2012/03/13(火) - 07:18
本名よりも「プリート」の愛称で語られることの多いホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が、切れ味鋭いアタックでマルケ州の丘陵ステージを制した。クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン)を中心に繰り広げられる僅差の総合争いは、最終個人タイムトライアルで決着する。
ミラノ〜サンレモ狙いの選手が続々リタイア
最終日前日の第6ステージの舞台は、イタリア半島の東海岸、アドリア海に面したマルケ州。雪を冠したアペニン山脈とアドリア海に挟まれた一帯には、標高300〜400mほどの丘陵が見渡す限り延々と続いている。
それらの丘陵の天辺には、決まってレンガ作りの都市が点在している。オフィーダはその中でも「最も美しいボルゴ(ビレッジ)の一つ」に数えられるほど由緒正しい街だ。
全長181kmのコースは、登りと下りしかない起伏に富んだもの。丘の尾根伝いを走り、雨に浸食された谷を下り、そして丘の上目指して駆け上がる。
レース後半は、標高302mのオフィーダを起点とする16.2kmコースを6周。ラスト3.8km地点で頂点を迎える長さ2.5km・勾配7.1%のカテゴリー山岳「ポンテ・デッレ・ピエトレ」がスプリンターたちの進入を拒み、ラスト1kmを切ってから始まる高低差30mの登りが勝負を決める。さながらアルデンヌ・クラシックだ。
春の大一番ミラノ〜サンレモが近づいているため、同大会で2連覇を狙うマシュー・ゴス(オーストラリア、グリーンエッジ)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)、ビセンテ・レイネス(スペイン、ロット・ベリソル)がスタートに姿を見せなかった。
レース中もリタイア者が続出し、周回を重ねる毎に集団は人数を減らして行く。DNSとDNFを合わせると、この日だけで22名がレースを去った。
アルカンシェルを着るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)もDNF選手の一人。カヴェンディッシュはレース序盤にアタックし、ミラノ〜サンレモ前最後の感触を確かめた。
ゴールスプリントに持ち込みたいリクイガス・キャノンデールやファルネーゼヴィーニを振り切ろうと、最後まで抵抗を見せたのは、セルジュ・パウエルス(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アックア・エ・ サポーネ)。
しかし最大5分のリードを築いた7名の逃げは、最終周回の「ポンテ・デッレ・ピエトレ」で終焉を迎えた。
ボーナスタイムにより、より接戦となった総合争い
最大勾配が10%を超えるポンテ・デッレ・ピエトレで我先に動いたのはワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)。新人賞狙いのポエルスが掴まると、前日の第5ステージをメカトラで失ったダニーロ・ディルーカ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)が一気にペースを上げる。
続けざまに飛び出したクリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)とドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)の2人が先行して頂上を越え、そのままオフィーダに至るラスト1kmの登りに差し掛かった。
エースのニーバリのために献身的に動くペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)の集団牽引によって、リブロンとポッツォヴィーヴォは吸収。カウンターアタックで飛び出したプリートが、一気に後続を突き放した。
追いすがる集団を振り切り、ガッツポーズでゴールに飛び込む“プリート”ホアキン・ロドリゲス。激坂が名物の、同じマルケ州のモンテルポーネにゴールするステージで2年連続優勝を果たしている登りの名手が、ティレーノ〜アドリアティコ通算ステージ3勝目を飾った。
「ゴールまで1kmを残したアタックは、早すぎて失敗に終わることも多い。実際ゴールがあと200m遠かったら、逃げ切れていたかどうか分からない。一瞬ライバルたちが躊躇したことも手伝った。勝てて良かった」。記者会見席に腰を下ろしたプリートはそう振り返る。
「サガンが最も危険な選手だと分かっていたので、他の選手のアタックが掛かったとき、彼に仕事をさせた(集団を牽かせた)んだ。それが成功の鍵だったと思う」。ジルベールがまだ結果を残せていない中、プリートはアルデンヌ・クラシックの優勝候補に名乗りを挙げた。
総合3位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)は、スプリントの末ステージ2位に。ボーナスタイムを獲得し、ホーナーとの総合タイム差を6秒まで縮めている。キエーティにゴールする第4ステージでニーバリのボーナスタイムを潰したことで非難を浴びたサガンは、こうして面目を保った。
「今日は決して自分向きのステージではなかった。ラスト1kmを切って飛び出したのがフレイレだと勘違いしていて、表彰台の裏でそれがロドリゲスだったと初めて知った。それぐらいタフな一日だった」と話すのは、ホーナー、40歳。
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)に対して5秒、そしてニーバリに対して6秒のリードをもって、ホーナーは最終個人タイムトライアルに挑む。会場で「日本生まれの」と紹介される40歳のベテランは「レースはここまでパーフェクトに進んでいる。明日はクロイツィゲルが大きな脅威になると思うし、実際それを目の当たりにするかもしれない。勝っても負けても人生は続いて行く。リラックスするように心がけて、平常心でレースに挑みたい」と、ベテランならではのコメントを残している。
運命の鍵を握る最終個人タイムトライアルは、アドリア海に面したビーチリゾート、サンベネデット・デル・トロントで行なわれる。コースは直線基調かつ真っ平ら。総合3位ニーバリは15時48分、総合2位クロイツィゲルは15時50分、そして総合リーダーホーナーは15時52分にそれぞれコースに繰り出す。
