1級山岳で絞られた30人によるゴールスプリントで、リーダージャージを着るミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)が優勝。チームメイトで、アルバジーニの位置取りに力を尽くした別府史之は笑顔でステージ優勝者に駆け寄り、勝利を祝福した。

風吹きすさぶジローナをスタート

早めに出走サインを済ませた土井雪広(プロジェクト1t4i)早めに出走サインを済ませた土井雪広(プロジェクト1t4i) photo:Kei Tsuji第2ステージはジローナに始まり、ジローナで終わる。バルセロナから北に約100km、フランス国境まで60kmの位置にジローナはある。

街を貫くオニャル川沿いの住宅群や、旧ユダヤ人居住区は人気の観光スポット。しかしロードレースにおいては、多くの北米出身選手や、オーストラリア人選手が住む街として知られている。

チームバスから出てきた別府史之(グリーンエッジ)チームバスから出てきた別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiあのランス・アームストロング(アメリカ)がヨーロッパの拠点にしていたのもこのジローナ。ガーミン・バラクーダが拠点を置いているため、現在でも多くの選手が住み着く。

ジローナに所縁のある選手に聞くと、その魅力は、生活環境、トレーニング環境、気候、そして現地の人柄の良さであると答える。さすがに街中はゴチャゴチャしているが、街から一歩出れば、丘陵地帯から標高のある山岳、はたまた海に続く平野まで、バリエーション豊かな地形が広がっている。遠くには雪を冠したピレネー山脈も見える。

逃げるフリアン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)ら3名逃げるフリアン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)ら3名 photo:Kei Tsujiそんなジローナを起点に、ぐるっと大きく161km走り、再びジローナに戻る第2ステージ。中盤までほぼフラットで、ジローナ在住選手にとって定番の登りである1級山岳アンヘルス峠(標高480m)が、ゴールの14km手前に登場する。

前日に選手たちを凍えさせた雨雲は、じっと静かに山を覆っている。平野を駆けるこの日は雨の心配は無いものの、代わって強い風が吹き付ける。スタート地点に顔を出したデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)は「今日は風が強いなぁ」と言ってフラリと去って行った。

イベリア半島最大の天然湖であるバニョレス湖を望むイベリア半島最大の天然湖であるバニョレス湖を望む photo:Kei Tsujiかなり早めに出走サインを終えた土井雪広(プロジェクト1t4i)は「今日は昨日と一緒(つまり前半はアタックし、ダメなら後半の山岳に備える)」と話してスタート。向かい風、横風、追い風、そして1級山岳という第2ステージが始まった。

逃げを成功させたのは、UCIプロコンチネンタルチームに所属する3人。フリアン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)、シリル・ベシィ(フランス、ソール・ソジャサン)、ヨルディ・シモン(スペイン、アンダルシア)。

リーダージャージを守る立場のグリーンエッジは、無条件でメイン集団をコントロールするという使命をもつ。スプリンターのジュリアン・ディーン(ニュージーランド)を含め、グリーンエッジは全員で集団をコントロール。全日本チャンピオンジャージの別府史之も集団を率いた。

メイン集団の先頭にはブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)をはじめ、多くの有力選手がひしめくメイン集団の先頭にはブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)をはじめ、多くの有力選手がひしめく photo:Kei Tsuji


横風と1級山岳でメイン集団が分裂

1級山岳アンヘルス峠で見つけたオスカル・プヨル(スペイン)1級山岳アンヘルス峠で見つけたオスカル・プヨル(スペイン) photo:Kei Tsuji横風の中、激しい位置取りが繰り広げられながらも、レースは比較的平穏に進む。しかしゴールまで55kmを残した補給ポイントで、数チームがペースアップ。さらに優勝候補のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が落車したことで一気に慌ただしくなる。

オメガファーマ・クイックステップがメイン集団のペースアップを図ると、最大7分のリードを得ていたエスケープトリオは吸収される。パリ〜ニース最終日前日の第7ステージ(ライプハイマーが落車し、モビスターがペースを上げた)の逆パターンの如く、メイン集団はバルベルデを含む第2集団を引き離した。

リーダージャージのミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)がスプリントで先頭にリーダージャージのミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)がスプリントで先頭に photo:Kei Tsuji1級山岳アンヘルス峠の登坂が始まると、オメガファーマ・クイックステップがリードするメイン集団から、タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)らがアタックを仕掛けるも決まらない。

