2011/12/21(水) - 11:04
ラグジュアリーなビジュアル。そのパッケージすら魅力的なサドルのニューモデル、フィジーク・クーヴァ。スパインコンセプトによって3種類のフォルムをもつクーヴァのパフォーマンスを実際に検証してみよう。
その前にまず、クーヴァのテクノロジーのおさらいから始めよう。
クーヴァはイタリアのサドルメーカー、フィジークによるニューモデルで、フィジークが提唱するスパインコンセプト(脊椎下方の柔軟性によって適正なサドルを提案する独自の理論)を継承しており、名称はこれまで同様に生物から由来している。その内容は以下の通りだ。
柔軟性が高いライダーには「スネーク(アリオネ・ツンドラ)」で、座面はフラット&ナロー形状である。
中間の柔軟性のライダーは「カメレオン(アンタレス・ゴビ)」で、座面はフラット&ワイド形状である。
最後に、柔軟性が低く骨盤を回転させにくいライダーは「ブル(アリアンテ)」で、座面はウェーブ&ワイドとなる。
この理論を、クーヴァ独特の機構によって確立している。その機構とはかつての革サドルのように、ベースにテンションをかけることによって、ベースの感触を変化させることができるというものだ。
その構造はメビウスレールとよぶ∞型を描いた一体成型のアルミ製レールに3枚の樹脂素材シェル、そしてマイクロテックスのフォームを圧着させたベースを組み合わせている。
またトップは「RE:Flex」コンセプトのもとで形成され、足の動きを妨げない「WING FLEX」と、部位により接触圧を変化させた多重構造の「TWIN FLEX」機能を兼ね備えている。これは従来のようなフォームパッドの厚みに依存する快適さではなく、バイクパンツの延長のようなフィット感を重視した設計だという。
レールとベースはハンモックのような構造となり、先端のパーツによってレールと固定をする。このパーツは「TUNER」と呼び、2種類のピースが用意され、テンションをかける「ハード」と「ソフト」の2パターンの調整ができるのだ。
TUNERはトルクスレンチによって着脱可能。複雑な行程もなく慣れればライディング前の貴重な時間のなかでも交換が可能だ。この機構によって走りの内容によって好みのテンションに変更するなど、工夫次第でライディングをより快適にすることができるだろう。
また、開発者によると、この支柱をもたないメビウスレールの恩恵によって、左右のペダリングがよりスムーズになるという。
重量は220gと超軽量レーシングサドルと比較するとやや重いことは否めないが、バイク全体の重量が著しく軽くなっている現在において、サドルは軽くするよりも快適性を高めることにメリットがあると、フィジークの開発者は言う。
軽量化にふったあまりに、痛みが生じたり、ペダリング効率が低下するのであれば本末転倒だろう。そういった意味では、クーヴァはサドルの正常進化といえる。
フィジークが提唱するスパインコンセプトを継承しながら独自の機構が盛り込まれたクーヴァを、バイクジャーナリスト山本健一と走るショップ店長・鈴木祐一はどう評するのだろうか?
