2012/03/18(日) - 06:47
第103回ミラノ〜サンレモ(UCIワールドツアー)の決定的な動きは、ゴール6km手前のポッジオで生まれた。使命感を持ってアタックしたニーバリ、いち早く反応したジェランス、そして猛烈な勢いで前を牽き倒したカンチェラーラ。オーストラリアチャンピオンが、母国にとって2年連続となるミラノ〜サンレモのタイトルを手にした。
14分のタイム差をつけた逃げ レマニエで早々に脱落したカヴ
うっすらと朝もやがかかったミラノの喧噪の中に、スフォルツェスコ城はある。「最後の晩餐」で有名なサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院や、荘厳なドゥオーモに並ぶ人気観光地の前がミラノ〜サンレモの出発地点。
298kmという世界最長レースに挑む25チーム・各8名の選手たちは、スフォルツェスコ城の入り口に設けられたサイン台で、多くの観客に見守られながら出走サインを済ませた。
3月13日にスイスで発生したバス衝突事故によって28人のベルギーの子どもたちが亡くなったことを受け、レース主催者は黙祷を捧げることを決定。フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)をはじめとするベルギー人選手を先頭に、200名の選手たち、プレス、そして観客たちが1分間の黙祷を捧げた。
ミラノの中心部をパレード走行し、現地時間10時6分に正式なスタートが切られると、すぐさまジ・チェン(中国、プロジェクト1t4i)とヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、チームタイプ1)が飛び出す。
これにミカエル・モルコフ(デンマーク、チームサクソバンク)ら7名が合流し、9名の長い逃げが始まった。
ポー川が作り出した広大なロンバルディア平原で、モルコフら9名は最大で14分のリードを築き上げることに成功する。
トゥルキーノ峠を越えてリグーリア海岸に出ると、チームスカイやリクイガス・キャノンデール、カチューシャがメイン集団のペースアップを開始。街中のロータリーやカーブの連続に伴う位置取りも加わり、細かなアップダウンが続く海岸線でタイム差は着実に縮まった。
ゴール94km手前に位置するレマニエ(標高318m)に差し掛かると、大会初の中国人選手として注目を集めていたチェンが逃げグループから脱落。一方のメイン集団からは、アルカンシェルを着るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)が早くも遅れてしまう。
カヴェンディッシュの集団復帰を目指し、チームスカイのチームメイトが懸命に第2集団を率いたが、オメガファーマ・クイックステップやBMCレーシングチームがペースを保つメイン集団とのタイム差は広がるばかり。結局最後までカヴェンディッシュは集団に復帰することは出来ず。2度目の大会制覇を諦めたカヴェンディッシュは、チームメイトの肩を叩き、その旨を伝えた。
ニーバリのアタック、カンチェラーラの猛進、ジェランスのスプリント
ゴールまで60kmを残して逃げグループを飲み込んだメイン集団は、いよいよ勝負のチプレッサとポッジオに突入する。
最初の難関チプレッサでパツィハビエル・ビーラ(スペイン、ウテンシルノルド・ネイムド)とジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)が攻撃を仕掛けるも、リクイガス・キャノンデール勢によって引き戻される。
レースが佳境を迎える中、優勝候補の一角ジルベールが落車に巻き込まれ、ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・バラクーダ)が足止めを食らう。再スタートに時間を食った両者はメイン集団から完全に脱落した。
テクニカルなチプレッサの下りでカンチェラーラやトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)を含むグループが飛び出すも、ポッジオに至る平坦区間で先頭は50名ほどに膨れ上がる。集団はラボバンクに導かれる形でポッジオに突入した。
高低差136mのポッジオで、それまで積極的に集団を牽いていたヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)がアタックを仕掛け、続いてアンヘル・マドラソルイス(スペイン、モビスター)がアタック。これらの動きが落ち着くと、ついに本命が動いた。
頂上まで1kmを切ると、ティレーノ〜アドリアティコを制したばかりのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が強烈なアタックを仕掛け、これにサイモン・ジェランス(オーストラリア、グリーンエッジ)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)が合流する。
この3名は数秒のリードを得てポッジオの頂上をクリア。カンチェラーラのリードによって、下りで更に後続とのタイム差は広がって行く。
後続集団にエーススプリンターを残したニーバリとジェランスはローテーションに加わらず、カンチェラーラがほぼ先頭固定でサンレモの街へ。ゴールに至る短い平坦区間でも先頭3名のペースは落ちず、後続を振り切ったまま海岸通ルンゴマーレ・カルヴィーノの最終ストレートにやってきた。
