2012/03/23(金) - 06:49
寒波による大雪に苦しめられた5チームも無事に時間通りスタート。ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ第4ステージは、冬の山間部から、春の平野部へ。原子力発電所を眼下に望む2級山岳パウメレス峠で勝負は動いた。
積雪に5チームが苦しむも、無事にスタートした第4ステージ
積雪について熱く語り合うリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)とヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ) photo:Kei Tsuji雪をともなう悪天候により散々な結果となった第3ステージを終え、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャは後半戦に突入する。
第3ステージで凍えきった選手たちは、前夜、ゴール地点ポルトアイネ麓のホテルに分散。しかし、カチューシャ、チームサクソバンク、FDJ・ビッグマット、オメガファーマ・クイックステップ、アージェードゥーゼルの5チームは、予定通り標高1947mのポルトアイネ頂上にあるホテルに滞在した。
そして第4ステージの朝、前夜から降り積もった40〜50cmの雪から脱出する作業から始まった上記5チーム。脱出に時間がかかったため、第4ステージの開始時間が遅らされるとアナウンスがあったものの、除雪車を総動員し、5チームは何とかポルトアイネから脱出。時間通りスタートが切られることとなった。
チームサクソバンクの宮島正典マッサーから届いた写真をこちらに紹介。
一晩でこの有り様。チームカーが見えません photo:Masanori Miyajima
朝、ホテルを出発するチームカーの車列 photo:Masanori Miyajima
雪に埋もれたトラックやチームカー photo:Masanori Miyajima
頂上のホテルに宿泊したチームは全員が被害者 photo:Masanori Miyajima
トラックにたどり着く為に雪かき photo:Masanori Miyajima
天候は回復。雨から曇り、曇りから晴れへ
出走サインを済ませ、一旦チームバスに戻る土井雪広(プロジェクト1t4i) photo:Kei Tsuji山間部は引き続き気温8度前後の雨に見舞われていたが、天気予報によると、レース後半の平野部は晴れ。山間の街トレンプのスタート地点に集まった選手たちは、前日のエピソードを笑い話にし、和やかな雰囲気でスタートを待つ。
前日にDNSとDNFを合わせて40名がレースを去り、幾分小さくなったプロトン(132名)。加えて、総合8位ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レディオシャック・ニッサン)が前日の落車による左手舟状骨骨折によりスタートしなかった。
長時間にわたってメイン集団を率いる別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji by courtesy of Volta a Catalunyaレース序盤、雨の残る2級山岳フォントロンガ峠でフリアン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)、ロメン・ジングル(ベルギー、コフィディス)、ヘスス・ロセンド(スペイン、アンダルシア)の3名が飛び出すと、すぐさまリーダージャージ擁するグリーンエッジの集団コントロールが始まる。
全日本チャンピオンジャージの別府史之やブレット・ランカスター(オーストラリア)がローテーションを回し、逃げる3名とのタイム差を常に3〜4分に保つ。やがて、山間部を抜け、平野部に入ると、春らしい暖かな太陽が選手たちを出迎える。気温は17度まで上昇した。
メイン集団を牽引する別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
アスコ原子力発電所を望む2級山岳パウメレス峠
ゴール地点アスコ近くにある原子力発電所 photo:Kei Tsujiゴール地点アスコは、原子力発電所がある街として知られている。1984年に稼働を開始し、2基の原子炉をもつ。なお、スペインには稼働中の原子炉が8基あり、1年間の総発電量は520億kWh。スペイン全体の電力供給のうち、原子力発電が占める割合は約19%。
スペインは再生可能エネルギーの活用に積極的であり、2011年には風力発電が原子力発電を抜いて最大の供給源となっている。
周回コースに入ると、グリーンエッジに代わってランプレ・ISDが集団をコントロール photo:Kei Tsuji第4ステージのゴール地点の正式な名前は「Asco La vostra energia(アスコ・あなたのエネルギー)」。原子力発電所だけではなく、街の周りには風力発電の風車が数多く立っている。
そんなアスコの街を起点とした28kmの周回コースで第4ステージは締めくくられる。周回コースの前半には、2級山岳パウメレス峠(登坂距離8.6km・平均勾配5.6%)が登場。
落ち着いて集団前方で走るリーダージャージのミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji「もうキツイ登りが少ないから、総合は大きく動かないかも知れない」とスタート前に話していたダミアーノ・クネゴ(イタリア)をリードするため、1回目のパウメレス峠でランプレ・ISDが集団コントロールを開始。登りで逃げとのタイム差を詰め、下り区間で早くも逃げを全て吸収する。
テクニカルな下りでリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)がアタックを仕掛け、これにサンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット)とトマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)が加わるも、結局は2周目のパウメレス峠の登りで吸収。エリート集団による登りバトルが始まった。
メンショフを振り切ってゴールするリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiハイペースを刻む集団は人数を減らし、そこからシルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)とリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)がアタック。
この時の状況を土井雪広(プロジェクト1t4i)は「最後の登りの頂上手前で遅れてしまった。そこまでリミットで走っていたから、アタックがかかったときにもうついて行けなかった」と振り返り、悔しさを滲ませる。
先頭集団に残れなかったことを悔やむ土井雪広(プロジェクト1t4i) photo:Kei Tsujiシュミットとライプハイマーには、下りでサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)、ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)、そして1周目の下りでも飛び出していたウランが合流。6名のエリートグループが、リーダージャージを含む19名の後続を引き離しにかかる。
先頭6名は下りで15秒のリードを築いたが、ゴールまで1500mを残してタイム差は5秒に。最終ストレートで後続に追いつかれたその刹那、ウランとメンショフがゴールスプリントを開始。後続に飲み込まれながらも、ウランがスプリントで先着した。
ステージ優勝に輝いたリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji第2ステージでアルバジーニに敗れ、惜しくもステージ優勝を逃していたコロンビア生まれの25歳が勝利。エースのウィギンズとポルトが去ったチームスカイにシーズン13勝目をもたらした。
最後のパウメレス峠で脱落し、1分56秒遅れの集団でゴールした土井は「登りを越えてからは、横風で差を詰められなかった。ただ単に、トップの25人のグループに入るには力が足りなかった。リザルトを見たら強い選手しか前に行っていなかったし、強い選手も遅れていた。明日はまた違う一日。引き続き頑張ります」と気を引き締める。
一日の大半を集団コントロールに費やした別府は、16分32秒遅れのグルペットでゴール。アルバジーニが先頭集団でゴールしたため、グリーンエッジはまた一日リーダージャージを守ることに成功している。終着地バルセロナまで残り3ステージ。別府は引き続きリーダーチームの責務を果たす。
その他、レースの模様はフォトギャラリーにて!
