2012/03/21(水) - 06:44
1級山岳で絞られた30人によるゴールスプリントで、リーダージャージを着るミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)が優勝。チームメイトで、アルバジーニの位置取りに力を尽くした別府史之は笑顔でステージ優勝者に駆け寄り、勝利を祝福した。
風吹きすさぶジローナをスタート
第2ステージはジローナに始まり、ジローナで終わる。バルセロナから北に約100km、フランス国境まで60kmの位置にジローナはある。
街を貫くオニャル川沿いの住宅群や、旧ユダヤ人居住区は人気の観光スポット。しかしロードレースにおいては、多くの北米出身選手や、オーストラリア人選手が住む街として知られている。
あのランス・アームストロング(アメリカ)がヨーロッパの拠点にしていたのもこのジローナ。ガーミン・バラクーダが拠点を置いているため、現在でも多くの選手が住み着く。
ジローナに所縁のある選手に聞くと、その魅力は、生活環境、トレーニング環境、気候、そして現地の人柄の良さであると答える。さすがに街中はゴチャゴチャしているが、街から一歩出れば、丘陵地帯から標高のある山岳、はたまた海に続く平野まで、バリエーション豊かな地形が広がっている。遠くには雪を冠したピレネー山脈も見える。
そんなジローナを起点に、ぐるっと大きく161km走り、再びジローナに戻る第2ステージ。中盤までほぼフラットで、ジローナ在住選手にとって定番の登りである1級山岳アンヘルス峠(標高480m)が、ゴールの14km手前に登場する。
前日に選手たちを凍えさせた雨雲は、じっと静かに山を覆っている。平野を駆けるこの日は雨の心配は無いものの、代わって強い風が吹き付ける。スタート地点に顔を出したデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)は「今日は風が強いなぁ」と言ってフラリと去って行った。
かなり早めに出走サインを終えた土井雪広(プロジェクト1t4i)は「今日は昨日と一緒(つまり前半はアタックし、ダメなら後半の山岳に備える)」と話してスタート。向かい風、横風、追い風、そして1級山岳という第2ステージが始まった。
逃げを成功させたのは、UCIプロコンチネンタルチームに所属する3人。フリアン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)、シリル・ベシィ(フランス、ソール・ソジャサン)、ヨルディ・シモン(スペイン、アンダルシア)。
リーダージャージを守る立場のグリーンエッジは、無条件でメイン集団をコントロールするという使命をもつ。スプリンターのジュリアン・ディーン(ニュージーランド)を含め、グリーンエッジは全員で集団をコントロール。全日本チャンピオンジャージの別府史之も集団を率いた。
横風と1級山岳でメイン集団が分裂
横風の中、激しい位置取りが繰り広げられながらも、レースは比較的平穏に進む。しかしゴールまで55kmを残した補給ポイントで、数チームがペースアップ。さらに優勝候補のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が落車したことで一気に慌ただしくなる。
オメガファーマ・クイックステップがメイン集団のペースアップを図ると、最大7分のリードを得ていたエスケープトリオは吸収される。パリ〜ニース最終日前日の第7ステージ(ライプハイマーが落車し、モビスターがペースを上げた)の逆パターンの如く、メイン集団はバルベルデを含む第2集団を引き離した。
1級山岳アンヘルス峠の登坂が始まると、オメガファーマ・クイックステップがリードするメイン集団から、タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)らがアタックを仕掛けるも決まらない。
ハイペースを刻む集団は人数を減らして行く。「脚の調子は良く、3級山岳を楽に越えたけど、1級山岳の手前の位置取りで脚を使ってしまい、登りで力が足らず遅れてしまった」と土井は振り返る。
アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)もメイン集団から脱落。同様にアンヘルス峠の中盤で遅れた別府は「前の集団に残ってアルバジーニと一緒に動いていたけど、登りの中盤で集団がバラバラになって、土井選手やアンディシュレクと一緒に遅れました」と話す。
結局、アンヘルス峠でメイン集団は30名ほどに絞られ、頂上手前でダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)がアタック。下りでダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)とマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)が追いついて先行したものの、ゴール手前の平坦路で吸収された。
ジローナの大通りに作られたゴール地点で、30名によるゴールスプリント。イギリスチャンピオンジャージのブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)がリゴベルト・ウラン(コロンビア)のためにリードアウトするも、その後方からリーダージャージのアルバジーニが別ラインで飛び出す。
別府が「空を飛ぶような調子の良さ」と表現するアルバジーニが、抜群のスプリントで先着した。
総合リーダーによるステージ2連勝。グリーンエッジの勢いが止まらない。ゴール後、笑顔で駆けつけるチームメイト一人一人に、アルバジーニは声をかけて感謝の気持ちを伝える。「リーダージャージを着てステージ優勝することはファンタスティック。一日中ずっと働いてくれたチームメイトたちに、勝利と言う形で報いることができてハッピーだ」。
前日の逃げ切りリードがそのまま総合リードとなり、アルバジーニは総合2位以下を1分32秒引き離している状態。しかし第3ステージは難関山岳ステージ。グリーンエッジのニール・スティーブンス監督は「我々はステージ1勝を狙っていたが、すでにステージ2勝。予想を遥かに超えた成功を収めている。しかしこれはクライマーのためのステージレースだ」と、冷静に状況を受け止めている。
最後まで集団復帰が叶わなかったバルベルデは、別府や土井、アンディ・シュレクらと同じ2分09秒遅れでフィニッシュ。総合では4分01秒遅れの101位まで順位を落としている。
総合争いは第3ステージで決着すると言っても良い。前半から1級山岳、1級山岳、超級山岳が続き、最後は超級山岳の頂上ゴール。いずれも標高1800mクラスの本格山岳で、しかも天気予報は下り坂。雨、もしくは雪の中の厳しいレースが予想される。
追記:2010年のジャパンカップ・クリテリウムに出場したオスカル・プヨル(スペイン、当時サーヴェロ・テストチーム)が、アンヘルス峠で個人トレーニングを行なっていた。昨年オメガファーマ・ロットに所属していたが、今シーズンはチームが見つからずに無所属。「今は厳しい時期。トレーニングはしっかり続けているよ」と、変わらない笑顔で話した。