― インプレッション
「オーダーメイドのようなフィット感に感動」 山本健一(バイクジャーナリスト)
個人的にも数年前よりフィジーク・アリアンテの形状や触感に魅せられ、現在も愛用を続けている。
サドルだけは少々予算的に無理をしても稼動しているバイクすべてを同一に揃えたい願望がある。もちろん現在使っているロードバイクにはアリアンテが装着されている。
座面のカーブと、ベースのクッション性が絶妙なフィット感を生み出し、レーサーパンツなしでも長時間乗ることができるという、個人的には特に満足しているサドルだ。
アリアンテの流れを汲むクーヴァ・ブルであるが、当方の感覚では、アリアンテですら、年代が変わるとフィット感が変わり、受け付けない年代のモデルもあったりする。
それほどまで過敏なサドルというパーツだけに、懐疑的になり、アリアンテが源流だからといって、すぐに受け入れられるはずはないだろう、と思っていた。しかし、このクーヴァ・ブルに出会ったことで、その考えはいとも簡単に変わってしまった。
神経質な私の感覚ではあるが、このフィット感には感動を覚えた。腰掛けた瞬間に安堵感が広がり、臀部全体を包み込むような感覚が心地いい。オーダーメイドしたソファが完璧な仕上がりだったような感覚である。カーブの効いたサドルでも、まるで地獄の拷問のようなサドルもあったりするが、私にとってクーヴァ・ブルはまさに「天国の座り心地」といっても過言ではない。
形状は前後にはカーブしているが、横方向には円弧上にラウンドしている。触感は、上質な表皮の影響もあり表面的には柔らかさはあるが、テンションは硬めに感じた(試乗はソフトバージョンで行った)。
最後にサドルの好みは十人十色であるが、インプレ現場にはまったく別のサドルを好む3人が居たが、全員が好感触で、クーヴァのポテンシャルの大きさを思い知らされた。
このクーヴァは優れたポテンシャルをもっているのは確かだ。しかも3つのタイプが用意されているので、ほとんどのサイクリストを満足させることができるだろう。少々高価ではあるが、このサドルに投資するのは間違いではないはず。一度試してみていただきたい。
「革サドルのフィット感を現代に応用した画期的なサドルだ」 鈴木祐一(RiseRide)
特徴的には裏側のプレートを入れ替えることで、座面の張り具合を変えることができ、ハード~ソフトと、座り心地を変化させることができることが大きな特徴だ。
今まで形状や硬さを変えることによってサドルを開発するメーカーはあったが、ここまで新しい考え方を導入したメーカーは久々だ。もっとも、「表皮の張り具合を調整する」というこの考え方は、昔の革サドルの手法を思い起こさせるもので、あえて古い方法を現代のサドルに応用しなおしたフィジークのアイデアは素晴らしいと思う。
乗ったフィーリングは、表皮のたわみによってお尻にピッタリとフィットするというものだった。たわみ具合が心地よい。それは「サドルの形状にお尻を合わせる」という考え方よりも、フィット感がより高く、非常に快適だ。たわみによって表皮の補正力が十分に働き、フィットしない原因となる"お尻とのスキマ"を埋めてくれるのだ。結果として、すごく居心地がいいサドルができあがった。
座面を外してみると、ものすごく変形する素材が採用されている。これをサドルにまとめあげる技術力は、さすがフィジークだ。
お尻に大方の形状が合えば、あとは張り具合でどこまでもフィットさせることができる。サドル選びにかけていた時間のロスが、大幅に軽減されるだろう。今まで買っては試し、お尻に合わなくては買い直していたサドルが、クーヴァなら形状さえ合えばフィット感を追求していくことができるのだから。
今でも革サドルを手放さない人がよくいるが、クーヴァはそれに取って代わるものになっている。デザインも現代のカーボンロードバイクに似合っているし、例えばネオクラシカルなクロモリロードなどにも十分似合うシックさも兼ね備えている。
また、ロードレーサーだけでなく、居住性を強く求めるトライアスロンや、セルフディスカバリーin王滝などのアドベンチャーレースやトレイルライドなどのマウンテンバイクに採用しても良いのではないだろうか。とにかく、サドルに悩みを抱えている人には、多くの問題を解決してくれる画期的な福音サドルだと思う。
