2011年11月20日、滋賀県野洲市のビワコマイアミランドで関西シクロクロス第3戦が行なわれた。この世界選手権セレクションレース、ならびにUCI(国際自転車競技連合)登録レースには、アメリカからの来日選手も出場。名物の「砂地獄」を圧倒的パワーで制した辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)が復調をアピールした。

C1スタートC1スタート photo:Kei Tsuji関西シクロクロス第3戦ビワコマイアミランドは、国内で2つしかないシクロクロスUCI登録レース(UCI-C2)の1つ。2012年1月29日に開催されるシクロクロス世界選手権の日本代表メンバーの選考に関わるセレクションレース2戦目にあたる。

翌週の日曜日(11月27日)に野辺山で開催される信州シクロクロス第4戦(セレクションレース第3戦)も、今年からUCI登録レースとなる。1週間強の日本滞在で2つのUCIレース出場が可能となるため、UCIポイント獲得を狙ってアメリカから男女4名が来日した。

C1 1周目で先頭に立つ丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)C1 1周目で先頭に立つ丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Kei Tsujiレースの舞台となるのは、琵琶湖東岸、湖岸沿いのビワコマイアミランド。“マイアミ”と聞けば一般的にリゾートの雰囲気を連想するが、シクロクロッサーにとっては畏怖の対象。琵琶湖に面した砂セクションが選手たちを苦しめる。

バックストレートに位置する全長200mほどのビーチが最大の難所。例年は比較的路面が締まった水際を走行可能だったが、今年はコーステープがそれを許さず、フカフカの深い砂に覆われたエリアへ導かれる。

C1 砂地に苦しむモリー・キャメロン(MetaFilter-Portland BS)C1 砂地に苦しむモリー・キャメロン(MetaFilter-Portland BS) photo:Kei Tsujiこの長い「砂地獄」を乗車でクリア出来るかどうかがラップタイムに大きく影響するため、各選手は極力タイヤの空気圧を下げて挑んだ。

コースは1周約2.5kmで、テクニカルな松林セクションも有り。しかも、松林の出口に位置するシケイン周辺は、前日の雨によってぬかるんだ泥が覆う。パワーと耐久力を備えた地脚、そして砂を攻略するテクニックが求められる難コースだ。

C1 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)C1 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Kei Tsujiまた、UCIレースには「80%ルール」が適用される。80%ルールとは、トップ選手のラップタイムの+80%のタイムを経過して周回を終えた選手は、降車が指示されるというもの。例えばトップのラップタイムが8分の場合、トップから6分24秒遅れの時点で降車となる。そのためC1レースは出走選手50名→完走選手わずかに9名というサバイバルレースとなった。

レースは、スタートダッシュを決めた丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)が先頭で1周目のロングビーチをクリア。これに辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)、竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes)、小坂光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン)が追いつき、パックを形成して1周目を完了する。

C1 3番手で競り合う沢田時(ENDLESS/ProRide)と小坂正則(スワコレーシングチーム)C1 3番手で競り合う沢田時(ENDLESS/ProRide)と小坂正則(スワコレーシングチーム) photo:Kei Tsujiこの先頭4名パックに続くのは、年齢により40分制限付きの沢田時(ENDLESS/ProRide)と小坂正則(スワコレーシングチーム)、その後ろに2日前に来日したばかりのモリー・キャメロン(MetaFilter-Portland BS)と池本真也(和光機器・AUTHOR)、合田正之(サイクルクラブ3UP)が続く。

やがて2周目に入ると全日本チャンピオン辻浦のパワー&テクニックが際立ち、独走状態に持ち込む。昨年このビワコマイアミランドで全日本選手権9連覇を達成した辻浦は、得意の砂セクションで後続を一気に引き離した。

2番手の竹之内は粘り強く辻浦を追ったが、その差は縮まらない。その後方では小坂光と丸山厚を抜いた沢田と小坂正則が競り合う。40分制限付きの沢田は、全体の4番手で6周回のレースを完了した。

C1 ビーチを快走する辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)C1 ビーチを快走する辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Kei Tsuji

C1 竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes)C1 竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes) photo:Kei Tsujiその後も辻浦の独走劇は続き、2番手の竹之内を40秒引き離した状態で最終周回へ。他を寄せ付けず、王者の走りで独走勝利した。

C1 丸山を追う小坂光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン)C1 丸山を追う小坂光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン) photo:Kei Tsuji「前日に雨が降ったので、例年のマイアミと違って松林区間が泥になり、砂も浮いた状態だったのが印象的でした」と振り返る辻浦は北陸シクロクロス第3戦黒部に続く世界選セレクションレース2勝目。

しかし今年はシーズン開幕当初から好調の波を作れず、1週間前に行なわれた関西シクロクロス第2戦マキノ高原ではメカトラも影響して3位に沈んでいた。それだけにこのUCIレースの勝利は、10連覇が懸かった12月11日の全日本選手権に向けてのモチベーションアップに繋がったはず。