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012第4ステージ
1位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) 5h13'12"
2位 デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)
3位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)
4位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
7位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 ジュリアン・シモン(フランス、ソール・ソジャサン)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
46位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i) +1'56"
109位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +16'32"
個人総合成績
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 12h25'24"
2位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム) +1'32"
3位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
5位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
7位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)
8位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
58位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i) +5'37"
94位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +20'13"
山岳賞
クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)
スプリント賞
フリアン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)
チーム総合成績
ガーミン・バラクーダ
text&photo:Kei Tsuji in Asco, Spain
積雪に5チームが苦しむも、無事にスタートした第4ステージ
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第3ステージで凍えきった選手たちは、前夜、ゴール地点ポルトアイネ麓のホテルに分散。しかし、カチューシャ、チームサクソバンク、FDJ・ビッグマット、オメガファーマ・クイックステップ、アージェードゥーゼルの5チームは、予定通り標高1947mのポルトアイネ頂上にあるホテルに滞在した。
そして第4ステージの朝、前夜から降り積もった40〜50cmの雪から脱出する作業から始まった上記5チーム。脱出に時間がかかったため、第4ステージの開始時間が遅らされるとアナウンスがあったものの、除雪車を総動員し、5チームは何とかポルトアイネから脱出。時間通りスタートが切られることとなった。
チームサクソバンクの宮島正典マッサーから届いた写真をこちらに紹介。
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天候は回復。雨から曇り、曇りから晴れへ
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前日にDNSとDNFを合わせて40名がレースを去り、幾分小さくなったプロトン(132名)。加えて、総合8位ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レディオシャック・ニッサン)が前日の落車による左手舟状骨骨折によりスタートしなかった。
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全日本チャンピオンジャージの別府史之やブレット・ランカスター(オーストラリア)がローテーションを回し、逃げる3名とのタイム差を常に3〜4分に保つ。やがて、山間部を抜け、平野部に入ると、春らしい暖かな太陽が選手たちを出迎える。気温は17度まで上昇した。
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アスコ原子力発電所を望む2級山岳パウメレス峠
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そんなアスコの街を起点とした28kmの周回コースで第4ステージは締めくくられる。周回コースの前半には、2級山岳パウメレス峠(登坂距離8.6km・平均勾配5.6%)が登場。
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テクニカルな下りでリゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)がアタックを仕掛け、これにサンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット)とトマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)が加わるも、結局は2周目のパウメレス峠の登りで吸収。エリート集団による登りバトルが始まった。
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この時の状況を土井雪広(プロジェクト1t4i)は「最後の登りの頂上手前で遅れてしまった。そこまでリミットで走っていたから、アタックがかかったときにもうついて行けなかった」と振り返り、悔しさを滲ませる。
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先頭6名は下りで15秒のリードを築いたが、ゴールまで1500mを残してタイム差は5秒に。最終ストレートで後続に追いつかれたその刹那、ウランとメンショフがゴールスプリントを開始。後続に飲み込まれながらも、ウランがスプリントで先着した。
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最後のパウメレス峠で脱落し、1分56秒遅れの集団でゴールした土井は「登りを越えてからは、横風で差を詰められなかった。ただ単に、トップの25人のグループに入るには力が足りなかった。リザルトを見たら強い選手しか前に行っていなかったし、強い選手も遅れていた。明日はまた違う一日。引き続き頑張ります」と気を引き締める。
一日の大半を集団コントロールに費やした別府は、16分32秒遅れのグルペットでゴール。アルバジーニが先頭集団でゴールしたため、グリーンエッジはまた一日リーダージャージを守ることに成功している。終着地バルセロナまで残り3ステージ。別府は引き続きリーダーチームの責務を果たす。
その他、レースの模様はフォトギャラリーにて!
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012第4ステージ
1位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) 5h13'12"
2位 デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)
3位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)
4位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
7位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 ジュリアン・シモン(フランス、ソール・ソジャサン)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
46位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i) +1'56"
109位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +16'32"
個人総合成績
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 12h25'24"
2位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム) +1'32"
3位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
5位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
7位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)
8位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
58位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i) +5'37"
94位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +20'13"
山岳賞
クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)
スプリント賞
フリアン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)
チーム総合成績
ガーミン・バラクーダ
text&photo:Kei Tsuji in Asco, Spain
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