fi'zi:k KURVE SNAKE(クーヴァ・スネーク)
税込定価:26,200円
カラー:ブラック
重量:220g
レール:2014-T6アルミニウム・MOBIUS
トップ:RE:Flex
fi'zi:k KURVE CHAMELEON(クーヴァ・カメレオン)
税込定価:26,200円
カラー:ブラック
重量:220g
レール:2014-T6アルミニウム・MOBIUS
トップ:RE:Flex
fi'zi:k KURVE BULL(クーヴァ・ブル)
税込定価:26,200円
カラー:ブラック
重量:220g
レール:2014-T6アルミニウム・MOBIUS
トップ:RE:Flex
フィジーク KURVE クーヴァ TUNER交換マニュアル
インプレライダーのプロフィール
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
山本健一(バイクジャーナリスト)
身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
ウェア協力:ビエンメB+(フォーチュン)
text:Kenichi.YAMAMOTO
photo:Makoto AYANO
スペシャルコンテンツ フィジーク・クーヴァ登場
その前にまず、クーヴァのテクノロジーのおさらいから始めよう。
クーヴァはイタリアのサドルメーカー、フィジークによるニューモデルで、フィジークが提唱するスパインコンセプト(脊椎下方の柔軟性によって適正なサドルを提案する独自の理論)を継承しており、名称はこれまで同様に生物から由来している。その内容は以下の通りだ。
柔軟性が高いライダーには「スネーク(アリオネ・ツンドラ)」で、座面はフラット&ナロー形状である。
中間の柔軟性のライダーは「カメレオン(アンタレス・ゴビ)」で、座面はフラット&ワイド形状である。
最後に、柔軟性が低く骨盤を回転させにくいライダーは「ブル(アリアンテ)」で、座面はウェーブ&ワイドとなる。
この理論を、クーヴァ独特の機構によって確立している。その機構とはかつての革サドルのように、ベースにテンションをかけることによって、ベースの感触を変化させることができるというものだ。
その構造はメビウスレールとよぶ∞型を描いた一体成型のアルミ製レールに3枚の樹脂素材シェル、そしてマイクロテックスのフォームを圧着させたベースを組み合わせている。
またトップは「RE:Flex」コンセプトのもとで形成され、足の動きを妨げない「WING FLEX」と、部位により接触圧を変化させた多重構造の「TWIN FLEX」機能を兼ね備えている。これは従来のようなフォームパッドの厚みに依存する快適さではなく、バイクパンツの延長のようなフィット感を重視した設計だという。
レールとベースはハンモックのような構造となり、先端のパーツによってレールと固定をする。このパーツは「TUNER」と呼び、2種類のピースが用意され、テンションをかける「ハード」と「ソフト」の2パターンの調整ができるのだ。
TUNERはトルクスレンチによって着脱可能。複雑な行程もなく慣れればライディング前の貴重な時間のなかでも交換が可能だ。この機構によって走りの内容によって好みのテンションに変更するなど、工夫次第でライディングをより快適にすることができるだろう。
また、開発者によると、この支柱をもたないメビウスレールの恩恵によって、左右のペダリングがよりスムーズになるという。
重量は220gと超軽量レーシングサドルと比較するとやや重いことは否めないが、バイク全体の重量が著しく軽くなっている現在において、サドルは軽くするよりも快適性を高めることにメリットがあると、フィジークの開発者は言う。
軽量化にふったあまりに、痛みが生じたり、ペダリング効率が低下するのであれば本末転倒だろう。そういった意味では、クーヴァはサドルの正常進化といえる。
フィジークが提唱するスパインコンセプトを継承しながら独自の機構が盛り込まれたクーヴァを、バイクジャーナリスト山本健一と走るショップ店長・鈴木祐一はどう評するのだろうか?
