2012/02/06(月) - 22:29
新生ブリヂストン・アンカーが世界トップクラスのチームが名を連ねるツアー・オブ・カタールに参戦する。以下、チームに帯同したカメラマンスタッフがチームを内側から見たインサイドレポートをお伝えする。
チームスタッフの私(大前実)は、本業のカメラとあまり使っていないペンを携え、その総てに立ち会うべくチームに帯同し、この戦いでブリヂストン アンカーが何になるのか、また、何になれたのかをここに報告したいと思う。
バイクメーカーとしてのブリヂストン・アンカーが目指すもの
2011年12月20日、1998年チーム結成以来最多となる外国人選手4名、そして有力日本人選手5名から成るブリヂストンアンカー新チーム態勢が発表された。このチーム構成こそ、ブリヂストンアンカーが目指すものを具現していると言っていいのではないだろうか。
それは、「日本人のための、日本人による自転車づくり」から、「世界のあらゆる人のための、日本人による自転車づくり」へ、である。
これまで、日本人のカラダからコツコツと膨大な量の計測値を集めてはデータ化し、自転車開発の礎としてきた。次は外国選手を起用し、日本人選手と共にあらゆる国のレースへ参戦させることで、世界のデータ収集に目を向け、新たな礎を作ることを“宣言”したのだ。
それは莫大な予算はもちろん、優秀な人材を束ねる内外のマンパワーを必要とする。月並みな言葉だが、気が遠くなるほどの手間と時間を必要とする、まるで冒険のような仕事である。ブリヂストンアンカーは、“ついに”それに着手した。
ツアー・オブ・カタールへの参戦について、成田からドーハへ向かう飛行機内でブリヂストン アンカー久保新監督に話を聞いた。
久保監督談「ツアー・オブ・カタールは世界の強豪が集まるハイレベルなレース、コースのすべてがほぼ平たんで、選手は常に北からの強風と戦わなければならない。出場できることは、サプライズ過ぎるほどのサプライズでとても光栄なことだが、短すぎる準備期間も合わせ、今のブリヂストン アンカーにとってとても厳しいレースになると考えられる。
ただ今回は、その短い準備期間でも選手たちはベストなトレーニングを積んできた。選手たちのためにも、チャンスを与えてくれたすべての方達のためにも良い報告がしたい。私たちは挑戦者なので、最後までそのモチベーションを保ちたい」。
久保監督の言葉には、情報収集や分析に努力と時間を費やした時だけに生まれる説得力があり、端々に彼の精勤さが垣間見えた。
ドーハ入りそして練習走行。噂通りの北風。2月2日21時10分に成田空港を離陸した飛行機は、関西空港を経ておよそ15時間でドーハ国際空港に到着した。ドーハは2月3日午前6時、夜が明けたばかりの空は澄んでいて、この時はまだ気になるほど強い風を感じることはなかった。ただ、着陸直前に見えた大地は噂通り平たんで、黄土色が遠くまで続いていた。
大量の荷物を空港のバゲージクライムで回収し、拠点となるホテルへ移動。選手たちは休む間もなく各々のバイクを組み、午後の練習に備えた。
午後の練習は約2時間、日本人選手4名(井上・清水・西園・吉田選手)での走行とした(外国人選手のドーハ入りは、航空路線の都合で同日の27時になる予定)。
練習のスタートは午後2時、この頃は“噂”の強風が吹き始めていた。持参した計測器では、2分間の計測で最大風速は、北10.1m/sを表示している。到着時にはよく見えていた遠くの街が、舞い上がった細かい砂でベージュ色に霞んでいる。それでも選手たちは北へ向かい、拠点を出発して行った。
(filter error or malformed img_assist tag)2日目、スタート前日の朝。朝食は朝8時、広い会場ではエントリーするすべてのチームが、ヴッフェ形式で朝食をとることができる。深夜3時過ぎに到着したにも関わらず、フランスからの選手4名(トマ、クラース、アレックス、ブレース選手)や帯同するスタッフらと対面することができ、楽しく賑やかな朝食となった。
朝食後のスタッフは目が回るほど忙しい。選手たちをなるべく早く練習に送り出し、練習後は明日のスタート準備をパーフェクトに整えなければならない。2名のメカニックがフル稼働し8台のバイクを選手が納得するように仕上げ、11時にその作業を終えた。
チーム練習。8人の選手が揃い初めてのチーム走行。今日もおよそ2時間の予定で練習走行がスタートした。明日、第1ステージのスタート/ゴール地点の確認と、風の確認をする。そして第2ステージ、チームタイムトライアルコースでは、ローテーション確認を行いつつ2周回の試走を行った。チームタイムトライアルコースでは、他の強豪チームも多数試走しており、出会う度にレースが間近であることを思わせた。
練習を終え、拠点に戻るともう一度メカニックがフル稼働する時間がやって来る。短時間で選手のリクエストを解決し、洗車。この作業を繰り返して日没から数時間後、メカはようやく仕事を終えた。メカニックと同様にフル稼働を始めるのがマッサー。マッサーは選手一人ひとりにたっぷりと時間をかけ、筋肉を刺激し疲労の回復を促す。そして本業を終えた後は、明日の補給食作りにとりかかる。
「練習」を「レース」に置き換えれば、明日のスタート後は毎日がこれの繰り返しだ。だが、それが楽しいと思えるようなチームを作りたい。
さあ、いよいよブリヂストンアンカーの新たなる挑戦が始まる。