カンチェラーラ先頭のまま、3名によるゴールスプリントがスタート。グリーンとゴールドのオーストラリアナショナルジャージが、カンチェラーラを追い抜き、ニーバリを置き去りにしてゴールへと突き進む。ジェランスが、傾き始めた太陽に向かって両手を突き上げた。
レース時間は6時間59分24秒。平均スピードは42.632km/hだった。
オーストラリア勢による2年連続ミラノ〜サンレモ制覇
昨年マシュー・ゴス(オーストラリア)が果たした南半球出身選手によるミラノ〜サンレモ初制覇に続く、ジェランスの大会制覇。2年連続で、オーストラリア国歌がサンレモの街に響いた。
レース後の記者会見でジェランスは「今日はファビアン(カンチェラーラ)が間違いなく一番強かった。まるでモーターバイクだった」と、カンチェラーラの走りを讃える。「彼が逃げグループをゴールまで連れて行ったと行っていいと思う。自分も1回だけローテーションに加わったけど、すぐにファビアンが前に出たんだ」。
ニーバリのアタックに反応し、そしてカンチェラーラの番手でスプリント開始。「勝利を奪った」との声にジェランスはこう反論する。「ディフェンディングチャンピオンのゴスが後続集団にいたので、自分の仕事はアタックをチェックすることだった。でもロードレースでは強い選手がいつも勝つわけじゃない。頭を使ってチャンスを作ることも出来るんだ」。
ツアー・ダウンアンダーに続くUCIワールドツアー制覇により、ジェランスはUCIワールドツアーランキング首位に返り咲き。「グリーンエッジにとって、これ以上の良いスタートは望めない。チームの結成に携わったスタッフに感謝している」。チーム創設1年目ながら、グリーンエッジは早くもビッグタイトルを手にした。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
ミラノ〜サンレモ2012結果
1位 サイモン・ジェランス(オーストラリア、グリーンエッジ) 6h59'24"
2位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) +02"
5位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、プロジェクト1t4i)
6位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
7位 オスカル・フレイレ(スペイン、カチューシャ)
8位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)
9位 ダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
10位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)
text&photo:Kei Tsuji in San Remo, Italy
14分のタイム差をつけた逃げ レマニエで早々に脱落したカヴ
うっすらと朝もやがかかったミラノの喧噪の中に、スフォルツェスコ城はある。「最後の晩餐」で有名なサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院や、荘厳なドゥオーモに並ぶ人気観光地の前がミラノ〜サンレモの出発地点。
298kmという世界最長レースに挑む25チーム・各8名の選手たちは、スフォルツェスコ城の入り口に設けられたサイン台で、多くの観客に見守られながら出走サインを済ませた。
3月13日にスイスで発生したバス衝突事故によって28人のベルギーの子どもたちが亡くなったことを受け、レース主催者は黙祷を捧げることを決定。フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)をはじめとするベルギー人選手を先頭に、200名の選手たち、プレス、そして観客たちが1分間の黙祷を捧げた。
ミラノの中心部をパレード走行し、現地時間10時6分に正式なスタートが切られると、すぐさまジ・チェン(中国、プロジェクト1t4i)とヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、チームタイプ1)が飛び出す。
これにミカエル・モルコフ(デンマーク、チームサクソバンク)ら7名が合流し、9名の長い逃げが始まった。
ポー川が作り出した広大なロンバルディア平原で、モルコフら9名は最大で14分のリードを築き上げることに成功する。
トゥルキーノ峠を越えてリグーリア海岸に出ると、チームスカイやリクイガス・キャノンデール、カチューシャがメイン集団のペースアップを開始。街中のロータリーやカーブの連続に伴う位置取りも加わり、細かなアップダウンが続く海岸線でタイム差は着実に縮まった。
ゴール94km手前に位置するレマニエ(標高318m)に差し掛かると、大会初の中国人選手として注目を集めていたチェンが逃げグループから脱落。一方のメイン集団からは、アルカンシェルを着るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)が早くも遅れてしまう。
カヴェンディッシュの集団復帰を目指し、チームスカイのチームメイトが懸命に第2集団を率いたが、オメガファーマ・クイックステップやBMCレーシングチームがペースを保つメイン集団とのタイム差は広がるばかり。結局最後までカヴェンディッシュは集団に復帰することは出来ず。2度目の大会制覇を諦めたカヴェンディッシュは、チームメイトの肩を叩き、その旨を伝えた。