― インプレッション
「オーダーメイドのようなフィット感に感動」 山本健一(バイクジャーナリスト)
個人的にも数年前よりフィジーク・アリアンテの形状や触感に魅せられ、現在も愛用を続けている。
サドルだけは少々予算的に無理をしても稼動しているバイクすべてを同一に揃えたい願望がある。もちろん現在使っているロードバイクにはアリアンテが装着されている。
座面のカーブと、ベースのクッション性が絶妙なフィット感を生み出し、レーサーパンツなしでも長時間乗ることができるという、個人的には特に満足しているサドルだ。
アリアンテの流れを汲むクーヴァ・ブルであるが、当方の感覚では、アリアンテですら、年代が変わるとフィット感が変わり、受け付けない年代のモデルもあったりする。
それほどまで過敏なサドルというパーツだけに、懐疑的になり、アリアンテが源流だからといって、すぐに受け入れられるはずはないだろう、と思っていた。しかし、このクーヴァ・ブルに出会ったことで、その考えはいとも簡単に変わってしまった。
神経質な私の感覚ではあるが、このフィット感には感動を覚えた。腰掛けた瞬間に安堵感が広がり、臀部全体を包み込むような感覚が心地いい。オーダーメイドしたソファが完璧な仕上がりだったような感覚である。カーブの効いたサドルでも、まるで地獄の拷問のようなサドルもあったりするが、私にとってクーヴァ・ブルはまさに「天国の座り心地」といっても過言ではない。
形状は前後にはカーブしているが、横方向には円弧上にラウンドしている。触感は、上質な表皮の影響もあり表面的には柔らかさはあるが、テンションは硬めに感じた(試乗はソフトバージョンで行った)。
最後にサドルの好みは十人十色であるが、インプレ現場にはまったく別のサドルを好む3人が居たが、全員が好感触で、クーヴァのポテンシャルの大きさを思い知らされた。
このクーヴァは優れたポテンシャルをもっているのは確かだ。しかも3つのタイプが用意されているので、ほとんどのサイクリストを満足させることができるだろう。少々高価ではあるが、このサドルに投資するのは間違いではないはず。一度試してみていただきたい。
「革サドルのフィット感を現代に応用した画期的なサドルだ」 鈴木祐一(RiseRide)
特徴的には裏側のプレートを入れ替えることで、座面の張り具合を変えることができ、ハード~ソフトと、座り心地を変化させることができることが大きな特徴だ。
今まで形状や硬さを変えることによってサドルを開発するメーカーはあったが、ここまで新しい考え方を導入したメーカーは久々だ。もっとも、「表皮の張り具合を調整する」というこの考え方は、昔の革サドルの手法を思い起こさせるもので、あえて古い方法を現代のサドルに応用しなおしたフィジークのアイデアは素晴らしいと思う。
乗ったフィーリングは、表皮のたわみによってお尻にピッタリとフィットするというものだった。たわみ具合が心地よい。それは「サドルの形状にお尻を合わせる」という考え方よりも、フィット感がより高く、非常に快適だ。たわみによって表皮の補正力が十分に働き、フィットしない原因となる"お尻とのスキマ"を埋めてくれるのだ。結果として、すごく居心地がいいサドルができあがった。
座面を外してみると、ものすごく変形する素材が採用されている。これをサドルにまとめあげる技術力は、さすがフィジークだ。
お尻に大方の形状が合えば、あとは張り具合でどこまでもフィットさせることができる。サドル選びにかけていた時間のロスが、大幅に軽減されるだろう。今まで買っては試し、お尻に合わなくては買い直していたサドルが、クーヴァなら形状さえ合えばフィット感を追求していくことができるのだから。
今でも革サドルを手放さない人がよくいるが、クーヴァはそれに取って代わるものになっている。デザインも現代のカーボンロードバイクに似合っているし、例えばネオクラシカルなクロモリロードなどにも十分似合うシックさも兼ね備えている。
また、ロードレーサーだけでなく、居住性を強く求めるトライアスロンや、セルフディスカバリーin王滝などのアドベンチャーレースやトレイルライドなどのマウンテンバイクに採用しても良いのではないだろうか。とにかく、サドルに悩みを抱えている人には、多くの問題を解決してくれる画期的な福音サドルだと思う。
fi'zi:k KURVE SNAKE(クーヴァ・スネーク)
税込定価:26,200円
カラー:ブラック
重量:220g
レール:2014-T6アルミニウム・MOBIUS
トップ:RE:Flex
fi'zi:k KURVE CHAMELEON(クーヴァ・カメレオン)
税込定価:26,200円
カラー:ブラック
重量:220g
レール:2014-T6アルミニウム・MOBIUS
トップ:RE:Flex
fi'zi:k KURVE BULL(クーヴァ・ブル)
税込定価:26,200円
カラー:ブラック
重量:220g
レール:2014-T6アルミニウム・MOBIUS
トップ:RE:Flex
フィジーク KURVE クーヴァ TUNER交換マニュアル
インプレライダーのプロフィール
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
山本健一(バイクジャーナリスト)
身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
ウェア協力:ビエンメB+(フォーチュン)
text:Kenichi.YAMAMOTO
photo:Makoto AYANO
スペシャルコンテンツ フィジーク・クーヴァ登場
フォトギャラリー