その他、レースの模様はフォトギャラリーにて!
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012第2ステージ結果
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 3h52'07"
2位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
4位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)
6位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)
7位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ・ビッグマット)
8位 アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)
9位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
78位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +2'09"
95位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)
個人総合成績
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 7h12'11"
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +1'32"
3位 ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼル)
4位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)
5位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ・ビッグマット)
6位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
7位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ)
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
9位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レディオシャック・ニッサン)
10位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
70位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +3'41"
99位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)
山岳賞
ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)
スプリント賞
アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソウル・ソジャサン)
チーム総合成績
チームスカイ
text&photo:Kei Tsuji in Girona, Spain
風吹きすさぶジローナをスタート
第2ステージはジローナに始まり、ジローナで終わる。バルセロナから北に約100km、フランス国境まで60kmの位置にジローナはある。
街を貫くオニャル川沿いの住宅群や、旧ユダヤ人居住区は人気の観光スポット。しかしロードレースにおいては、多くの北米出身選手や、オーストラリア人選手が住む街として知られている。
あのランス・アームストロング(アメリカ)がヨーロッパの拠点にしていたのもこのジローナ。ガーミン・バラクーダが拠点を置いているため、現在でも多くの選手が住み着く。
ジローナに所縁のある選手に聞くと、その魅力は、生活環境、トレーニング環境、気候、そして現地の人柄の良さであると答える。さすがに街中はゴチャゴチャしているが、街から一歩出れば、丘陵地帯から標高のある山岳、はたまた海に続く平野まで、バリエーション豊かな地形が広がっている。遠くには雪を冠したピレネー山脈も見える。
そんなジローナを起点に、ぐるっと大きく161km走り、再びジローナに戻る第2ステージ。中盤までほぼフラットで、ジローナ在住選手にとって定番の登りである1級山岳アンヘルス峠(標高480m)が、ゴールの14km手前に登場する。
前日に選手たちを凍えさせた雨雲は、じっと静かに山を覆っている。平野を駆けるこの日は雨の心配は無いものの、代わって強い風が吹き付ける。スタート地点に顔を出したデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)は「今日は風が強いなぁ」と言ってフラリと去って行った。
かなり早めに出走サインを終えた土井雪広(プロジェクト1t4i)は「今日は昨日と一緒(つまり前半はアタックし、ダメなら後半の山岳に備える)」と話してスタート。向かい風、横風、追い風、そして1級山岳という第2ステージが始まった。
逃げを成功させたのは、UCIプロコンチネンタルチームに所属する3人。フリアン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)、シリル・ベシィ(フランス、ソール・ソジャサン)、ヨルディ・シモン(スペイン、アンダルシア)。
リーダージャージを守る立場のグリーンエッジは、無条件でメイン集団をコントロールするという使命をもつ。スプリンターのジュリアン・ディーン(ニュージーランド)を含め、グリーンエッジは全員で集団をコントロール。全日本チャンピオンジャージの別府史之も集団を率いた。
横風と1級山岳でメイン集団が分裂
横風の中、激しい位置取りが繰り広げられながらも、レースは比較的平穏に進む。しかしゴールまで55kmを残した補給ポイントで、数チームがペースアップ。さらに優勝候補のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が落車したことで一気に慌ただしくなる。
オメガファーマ・クイックステップがメイン集団のペースアップを図ると、最大7分のリードを得ていたエスケープトリオは吸収される。パリ〜ニース最終日前日の第7ステージ(ライプハイマーが落車し、モビスターがペースを上げた)の逆パターンの如く、メイン集団はバルベルデを含む第2集団を引き離した。
1級山岳アンヘルス峠の登坂が始まると、オメガファーマ・クイックステップがリードするメイン集団から、タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)らがアタックを仕掛けるも決まらない。