ハイペースを刻む集団は人数を減らして行く。「脚の調子は良く、3級山岳を楽に越えたけど、1級山岳の手前の位置取りで脚を使ってしまい、登りで力が足らず遅れてしまった」と土井は振り返る。

リーダージャージを着るミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)がステージ2連勝リーダージャージを着るミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)がステージ2連勝 photo:Kei Tsujiアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)もメイン集団から脱落。同様にアンヘルス峠の中盤で遅れた別府は「前の集団に残ってアルバジーニと一緒に動いていたけど、登りの中盤で集団がバラバラになって、土井選手やアンディシュレクと一緒に遅れました」と話す。

結局、アンヘルス峠でメイン集団は30名ほどに絞られ、頂上手前でダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)がアタック。下りでダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)とマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)が追いついて先行したものの、ゴール手前の平坦路で吸収された。

2分09秒遅れでゴールするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)2分09秒遅れでゴールするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsujiジローナの大通りに作られたゴール地点で、30名によるゴールスプリント。イギリスチャンピオンジャージのブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)がリゴベルト・ウラン(コロンビア)のためにリードアウトするも、その後方からリーダージャージのアルバジーニが別ラインで飛び出す。

別府が「空を飛ぶような調子の良さ」と表現するアルバジーニが、抜群のスプリントで先着した。

ミハエル・アルバジーニ(スイス)の勝利を祝福する別府史之(グリーンエッジ)ミハエル・アルバジーニ(スイス)の勝利を祝福する別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji総合リーダーによるステージ2連勝。グリーンエッジの勢いが止まらない。ゴール後、笑顔で駆けつけるチームメイト一人一人に、アルバジーニは声をかけて感謝の気持ちを伝える。「リーダージャージを着てステージ優勝することはファンタスティック。一日中ずっと働いてくれたチームメイトたちに、勝利と言う形で報いることができてハッピーだ」。

前日の逃げ切りリードがそのまま総合リードとなり、アルバジーニは総合2位以下を1分32秒引き離している状態。しかし第3ステージは難関山岳ステージ。グリーンエッジのニール・スティーブンス監督は「我々はステージ1勝を狙っていたが、すでにステージ2勝。予想を遥かに超えた成功を収めている。しかしこれはクライマーのためのステージレースだ」と、冷静に状況を受け止めている。

2分09秒遅れの集団でゴールした土井雪広(プロジェクト1t4i)2分09秒遅れの集団でゴールした土井雪広(プロジェクト1t4i) photo:Kei Tsuji最後まで集団復帰が叶わなかったバルベルデは、別府や土井、アンディ・シュレクらと同じ2分09秒遅れでフィニッシュ。総合では4分01秒遅れの101位まで順位を落としている。

総合争いは第3ステージで決着すると言っても良い。前半から1級山岳、1級山岳、超級山岳が続き、最後は超級山岳の頂上ゴール。いずれも標高1800mクラスの本格山岳で、しかも天気予報は下り坂。雨、もしくは雪の中の厳しいレースが予想される。

追記:2010年のジャパンカップ・クリテリウムに出場したオスカル・プヨル(スペイン、当時サーヴェロ・テストチーム)が、アンヘルス峠で個人トレーニングを行なっていた。昨年オメガファーマ・ロットに所属していたが、今シーズンはチームが見つからずに無所属。「今は厳しい時期。トレーニングはしっかり続けているよ」と、変わらない笑顔で話した。

その他、レースの模様はフォトギャラリーにて!

ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012第2ステージ結果
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)          3h52'07"
2位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
4位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)
6位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)
7位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ・ビッグマット)
8位 アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)
9位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
78位 別府史之(日本、グリーンエッジ)                  +2'09"
95位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)

個人総合成績
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)          7h12'11"
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)          +1'32"
3位 ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼル)
4位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)
5位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ・ビッグマット)
6位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
7位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ)
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
9位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レディオシャック・ニッサン)
10位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
70位 別府史之(日本、グリーンエッジ)                  +3'41"
99位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)

山岳賞
ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)

スプリント賞
アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソウル・ソジャサン)

チーム総合成績
チームスカイ

text&photo:Kei Tsuji in Girona, Spain

最新ニュース(全ジャンル)