ニーバリのアタック、カンチェラーラの猛進、ジェランスのスプリント
ゴールまで60kmを残して逃げグループを飲み込んだメイン集団は、いよいよ勝負のチプレッサとポッジオに突入する。
最初の難関チプレッサでパツィハビエル・ビーラ(スペイン、ウテンシルノルド・ネイムド)とジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)が攻撃を仕掛けるも、リクイガス・キャノンデール勢によって引き戻される。
レースが佳境を迎える中、優勝候補の一角ジルベールが落車に巻き込まれ、ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・バラクーダ)が足止めを食らう。再スタートに時間を食った両者はメイン集団から完全に脱落した。
テクニカルなチプレッサの下りでカンチェラーラやトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)を含むグループが飛び出すも、ポッジオに至る平坦区間で先頭は50名ほどに膨れ上がる。集団はラボバンクに導かれる形でポッジオに突入した。
高低差136mのポッジオで、それまで積極的に集団を牽いていたヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)がアタックを仕掛け、続いてアンヘル・マドラソルイス(スペイン、モビスター)がアタック。これらの動きが落ち着くと、ついに本命が動いた。
頂上まで1kmを切ると、ティレーノ〜アドリアティコを制したばかりのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が強烈なアタックを仕掛け、これにサイモン・ジェランス(オーストラリア、グリーンエッジ)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)が合流する。
この3名は数秒のリードを得てポッジオの頂上をクリア。カンチェラーラのリードによって、下りで更に後続とのタイム差は広がって行く。
後続集団にエーススプリンターを残したニーバリとジェランスはローテーションに加わらず、カンチェラーラがほぼ先頭固定でサンレモの街へ。ゴールに至る短い平坦区間でも先頭3名のペースは落ちず、後続を振り切ったまま海岸通ルンゴマーレ・カルヴィーノの最終ストレートにやってきた。
カンチェラーラ先頭のまま、3名によるゴールスプリントがスタート。グリーンとゴールドのオーストラリアナショナルジャージが、カンチェラーラを追い抜き、ニーバリを置き去りにしてゴールへと突き進む。ジェランスが、傾き始めた太陽に向かって両手を突き上げた。
レース時間は6時間59分24秒。平均スピードは42.632km/hだった。
オーストラリア勢による2年連続ミラノ〜サンレモ制覇
昨年マシュー・ゴス(オーストラリア)が果たした南半球出身選手によるミラノ〜サンレモ初制覇に続く、ジェランスの大会制覇。2年連続で、オーストラリア国歌がサンレモの街に響いた。
レース後の記者会見でジェランスは「今日はファビアン(カンチェラーラ)が間違いなく一番強かった。まるでモーターバイクだった」と、カンチェラーラの走りを讃える。「彼が逃げグループをゴールまで連れて行ったと行っていいと思う。自分も1回だけローテーションに加わったけど、すぐにファビアンが前に出たんだ」。
ニーバリのアタックに反応し、そしてカンチェラーラの番手でスプリント開始。「勝利を奪った」との声にジェランスはこう反論する。「ディフェンディングチャンピオンのゴスが後続集団にいたので、自分の仕事はアタックをチェックすることだった。でもロードレースでは強い選手がいつも勝つわけじゃない。頭を使ってチャンスを作ることも出来るんだ」。
ツアー・ダウンアンダーに続くUCIワールドツアー制覇により、ジェランスはUCIワールドツアーランキング首位に返り咲き。「グリーンエッジにとって、これ以上の良いスタートは望めない。チームの結成に携わったスタッフに感謝している」。チーム創設1年目ながら、グリーンエッジは早くもビッグタイトルを手にした。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
ミラノ〜サンレモ2012結果
1位 サイモン・ジェランス(オーストラリア、グリーンエッジ) 6h59'24"
2位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) +02"
5位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、プロジェクト1t4i)
6位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
7位 オスカル・フレイレ(スペイン、カチューシャ)
8位 アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)
9位 ダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
10位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)
text&photo:Kei Tsuji in San Remo, Italy
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