C1 余裕をもってゴールする辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)C1 余裕をもってゴールする辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Kei Tsuji辻浦は「後ろに誰がついて来ているのかは気にせずに、ただ前を見て走り続けた。これからも世界に向けて、後ろを振り返らず進んでいきたい」と語る。辻浦は連覇が懸かった翌週の信州シクロクロス第4戦野辺山にも出場する。

2位の竹之内は、今シーズンもベルギーを拠点にロードレースをメインに活動して来た。「シクロクロスはこれが今シーズン9戦目です。ベルギーでは1週間に2レースのペースで出場し、感触を得ていた。良い状態で日本に帰ってこれた」と自信を秘めた口調で話す。全日本選手権では辻浦の最大のライバルになるだろう。

C1表彰台C1表彰台 photo:Kei Tsujiアメリカから3選手が出場したCL1は、序盤から全日本チャンピオン豊岡英子(パナソニックレディース)がリードする。宮内佐季子(CLUBviento)は付かず離れずの位置で走り続け、その後方に福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学)単独という展開。

しかし豊岡は最終周回に入る直前にコーステープをリアディレイラーに絡ませストップ。直ぐさまピットエリアでバイクを乗り換えるも、宮内に先行を許してしまう。宮内はリードを守ったまま最終周回を独走のままこなし、豊岡を25秒振り切って勝利した。

「今シーズンはフィジカルの面でもメンタルの面でも整っている。まだテクニックは足りないけど、今まで以上に走れています」と、UCIレースを制した宮内。6年連続全日本チャンピオンの豊岡、宮内、そして膝の故障から復調した福本が全日本選手権の有力候補。1週間前に全日本選手権と同じ会場で行なわれた関西シクロクロス第2戦マキノ高原ではこの3名が10秒前後の接戦を繰り広げている。

レースの模様はフォトギャラリーにて!


CL1 先頭で競り合う豊岡英子(パナソニックレディース)と宮内佐季子(CLUBviento)CL1 先頭で競り合う豊岡英子(パナソニックレディース)と宮内佐季子(CLUBviento) photo:Kei TsujiCL1 3番手で走り続ける福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学)CL1 3番手で走り続ける福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学) photo:Kei Tsuji
CL1 ティナ・ブルベイカー(VANILLA BICYCLES/SPEEDVAGEN)CL1 ティナ・ブルベイカー(VANILLA BICYCLES/SPEEDVAGEN) photo:Kei TsujiCL1表彰台CL1表彰台 photo:Kei Tsuji
CM1スタートCM1スタート photo:Kei TsujiCM1 独走態勢に入った大河内二郎(シルクロード)CM1 独走態勢に入った大河内二郎(シルクロード) photo:Kei Tsuji


関西シクロクロス2011-2012第3戦・ビワコマイアミランド
C1(9周回)
1位 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)       1h02'00"
2位 竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes)          +14"
3位 小坂正則(スワコレーシングチーム)            +2'04"
4位 小坂光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン)         +2'50"
5位 丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)            +3'22"
6位 畑中勇介(シマノレーシング)               +5'29"
7位 モリー・キャメロン(MetaFilter-Portland BS)       +5'47"
8位 山本聖吾(スワコレーシングチーム)            +5'56"
9位 池本真也(和光機器・AUTHOR)             +5'58"

CL1(5周回)
1位 宮内佐季子(CLUBviento)                44'17"
2位 豊岡英子(パナソニックレディース)             +25"
3位 福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学)          +1'03"
4位 ティナ・ブルベイカー(VANILLA BICYCLES/SPEEDVAGEN) +3'36"
5位 上田順子(TEAM884獣遊/シルベスト)           +6'05"
6位 アレクサンドラ・バートン(Upper Echelon Fitness)     +7'16"
7位 埜真賢美(Teamクルース)                +7'32"
8位 中道のぞみ(Salata bianca kobe)             +7'53"
9位 ハイディ・スウィフト(Sweetpea Ladies Auxiliary)     +11'12"

CM1(5周回)
1位 大河内二郎(シルクロード)                41'59"
2位 藤井修(きゅうべぇsports)                  +08"
3位 丸畑明彦(PCサイクルクラブ松本)             +10"
4位 吉中和彦(ユーロワークス)                +1'34"
5位 巳波一郎(ユーロワークス)                +1'42"
6位 山本俊太郎(WAPPA-YAライフサポート)          +2'06"
7位 ビンセント・フラナガン(八ヶ岳CYCLOCROSS CLUB)   +2'27"
8位 佐野光宏(ストラーダR)                  +2'43"
9位 富田道夫(シロクマカフェレーシング)           +2'57"
10位 楠雅喜(自転車工房エコー)                +3'00"

C2(5周回)
1位 埋樋敬介                         41'49"
2位 松井正通(MoricoWave勇城)                +27"
3位 一色寛之(CIERVO奈良)                  +1'02"
4位 木村吉秀(瀬田工業高校自転車競技部)           +1'24"
5位 吉田誠(White Jack)                   +1'35"

text&photo:Kei Tsuji