2012年2月4日、ドーハより。
text&photo:Minoru Omae
チームスタッフの私(大前実)は、本業のカメラとあまり使っていないペンを携え、その総てに立ち会うべくチームに帯同し、この戦いでブリヂストン アンカーが何になるのか、また、何になれたのかをここに報告したいと思う。
バイクメーカーとしてのブリヂストン・アンカーが目指すもの
2011年12月20日、1998年チーム結成以来最多となる外国人選手4名、そして有力日本人選手5名から成るブリヂストンアンカー新チーム態勢が発表された。このチーム構成こそ、ブリヂストンアンカーが目指すものを具現していると言っていいのではないだろうか。
それは、「日本人のための、日本人による自転車づくり」から、「世界のあらゆる人のための、日本人による自転車づくり」へ、である。
これまで、日本人のカラダからコツコツと膨大な量の計測値を集めてはデータ化し、自転車開発の礎としてきた。次は外国選手を起用し、日本人選手と共にあらゆる国のレースへ参戦させることで、世界のデータ収集に目を向け、新たな礎を作ることを“宣言”したのだ。
それは莫大な予算はもちろん、優秀な人材を束ねる内外のマンパワーを必要とする。月並みな言葉だが、気が遠くなるほどの手間と時間を必要とする、まるで冒険のような仕事である。ブリヂストンアンカーは、“ついに”それに着手した。
ツアー・オブ・カタールへの参戦について、成田からドーハへ向かう飛行機内でブリヂストン アンカー久保新監督に話を聞いた。
久保監督談「ツアー・オブ・カタールは世界の強豪が集まるハイレベルなレース、コースのすべてがほぼ平たんで、選手は常に北からの強風と戦わなければならない。出場できることは、サプライズ過ぎるほどのサプライズでとても光栄なことだが、短すぎる準備期間も合わせ、今のブリヂストン アンカーにとってとても厳しいレースになると考えられる。
ただ今回は、その短い準備期間でも選手たちはベストなトレーニングを積んできた。選手たちのためにも、チャンスを与えてくれたすべての方達のためにも良い報告がしたい。私たちは挑戦者なので、最後までそのモチベーションを保ちたい」。
久保監督の言葉には、情報収集や分析に努力と時間を費やした時だけに生まれる説得力があり、端々に彼の精勤さが垣間見えた。
ドーハ入りそして練習走行。噂通りの北風。2月2日21時10分に成田空港を離陸した飛行機は、関西空港を経ておよそ15時間でドーハ国際空港に到着した。ドーハは2月3日午前6時、夜が明けたばかりの空は澄んでいて、この時はまだ気になるほど強い風を感じることはなかった。ただ、着陸直前に見えた大地は噂通り平たんで、黄土色が遠くまで続いていた。
大量の荷物を空港のバゲージクライムで回収し、拠点となるホテルへ移動。選手たちは休む間もなく各々のバイクを組み、午後の練習に備えた。
午後の練習は約2時間、日本人選手4名(井上・清水・西園・吉田選手)での走行とした(外国人選手のドーハ入りは、航空路線の都合で同日の27時になる予定)。
練習のスタートは午後2時、この頃は“噂”の強風が吹き始めていた。持参した計測器では、2分間の計測で最大風速は、北10.1m/sを表示している。到着時にはよく見えていた遠くの街が、舞い上がった細かい砂でベージュ色に霞んでいる。それでも選手たちは北へ向かい、拠点を出発して行った。
(filter error or malformed img_assist tag)2日目、スタート前日の朝。朝食は朝8時、広い会場ではエントリーするすべてのチームが、ヴッフェ形式で朝食をとることができる。深夜3時過ぎに到着したにも関わらず、フランスからの選手4名(トマ、クラース、アレックス、ブレース選手)や帯同するスタッフらと対面することができ、楽しく賑やかな朝食となった。
朝食後のスタッフは目が回るほど忙しい。選手たちをなるべく早く練習に送り出し、練習後は明日のスタート準備をパーフェクトに整えなければならない。2名のメカニックがフル稼働し8台のバイクを選手が納得するように仕上げ、11時にその作業を終えた。
チーム練習。8人の選手が揃い初めてのチーム走行。今日もおよそ2時間の予定で練習走行がスタートした。明日、第1ステージのスタート/ゴール地点の確認と、風の確認をする。そして第2ステージ、チームタイムトライアルコースでは、ローテーション確認を行いつつ2周回の試走を行った。チームタイムトライアルコースでは、他の強豪チームも多数試走しており、出会う度にレースが間近であることを思わせた。
練習を終え、拠点に戻るともう一度メカニックがフル稼働する時間がやって来る。短時間で選手のリクエストを解決し、洗車。この作業を繰り返して日没から数時間後、メカはようやく仕事を終えた。メカニックと同様にフル稼働を始めるのがマッサー。マッサーは選手一人ひとりにたっぷりと時間をかけ、筋肉を刺激し疲労の回復を促す。そして本業を終えた後は、明日の補給食作りにとりかかる。
「練習」を「レース」に置き換えれば、明日のスタート後は毎日がこれの繰り返しだ。だが、それが楽しいと思えるようなチームを作りたい。
さあ、いよいよブリヂストンアンカーの新たなる挑戦が始まる。
2012年2月4日、ドーハより。
text&photo:Minoru Omae
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