走り終えたときよりも疲れきっている。でも、疲れているけど調子は良い」と語る。
土曜日にお伝えした通り、土井は翌日のフライトで日本に帰る。シーズン前半の目標であり、調子のピークを合わせていたアルデンヌ・クラシックを終えたばかりの好コンディションで、1週間後の全日本選手権に挑むことになる。
今年の全日本選手権は、昨年同様岩手県八幡平で行なわれる。周回数が増やされたため、全長は200から250kmに延長。当然一日の獲得標高も膨れ上がり、計算では4000mを超える。「(全日本の)タイトルを取りに行く」。土井は高いコンディションとモチベーションをもって日本に帰国する。
別府も同様にチームの仕事をこなし、レース終盤に遅れてバイクを降りた。「コンディションは悪くはないけれど、今日はハードなレースだった」と別府。
レース後すぐに別府はチームバスで移動。その日のうちに200km移動し、翌日スイスに向けて更に500km南下する。翌々日の火曜日には、2年連続出場となるツール・ド・ロマンディが開幕する。「ツール・ド・ロマンディでは良い走りがしたい」。ツール・ド・ロマンディは別府が全日本チャンピオンジャージを着て走る最後のレースとなる。
「そして、ジロ・デ・イタリアではステージ優勝を狙う」。別府のモチベーションは高い。カタルーニャとアルデンヌを共に走った1983年生まれの2人は、それぞれの大きな目標を持って、それぞれの道を突き進む。
text&photo:Kei Tsuji in Liege, Belgium
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