ティレーノ~アドリアティコ2012第6ステージ結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 4h38'27"
2位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
3位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン)
5位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)
6位 ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)
8位 オスカル・ガット(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
9位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)
10位 ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
個人総合成績
1位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン) 29h27'06"
2位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +05"
3位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +06"
4位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +45"
5位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +47"
6位 ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +48"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +50"
8位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)+1'15"
9位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +1'21"
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CFSイノックス) +1'22"
山岳賞
ステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
ポイント賞
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
新人賞
ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
チーム総合成績
カチューシャ
text&photo:Kei Tsuji in Offida, Italy
ミラノ〜サンレモ狙いの選手が続々リタイア
最終日前日の第6ステージの舞台は、イタリア半島の東海岸、アドリア海に面したマルケ州。雪を冠したアペニン山脈とアドリア海に挟まれた一帯には、標高300〜400mほどの丘陵が見渡す限り延々と続いている。
それらの丘陵の天辺には、決まってレンガ作りの都市が点在している。オフィーダはその中でも「最も美しいボルゴ(ビレッジ)の一つ」に数えられるほど由緒正しい街だ。
全長181kmのコースは、登りと下りしかない起伏に富んだもの。丘の尾根伝いを走り、雨に浸食された谷を下り、そして丘の上目指して駆け上がる。
レース後半は、標高302mのオフィーダを起点とする16.2kmコースを6周。ラスト3.8km地点で頂点を迎える長さ2.5km・勾配7.1%のカテゴリー山岳「ポンテ・デッレ・ピエトレ」がスプリンターたちの進入を拒み、ラスト1kmを切ってから始まる高低差30mの登りが勝負を決める。さながらアルデンヌ・クラシックだ。
春の大一番ミラノ〜サンレモが近づいているため、同大会で2連覇を狙うマシュー・ゴス(オーストラリア、グリーンエッジ)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)、ビセンテ・レイネス(スペイン、ロット・ベリソル)がスタートに姿を見せなかった。
レース中もリタイア者が続出し、周回を重ねる毎に集団は人数を減らして行く。DNSとDNFを合わせると、この日だけで22名がレースを去った。
アルカンシェルを着るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)もDNF選手の一人。カヴェンディッシュはレース序盤にアタックし、ミラノ〜サンレモ前最後の感触を確かめた。
ゴールスプリントに持ち込みたいリクイガス・キャノンデールやファルネーゼヴィーニを振り切ろうと、最後まで抵抗を見せたのは、セルジュ・パウエルス(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アックア・エ・ サポーネ)。
しかし最大5分のリードを築いた7名の逃げは、最終周回の「ポンテ・デッレ・ピエトレ」で終焉を迎えた。
ボーナスタイムにより、より接戦となった総合争い
最大勾配が10%を超えるポンテ・デッレ・ピエトレで我先に動いたのはワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)。新人賞狙いのポエルスが掴まると、前日の第5ステージをメカトラで失ったダニーロ・ディルーカ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)が一気にペースを上げる。
続けざまに飛び出したクリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)とドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)の2人が先行して頂上を越え、そのままオフィーダに至るラスト1kmの登りに差し掛かった。