ハイペースを刻む集団は人数を減らして行く。「脚の調子は良く、3級山岳を楽に越えたけど、1級山岳の手前の位置取りで脚を使ってしまい、登りで力が足らず遅れてしまった」と土井は振り返る。
アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)もメイン集団から脱落。同様にアンヘルス峠の中盤で遅れた別府は「前の集団に残ってアルバジーニと一緒に動いていたけど、登りの中盤で集団がバラバラになって、土井選手やアンディシュレクと一緒に遅れました」と話す。
結局、アンヘルス峠でメイン集団は30名ほどに絞られ、頂上手前でダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)がアタック。下りでダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)とマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)が追いついて先行したものの、ゴール手前の平坦路で吸収された。
ジローナの大通りに作られたゴール地点で、30名によるゴールスプリント。イギリスチャンピオンジャージのブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)がリゴベルト・ウラン(コロンビア)のためにリードアウトするも、その後方からリーダージャージのアルバジーニが別ラインで飛び出す。
別府が「空を飛ぶような調子の良さ」と表現するアルバジーニが、抜群のスプリントで先着した。
総合リーダーによるステージ2連勝。グリーンエッジの勢いが止まらない。ゴール後、笑顔で駆けつけるチームメイト一人一人に、アルバジーニは声をかけて感謝の気持ちを伝える。「リーダージャージを着てステージ優勝することはファンタスティック。一日中ずっと働いてくれたチームメイトたちに、勝利と言う形で報いることができてハッピーだ」。
前日の逃げ切りリードがそのまま総合リードとなり、アルバジーニは総合2位以下を1分32秒引き離している状態。しかし第3ステージは難関山岳ステージ。グリーンエッジのニール・スティーブンス監督は「我々はステージ1勝を狙っていたが、すでにステージ2勝。予想を遥かに超えた成功を収めている。しかしこれはクライマーのためのステージレースだ」と、冷静に状況を受け止めている。
最後まで集団復帰が叶わなかったバルベルデは、別府や土井、アンディ・シュレクらと同じ2分09秒遅れでフィニッシュ。総合では4分01秒遅れの101位まで順位を落としている。
総合争いは第3ステージで決着すると言っても良い。前半から1級山岳、1級山岳、超級山岳が続き、最後は超級山岳の頂上ゴール。いずれも標高1800mクラスの本格山岳で、しかも天気予報は下り坂。雨、もしくは雪の中の厳しいレースが予想される。
追記:2010年のジャパンカップ・クリテリウムに出場したオスカル・プヨル(スペイン、当時サーヴェロ・テストチーム)が、アンヘルス峠で個人トレーニングを行なっていた。昨年オメガファーマ・ロットに所属していたが、今シーズンはチームが見つからずに無所属。「今は厳しい時期。トレーニングはしっかり続けているよ」と、変わらない笑顔で話した。
その他、レースの模様はフォトギャラリーにて!
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012第2ステージ結果
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 3h52'07"
2位 ダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
4位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)
6位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)
7位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ・ビッグマット)
8位 アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)
9位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
78位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +2'09"
95位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)
個人総合成績
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 7h12'11"
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +1'32"
3位 ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼル)
4位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)
5位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ・ビッグマット)
6位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)
7位 リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ)
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
9位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レディオシャック・ニッサン)
10位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
70位 別府史之(日本、グリーンエッジ) +3'41"
99位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)
山岳賞
ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)
スプリント賞
アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソウル・ソジャサン)
チーム総合成績
チームスカイ
text&photo:Kei Tsuji in Girona, Spain
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