エースのニーバリのために献身的に動くペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)の集団牽引によって、リブロンとポッツォヴィーヴォは吸収。カウンターアタックで飛び出したプリートが、一気に後続を突き放した。
追いすがる集団を振り切り、ガッツポーズでゴールに飛び込む“プリート”ホアキン・ロドリゲス。激坂が名物の、同じマルケ州のモンテルポーネにゴールするステージで2年連続優勝を果たしている登りの名手が、ティレーノ〜アドリアティコ通算ステージ3勝目を飾った。
「ゴールまで1kmを残したアタックは、早すぎて失敗に終わることも多い。実際ゴールがあと200m遠かったら、逃げ切れていたかどうか分からない。一瞬ライバルたちが躊躇したことも手伝った。勝てて良かった」。記者会見席に腰を下ろしたプリートはそう振り返る。
「サガンが最も危険な選手だと分かっていたので、他の選手のアタックが掛かったとき、彼に仕事をさせた(集団を牽かせた)んだ。それが成功の鍵だったと思う」。ジルベールがまだ結果を残せていない中、プリートはアルデンヌ・クラシックの優勝候補に名乗りを挙げた。
総合3位のヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)は、スプリントの末ステージ2位に。ボーナスタイムを獲得し、ホーナーとの総合タイム差を6秒まで縮めている。キエーティにゴールする第4ステージでニーバリのボーナスタイムを潰したことで非難を浴びたサガンは、こうして面目を保った。
「今日は決して自分向きのステージではなかった。ラスト1kmを切って飛び出したのがフレイレだと勘違いしていて、表彰台の裏でそれがロドリゲスだったと初めて知った。それぐらいタフな一日だった」と話すのは、ホーナー、40歳。
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)に対して5秒、そしてニーバリに対して6秒のリードをもって、ホーナーは最終個人タイムトライアルに挑む。会場で「日本生まれの」と紹介される40歳のベテランは「レースはここまでパーフェクトに進んでいる。明日はクロイツィゲルが大きな脅威になると思うし、実際それを目の当たりにするかもしれない。勝っても負けても人生は続いて行く。リラックスするように心がけて、平常心でレースに挑みたい」と、ベテランならではのコメントを残している。
運命の鍵を握る最終個人タイムトライアルは、アドリア海に面したビーチリゾート、サンベネデット・デル・トロントで行なわれる。コースは直線基調かつ真っ平ら。総合3位ニーバリは15時48分、総合2位クロイツィゲルは15時50分、そして総合リーダーホーナーは15時52分にそれぞれコースに繰り出す。
ティレーノ~アドリアティコ2012第6ステージ結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 4h38'27"
2位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
3位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン)
5位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)
6位 ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
7位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)
8位 オスカル・ガット(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
9位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)
10位 ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
個人総合成績
1位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン) 29h27'06"
2位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +05"
3位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +06"
4位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +45"
5位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +47"
6位 ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +48"
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +50"
8位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)+1'15"
9位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) +1'21"
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CFSイノックス) +1'22"
山岳賞
ステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
ポイント賞
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
新人賞
ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
チーム総合成績
カチューシャ
text&photo:Kei Tsuji in Offida, Italy
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